説明文の表現よみ指導              2012・02・29記




      
説明文読解における四段階





  説明文の読解には、四つの読みとり段階があると考えられます。

   ・「内容を読む」段階
   ・「形式を読む」段階
   ・「筆者を読む」段階
   ・「自分を読む」段階


  この四つの段階は、かつて、どこかで、わたしは読んだことがあり、わ
たしが初めて主張していることではありません。四つの段階名は多分上記の
ようだったと記憶していますが、他はどんなことが書いてあったか、すべて
忘れてしまっています。本稿では、わたしなりの言葉で・わたしなりの考え
方で四つの読みとり段階(レベル)について書いていくことにします。



       
「内容を読む」段階(レベル)


  この読みとり段階は、教材文に何が書いてあるか、書いてある事柄を正
確に読み取ることに重点をおいた段階です。どんなことが書いてあるか、書
いてある事柄の中身を読み取ることに主なねらいをおいた段階です。
  この「内容を読む」段階の読みとりでは、次のような指導内容が多いと
言えましょう。
  まず、新出漢字の読み書き指導、国語辞典を利用しての難語句調べ、難
語句について全員話し合いなどです。漢字が読めて、語句の意味が分からな
ければ何事もスタートできません。
  次に、すらすら音読できるようにバラバラ読みをさせたり、個人読みの
音読発表をさせたりします。読めない漢字や語句はないか、つかえないです
らすら読めるかを調べます。単語が読めて、フレーズのまとまりとして読め
れば、ごく初期段階の指導はクリアーしているということになります。
 それから、内容の読み取りの話し合い学習に入ります。書かれている文章
内容を読みとる指導です。三読法では、指導の実際では、教師の発問に導か
れて児童が答えていく一問一答式の授業が多くみられます。一読法では、児
童各自が書きこみしたメモをもとに全児童の共同討議で読み深めていく授業
が多くみられます。

  この段階の説明文指導では、意味内容のまとまり(大きな段落・小さな
段落)ごとに分けたり、まとまりごとの要約をしたりします。何が書いてあ
るか、要点のまとめを話し合います。難語句を分かりやすく言いかえたり、
他の具体例で説明を広げたりします。重要語句(キーワード、キーセンテン
ス)を指摘して具体化したり、指示語(こそあど)は何を指しているかの話
し合ったりします。また、接続語の順接、逆接などの指導もします。
  全文要約の話し合いもします。筆者が一番いいたいことは何か、何を言
おうとしているか、全文章の要旨や主題を読みとる話し合いもします。
  これらの指導は、書かれている内容を読みとることに最大の重点をおい
ている指導例です。多くの説明文指導は、内容が読みとれれば、それで十分、
お役御免、ここまでで終わりという指導が多くみられます。意味内容だけ読
みとれれば、お役御免で、それで御用済み、という指導です。
  ここの段階の指導は、理科や社会科の授業と同じだと言えます。理科や
社会科の授業で教科書を読まることがありますが、ここでは書かれている事
柄が読みとれればお役御免なわけです、それで終りです。他教科での教科書
読ませ指導では、書いてある内容が読みとれれば、それで終わりということ
になります。


       
「形式を読む」段階(レベル)


  理科や社会科は内容教科と言われています。他教科で教科書や参考書を
音読する場合は、内容の読み取り(伝達)が主目的となります。
  国語科は違います。国語科は技能教科と言われています。読みとりの技
能(読みとりの仕方・テクニック・わざ)を身につけることに主目的があり
ます。何が書いてあるか、その意味内容の読み取りに到達する過程の手立て、
読みとり方、読み取りの方法や技能を身につけることにねらいあります。書
いてある事柄を読みとるだけでなく、文章形式をおさえて、その文章形式か
ら内容を読みとる方法を身につけさせるところに国語科が他教科とちがう独
自の指導があります。他教科は意味内容を把握すればそれで終りです。国語
科は内容の把握に至るまでのプロセス(手順、方法、テクニック、わざ)を
身につけさせることに目的があります。国語科は、意味内容の把握にたどり
着くまでの読みとりの仕方、途中の手立てや手続きや手順を教える教科です。

