説明文の表現よみ指導 2012・02・29記 文章の種類と音声表現の相違 文学的文章と説明的文章のジャンル A,文学的文章のジャンル B、説明的文章のジャンル (主として創作の表現) (主として事物・事柄の表現) 1、物語 1、記録文 2、童話 2、日記文 3、伝記 3、説明書 4、伝説 4、報告文 5、神話 5、解説文 6、民話 6、論説文 7、小説 7、評論文 8、脚本 8、議論文 9、随筆 9、報道文 10、紀行文 10、掲示書 11、詩 11、宣誓書 12、俳句 12、案内書 13、短歌 13、実験観察文 14、川柳 14、広告文 15、漢詩 15、感想文 16、意見文 17、ノンフィクション 18、告知文(通知・お知らせ) 19、法律文 20、学術論文 21、紹介文 22、記録文(会議・試合などの経過記録) 23、旅行記 24、手紙文 25、ニュース 26、天気予報 27、新聞記事 28、エッセイ 一般的な説明的文章のジャンル分け 本章は、「説明文の表現よみ指導」がテーマです。以下はすべて説明的 文章の表現よみ指導についてのみ書いていくことにします。文学的文章の表 現よみ指導については除外します。ほかの章を参照してください。 上記に説明的文章の28種類をべた並べで記述しています。これを以下 で二つにグループ分けしてみました。28種類を二つのグループに分け、そ れぞれのジャンル別の語り口(音声表現のしかた)について書いていくこと にします。 さらに下段には、学校教育(特に小学校、中学校)の教科書に多く採用 されている説明的文章のジャンルを取り上げています。義務教育学校の教科 書には、28種類のジャンルの説明的文章がすべて採用されているわけでは ありません。義務教育学校でもっとも多く採用されている説明的文章のジャ ンルがあります。これらを二つのグループに区分けして、それぞれのジャン ル別の語り口(音声表現のしかた)について書いていくことにします。 本稿では、義務学校教育で多く採用されている説明的文章を「教科書の 説明文」と名づけ、28種類すべての説明的文章を「一般的な説明的文章」 と名づけて記述しています。これは便宜的な仮の名づけにしかすぎません。 一般的な説明的文章のジャンル分け (ア)情報告知型の文章 (イ)意見伝達型の文章 ニュース 意見文 天気予報 主張文 お知らせ 論説文 報道文 議論文 新聞記事 評論文 報告文 新聞の社説 取扱説明書 レポート マニュアル本・手引書 感想文 案内書 旅行記 解説文 随筆 実験・観察記録文 手紙文 公文書 ノンフィクション 法律文 教養書 学術論文 一般的な説明的文章のジャンル別の語り口 (ア)情報告知型の音声表現のしかた 情報告知型の文章とは、自然・人間・社会の事物、事象について解説して いる文章です。文章内容は、どちらかというと客観性が強い内容が多いと言 えます。 情報告知型の文章の音声表現のしかたは、読み手の主観的見解や私的感情 を抑え、情報内容を客観的に第三者的立場から聞き手に伝えるだけの音声表 現にします。書かれている事柄(事象、事件、状況)を、外にポンとそのま ま投げ出すように読みます。文章内容への読み手の私的な感情反応はできる だけ抑えて、聞き手の自由な判断にまかせるようにします。事柄・事実を客 観的に淡々と伝えるだけの音声表現にします。 情報告知型文章には、それぞれのジャンルに独自の文章特性があります。 その文章特性に応じた音声表現の仕方を書きます。 ニュース(読み手の感情を捨て、私情と距離をおいて、文字を音声に変 えるだけにする。冷静に、感情の起伏なく、中立を保って、 文章内容を正確に、分かりやすく伝えるだけの音声表現にす る) 天気予報(分かりやすく伝えることが第一である。話し手の思いを少々 こめたり、少々親しみをこめたりは許される) お知らせ(事柄を正確に分かりやすく伝えることが第一である) 報道文(記事内容を全面的に受け取って客観的に音声表現する。記事内容 に読み手の感想意見を加味して音声表現することもあってよい。 伝えてる場面や目的によって異なる) 新聞記事(記事内容(いつ・どこで・だれが・なぜ・どうして・どうなっ た)が聞き手に分かりやすく伝わることに集中して音声表現す る) 報告文(文章内容が分かりやすく伝わることに気をつかって音声表現す る) 取扱説明書(機器の取り扱い方、操作の手順、メンテナンスなどが分かり やすく伝わるように音声表現する。