説明文の表現よみ指導          2012・02・29記




 
説明文の教材分析のしかた(1)




  教師が教材文をどのように把握しているかによって、指導目標や授業展
開が変わってきます。本時目標や教師リードが規制されてきます。音声表現
のしかたも変わってきます。

  次に説明文の教材分析のしかたついて書きます。わたしが説明文を教材
分析するとしたら、こんな観点で分析するということについて書きます。
  下記は、説明文の教材分析のしかたの一般論です。説明文の音声表現の
教材分析のしかたについては、本章「説明文の語り口をさぐる」を参照して
ください。



      
 説明文の教材分析の観点



(1)児童が興味を持つ題材内容であるか。

 ・該当学年児童の年齢で興味を引きつける題材内容になっているか。児童
の興味関心や問題意識とズレはないか、題材内容が抽象的で難度が高くない
か、低くないか、などを調べます。
 ・児童に興味をもたせる題材内容であるかどうか。児童がよく知っている、
知りすぎている題材ではつまらない。よく知りすぎている題材は、児童は
興味を示しません。
 ・児童の生活実感から興味を引きつける題材であるか。既得の知識と結び
つけて興味を持って具体化できる題材内容であるか。


(2)冒頭文は児童の興味を引き出す書き方になっているか

 ・冒頭個所に児童の興味を引き出し、児童に疑問を持たせる仕掛けはある
か。たとえば、文章の冒頭部分に、児童への呼び掛け、問いかけ、興味喚起
の問題文などがあるのはよい書き方である。
 ・冒頭に児童の問題意識に訴える課題提示文があったり、質問文を置いて
問題意識を持たせたり、先を読みたいと興味に訴える書き方になっている文
章はよい。


(4)最後尾文まで児童の興味が持続できる書き方になっているか


 ・最後尾まで興味を引き付ける内容になっているか。たとえば、冒頭文が
児童の興味を引き、意表をつく文があって、後ろへ後ろへといざなっていく
書き方になっているか、を調べる。
 ・論の進め方、筋の運び方、その書かれ方が児童の興味を持続させる書き
方になっているか。
 ・児童が最後まで興味を持続させて読めるように、引っ張っていけるよう
な書かれ方になっているか。ごたごたしたり、同じことが長すぎたり、小見
出しがなかったりしていないか。写真や絵や図表や参考資料があると子ども
は興味を示す。


(3)児童に「おや、なんだ反射」が起こる書き方になっているか

 ・「おや、なんだ反射」とは、パブロフの条件反射学説にある言葉です。
児童に「おやっ」と思わせる書かれ方はよい文章です。「おや、なんだ」で
疑問を持たせ、「おや、なんだ。どうなんだろう」で考えを進めていき、
「そうなんだ。なるほど、なるほど」と自分で納得する、そのような、そう
した思考場面が設定されている文章はよい書かれ方だ。
 ・冒頭部分に筆者がこの問題を、なぜ取り上げたのか、従来まではどこに
問題点があるのか、そうした問題点に興味を持たせ、調べていこうとい意欲
をもたせる書かれ方になっているか、を調べる。


(4)子どもの科学的認識高めの書かれ方になっているか

 ・文章がごたごたしてなく、一読して筆者の伝えたいことがさっと分かる
ように書かれているか。分かりやすく読ませる書かれ方(語彙、構文、文
体)になっているか。
・「説明する、主張する」という科学的思考、見本となるような文章記述に
なっているか。
 ・「なるほど、物事を論理的に考えるとはこうすることなのだ。科学的に
思考するとはこういう手順や方法で進めればいいんだ」という典型的な書き
方になっているか。
 ・追及のしかた、追求の手順が子どもの科学的思考高めの見本となる、典
型的な文型・文章構成になっているか。
 ・該当学年の児童に見合った語句、表記、語法、記述の仕方になっている
か。高度、難解な語彙が使われてないか。
 ・写真、絵、図、表、グラフなどが添付されていて分かりやすい、ていね
な説明になっているか。参考資料(写真、絵、図、表、グラフなど)が添付
されているか。
 ・論運びに飛躍はないか。例のあげ方、論理展開に強引さや矛盾や誤りは
ないか。
 ・具体的な数字をあげて説明しているか。引用の出典がが明記されている
か。信頼性を高める工夫のある記述になっているか。


(5)子どもが自由課題をもち、情報発信していく内容になってるか

 ・児童の科学的認識を広げ、深める、文章内容となっているか。
 ・該当学年の発達段階にあった題材内容で、学習したあとで新たな興味関
心の新分野に火をつけ、新分野がひらかれる内容になっているか。新たな追
求に興味をもつ内容・書かれ方になっているか。
 ・読んだ後、教えられた、発見があった、驚きがあった、喜びがあったと
思わせる内容になっているか。
 ・読み終わった時、科学的な知識・認識が与えられ、児童のものの見方、
感じ方、考え方が広げられ、深められる内容になっているか。
 ・PISA型読解力を身につける題材や書かれ方になっているか。「情報の取
り出し」「解釈・理解」「熟考・判断」「意見表明・発信」に火をつけ、応
用できる学習内容になっているか。
 ・受け取るだけの読みとりでなく、児童が自ら発信していくのに火をつけ
る文章内容であるか。受け取り読みでなく、攻める読みとり能力に火をつけ
る記述内容になっているか。



