音読授業を創る そのA面とB面と        2011・10・01記




 
  音読は上手だが、
     内容理解が伴わない子がいるが…




 
質問

  音読は上手にできるが、内容理解が伴わない子がいるが、教師はどんな
働きかけをしたらよいでしょうか。
  どんなに上手に音読ができたって、中味が分からなけりゃ話しにならぬ、
と思うのですが、どうなんでしょうか。
 
 

 
回答

  「音読が上手で、内容理解が伴わない」とは、どういうことなのでしょ
う。内容理解ができている程度が、どの程度なんでしょうか。一般論で言
えば、音読が上手で、内容理解ができていない子は、いないはずです。もし、
いたとしたら、上手な音読をしている兄や姉が音読練習をしているそばにい
て、それを耳にしていて、お経のように暗唱してしまってる子でしょう。また
は、意味内容も考えずに、たがひたすらスラスラと、つっかえないでお経読
みしている子を「音読上手」と呼んでいるのではないでしょうか。そうとし
か、考えられません。

  音読が上手ということは、文章内容が理解できているということですね。
音読上手ということは、
 ・文字が読めているということ、
 ・漢字が読めているということ、
 ・文章の意味のかたまりとして読めているということ、
 ・意味内容のまとまりごとで区切って読めていているということ、
 ・さらに文章全体がメリハリよく音声表現しているということ
です。音読上手なのは、内容が理解できている証拠です。
  質問者は、どの程度までの内容理解を求めているのかは分かりませんが、
必要最小限の内容理解はできているはずです。高度な鑑賞能力、批評能力、
批判構想能力まで求めているなら、「内容理解が伴わない」と言える児童も
いるでしょう、義務教育レベルでは。

  「音読が上手で内容理解が伴わない」というとき、教師の読みとり内容
と、音読上手な子の読みとり内容が違っていることが考えられます。教師が
求めている答えを、音読上手な子が教師と同じ内容で答えなかった、という
場合です。
  だからといって、「内容理解が伴なっていない」とはいえないでしょう。
教師が求めているとおりに答えなかったからといって、内容理解ができてい
ないということにはならないでしょう。

  ここで問題になるのは、内容理解のありようがどうであるか、です。内
容理解には多様さがあります。ひとり一人のセンスによって多様な読みとり
方があります。同じ文学作品でも、同じ説明文でも、それについて感想文を
書けば、各児童がそれぞれに違った内容の感想文となります。君はそう読み
とったが、ぼくは違った読みとり方をしたという感想は普通にあることです。

 音読が上手で内容理解ができてない子という場合、こんな例もあるでしょ
う。学級内には、音読の上手な子が一人か二人か三人ぐらいは、大体はいる
ものです。教師の音読指導が皆無であっても、教師が音読指導に不熱心な学
級であっても、生まれつきというか、家庭環境や友だち環境によってという
か、初めから音読上手な子がいるものです。

  教師の音読指導がない状態で、音読指導を放置しておいて、「音読は上
手だが、内容理解が伴ってない」という指摘は正当ではありません。音声表
現伸ばしの具体的指導を全くしてなくて、放りっぱなしで、偶然に音読上手
がいるからと、「音読は上手だが、内容理解ができてない」という指摘は正
しくありません。内容理解深めと同時進行の音声表現能力のばしの指導をし
ていないからです。

  声優や俳優さんと文芸評論家や文学研究学者と比較したら、声優や俳優
さんのほうが文芸評論家や文学研究学者よりも音声表現が上手でしょう。で
も、声優や俳優さんは、文芸評論家や文学研究学者と比べたら、内容理解
(作品研究や分析)は伴っていないと言えましょう。こういう比較で論じて
も生産的な議論にならないのは当然です。こうした問題の立て方は自体がナ
ンセンスというものでしょう。

  学校教育では、音読上手かつ内容理解優良な児童を育成することが求め
られています。それには「内容理解深めと同時進行の音声表現のばし授業」
をすることです。つまり、「音声解釈による内容理解深めと音声化技術練習
の授業」をすることです。これについては本ホームページ全体に書いている
ところです。そうすれば、「音読が上手で、内容理解が優良」な児童を育成
することができます。質問者の質問事項の後半に「教師はどんな働きかけを
したらよいでしょうか」とありますが、これが返答になります。

 子ども達は声にだして読むことが好きです。優秀児も、遅進児も、ただ声
を出して読むだけですから容易に音読学習に参加できます。一斉音読の授業
では、解放感があり、気がらくであり、遅進児も好みます。学級全員でそろ
って文章を音声表現すれば、遅進児は遅進児なりのレベルの内容理解を伴っ
た、遅進児なりの感動(感情評価的態度)を伴った音声表現を楽しむことが
できます。
  ただし、こんな場合があるので気をつけましょう。この文章内容を声に
して押し出すためにこう工夫して読もうという強い思いが欠落して、ひたす
ら空読みの暗誦になっている場合です。この場合は、質問者のいう「音読は
上手にできるが、内容理解が伴わない」という結果になるでしょう。この事
例は、音声表現の指導で教師が忘れたならないピンポイントが何であるかを
教えてくれています。「この文章内容を声にして押し出すためにこう工夫し
て読もうという強い思い」をいっぱいにして文章を読ませるということです。

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