読授業を創る そのA面とB面と       05・7・5記 
  




       
はつおんのけいこ





       
はぎれよい発音の基礎練習


  子どもたちが天子のような声、つまり、よく通る、歯切れよい、響く声
で、折り目正しい発音で、聞いていて気持ちが洗われるような声で、音読す
るようにさせたいものだと思います。
  そのためには、「一つ一つの音を、はっきりと、きれいに、発音でき
る」能力を身につける必要があります。

  声帯は音源で、そこで生まれた原音が両唇、歯、歯ぐき、硬口蓋などに
舌が接して調音され、一音一音が形成(構音)されます。

  歯切れよい発音の指導で、教師が「口を大きく開けて発音せよ」と指示
することがありますが、「口を大きく開けて」と指示するよりは「唇の開き
方と、舌の位置をきちんとせよ」とか「一つ一つの音を、はっきりと発音す
ることに気を使って読みなさい」と指示するほうがより効果的です。これが
「声を 前へだして 発音する」ということにつながります。ここでの「は
つおんのけいこ」では、(9)の行の「のどごえ」以外は、すべての行が
「こえを まえへだして」発音するようになっています。

  次は、わたしの自作教材です。「やや高めの声で、声を教室前面に向け
て投げ、当てるようなつもりで、一つ一つの音を軽く切断するみたいにし
て、歯切れよく発音させましょう。正しい口の形(唇のかたち、舌の位置)
で発音するようにさせます。
  下記の自作教材「はつおんのけいこ」には、発声や発音に必要な指導事
項がコンパクトまとめて構成されてあります。五十音、鼻濁音、母音の無声
化、声量の大小、二重母音、声のとどけ方などの発声・発音の必要内容が含
みこまれています。

 ◎毎日一回、3分間の時間をとって、学級全員での一斉練習、または個人
発表で、「はつおんのけいこ」の練習をさせましょう。

 ◎一回だけの練習で済ませましょう。何回も繰り返しては、子どもたちは
飽きてしまします。嫌いになってしまいます。毎日、一回だけの練習にし
ます。失敗して、またやり直しをしないように緊張感をもって練習するよう
にさせましょう。

◎「ここの行で何を注意して発音すべきか」子どもたちにはっきりと意識さ
せて、ここの行のめあてを持って、各行の発音れんしゅうをするように意識
づけるようにします。

 ◎発音は、つねに口と耳との共同作用でおこなわれます。児童たちが自分
やお友だちの発音を耳で聞き、「この発音は、よい、わるい」「この声の出
し方は、よい、わるい」という聞き分けられる、評価できる、肥えた耳を持
つようにさせたら、しめたものです。


      ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
      ┃     はつおんのけいこ      ┃
      ┃                   ┃
      ┃                   ┃
(1)   ┃あさひが のぼるよ  アエイウエオアオ┃
(2)   ┃かおを あらおう   カケキクケコカコ┃
(3)   ┃さっそく はみがき  サセシスセソサソ┃
(4)   ┃たくさん みがこう  タテチツテトタト┃
(5)   ┃なぜか さわやか   ナネニヌネノナノ┃
(6)   ┃はっきり ゆっくり  ハヘヒフヘホハホ┃
(7)   ┃はっきり はやくち  ハヘヒフヘホハホ┃
(8)   ┃まえへ こえだし   マメミムメモマモ┃
(9)   ┃のどごえ だして   マメミムメモマモ┃
(10)   ┃やろうよ 1で    ヤエイユエヨヤヨ┃
(11)   ┃やろうよ 4で    ヤエイユエヨヤヨ┃
(12)   ┃にごった おとだよ  ガゲギグゲゴガゴ┃
(13)   ┃はなぬけ おとだよ  ガゲギグゲゴガゴ┃
(14)   ┃わいわい がやがや  ワエイウエオワオ┃
(15)   ┃らくちん いえたよ  ラレリルレロラロ┃
(16)   ┃さいごに おまけだ  ラレリルレロラロ┃
      ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛       
            


         
指導上の留意事項


◎「一つ一つていねいに、ゆっくりと、はぎれよく、発音する」を守らせま
  す。

◎ カタカナ部分は、一つ一つの音のあいだを軽く切って、正しい口の開け
  方で、正しい舌の位置で、ていねいに・はぎれよく・発音するように気
  をつかうようにさせます。

