2001・11・24記




   上手な「会話文」の読み方



  会話文の音声表現の指導で、
 ・「人物の気持ちになって音読しましょう」
 ・「人物の気持ちに入り込んで音読しましょう」
  こういう指導コトバはよく言われます。この指導コトバで留まったまま
ではプロ教師と言えません。こういう指導コトバは素人にだって言えます。
  プロ教師は
 ・どうすれば人物の気持ちになって表現よみできるか。
 ・どうすれば人物の気持ちに入り込んで表現よみできるか。
の指導コトバを言えなければなりません。人物の気持ちに入り込むにはどう
すればよいか、その指導の方法テクニック(音声化技術と教授技術)を言え
るようでなければなりません。
 本ホームページでは、指導の方法テクニックについて中心的に書いてある
文章個所は、
 「会話文」については
  ・本章下記「各論詳述」で書いています。
 「地の文」については、
  ・第5章で中心的に書いています。
 「音声表現一般」については、
  ・第13章で中心的に書いています。
 その他の章にも付随記事がいろいろと書いてあります。



             
はじめに


  これまでの音読・朗読指導は、授業の終末で時間が余ったから実施す
る、時間がなければ省略という取り扱いが多くみられました。
  近年、国語科における音声表現指導の重要性が再認識され、著作物も出
版されるようになりました。しかし、教育現場の現実は、期待されているほ
ど音声表現指導が授業に取り入れられていない現状にあります。
  最近、わたしは音読中心の授業を参観することが多くあります。残念な
ことに、従来の話し合い中心読解授業の呪縛から脱却できてない授業を目に
することが多くあります。読み声をレヴェルアップする指導がないのです。
討議中心の読解指導が殆どで、、音声表現はつけたし程度しか見られません。
  当然に、子どもたちの読み声は、たどり読み・ぼそぼそ読み・ずらずら
読み・とつとつ読みという貧弱な音声表現になってしまいます。まともに音
読ができないでは、浅い読み取りさえもできていないと言えます。
  最近は、生きるための国語科学習が強調され、国語科がエセ総合学習化
してきており、表面だけをウロチョロとなで回るだけで、作品世界の奥深く
にひたって、情感豊かな世界にただよい流れ、音声でじっくりと読み味わう
指導が少なくなってきています。
  さて、みなさんの学級児童の読み声は、どうでしょうか。よそゆきの、
そらぞらしい、うわすべりの、そらよみになっていませんか。つまり、文章
内容と音声表現とがちぐはぐになっていませんか。文章内容が声にのっかっ
て音声表現されていますか。自分でこの読み声はちぐはぐだ、納得できない
と気づく能力が身についていますか。それに気づいて、自分で納得できる音
声表現を求めて幾度も挑戦していく子を育てていますか。
  なぜ、こんな乖離が起こるのでしょうか。文章内容が、子どもたちの体
に届いていないからです。文章内容が、子どもたちの体に触れ合い、響き合
っていないからです。子どもたちの感情(情動)が覚醒されていないからで
す。文章内容に感応し、身体が弾んでいないからです。文章に鋭く反応し、
生命的リズムとエネルギーが身体に満ちあふれていないからです。
  では、どうすればよいか。普段の読みの授業に音声表現をたくさん取り
入れることです。まず声に出して文章を読ませることです。そら読みの音声に
ならないためには、音声を手がかりにした解釈深めの授業を組織していくこ
とです。音声を手がかりに感情(情動)を刺激し、美的感性の覚醒と駆使と
練磨を重ねていく授業を展開していくことです。つまり、感覚や生理まで震
えた感情反応、張り詰めた緊張感で作品世界を音声に乗せて表現しようと努
力する授業を組織していくことです。


  
        
まず会話文の音読から始めよう


  地の文よりも会話文のほうが音声表現しやすいでしょう。会話文から音
声表現に表情をつける指導を開始しましょう。会話文の種類は五種類ほどあ
ります(詳細、拙著『表現よみ入門』参照)が、小中学生には細かく種類わ
けして教えるよりも、二つに大別して指導する方がよいでしょう。
  次の二つです。

