音読授業を創る そのA面とB面と       02・5・22記



   
わが学級児童は中級レベルなり(その1)
        【上達の三段階とは?】


                    

             上達の三段階


  表現よみの上達レベルを初級レベル、中級レベル、上級レベルの三段階に
区分けすることにします。この三段階は教師が教室で意図的計画的に表現よ
み指導している、指導途中に見られる上達の三段階です。
  初級レベルの以前には、全く音読指導を受けてない未指導の読み声レベ
ルもあります。自分勝手にでたとこの勝負の、自分勝手流の読み声で読んで
いる未指導の読み声レベルです。ずらずら読み、一本調子読み、小声読み、
節つけ読み、つっかえ読み、陥没読み、早口読み、口先読み、うわのそら読
み、りんりん読みなどがそうです。
  上級レベルの更に進んだ段階として名人レベルを置くことがもきます。
義務教育段階の児童生徒では、名人レベルは皆無といってもよいでしょう。
  後者の二つを入れると、全体で五段階ということになります。
  以下では教師が教室で意図的計画的に指導していく過程における上達の
三段階の実態について書いていくことにします。


          わが学級は中級レベルなり


  はじめに、なぜわが学級児童が中級レベルなのか、そのわけを、わたし
なりの評価基準を示しつつ書くことにします。
  「わが学級児童の読み声」とは、拙著『表現よみ指導のアイデア集』
(民衆社)付録のCDから聞こえてくる、「初めての表現よみ指導はここから
始める」の読み声を除いた、他の総ての読み声のことを指します。また、拙
『群読指導入門』(民衆社)付録のCD2枚から聞こえてくる総ての読み声
を指します。わが学級児童の読み声のありさまは、これらCDで聞くことが
できます。
  これら読み声を、わたしは国語授業の中でどう指導したか。どのような
指導をたどってこのようなレベルに達したか。これらは前記の拙著に詳述し
ているわけですが、かいつまんで言えば、次のような三つのことに重点をお
き、いつも心がけて指導しています。

(1)音声解釈
  ずらずら読み、一本調子読み、無勝手流で何の考えもない読み方をさせ
ない。文章内容を音声表現するように意識的の努力することを心がける。文
章の意味内容が要求する音声をどう表出するかに意識を集中させる。意味内
容をどう音声にのせていけばよいか、それについて学級全員で語り合う。意
味内容の音声表出のためのさぐり読み、さぐり読み、音さがし読みを、あれ
これと試みてみる。あらわれでた一児童の読み声(音声)を手がかりにして、
それを材料にして全員で「ここはこういう意味内容だから、もっとこういう
読み声になるのでは」と話し合う。さらなる読み声に挑戦する。さらなる良
質の読み声を探していく。
  このように「音声解釈」とは、声に出して、声を材料にして読み深め、
さらに上級の読み声をもとめていくことである。

(2)音声表現技術(めりはりづけ指導)
  読み声にふくらみをもたせ、奥行きを深くして読んでいこう、そうした
願い(気遣い、努力)を抱いて文章を声に出していくようにさせます。まず
は発音発声を正確に、そして意味のまとまりや続き具合を音声ではっきり
区分けして読むようにさせます。
  それから少しずつ音声化技術も身につけていこう。次のようなことです。
 どこの部分を強調し(粒立て)、どこの部分を捨て(流し)ていくか、
 読点(テン)を切るか続けるか。間は、何個分あけて読むか。
 長い一文(短文、重文、複文)の区切りはどうするか、
 抑揚(上げ下げ)はどうするか、緩急変化はどうするか、強弱変化はどう
つけるか。
 その他、場面の雰囲気(気分)の表現どうつけるか? 
 係り受け(修飾、被修飾)は?高低変化は?
 明暗変化は? 声量の大小は? 
など、実際の音声表現のつけかたを文章の流れにそって具体的に考えていく。
これら音声化技術(テクニック)を文章の余白に記号づける能力、記号を手
がかりに音声表現表情を付けて読んでいく能力を身に付けていきます。

(3)楷書読み
  初期レベルの音読指導は、楷書読みに重点をおきます。楷書読みとは、
十分な声量、正しい呼吸、明晰な発音、文字を正確に拾って読む。読み誤り、
読み飛ばし、つけたし読みなどをしない。意味内容の区切りでしっかり
と間をあける。へんな読み癖をなくす。単調でもよいから、折り目正しく読
ようにする。などの指導です。