  下記は国語科独自の文章形式からの読み取り指導の内容です。文章形式
をおさえた指導は国語科プロパーの指導内容と言えます。これら指導は、他
教科(社会科、理科)の教科書読ませ指導(図書館での自由調べにおける読
みとり、社会見学で得たパンフレットの読みとり、を含めて)では見られな
い国語科独自の指導内容と言えましょう。

(ア)段落分け
  (形式段落分け、意味段落分け、大段落分け、各段落に番号をつける)

(イ)段落構成
  (問題文と解答文。課題提示個所とデータ個所と理由づけ個所とまとめ
   整理個所と意見・主張個所の指摘。実験観察の経過手順とその結果と
   考察)

(ウ)文章構成
  (「始め・中・終わり」。「序論・本論・結論」。課題提示・論証・途
   中のまとめと最後のまとめ。全体の文章構成の図表作成)

(エ)要約
  (段落ごとの要約、小見出しづけ。大段落ごとの小見出しづけ。全体の
  要約。)

(オ)重要語句
  (キーセンテンス。キーワード。重要な論理語句や中心文)

(カ)段落と段落の相互関係
  (全体の文章構成図や視覚図(図解、表)。段落ごとの要約や小見出し
  づけ。段落どうしの相互関係その展開の仕方。新しい起こし段落・内容
  の掘りさげ段落とまとめ段落。論理展開の全体構造図・整合性はどうな
  ってるか。)

(キ)筆者の表現意図
  (筆者が読者に訴えたかったこと・伝えたかったことは何か。筆者の表
  現意図や発想が文章形式のどこに、どのようの書き表されているか。書
  きぶりにどのように見出されるか。筆者になって表現よみするとしたら
  の音声表情をどうつけるか・記号づけするか)

(ク)指示語
  (こそあど言葉は、何を指しているか)

(ケ)論理的なつなぎ語
  (「第一に・第二に・第三に」「はじめに・つぎに・そして、それか
  ら・さいごに」さて(話題転換)。つまり(言い換え)。このように 
  (まとめ整理)。そのわけは(理由づけ)。ちがいは(対比整理)。く
   らべると(比較)。なぜなら(理由づけ)。…だからです(結果)な
   どの指導。
(コ)接続語
  接続語(接続詞)は、それをはさむ前後の文・文章の論理的関係を示す。
  しかし・だが・けれど(逆接)。また・さらに・そのうえ(添加)。た
 とえば(例示、具体例で説明付加)。など前後の論理関係はどうか。

(サ)その他
  (図表の読みとりと本文との関連づけ。修飾語と被修飾語がどう働いて
   いるかと骨格文の指摘、仮定や比較で考える効果、など)



     
「筆者を読む」指導段階(レベル)


 説明文の読みとりは「何が書かれているか」(内容)の理解だけではいけ
ません。「何(対象)が、どのように認識され、どのように文章が組み立て
られ、どのような手順・順序で書いているか。最後に筆者は問題(課題提
示)をどのように結論づけ、読者に何を訴え、どうしてほしいのか。」を読
みとることが重要です。つまり、次のような事項が、文章のどこに、どう論
理展開しているか、どう結論づけられ、世の中をどう変えようとしているか、
読者の考え方を変えようとしているか、その個所を指摘しつつ読みとること
が重要です。

・ここは、序論、本論、結論の個所である。
・ここは問題提起で、ここは問題解決の論理展開個所で、ここは結論である。
・筆者はなぜこんな問題提起をしているのか。なるほど、そう言われると、
 自分もこの問題提起には同感だ。よし、同じ土俵に立って読み進めていく
 ことにしよう。
・ここはデータ(現象例、事実の報告)個所である。つまり根拠である。 
・これらデータ(具体例)を根拠として、こう理由づけている。ここは筆者
 のデータ(根拠、証拠)の整理まとめ個所であり、こう束ねて整理し、理
 由づけて、結論へと導いている。
・ここは筆者の個人的な感想・意見・主張である。ここは筆者の主観的な意
 見・主張である。ここは筆者の視点からの個人的な意見の開陳である。
・ここは仮説提示の個所で、ここは仮説検証過程の個所である。
・ここは筆者の推測・推理の言い方である。個人的な予想・推測の文章個所
 である。