      
 教師の題材研究の重要性


  題材とは、筆者がその文章で取り上げている対象(事柄)のことです。
教材文は筆者によって対象(事柄)が切り取られている一側面が書いてあり
ます。筆者の視点(認識)から、筆者の判断で選択され、解説(主張)され
ているデータ集積の構成物です。
  教材文の題材についてより深い知識を得ることで授業に自信と深みが生
まれます。教材文の題材について他の書物で調べてみましょう。専門書類を
読むなどで新しい知識を収集しましょう。教材文で捨象されているデータは
なにかも分かり、何が拾われ、何が捨てられ、どんなねらいで書いてある説
明文かが分かってきます。
  たとえば、「たんぽぽのちえ」(光村2上)では、たんぽぽの品種、花
冠、綿毛、花粉、果実、交雑、根の長さ、生命力の強さ、成長の様子などが
分かるでしょう。「さけが大きくなるまで」(教出2上)では、産卵地、産
卵床、孵化、捕食、放流、帰趨、ホッチャレ(産卵後に死んださけ)、成長
の様子などが分かるでしょう。教科書の説明文では、何が拾われて、何をね
らいにした説明文であるかが分かるでしょう。
  題材に関するほかの資料を多く集めて比較検討することで、同じ題材に
ついて違う視点から広い知識を持つことができます。筆者が題材の中から
データの何を選択して児童に語りかけているか、知らせているか、訴えてい
るか、が分かってきます。捨象されたデータ、資料から違う視点があること
も分かってきます。
  筆者は何を捨て、何を取り上げて、子ども達に何を知らせたかったのか、
が分かってきます。筆者の論理展開の妥当性を吟味することもできるように
なります。筆者の発想や表現意図や伝えたい熱き思いが書きぶり(全体構成
や文章記述の仕方・語えらび・文作り・言いぶり)にどのように表れ出てい
るか、他資料と比較することで客観的に分かってきます。

  最近の教科書教材には、障害者・老人福祉に関する教材文、新聞・放送
のメデアリテラシーに関する教材文、PISA型読解能力を身につける教材文な
どが多く採用されるようになってきています。いまの時代の社会的背景がそ
うした要請をしているのでしょう。
  障害者・老人の福祉教材では、障害者・老人の立場にたって考え、自分
はどう行動すべきか、を指導するようになっています。
  メデアリテラシー教材では、マスメデアの背後に送り手の立場からの独
自なデータ選び、組み立て方、編集加工があることを知らせています。マス
メデイアを単純に受け取る(読みとり)だけでなく、情報を批判的に受け取
る(読みとる)能力育ての指導をするようになっています。
  PISA型読解では、児童自身が課題をもち、必要な情報を見つけ出し、集
めた情報を組み立てて説明し、自分から意見表明を積極的に発信していく能
力を身につける指導をするようになっています。
  こうした教材文の指導では、教師はいっそう題材の関する広く深い知識
が必要とされています。児童自身が問題(課題)を見出し、資料を集め、組
み立て、自己発信していくには、教師が事前に書物、図鑑、資料集などを
収集し、それを紹介していく援助がとても重要となってきます。



        
学習指導計画案の作成

立案の観点

・題材に対する児童の興味関心の実態はどうか、文章にどう反応するかの予
想を立て、目標へせまるにはどのように授業を組み立てていくか、設計図を
考えます。
・児童の授業への興味関心と意欲をそそるにはどう授業を組み立てていくか、
児童の活動が活性化するにはどう授業を組み立てていくか、を考えます。
・どこの文章個所を、どんな指導意図をもって読ませたいか、そこでどんな
活動をするか、そこでどんな読みの能力をつけるか、そのためどんな指導技
術を使っていくか、を考えます。
・何が書いてあるかの読みとり、内容の読解だけの指導だけではいけない。
説明文をどのように読み解いていくかの方法・読み解き方、科学的な論理的
な認識の方法を知らせる指導こそが重要です。文章構成や書きぶり・言いぶ
りを学ぶことは科学的な認識のしかたを身につけさせることになります。そ
れを使って自己発信・文章の表現する方法が身につくような学習を組織しま
す。
・授業の導入・山場・終末をどうするか、を考える。
・おさえる中心語句、難語句、文法事項はなにか、を考える。これらを、い
つ、どこで、押さえ、指導していくかを考えます。
・この重要語句・中心文をどう戦略として取り扱い、目標に迫っていくか、
を考えます。

立案の形式

 学習指導計画案の形式には、学校独自のもの、地域国語研究会独自のもの、
サークル独自のもの、いろいろありましょう。次は一般的な形式です。

題材と子ども達の実態
全体目標
全体の指導計画
本時目標
本時の最適な学習活動の選択と、組み立て
本時の展開例
発展学習
調べ読みや資料の収集
自分からの情報発信

授業報告
教師の反省と考察
第14章のトップへ戻る