          ひらきなおって、大胆に


  初級レベルの読み声の実態は、子ども達は当然に気持ちのこめ方、めり
はりのつけ方が上手にできていません。自分の思い・気持ちとはうらはらに
音声がうまくのっかって出てきません。上手に読めないものだから、自信が
なくなり、気持ちが小さくなります。当然に声も小さくなります。気持ちが
萎縮して、遠慮しいしいの小声で読むことになります。めりはりも平板にな
ります。初級レベルの表現よみ指導では、当然にこれらをなくす指導から始
めなければなりません。
  わたしは授業中に子ども達に幾度となく 「ひらきなおって、大胆に、
表現せよ」 と要求してきました。このことを言葉を変えて、次のような言
葉かけをすることもたびたびありました。皆さんも真似してみたらいかがで
しょうか。

○遠慮しいしい読んではいけません。やぶれかぶれ、どうにでもなれ、やけ
 くそになった気持ちで、オーバーに変化をつけて読んでごらん。

○初めから小さく固まらないことです。上手にまとめようとしないことです。
 小さくまとめてしまわないことです。印象が小さくなってしまうからです。

○ブランコを小さくこぐよりも、大きくこぐほうが楽しいね。ブランコを大
 きくこぐように声の表情を大きくゆらして読んでみましょう。

○少しへんな(はたん)ところがあってもよいです。荒削りでよいですから、
 思いを大きくドカーンと前へ出してよんでみましょう。

○こう読みたい(表現したい)という気持ち・思いを、体にひびかせて、体
 ごとに声をぶつけ、体ごとで声に出して読みましょう。気持ち・思いの塊
 を体にひびかせて押し出して読みましょう。

○照れや恥ずかしさをとっぱらうことです。高学年になるほどこれが出てきます。 まず、教師自身がアホになったつもりで何事もない顔付でドーンと大げさ
 にふくらませて、見本をやって見せましょう。この雰囲気が学級全体の普
 段の雰囲気となることです。照れないで、楽しみつつ、大げさに表現する
 雰囲気を作ることです。

○振幅を大きく、ドーンと大げさに声を出してして読ませましょう。

○ウーンとふくらませて読もう。粒立てて、泡がたくさん重なって出るよう
 に読みましょう。こう読みたいという一つの思いを大きくふくらませて読
 みましょう。ほか、捨てるところは捨てて、流して読んでよい。結果、捨
 てるところも自然とよい感じになってくるはずです。

○なまじっかかっこよく読もうとしてはいけません。恥も外聞も捨てて読ん
 でごらん。

○オーバーに気持ち・思いを、体ごとドーンと押し出してごらん。

○小さな風船でなく、大きな風船にふくらまして読んでみよう。


  前記した二冊の拙著の付録CDから聞こえてくる読み声は、わたしの要望
をしっかり受け止めた読み声であることが耳から理解できるでしょう。上記
したわたしの指導の様子が、子ども達の発言の内容や実際の読み声から聞き
取ることができるでしょう。音読の話は、実際の読み声で理解していただく
のがいちばんです。

  初級レベルの練習では、さまざまに大げさに読める能力、さまざまに表
現のしかたを探る能力を身につける指導が重要です。ふくらまして読める能
力を身につけることが重要です。
  困るのは、ふくらまして読めないことです。不十分なふくらまし方でも
いいから、さまざまなふくらまし(臨機応変な音声変化)ができる能力が大
切です。大げさ過ぎる、オーバー過ぎるところは、いくらでも抑制する、押
さえるこでができます。抑制する、押さえることは簡単です。困るのは、思
いをたっぷりとふくらませて音声表現できないことです。それで、わたしは
上述した言葉かけをして指導してきたわけです。


           自画自賛もいいところ


  わたしが「わが学級児童の読み声は中級レベルなり」と書くと、読者の
中には「自画自賛もいいところ、何をたわけたことを申す。」と言われる方
もいるかもしれません。わたしが最近読んだ本の中に「読者は嫉妬深くて猜
疑心が強くてあげ足取り」(山口文徳、エッセイスト、ノンフィクションラ
イター)という文章を見つけました。《一面の真実あり、ピタリ表現のコト
バだ。》と感心したことがあります。これは善いとか悪いとかということで
はなく、人間世界の一面の真実を表現しているコトバだと思います。わが学
級児童の読み声が中級レベルかどうかは拙著付録CDを聞いて戴いて、みなさ
んの御判断を仰ぐしかありません。

  わたしが中級レベルと言うからには、それなりの理由があります。わが
学級児童は前述した「音声解釈」と「音声表現技術」と「楷書よみ」、これ
ら三つを計画的継続的な指導をうけています。国語授業は毎日ありますし、
音読の家庭練習(音読カードで父母のチェック)もあり、継続的な練習でか
なり実力が上達してきています。