≪以下、各行ごとで、教師が指導上留意すべき事項を書きます。≫

  上述「はつおんのけいこ」の表の行の左側のかっこつき番号は、以下に
  書いてあるかっこつき行頭番号の行と対応しています。つまり、以下の
 (1)は、上述「はつおんのけいこ」の(1)と対応しています。

 
(1)上述「はつおんのけいこ」の左側のかっこつき番号(1)に当たりま
  す。以下、同様です。
  「あさひが のぼるよ」の「あさひが」の「が」は、鼻濁音の発音に
  なります。
 
(2)「かおを」は「かおー」とならないように注意させます。「かお・
   を」と、はっきり発音させます。
  「あらおう」は、「あらおー」と長音化します。「あ・ら・お・う」と
   一音ずつの単音で発音しないようにさせます。

(3)「はみがき」の「が」は、鼻濁音の発音となります。

4)「たくさん」の「く」は、「ウ」母音が無声化する音です。口の形だ
   けで、ウ音はでていません。「クウ。(KU)」でなく
   「ク(ウ)。K(U)」というウ母音が無声化する発音になり
   ます。
   「みがこう」は「みがこー」と長音化します。
   「みがこう」の「が」は、鼻濁音の発音となります。

(5)さわやかな気持ちになって「ナネニヌネノナノ」を言えるといいです
   ね。

(6)「ゆっくり」とは、一つ一つの音のあいだを軽く切って、ていねい
   に、この行のカタカナ部分だけはたっぷりと間をあけて、ゆっくりと
   発音するということです。

(7)「はやくち」とは、一つ一つの音のあいだをつめて、早口で、はぎれ
   よく、ということです。(7)の行のカタナカ部分だけは、早口でス
   ピードを出して、早口で、歯切れよく、発音するようにさせます。

(8)「まえへ こえだし」は、「まえー こえだし」のように長音化し
  ないで発音します。また「まえ こえだし」のように「えへ」を一音
  化させないで、「まえ・え」とはっきりと発音させます。

   「前へ声だし」とは、声を飲み込まないで、教室の前面の黒板や壁へ
   向けて、黒板や壁へ当てるようにして、ポーンと遠くへ届けるように
   して、つきさすようにして発音するということです。のどの奥を締め
   て、息漏れのしない声の出し方です。のどの奥を開いて声をだします。
   ここの「はつおんのけいこ」では、(9)行の「のどごえ」の行以
   外は、すべて「声を 前へだして」澄んだ、きれいな発音でけいこを
   をするようになっています。
   次の(9)行では、「のどごえは、わるい声だ」を指導するために、
   特にそれを意識して発音させるために、ということから「のどごえ」
   を挿入し、それを意図して作成してあります。

(9)「のどごえ」とは、(8)のとは逆で、のどの奥へ向けて、飲み込ん
   で「マメミムメモマモ」と発音することです。どすのきいたみたい
   な、声を喉の奥に飲み込んだ調子で発音することです。のどの奥を
   開いて、息洩れのする声の出し方です。
  (8)と(9)との声の出し方を対比させるために、わざとここで二つを
   並べて、ここで言わせているわけです。

   こうして、(8)の発声の仕方がよく、(9)の発声の仕方が悪いこと
   を、実際に声に出させて体感させて理解させます。声はのみこまない
   で、遠くへポーンと投げ出すようにようなつもりで、のどの奥を締め
   て息洩れのしない声の出し方をする発声がよのいだということを知ら
   せてやります。
   「のどごえ」は、(9)だけで、他の括弧番号は全て息洩れのしない
   共鳴のきいた、よく通る声で発音させます。

   「のどごえ」の「ご」は、鼻濁音で発音します。「だして」の「し」
    は、母音が無声化する音です。口の形だけで、「イ」音はでてい
   ません。

(10)1とか4とかは、声量の大小のことです。「声のものさし」はどこの
   学級でも指導しているのではないでしょうか。声量を、1から5まで
   の大きさに分割します。1は最小、2は、すこし小さめの声、3は、
   普通の声の大きさ、4は、すこし大きめの声、5は、最大の声の大き
   さ、ということです。
   「やろうよ 1で」は、ささやき声で(10)の行のカタカナ部分を言
   うということです。

(11)「やろうよ 4で」は、普通の声量と最大の声量との中間ぐらいの声
   量で(11)の行のカタカナ部分を言うということです。かなり大きい
   声の声量で言わせるようにします。
   ばかでかい、最大の声を出させて言わせてはいけません。低学年にな
   るほど、顔をまっかにして、それをやりがちです。声帯を痛め、声枯
   れしたり、つぶれたりしていまってはいけません。