       〔1〕相手に話しかけている会話文

       〔2〕ひとり言の会話文

  〔1〕は、対話の会話文です。この会話文は、話し手は男か女か、年齢
は、職業は、地位は、人物同士の関係・立場はをつかみ、次に、どんな状況
(場面)で、どんな心理感情で話しているかに気をつけて音声表現します。
人物に「入る、なりきる、のりうつる」ことが大切です。
  (1)の会話文は、表現意図による強調(プロミネンス)と、文末の上
げ下げに気を使うことです。やりとりの雰囲気を出すことも重要です。出だ
しのタイミングや間や語調にも気を使いましょう。
  〔2〕の会話文は、(1)のように話し相手は他人でなく、自分自身で
す。自分に向かってぼそぼそと語っています。また、考え(思考している)
言葉でもあります。相手への伝達意図はありません。小さい声の、自分へ
語りかける,ひとり言です。


         
しゃべり口調を出して


  会話文の音声表現は、しゃべる口調で読むことです。しゃべる口調を出
すには、どうすればよいでしょうか。
  まず、事前の話し合い学習で、次のようなことを理解させておくことが
重要です。

○会話文が語られている場面をはっきりさせる
        だれが(話し手)
        だれに(聞き手)
        どこで(場所、シュツュエーション)
        なにを(話材、話し内容)
        なぜ(目的、意図)
        どんな気持ちで(心理感情)
        どんな話しぶりで(声調、口調)
        どんな顔つき(表情、しぐさ)で話しているか。

○人物同士の人間関係を明確にする
        立場の違いはどうか
        利害関係はどうか
        親疎関係はどうか

○人物像を明確にする
        男女別、年齢、職業、社会的身分の違いはどうか
        生育暦、社会体験の違い
        話し手の思想(ものの見方、考え方)はどうか
        性格、気質はどうか

○人物同士の生活状況はどうか
        過去からの連続で語っている
        人物たちの置かれている場面状況、気持ちを知る



       
話し手の意図を前面に押し出して


  話し言葉(会話文)は、語られるにつれて生まれでるもの、各瞬間ごと
に生まれて消えるものです。話し手の意図を前へ押し出す生命体をもつ文で
あるといえます。話し手の思いや表現意図の強弱、心理の屈折の度合い、感
情の揺れ動きが音声表現に微妙な変化となって現れ出てくることにきづくで
しょう。一通りでなく、いろいろな話し口調がかんがえられます。
  子どもに「この会話文はどのように音声表現していくとよいか」を話し
合わせ、さまざまな色合いで音声表現させてみましょう。ちょっとした音声
表現のちがいが新しい別の様相(意味内容)の音声表現となって現れ出てき
ます。話し手の気持ちに同化することで、話し手の息づかいとなり、うまく
いくようになります。


        
舞台のせりふ読みにしない


  「物語文」は地の文がほとんどで、それに会話文が付け加わっているの
が殆どです。たいていは地の文のところどころに会話文が一つ、二つと埋め
込まれているのが普通です。これらの会話文は、会話文の形式をとりつつも、
地の文と同じ性格のものとして、場面や状況を説明したり描写したりするた
めに用いられている会話文も多くあります。「物語文」の会話文の多くは、
人物の話し意図や性格やその場の雰囲気を具体的状況として描写し説明する
手段として使用されています。
  地の文のなかに埋め込まれた一つ、二つだけの会話文は、役者が舞台上
で身振り手振りを入れて演じるせりふ読みにならないようにします。「脚本
は舞台におく。会話文は状況におく」と言われます。地の文の調和をこわす
ような、会話文だけがへんに浮き上がる音声表現をしないようにします。地
の文の説明・描写の読み調子よりかは、ほんの軽く会話文口調が浮き立つぐ
らいに、抑えた話しぶりにして読むようにします。全体のバランスを考えて
状況(場面)を説明するだけの音声表現にします。(会話文が連続している
対話文は、そうはなりません。やりとりの雰囲気を出して、ほんとに語り合
ってる口調にして音声表現します。)