  「ひらきなおって、大胆に」

がごくあたりまえの雰囲気で授業が進行しています。
  上手な音声表現とはどんな読み声か、上手な読み声にするポイントはど
こか、どんなことに気をつけて読めば上手になるか、などがしだいに分かっ
てきており、音声表現のむずかしさなどをも感じる段階へと入っています。
  音読表現で第一に重要な点は間のあけかたですが、わが学級児童は「こ
こは一つ分の間あけだ。二つ分だ。三つ分だ。ここのテン(読点)は続けて
読む、いや一つ分あける。ここにテン(読点)は付いていないが、一つ分あけ
たほうがいい。○○君の間のあけ方は思いがつながってない、切れているか
らだめだ。」などの発表が普通にできる子ども達に育ってきています。
  以上のような指導の結果、CDから聞こえてくる読み声は、初級レベル
の段階を通りこしていて、次に述べる中級レベルに相当する読み声に到達し
ていると、わたしは判断しているわけです。


         中級レベルと上級レベルの区分け


  中級レベルと上級レベルとの違いについてもう少しくわしく書きます。
  わが学級児童の中級レベルを、さらに上位の上級レベルの読み声に高め
るにはどうするか。これには、上級レベルの読み声とはどんな読み声なの
か、が分かっている必要があります。上級レベルの読み声とはこうだ、の理
解ができていなければ、子ども達の読み声を上位に高めることはできません。
上級レベルの読み声イメージを持っていれば、それへ向って指導することが
できるし、どんな指導をしていけばよいかの手立てを計画することもできます。
  中級レベルと上級レベルとの区分け作りをするといっても、音楽の歌唱
力レベルや、絵画の描画力レベルを区分けするのと同じく、客観的かつ厳密
な言葉表現の評価項目で記述することはかなり困難です。現在のわたしに
は、こんな感じ・印象・イメージの違いだという、感覚的な言葉表現でしか
記述することしかできません。でも、大体の感じの違いはつかめていただけ
るのではないかと思います。

 中級レベルの読み声に○印をつけています。上級レベルの読み声に◎印
をつけて書いています。印の違いに気をつけて、二つを比較しながら読んで
ください。違いがはっきりと理解できるでしょう。

◎ひっそりと抑えた声立ての中にたっぷりした表現内容が感じられる。

◎柔らかさの中に情感がそっと、さりげなく、くっきりと表現されている

◎何でもないように読んでいて、ふくらむところはふくらみ、じんわりと
 情感がにじみ出ている。

○これでどうだ、と押しつける感じの読み方。

○一生懸命に読んでいる感じの読み方。

○抑揚つけに気負いのほとばしりが感じとれる。

◎力を抜いて、淡々と言葉だけで表現している。

○力が入って、体いっぱいで表現している。読むことにせいいっぱい。

◎押しつけがましさがなく、静かさの中にくっきりとした際立てがほん
 のりと感じとれる

○ぎんぎらぎんにモーレツに押し出してくる感じ。

◎地味な声立てで、余すところなく表現している。

○文章の意味内容を意図的に外へ押し出している感じ。

◎冬の日だまりの暖かさ、静けさ、安らぎのある読み方

○凸凹を派手に意図して表現している読み方。

◎時間が止まったかのような、静寂な森の中のよう。

○人通りの多い、喧騒な商店街のよう。

◎ナイーブで驚くべき自然さがある。

○気張った頑張った声立てで、場面をみせる、聞かせる意識あり。

◎しっとりと、ゆったりと、落ち着いた声立て。

○大げさで、騒々しく、せわしない声立て。

◎つかんで、生き生きと、軽く事柄が浮き出ている読み方。

○勢い込んで構えた読み方。

◎声に固さがない、何気なくさらりと読んで豊かに表現している。

○むりな表情のつけすぎ、嫌味があるが、それを恐れてない読み方。

◎軽く、らくに、柔らかく、余裕のある音声表現に仕方。

○気負い過ぎ、コチコチ固く重い読み方。

◎全体にしっとりとした自然な落ち着きと静かさがある読み方。

○三面記事のワイドショー的な、スキャンダラスに煽り立てる読み方。

◎文字や文章の存在を感じさせない、読み手も消えて、文章内容だけが浮き
 立っている読み方。

○日常性と切れた作られた音調で、技巧的に人工的に読んでいる。

○何か歌う調子、レディメードな節回し、言い回しで読む。

◎気張らず、飾らず、淡々と読んでいて、くっきりと情景や気持ちが出てい
 る読み方。

○一生懸命になりすぎて、きまじめに盛装した読み方。

◎押しつけがましくなく、読み手のほんわかとした人間味が滲み出てる読み
 方。

◎オルゴール音楽のよう。

○ロック音楽のよう。


  
             
次へつづく