「ひとり言」会話文の(D)           2011・10・28記




 
(D)(  )の中に書いてある
        「ひとり言」の音声表現


(はじめに)
  「  」の代わりに(  )が使われることがあります。会話文は通常
は「  」ですが、ひとり言の会話文などは(  )の中に書かれることが
よくあります。




  )の中にある「ひとり言」会話文(1)

 「すいせんラッパ」(工藤直子、3年生)に次のような文章があります。

 あたたかい風が、ささあっとふきわたり、日の光が、一面にちりました。
(うん、今だ!)
 すいせんは、大きく息をすって、金色のラッパをふきならします。
 プップ・パッパ・パッパラピー・プー
 すきとおった音が、池をわたり、地面をゆさぶり、おかを上って、むこう
の空にきえます。ありたちは、目をまんまるにして、うんとせのびをして、
まわりを見ました。
 ……すると、池のそばのつつじの根元がむくっ。
(あ、あそこだ、あそこだ。)
 ありたちは、ひつじをつついて、ささやきます。

【解説】
  
(うん、今だ!)は、すいせんが「ラッパをふきならす時期だ、チャン
スだ」と頭の中で「ひとり言」した、判断した、ということです。頭に浮か
んだ言葉ですから、そのように音声表現します。
  
(あ、あそこだ、あそこだ。)は、「ささやきます」と但し書きがあり
ます。ささやいているように音声表現しましょう。




(  )の中にある「ひとり言」会話文(2)

「きつねをつれて村祭り」(こわせ・たまみ、大書3下)に次のような文
章があります。

 ごんじいは、おもちゃ屋さんでした。おもちゃをつんだ車を引いて、あっ
ちこっちのお祭りに行って、おもちゃを売るのが仕事でした。
 きょうは、山の向こうの村でお祭りです。風にのって、笛やたいこの音が
聞こえてきます。
「うんうん、いつ聞いてもいい音じゃのう。」
 ごんじいは峠に着くと、やれやれとひと休みしました。そのときです。
(ほっ、きつねの子どもじゃ。)
 やぶのかげで、一ぴきのきつねが、くるんと宙返りをしています。
(人間なんぞに化けて、お祭りにでも行きたいんじゃな。)
 そこで、ごんじいは言いました。
「さて、そろそろ出かけようか。だれか、いっしょに行ってくれる子どもで
もいるといいんじゃが……。」
 すると、待っていたように、一人の男の子が走り出てきました。
「ごんじい、いっしょに行こう。」
 ごんじいは、目をぱちくりしました。
だって、体や手や足は人間の子どもなのに、顔だけきつねの男の子が、「ど
うだい!」というように、立っていたからです。
(くふっ、うまく化けられないんじゃ。いいわい、だまされたふりをしてあ
げようかのう。)


【解説】
  ここの文章個所には、「  」が四つ、(  )が三つあります。「 
 」は、声に出しての「語りかけ」会話文です。(  )は、頭の中だけの
「ひとり言」です。それぞれの左側に、わたしなりの音声表現の仕方を書い
ています。

声に出しての「話しかけ」会話文
(1)
「うんうん、いつ聞いてもいい音じゃのう。」
    自分自身に語り聞かせて、自分自身で納得し、喜んで満足していま
    す。心から満足してるように嬉しそうな声で音声表現します。
(2)
「さて、そろそろ出かけようか。だれか、いっしょに行ってくれる子
    どもでもいるといいんじゃが……。」

    きつねに聞こえるように、きつねに話しかけてるように、わざと大
    きな声で言います。
(3)
「ごんじい、いっしょに行こう。」
   化けたきつねが言っています。かわいらしい声にして、ごんじいに語
   りかけています。
(4)
「どうだい!」
    堂々とした態度で姿を現わして立っている様子が「どうだい!」と
    語っているようです。堂々と威張ってように音声表現します。

頭の中だけの「ひとり言」会話文
(1)
(ほっ、きつねの子どもじゃ。)
    驚いた音調で、ひとり言で、頭の中だけの言葉にして音声表現しま
    す。
(2)
(人間なんぞに化けて、お祭りにでも行きたいんじゃな。)
   頭の中で考えた言葉です。推測してる気持ちで、ひとり言してます。
(3)
(くふっ、うまく化けられないんじゃ。いいわい、だまされたふりを
    してあげようかのう。)

   心の中では、にたにたして、これはおもしろい、わざとだまされてや
   ろう、という気持ちで、ひとり言してます。




(  )の中にある「ひとり言」会話文(3)

「白いぼうし」(あまんきみ子、光村・学図4上)に次のような文章があ
ります。

 アクセルをふもうとしたとき、まついさんは、はっとしました。
(おや、車道のあんなすぐそばに、小さなぼうしがおちているぞ。風がもう
ひとふきすれば、車がひいてしまうわ。)
 緑がゆれているやなぎの下に、かわいい白いぼうしが、ちょこんとおいて
あります。