区切りで間をあけ、多少 ゆっくり気味がよい) マニュアル本・手引書(取扱説明書と同じ) 案内書(何の案内かを先ず明確に言う。いつ、どこに集合、日程、持ち物、 申込締切、参加不参加などを区分けして、各区分けごとに間をと って音声表現する。メモをとりやすいようにゆっくりと、ときに 繰り返しを入れたりして音声表現するもよい) 実験・観察記録文(実験観察の手順、経過報告、考察が明確に伝わるよう に区切って音声表現する) 報告文(文章内容が分かりやすく伝わることに気をつかって音声表現す る) 解説文(報告文と同じ) 公文書(報告文と同じ) 法律文(報告文と同じ) (イ)意見伝達型の音声表現のしかた 意見伝達型の文章とは、自然・人間・社会について筆者の個人的見解を主 張している文章です。文章内容は、どちらかというと筆者の主観性が強い内 容が多いと言えます。 意見伝達型の文章の音声表現のしかたは、筆者の主観的な伝達意図を論理 的説得的に伝える口調で音声表現します。 筆者の考えを聞き手(聴衆)に、分かりやすく伝えることを第一に音声表 現します。聞き手(聴衆)の説得に気を使って音声表現します。 筆者に最初に存在するのは、読者に伝えたい事柄(主題、主張点)です。 伝えたい熱い思いが文体(語り口)に表れています。筆者の伝えたい思いが 文章の全体構成や語句の選択や書きぶりに表れています。筆者が読者に伝え たい強い思いの息づかいや呼吸を、読み手は筆者の伝えたい意図や熱い思い、 その筆者の声・肉声・息づかいを、筆者になり代わって、読み手の声で音声 表現していきます。 個々のジャンルには、文章特性があります。下記にそれぞれのジャンルに 応じた音声表現の特徴を簡単に書いています。 意見文(筆者の立場に立って、筆者の意思、意図、感情をわがものとして 音声表現する。筆者の論理展開(文脈・筋道)を正確に伝え、客 観的に冷静に淡々と音声表現する。筆者の思い(発想、心情)に よりそい、共感しつつ音声表現することがまず要求される。読み 手の感情評価的態度はそのあとにうわのせすることも許される) 主張文(意見文と同じ) 論説文(意見文と同じ) 議論文(意見文と同じ) 評論文(意見文と同じ) 新聞の社説(意見文と同じ) レポート(意見文と同じ) ノンフィクション(意見文と同じ) 感想文(筆者の論理展開を正確の伝えることは第一だが、読み手(聞き 手)と感動を共有したり、気持ちを交わらせたりに気を使っ て音声表現するゆるやかさもある。) 旅行記(感想文と同じ) 日記(独白、告白する音調。今日のことを思い起こす音調。反省する音調 などある) 随筆(意見文と同じ) 手紙文(差出人の心情を筋道づけて吐露する口調で音声表現する受取 人に話しかけるつもりで音声表現する。 (差出人の思い・気持ちが表れる口調で音声表現する。相手への通 知、お願い、要求、頼み事などにより語り方が違ってくる。) 教養書(意見文と同じ) 学術論文(意見文と同じ) (注記) 「情報告知型」と「意見伝達型」とは相対的な違いにしか過ぎません。両 者は画然とは区分けできないところもあります。たとえば、旅行記や手紙文 やルポルタージュは内容によって送り手の全くの個人的な主観内容の情報告 知型文章もあれば、社会的な事柄・事象を伝えてる客観内容が強い知識伝達 型文章もあります。 ○意見伝達型の音声表現の特性 意見伝達型文章は、筆者の主観的意図が強く押し出されている主張(議論、 論争)型の文章です。 筆者が言いたいこと、主張したいこと、訴えたいことを、読み手が筆者 になり代わって、筆者になったつもりで音声表現します。読み手は、筆者と 合体し、筆者と同じ考え・思いになって音声表現していきます。筆者の思想 (考え方・見方)に対する読み手の主観的な感想意見は、原則としてさしは さまないで、控えたままにして音声表現します。 ・筆者の主要な主張点を明確に伝えることに力点をおいて音声表現します。 それは読み手が筆者と同じ立場に立つことで可能になります。筆者の伝えた い・訴えたい内容とその思いの強さが高まることで、音声表現の力点・強い アクセントが自然と加わるようになってきます。筆者と読み手とは一体化し、 あるときは冷静に、あるときは語意を強めて、論点の主要な個所に力点を置 いて音声表現していくようにします。 ・筆者が読者に訴えたいこと、主張したいことを、読み手は筆者と同じ思 い・気持ちになって、読者を引き付けるための音声表情の工夫をしながら音 声表現していくようにします。