表現よみ授業の指導法              2011・11・20記




 
表現よみ授業の指導方法(その4)




 
本章の目次
    <読み声発表の直前直後の指導>
   (1)読み声発表の直前に「めあて」を言わせる
   (2)読み声発表の直後に反省を言わせる
   (3)発表直後の診断・評価のポイント





(1)読み声発表の直前に「めあて」を言わせる


  表現よみを発表する直前に「こんなめあてで音声表現したい」を言わせ
ましょう。表現よみ発表のとき、ここをこう読みたいという何の目標もなく、
思い入れ事項もなく、単にずらずらと、機械的に文字を音声にするだけでは
いけません。
  児童が音声表現する直前に「この文章部分を、どんな思いをこめて読も
うとしているか。こういうことに気を使って、こんなふうに読みたい。」と
いうことを言わせます。事前の決意・つもり・予定・どんなことに気をつけ
て・どんな思いや気持ちを押し出して読みたいか、を言わせるようにします。
  どこを、どのように読みたいか、どんな感じにして、どんな雰囲気にし
て、どんな気持ちになって読みたいかを児童に言わせます。また、それを
ノートに書き出させる方法もあってよいでしょう。
  例えば次のようなことを言わせます。

【物語文の発表例】
●「この文章部分を〜の思いをこめて読みたいです。〜の気持ちをこめて読
  みたいです」
●「〜の目当てをもって読みます。〜の感じ・雰囲気・気分になるように読
  みます。」
●「間のしるしをつけた個所では、たっぷりと、急がないで間を十分にあけ
  て読みすすめたいです。」
●「〜の語句を強めて読みたいです、目立たせて読みたいです。」
●「〜の個所は、ひとつながりにして、ぶつぎりにしないで読みたいです」
●「〜の個所は、ゆっくりと読みたいです。つかえないで・はぎれよく読み
  たいです。」
●「〜個所をゆっくりと読んで、○○の気持ちを押し出して読みたいです」。
●「わたしは、この文章部分を〜のように読みたいです。」
●「〜の気持ち・〜の様子が声に現れ出るように読みたいです。」
●「〜を、そうっとのぞいている感じ、静かーな感じにして読みたい。」
●「〜の個所の地の文、得意そうな、うれしそうな雰囲気を出して読みたい
  です」
●「〜の個所の地の文、心配そうな、とまどっている感じにして、ゆっくり
  と、ぽつぽつと読みます。」
●「   」の会話文は、はきはきした元気な女の子、うれしくてたまらな
  いという気持ちを押し出して読みます。
●「   」の会話文を読むとき、うれしーい、なつかしーい、という気持
  ちをいっぱいにして読みます。
●「   」の会話文を、びっくりした、驚いている感じにして読みますか
  ら、聞いてください。」


【説明文の発表例】
  説明文では、論理の組み立てや、事柄の展開が音声に出るように、どこ
をどう工夫して読めばよいかを発表させます。説明文の音声表現では、筆者
が伝えたい、そこで強調している事柄を目立つように読みます。
●「〜の個所を、強調して、目立たせて読みたいです。」
●「どうして〜なのでしょう。」「なぜ、〜のでしょう。」の個所は、質問
  や問いかけている、聞いている感じにして読みます。
●「〜だと、〜ができません。」のつながりが目立つように読みたいです。
  この二つの個所(言葉)を強めに読んで目立たせます。
●「第一に〜、第二に〜、第三に〜」のところ、三つの順番がはっきりと分
  かるように区別して目立たせて読みたいです。
●「これに対して」「しかし」のところ、転調にして、これまでの読みの調
  子を変えて、新しく起こして読んでいきたいです。
●「たとえば」のあと、三つの例が出てきます。三つがあることがはっきり
  と分かるように区切って読みたいです。

【聞き手児童の参加】
  聞き手にも積極的に学習に参加させる指導が必要です。
  児童の読み声発表の直前に、聞き手児童たちに次のように教師がさそい
かけます。
●「〜さんがこれから表現よみの発表をします。〜の個所を〜のように工夫
  して読むそうです。どうだったか、そこに注意して聞いてみよう」
●「とってもよかったところ、上手だったところはどこでしたか。もう少し
  こう読むと、もっとよくなるところはどこでしたか。鉛筆を持ってしる
  しをつけながら聞きとってみましょう」「よいところ、たくさん探して
  発表してください」



(2)読み声発表の直後に反省を言わせる


【読み手児童の反省発表例】

  読み声発表が終わったら、今読み終わった自分の読み声はどうであった
  か、反省を言わせます。
●「ごんがそうっと兵十に近寄っていった様子が出るように、声を低くして、
  しのびよるみたいな感じにして読んだんだけど、そこは大体感じがでて
  いてよかったと自分では思います。」
●「一休みしようかと木かげに入りかかけたとたん、ねむっていたはずの地
  主が」のところ、「とたん」を、もっとわざと大げさに読んだ方がよか
  ったと反省しています。もっとわざと大げさに読んだ方が、何かが起こ
  った、普通でないことが起こった、ということが声に出たと思います」
●「りんごのきのしたで。ぶどうのきのしたで」の個所、二つの間を大きく
  区切って、ならべて、同じ感じで読んだところはよかったと思います」
●「このしぐさは何を表しているのでしょう」を、もっとしり上がりの読ん
  で、質問してるように読めばよかったと反省しています。
●「ですから、しぐさは、体で表す言葉だと言ってよいでしょう」の個所、
 「ですから」を取り立てて強めに読んだところ、自分でもよかったと思い
  ます。