  説明文の読みとりでは、単に意味内容を知るだけではいけません。筆者
が「対象(問題)を、どのような順序で思考し組み立てて論じているか、ど
のように追及しているか、どのように結論づけているか。どのような手順で
記述しているか。」を読みとることが大切です。
  つまり、論述の仕方を読みとることです。科学的な認識の仕方・思考方
法とはこういうふうにするものだ、かがくてきな認識手順や方法を学ぶこと
も大切です。説明するとはこういう書き方ですればいいのか、観察記録文・
主張文・論証文はそれぞれこういうふうに書けばいいのか、こういう手順で、
こんな書きぶりで書けばいいのか、科学的な認識方法とはこういう手立てで
思考し論述していけばいいのか、などを知ることも重要な学習内容です。
  物事はこういうふうに考えていけばいいんだな、説明の順序や追及の仕
方はこういうふうにやればいいんだな、論の運び方はこういうふうにやると
いいんだな、データの並べ方やつなげ方やまとめ方はこういうふうに書いて
いけばいいんだな、ということを学ぶことが重要です。

  説明文を学習することで、
・「なるほど、そうか。これまでちっとも知らなかった。考えもしなかった
 ことだ。よいことを教えられた、よい勉強になったぞ。これは驚きだ。感
 動を覚えた」という読後感を持つことも大切です。
・「へえ、そうなの。○○っておもしろいな。すごいことなんだな。」  
 「○○に興味をもったぞ。もっと知りたくなった、もっと調べてみよ  
  う。」
・「論理展開を図解や表に整理すると一目で見られるんだな。これはよい方
  法だ」
・「こんな書き方の工夫がすばらしい。」「書き方のわざがここにある。」
・「なぜ、こんな書き方をしているのか。へんだな、意味がよく読みとれな
  いな。他の本で調べてみよう。そうか、こういう意味内容だったんだ」
など、科学的認識方法や記述方法、論理展開の巧みさを発見すること、疑問
の確かめをしたりすることも大切です。

  説明文は、筆者が読者に伝達したいこと・訴えたいことを、読者に向か
って、納得してもらうために書いています。そのために筆者は効果的な表現
の仕方をいろいろと工夫して書いています。読者の疑問や要求を先取りしつ
つ、それに見合ったことば表現を工夫して書いています。
  説明文を読むときは、筆者から読者への伝達意図が、文章のどの個所に、
どんな語句を使って、どんなフレーズの連なりの中で、どんな言い方(文章
表現、ことばの使い方)になっているかを調べます。筆者は、どんなデータ
を選択して、どんな論理展開で、どう結論づけているか。読者をどこに導い
ていこうとしているか。そのためどんな記述上の工夫をしているか。効果的
に伝えるための書きぶりの工夫に気づきます。こうした方法で読み解いてい
きます。 
  筆者が読者に納得してもらうため、文章表現のどこに、どんな工夫をし
ているか、納得させるための文章上の仕掛けがどこにどう工夫されているか、
を調べます。筆者は、なぜこういう書き方をしているか、そのからくり・仕
掛けを調べます。論運びのからくりが分かれば、筆者が読者に訴えかけよう
とした意図や発想が容易に理解できるようになります。
  説明されている事柄のおもしろさに引きこまれて集中して読んでいると
きは、筆者を意識して読んでいることはあまりありません。しかし、読みつ
つある意識のどこかには筆者はいつも存在しているのが通常の読みの心理で
す。文章冒頭の問題提示文や最後尾の結論部分や、文章の途中途中の書きぶ
りには筆者があきらかに露出してきています。説明文を読み解くときには、
書かれている客観(事柄)世界の中に没頭させられているときでも、筆者が
書いたものとして文章を客観的に対象化して、筆者を意識して読みといてい
っているはずです。
  筆者のものの見方・考え方・感じ方に新しい刺激を覚え、感動し、この
筆者はどんな人だろう、どんな著書や論文をこれまで書いてきているのだろ
う、と新たな興味を抱くこともありましょう。筆者が書いた他の論文や著書
を探し求めて読み出すこともあるでしょう。
  筆者がなぜ、こういう問題提起をしているのか、そのウラに隠された筆
者の意図(ものの考え方、思想)を見出すことも大切です。ウラに含ませて
主張したかった事柄は何か、文章の背後にあるもの、一体この筆者は何故に
これを言わなければならなかったか、どう生きている場所で、どういうこと
に引っかかってこれを主張しているのか、筆者の前提にあることが分かって
くると、説明文の内容理解と「筆者を知る」ことがいっそう深くなります。
筆者の意見に賛成、反対と、批評的・批判的に読みとることが重要です。