つまり、筆者がどのようなことを読者に伝え たいかがはっきりと分かるように、主張の論点を明確にし、区切りの間をと り、論理的力点やアクセントをおいて音声表現していきます。説明文では筆 者が読者に訴えている強調(強弱変化、遅速変化、切断、)や力点のメリハ リづけが多用されるので、そこに注目して音声表現していくとよいでしょう。 教科書の説明文のジャンル分け 説明的文章と説明文 義務教育学校の現場では、「説明的文章」は通称「説明文」と簡略して 呼ばれ、使用されています。学校現場では、長ったらしい「説明的文章」は 使用しません。種々の説明的文章をすべて含めて、簡単に「説明文」と呼んで います。以下では「説明文」の用語を使用して記述していくことにします。 なお、教育現場では、通常「文学的文章」は使用せず、「物語文・物 語・詩・俳句・短歌・漢詩」などの個別ジャンルで呼んでいます。長った らしい「文学的文章」は日常は使用していません。個別ジャンルの呼称で使 用しています。それにならって本稿では、総称する場合は「文学的文章」を 使用していまが、それ以外は個別ジャンルで使用しています。 小中学校の教科書にある説明文には、自然観察記録文、実験観察記録文、 解説文、報道文、新聞記事、意見文、感想文、主張文、評論文、議論文、旅 行記、随筆などが多く掲載されています。現在の小中学校の国語教科書にあ る説明文を分類すると、下記の(ア)(イ)(ウ)(エ)四つに区分けでき ます。 (ア)時間系列型の文章 観察記録したことを時間系列・時間的継起の順序で書いてある。 例 「たんぽぽのちえ」(光村2上) 「さけが大きくなるまで」(教出2上) 「どうぶつの赤ちゃん」(光村1下) (イ)説明・解説型の文章 ある事物・事柄について、それがどんな性質、特質があるかが書 いてある。 例「さんごの海の生きものたち」(光村2上) 「すがたをかえる大豆(光村3下) 「はたらくじどう車」(教出1下) 「おにごっこ」(学図1下) 「ものの名まえ」(光村1上) 「じどう車くらべ」(光村1上) 「道具)(大書2下) 「動物たちのしぐさ」(大書3上) 「くらしの中の和と洋」(東書4下) 「平和のとりでを築く」(光村6下) 「千年の釘にいどむ」(光村5上) 「なぜおばけは夜に出る」(大書5上) (ウ)仮説・検証型の文章 問題提起文があり、それの実験観察をした事柄を時間の順序で書い てある。 例「ありの行列」(光村3上) 「花を見つける手がかり」(教出4上) (エ)議論・主張型の文章 筆者の個人的な意見・主張を読者に説得するように書き述べている。 議論の筋道を追いながら論理的に書いている。 例「エネルギー消費社会」(6下) 「人とものとの付き合い方」(光村5上) 「花を食べる」(大書5上) 教科書の説明文のジャンル別の語り口 上記(ア)(イ)(ウ)(エ)別の音声表現のしかたを書きます。共通 するところ大であることは言うまでもありませんが、ここでは本稿の目的で ある相違を際立てて以下に書くことにします。 (ア)時間的系列型の音声表現のしかた ◎時間の経過のひとまり個所で区切って、そこで間をあけて、時系列経過の 変化がわかるように音声表現します。 ◎時間系列の変化、その構成、文章の骨組みが分かるように音声表現します。 (イ)説明・解説型の音声表現のしかた ◎「何について、どのように、どうである」が明確に伝わるように音声表現 します。 ◎事柄・事象が聞き手に分かりやすく伝わる工夫をしながら音声表現します。 ◎内容の分かりにくい個所・理解しにくい、込み入ってる内容個所は、ゆっ くりと、ていねいに、かんでふくめるように音声表現します。 ◎「整理まとめと、その具体例」個所、二つの区切りと相互連関が分かるよ うに音声表現する。 (ウ)仮説・検証型の音声表現のしかた ◎問題提示個所は問いかけてる、質問してるように文末を昇調にして音声表 現します。 ◎「仮説個所ーその検証過程の順序、まとめ結論」を明確に区分けして音声 表現する。新たな「仮説個所」、その「検証過程の順序、その結論」の組 み立てが明確に伝わるように音声表現します。 (エ)議論・主張型の音声表現のしかた ◎筆者が強調して主張してる個所、注目させてる主張点・強調点は、際立て て音声 表現します。 ◎聞き手がどう了解してるか推測し、聞き手のうなずき・あいづち反応を推 測しつつ音声表現が変えられたらすばらしい。 |
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