(12)「にごったおと」とは、鼻濁音にたいする濁音のことを言います。
   (13)の行にある「はなぬけおと」とは、鼻濁音のことです。

   ガ行には、濁音と鼻濁音との、二つの発音の仕方があります。
   鼻濁音は、鼻から息が抜けて出るガ行音のことです。
   濁音は、逆に鼻から息が抜けて出ないガ行音のことです。濁音は鼻を
   つまんで「ガギグゲゴ」と言っても出ますが、鼻濁音は、鼻をつまむ
   と出ません。子どもたちに、二つを比べさせてみましょう。

   最近の子どもたちは、鼻濁音が出ない子が多い、と言われています。
   鼻濁音で発音すべき音を、濁音で発音している子どのたちが多いと言
   われています。

   ここの「はつおんのけいこ」には、(12)の行に濁音の発音練習をす
   るように、(13)の行に鼻濁音の発音練習をするようにという意図で
   作成してあります。

   濁音と鼻濁音とでは、耳で聞いた感じに違いがあります。
   濁音はぎすぎすして堅い感じの声に聞こえます。
   鼻濁音は澄んだ柔らかい声に聞こえます。鼻濁音はきれいで、美しい
   声だといわれています。
   日本語から鼻濁音が消えていくのは残念でさびしいことです。

   鼻濁音が出ない児童への指導の仕方は、こうします。
   例えば、鼻濁音「が」が出ない児童に鼻濁音「が」を出させる指導の
   仕方は、「ンーガ」と、「ン」をのばして発音させてから「ガ」と言
   わせます。つまり、「ン」と濁音「ガ」とを離して、「ン」を長音化
   して発音させます。
   しだいに少しずつ長音化ののばす間隔をつめていきます。最後に
   「ン」と「ガ」とを同時に、一緒に一気に発音させます。
   そうすると、鼻から息が抜ける音・鼻濁音「ガ」になります。「ン」
   を発音するには、鼻から抜ける以外に方法がないからです。
   ほかの鼻濁音「ギグゲゴ」の出し方も、同じ方法で矯正指導をするこ
   とができます。「ンーギ」「ンーグ」「ンーゲ」「ンーゴ」の間隔を
   しだいに狭めていき、最後に同時に発音します。

   鼻濁音は、nGa  nGi nGu nGe nGo となります。
   濁音は、Ga Gi Gu Ge Go となります。

   鼻濁音と濁音との発音を区別するために表記の仕方を変えることが
   あります。
   濁音には点点を右肩上に書き(つける)、鼻濁音には点点でなく、
   小さく丸を書く(つける)という方法があります。

(13) 本稿の「はつおんのけいこ」にあるガ行音では、
  (14)に「がやがや」の語句がありますが、この語句にある二つの
   「ガ」は、濁音の「ガ」で発音する例です。
     その他はすべて鼻濁音で発音する語句になっています。
   「あさひが」の格助詞「が」、「はみがき」の「が」、
   「みがこう」の「が」、「のどごえ」の「ご」、
   「にごった」の「ご」、「さいごに」の「ご」、これら全て
   のガ行音は鼻から息が抜ける鼻濁音の発音となります。

(14)前述しましたが、この行にある「わいわい がやがや」の二つの
  「が」は、ここの「はつおんのけいこ」の全文の中では、この例だけ
   が濁音で発音する音となっています。鼻をつまんでも出る「が」です。

(15)「らくちん」の「く」は、母音が無声化する音です。口の形だけで、
   「ウ」音がでていません。
(16)「さいごに」の「ご」は、鼻から抜ける鼻濁音です。濁音「ご」に
   して発音しない音です。

   「最後におまけだ」とは、ラ行「ラリルレロ」は特別に発音しにくい
   音だと言われています。それで、最後にラ行を二回繰り返して、
   「おまけ」として言わせているように作成しているわけです。赤ちゃ
   んが「ラジオ」を「ダジオ」と発音する例からも、ラ行の言いにくさ
   が理解できますね。


     
「はつおんのけいこ」の印刷プリント


  上記の「はつおんのけいこ」の表を、すぐコピーして、印刷して、児童
たちに配布し、教材として教室で使えるようにした元原稿があります。本ホ
ームページの第11章の「自作教材集」の「はつおんのけいこ」に、PDF
版の印刷原稿があります。

   http://www.ondoku.sakura.ne.jp/hatuonnokeiko.pdf へのリンク



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