(お母さんが虫取りあみをかまえて、あの子がぼうしをそうっと開けた時─
─。)
と、ハンドルを回しながら、松井さんは思います。
(あの子は、どんなに目を丸くしただろう。)
すると、ぽかっと口を0の字に開けている男の子の顔が、見えてきます。

(おどろいただろうな。ま法のみかんと思うかな。なにしろ、ちょうが化け
たんだから──。)


【解説】
  ここの文章個所には、(  )が四つあります。すべて「ひとり言」で
す。松井さんの「ひとり言」です。松井さんの心に浮かんだ言葉です。
  初めは、アクセルを踏もうとした松井さんの頭の中にうかんだ「ひとり
言」です。「なんとかしなくちゃ」という気持ちでひとり言しています。
  次には、松井さんが、帽子の中の蝶を逃がしてしまい、かわりに夏みか
んを入れておきます。松井さんは、子どもが帽子をあけた時の、子どもの驚
いた姿や顔の表情や胸のときめきを想像してしています。そうした子どもの
驚きを期待し、松井さんの胸もときめいています。松井さんの気持ちになっ
て、頭の中だけの言葉・ひとり言として(  )の中を音声表現していきま
す。



(  )の中にある「ひとり言」会話文(4)

 「青い花」(安房直子、6年生)に次のような文章があります。

 かさ屋は、大喜びで、こう思いました。
(さっそく、屋根の修理をしよう。それから、窓に新しいカーテンをかけよ
う。)
 独り暮らしの二階の窓に、真っ白いカーテンをかけることは、長い間、か
さ屋のあこがれだったのです。
 (それから、油絵の具を一箱と新しいギターと、それから……。)
 ああ、ほしいものは、まだまだたくさんあります。

 次の日、かさ屋は、町にカーテンと、絵具とギターを買いに出かけました。
 細い細い雨が降っていました。
 町までは、だいぶ道のりがありました。けれど、かさ屋の胸の中は、喜び
で、はち切れそうでした。
 (まず、屋根の修理をたのんで、それから、デパートへ行こう……。)
 かさ屋は、そう心の中で、ちゃんと決めていました。


【解説】
  (  )が三つあります。三つとも、かさ屋さんの「ひとり言」です。
希望や期待に満ちて、うきうきしてる言いぶりですね。そんなかさ屋さんの
気持ちになって読んでいきます。




(  )の中にある「ひとり言」会話文(5)

 「あんず林のどろぼう」(立原えりか、6年生)に次のような文章があ
ります。

 今までにぬすんだお金は、いったいいくらになるのか、どろぼうは、自分
にも分かりませんでした。
(さて、これからおれは、駅へ行って汽車に乗ろう。ずっとずっと遠くへ逃
げてしまうのだ。それから、首かざりを高く売ろう。えへん、もうすぐに、
おれは大金持ちになれるぞ。)
 どろぼうは、心の中で、ぺろりと舌を出しました。うでのいいどろぼうで
あることが得意でした。

【解説】

 (  )の中は、どろぼうの「ひとり言」です。このどろぼうは自信たっ
ぷりな自己満足でいっぱいなどろぼうです。(  )の中は、ただ頭の中で
思っているだけではなさそうです。声には出ていないかもしれませんが、声
に出して堂々と自慢げに威張ってしゃべっているような口ぶりです。そんな
つもりで、心の中の言葉として音声表現するとよいでしょう。




参考資料……(  )の中にある会話文(6)

  「川とノリオ」(いぬいとみこ、6年生)の中に次のような文章個所が
あります。

  下記の(  )の中は「ひとり言」ではありません。通常の「相手への
語りかけ」会話文です。(  )は、このような使われ方もあるという例で
す。

 (おいで、おいで。つかまえてごらん。
      わたしは、だあれにもつかまらないよ。)
 川の水がノリオを呼んでいる。白じらと波だって笑いながら。

(おいで、おいでよ。おまえもおいで。
      わたしは、だあれにもつかまらないよ。)
 川はますます白い波をたてて、やさしくノリオに呼びかける。

 流したはずのくりのげたも、ちゃんと二つ、川から取りもどされ、ノリオ
は小さいおしりのはたに、母ちゃんのおしおきをうんともらう。
(ノリオ、ノリちゃん、この悪ぼうず、今度川へなんぞ入ったら、このおし
りにやいとをすえてやろ……。)


【解説】
  この例文のように、会話文「  」の代わりに使われる(  )は、
「相手に語りかけてる会話文」としても使われることもあります。
  上の二つは、川の水がノリオに語りかけています。上は「笑いながら」
です。中は「やさしく」です。これら但し書きにも気をつけて音声表現しま
す。
  最下部は、母ちゃんがノリオにおしおきを加えてる時の言葉です。どん
な場面かを想像して音声表現します。「おしおき」の程度や場面をどうつか
まえるかによって音声表現の仕方は変わってきます。学級児童とよく話し合
って音声表現します。


次へつづく