  このように「筆者を読む」段階は、筆者から「科学的な認識の方法を学
ぶ」ことと「筆者の論述の骨を洗うような書きぶり分析」をすることです。



      
「自分を読む」指導段階(レベル)


 筆者の文章内容を誤りなく正しく受け取ることはとても大切です。しかし、
説明文の読みはそこにとどまりません。筆者の説明をうのみにせず、批判的
に読むことも大切です。読み手の体験や知識と結びつけて文章を具体化しな
がら読み進めることが大切です。文章内容を正確に受け止めることはもちろ
ん、文章内容に批評的に反応していくこともこれまた重要なことです。
 文章の内容把握だけに終始する読解だけでなく、評価的、批判的に読みと
る能力を育てることも大切です。筆者に話しかける、文章の一文一文に返事
をする、対話をする、疑問や感想意見をもつ、筆者に質問をするなど、問題
意識をもって読み進め、筆者の言いぶりや記述表現を吟味しつつ読んでいく
ことが重要です。

  「なるほど、そうか、いいことを学んだぞ。ここは疑問・問題だぞ、こ
れについて筆者に質問したいな。ぼくの考えはちょっと違うな。筆者に都合
のいいデータだけ並べているぞ。筆者が書いてないこんなデータ(他の考え
方)もあるぞ。言葉で切り取られてないデータもあるぞ。説明がたりない・
よく理解できない部分もあるな。」
  また「筆者の主張点は、おおいに勉強になった、賢くなった、ありがと
う。この点について自分はどうもしっくりこないな。ここは理屈では理解で
きるがどうも気持ちで腑に落ちない。ここは筆者に質問したいな。ここは他
の資料で調べる必要があるな。これで論拠づけているデータは十分か、故意
に落としてるデータはないか。反対論者の意見と対比しながら主張してほし
かったな。一方的な論理・すりかえ・ごまかしがありそうだな。」。
  筆者はこんな立場から問題を設定し、論拠を出し、理由づけて、こう結
論づけている。しかし、まったく反対の立場からの立論も考えられるぞ。こ
の筆者は、論拠の取り出し方と構成のしかたに片寄がある。この筆者は自分
に都合のよい論拠しか出していない。こんな立場から、こんな論拠を出して、
こう理由づけると、まったく反対の立場の結論づけになるはずだ。など。

  このように応答的に読み取ることがとても大切です。筆者を絶対視せず、
読み手の感想意見を投げ入れつつ、筆者の語りかけに応答(対話・返事)し
ながら批判的(賛同、疑問、質問、異見、反論を含む)に読み進めることが
重要です。

  学習指導要領では長年、説明文の読解指導では「事実と意見を区別して
読む」という指導内容が書かれてきています。新学習指導要領(平20年版)
にも「中心となる語や文をとらえて、段落相互の関係や事実と感想意見など
との関係を考え、文章を読むこと」(第三、四学年)と書かれています。 
 「事実」というと「真実」と勘違いされがちです。「事実」とは、ほんと
うは筆者が「事象、現象」の中からある意図でもって選択し価値づけたデー
タです。筆者が自分の主張を読者に説得するために事象・現象の中から切り
取り構成した、筆者の主観的な判断の一側面のデータでしかありません。
「事実」ではなく、「データ」と書くべきものでしょう。筆者の主観が、そ
れらデータを証拠や論拠として組み立て上げたものです。筆者の主観的判断
で選択されたデータをならべて構成し、筆者が主張したい結論の妥当性へと
導いているのです。論者が違ってくるとデータの選択や並べ方や組み合わせ
方も違ってきて、それで結論も違ってくることは大いにありうることです。