【聞き手児童の感想発表(共同助言)】
  読み声発表が終ったら、それについて、他児童(聞き手たち)からの感
想発表を言わせます。友だちの音声表現を聴いて、よいところ、直すべきと
ころなどを指摘し合います。アラ探しやケチつけをしないことが大切です。
次回はさらにがんばろうとする意欲づけ、高め合いになるような感想発表の
コトバかけにします。
教師
●「友だちが工夫したところ・よかったところを探して、先にそれを話し合
  いましょう。みんなで認め合い、自信を持たせる言葉かけにしましょう。
●「友だちの読み声のよいところを発表しましょう。みなさんも、ここがだ
  めだった、あそこもだめだった、と言われたら、いい感じはしないでし
  ょう。本を読むのが嫌いになってしまうでしょう。よい点を探し出して、
  ほめてやりましょう。そうすると、本読みに自信がつくし、音読好きに
  なるでしょう」
児童
●「だれさんの読み声を聞くと、〜の様子・気持ち、事柄と事柄のつながり
  がよく分かる読み方になっていました」
●「さっきの読み方とうんと違って、〜のところが上手になっていました」
 「さっきもよかってけど、今度は更に工夫していて、ぐっとよくなってい
  ました」
●「きりんをごらん」は、「ごらん」を「見て、見て、見てちょうだい」と
  いう感じだ出ていて、とってもよい読み方になっていました」
●「こりゃあ、だれのゆるしをえて、わしの中庭ででねている」は、威張っ
  た感じで、見下ろした感じで読んでいて、とてもよかったです」
などの言葉かけがたくさんあるといいですね。

 下手な読み声の児童に対する言葉かけは、相手に恥をかかせない、相手
が向上する意欲を持つような気遣いが必要です。間違え読みをしても笑わな
い学級を作ることです。友だちの音声表現を聞いて、よいところたくさん探
しだせた子がすばらしい、と教えます。
  まず、褒めるところを探して、そこを指摘するようにします。よくない
ところは「ここを、もうちょっとこう読めていれば、もっとよくなると思う
よ。さっきの読み方もよかったが、こんな感じが出ればさらによくなると思
う」というような言葉かけの気遣いを言うようにします。
  他児童から「上手でした」とほめられた個所は、
教師が
●「よかったと褒められた文章個所、もう一度、みんなの前で読んでみまし
  ょう。」
●「はい、じょうずだったね。今の誰ちゃんの読み方を、みんなで読み調子
  をまねしてみましょう」
とさそいかけます。
  上手と言われた読み手児童に再度読ませ、あと読みや連れ読みで、全員
でその読み声(読み調子)を模倣させます。こうすると読み手はいっそう自
信を持つことでしょう。
  上手な読み声は全員で模倣して、それを繰り返し模倣させます。まねさ
せて自分のものにさせてしまうことです。身体に刷る込むまで繰り返しまね
読みをします。一級品は、まねさせるにつきます。下手な子も、全員で声を
そろえてまね読みを繰り返していると、そのどさくさにまぎれて、いつのま
にか下手な子も上手になってしまっています。



 
(3)発表直後の診断・評価のポイント



 よい読み声とは、どんな音声表現のことでしょうか。表現よみ発表をした
直後、学級児童たちはどんな診断・評価の言葉を用いて指摘し合ったらよい
のでしょうか。おおまかな診断・評価のポイントを次に書きます。べたなら
べで、未整理で、すみません。

【一般的な診断・評価のポイント】
●発音・発声がよかった。  
●へんな読み癖がなかった。  
●姿勢がよかった。   
●読み誤りがななった。つっかえてなかった。
●間が十分に取れている。区切りの間をちゃんとあけて読んでいる。
●イントネーション。声の大小。転調。などに気を使って読んでいた。
●人物の気持ち・場面の様子が声にのっかった読み声になっている。
●事柄と事柄の関係が聞いていてよく分かる音声表現になっている。
●作品のイメージが声となって浮かぶ音声表現になっている。
●読み方を工夫して読んでいた。
●あれこれと手探りの読み方ができるようになっていた。
●聞いていて、読み手が消えて、文章内容がすっと心に入ってくる音声表現
 になっている。
●聞いていて、あっというまに終わってしまう読み声になっていてよい。事
 柄や情景がすっと入ってきて、気持ちよく聞けて、もう終わったの、もっ
 と聞きたい、と思うような音声表現になっている。
●聞き手も、その作品が好きになり、自分も読みたくなる。
●聞いていて、分かりやすく、理解しやすい読み方になっている。
●場面がありありとイメージとして浮かぶ音声表現になっている。
●文章内容が音声に十分にのっかっている音声表現になっている。
●文章内容が理解できていて、身体まるごとで音声表現している。   
●身体表情がよい。読んでいる身体表情が豊かだ。
●読み手が、文章内容に合わせた顔の表情を作りながら、声に出していた。
●様子や気持ちを押し出そうと頑張っていた読み声になっている。
●作品世界の中に入り込んだ音声表現になっている。   
●音声表現することが楽しそう、快感、喜びを見出していた。  
●音声表現してるとき、恥ずかしさがとれ、何のためらいもなく、どかーん
 と、のびのびと表現している。
●他児童の音声表現についての感想意見が言えるようになった。
●音読の授業に楽しさを見出すようになっていた。
●他人の読み声を聞いて、自分の読み声を反省したり、意味内容の読み取り
 の違えを見出せるようになった。他児童の音声表現を聞いて解釈の違いに
 も気づけるようになった。
●音声表現することで、今まで気づかなかった解釈の深まりがもてるように
 なった。作品の味わいが実感できるようになった。
●他人の読みを聞いて、自分の読み声を修正し、より上手な読み声に修正し
 ていけるようになった。
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