       
長い会話文は内的動機を押し出して


  会話文の中には、数は少ないが芝居の長せりふのように一人の人物が長
い時間を語る会話文もあります。短い会話文は話し口調をだすのにそんなに
難しくありませんが、長い会話文(長い独話文が多い)は、会話文全体を話
し口調をだして、しゃべっているように音声表現するには困難なところがあ
ります。
  このような会話文は、書かれている文字の一つ一つを、総てていねいに
話そうとするとうまくいきません。そうでなく、長く語らずにおれない内的
動機を、会話文の背後にある気持ち(意図、衝動)をつかんで、それを押し
出すようにして音声表現するとうまくいきます。内的動機をつかんで、それ
を文章の線条に乗せて、内的動機のリズムでしゃべるようにしていきます。
  会話文は口頭から発話される前に、脳内に相手への訴え・伝えの意志衝
動があり、相手への心遣いの作業工程を経て口頭から押し出されてきます。
ダイアローグであれ、モノローグであれ、長い会話文であれ、短い文であれ、
相手に言いたいことの思い(意図・衝動)は一つです。それをつかんで、そ
れを押し出して語るようにします。こうして、生きた現実場面の音声表現を
生み出すようにしていきます。


           
会話文の両義性


  会話文の音声表現では、読み手は登場人物になったつもりで音声表現し
ていくことになります。登場人物の心理感情に素早く入り込んで音声表現し
なければなりません。登場人物の言葉を、登場人物に乗り移って登場人物と
同じ気持ちになって音声表現していかなければなりません。登場人物が語っ
たであろう時の身体表情になって、それを想像して音声表現していかなけれ
ばなりません。

  会話文の音声表現においては、当然に読み手と登場人物との身体的コミ
ュニケーションが行われます。登場人物が語ったであろう時の気持ち、相手
への伝え意図が明確になっていなければ上手な音声表現にはなりません。
  読み手の身体の中に登場人物が入り込むことを「身体移入」といいます。
読み手と登場人物とがクロスして、二人(登場人物と読み手)の人物が一人
となって音声表現しているような心理感情状態になります。読み手は、登場
人物でもあって読み手自身でもあるというあいまい(両義性)な性格を帯び
てくることになります。読み手は自他分離のあいまいな心理状態で会話文を
音声表現していくことになります。

  読み手と登場人物とが重なると、登場人物の呼吸が読み手の呼吸に接近
してきます。登場人物が読み手の身体に憑依して、住みついてしまったよう
な身体状態で音声表現していく場合もあります。

  作品世界に入り込んで読んでいる時、そこで起こってる出来事(事件)
の展開に強い衝撃を受けたりすると、読み手の身体表情に大きな影響を受け
ます。音声表現の進行中、出来事(事件)の内容によっていろいろな感情反
応を起こします。激怒して顔が赤くなったり、恐怖から顔が青くなったり、
動転して足がびくっと動いたり、驚愕で身体が凍りついたり、愁嘆場では目
がうるんで涙が落ちたりもします。小さな感情反応は常時起こっているはず
です。こうした感情反応が音声表現の表情に大きく影響を与えることは言う
までもありません。
  こうして読み手は登場人物と同一行動の時間を生き、登場人物と同じ切
実な行動体験をしつつ音声表現していくことになります。



以下新稿・2011・10・22付加



    
会話文の音声表現のしかた



  会話文と地の文では、音声表現の仕方が違います。
  ここでは会話文の音声表現について書きます。地の文については本ホー
ムページの別章「上手な地の文の読み方」で詳述しています。本稿では、会
話文の音声表現の指導の工夫について書きます。