  説明文の指導では、データの吟味をする指導が重要です。筆者の論理展
開の妥当性を検証するためデータの信頼性や、十分なデータをあげて論証し
ているか、自分に都合のいいデータだけをあげて、わざと脱落させている重
要なデータはないか、論理のごまかし、すりかえ、飛躍はないかなど、デー
タの吟味をすることはとても大切です。
  しかし現行教科書の説明文教材は検定教科書というハードルをくぐって
いるためお行儀のよい上品な文章内容と記述の仕方になっており、児童が
データ吟味をするに耐える教材文の記述にはなっていなせん。データを吟味
する指導目標のある教材文がないのはとても残念なことです。最近はメデア
リテラシー教育が重要視され、送信されてくるメデア(文章、映像など)を
批判的に読み説く教育が叫ばれています。大いに歓迎すべきことです。

  こうして「自分を読む」段階は、PISA読解を含むことになります。文章
を読んで、自分で問題や課題をもちます、必要な情報を取り出す必要にせま
られます、自ら情報を探して調べ読みをしたり、取材(インタビュー)をし
たりします、自らの既有知識や経験で情報の価値評価をします、収集した情
報を主体的に判断し取捨選択して自己発信(口頭発表・文章発表)するプレ
ゼンをします。こうして自分からの主張を発信していく能力を身につけてい
きます。
  芦田恵之助は「読むとは自己を読むことだ。聴くとは自己を聴くこと
だ」と言いました。要するに読む(聴く)とは、自分の思想感情を確立し自
信をもって行動する能力、自ら考え問題を解決し自立して生きる能力を身に
つけることが重要なのです。
  説明文の読みとり授業に表現よみを取り入れると、音声表現を繰り返し
ていく中で説明文の文章構成や進め方、書きぶり、言葉の使い方、文・文章
の組み立てなどがしらずしらずのうちに身体に沈殿し刷り込まれます。表現
よみ練習を繰り返す中で、こういう思考形式(文章構成の進め方や文章記述
の展開の仕方)で書けばいいんだな、説明・主張する文章はこういう言葉を
使って、こういう組み立てや全体記述をしていけばいいんだな、ということ
が知らず知らずのうちに身につくようになります。


 
【注記】

  四つの段階とは、説明文の読みとりにおける水準(側面、レベル)のこ
とです。説明文読み深まりの水準であり、説明文を読みすすめていくときに
見えてくる理解の深化の度合い、自分のものにしていく認識の深化の度合い
の段階(レベル、水準)のことです。
  これら四つの段階は、この順序の指導過程で授業を進めていくというこ
とではありません。授業展開・指導過程がこの順番ということでは全くあり
ません。
  たとえば四読法で、第1次で全文の「内容を読む」指導、第2次で全文
の「形式を読む」指導、第3次で「筆者を読む」指導、第4次で「自分を読
む」指導という順序で授業をすすめていくということではありません。
  一読総合法のように第1時から第2時、第3時、第4時へと冒頭から順
次に精読一本で読み進めていき、四つの段階(水準、側面)を螺旋状に行き
つ戻りつしながら弁証法的に読み深めていく一読総合法の指導過程の授業も
あります。わたしは現場教師だったときは、児童言語研究会に所属し、一読
総合法の指導過程でこれら四つを指導していました。
  はじめに段落ごとに番号をつけ、段落を順に追いながら「形式を読む」
指導を中心にして「内容を読む」「筆者を読む」「自分を読む」指導を含み
重ねて読み深めていく指導過程の授業もあるでしょう。

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