(1)これまでの会話文指導の反省から
  これまでの読解指導では、会話文の指導は、とかくすると「○○さんは、
どんな気持ちでいるでしょうか」「どんな気持ちから、それを語っています
か」などの発問に答えさせて終りとする読解授業が多くありました。
  会話文の指導は、その会話文を実際に音声表現させてみましょう。「こ
んな気持ちで語った」という語り合いの説明だけで済ましては感動が薄れて、
冷たい理解で終ってしまいます。人物になって、人物の気持ちに入り込んで、
身体を通した感情ぐるみで音声表現させるほうが臨場感が出ますし、ずっと
真実味が増し、深く理解できます。そのほうが迫真的にわが身に響かせて理
解できるようになります。

(2)うわべだけの音声表現にしない
  会話文を、うわべの文字づらだけの、ただ声にしているだけ、それっぽ
い読み方だけで終わらせてはいけません。とくに数人で対話している語り合
い場面は、人物同士の受け渡しや、やりとりの感じを出すことが必要です。
相手が話したあと、どれぐらいの間をおいて、次の話し手が話し出すか、
出だしの語勢やタイミング、間合いの取り方、緩急変化、強弱変化、喜怒哀
楽の感情表出などが重要となってきます。何はともあれ、相手のせりふをし
っかり聴くことから始めることです。

(3)本心か裏心かを見抜いて音声表現する
  会話文には、音声表現に必要な情報がもれなく書かれているわけではあ
りません。話し手の意図をさまざまに補って、斟酌して音声表現しなければ
なりません。本音がストレートに語っていない場合も多くあります。
  「あの人が嫌い』と言ったとしても、本当は大好きなのにそう言ったの
かもしれませんし、嫌いだとしても、その程度によって語り音調はいろいろ
に変ってくるでしょう。「寒いですね」と言ったとしても、本音は「暖房を
いれよう」(話し手の意志)とか「暖房を入れてください」(話し手へのお
願い)とか「窓を閉めよう」(話し手の意志)とかの意味でそう云ったのか
もしれません。それぞれの思いの違いで音調が変化してきます。


       
二種類の会話文を読み分けよう


  会話文には、大きく区分けすると、二種類があります。「会話文1」と
「会話文2」です。会話文を音声表現するときは、「会話文1」か「会話文
2」かを読み分けることがとても重要です。

会話文1… 相手に話しかけている会話文。
会話文2… ひとり言の会話文。

  「相手に話しかけている会話文」は、だれとだれが話しているか、どん
な場面で、どんなことを、どんな目的で、どんな気持ちで、どんな声の調子
で語っているか、を知って、それを押し出して読むようにします。
 「ひとり言の会話文」は、自分が自分に話しかけたり、自分の頭の中でつ
ぶやいたり、ある事柄を思い浮かべたりしている会話文です。ひとり言の会
話文は、カギカッコの中に書かれていたり、カギカッコなしでも書かれてい
たりします。また、(   )の中に書かれていたりもします。
  ひとり言は、頭の中だけのコトバ操作です。低い声、小さい声、そっと
つぶやいてる声、ぼそぼそした、ぽつぽつした声などの音声表現になります。



      
   各論詳述



     
「相手に話しかけてる」会話文の部

「相手に話しかけている会話文」の音声表現の仕方
  (A)通常の、カギカッコつき「相手に話しかけている会話文」
  【B)地の文の中の、カギカッコつき「相手に話しかけている会話文」



     
「ひとり言」会話文の部

  (A)カギカッコつき「ひとり言」の音声表現の仕方

  (B)地の文にはめこまれたカギつき「ひとり言」の音声表現の仕方

  (C)地の文にはめこまれたカギなし「ひとり言」の音声表現の仕方

  (D)(   )の中にある「ひとり言」の音声表現の仕方



     
「話しぶりのある」会話文の部

「話しぶりの書いてある会話文」の音声表現の仕方
   「話しぶりの書いてある会話文」の表現よみ練習をしよう



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