第15章 リズム リズム リズム      2014・5・26記  




 
 日本語のリズム(2)押韻





「押韻」とは何か。国語辞書で調べてみた。

「大辞林」(三省堂)
 
詩文で、韻をふむこと。同種の音を所定の位置に繰り返し用い、ひひきを
調和させること。頭韻、脚韻などがある。


「例解新国語辞典」(三省堂)
 一つの詩の中に、いくつかの句のはじめや終わりに、同じひびきの音のこ
 とばをおくこと。


「頭韻」とは何か。国語辞書で調べてみた。

「大辞林」(三省堂)
 
語頭や句頭などに同じ音を繰り返して用いること

「例解新国語辞典」(三省堂)
 
詩や文で、いくつかの語や句のあたまの部分に同じような音(おん)をそ
 ろえて、ひびきを美しくする表現のしかた。


「脚韻」とは何か。国語辞書で調べてみた。

「大辞林」(三省堂)
句末や行末を同じ韻にすること。

「例解新国語辞典」(三省堂)
詩や文で、いくつかの語や句の終わりに同じような音(おん)をそろえて、
ひびきを美しくする表現のしかた。「清く正しく美しく」など。


 これらの国語辞書の解説で、押韻、頭韻、脚韻の大体の意味内容が理解で
きる。
 押韻とは、句の初め(頭韻)、句の終わり(脚韻)に同じひびきの語をお
いて、繰り返してのリズム効果をあげることと言えそうである。腹韻といっ
て、行の中に韻をそろえるのもあるようである。
 同音を繰り返すことにより、ひびき音の連続がリズムとなって耳にとどく
ようになる。だが、同音の間隔があきすぎるとリズムとはなりにくくなるよ
うに思う。
 私の考えでは、押韻は、音数律とくらべて、音声表現においては、そのリ
ズム的効果は少ないように思う。押韻個所の繰り返し(重ね)が接近した短
句であればリズム効果が出てくるが、押韻個所の繰り返し(重ね)が離れ過
ぎるとリズムは形作られなくなるように思う。

 本稿では、押韻表現を種類別に分けて一覧にしようと思う。押韻のある詩
作品の一覧を作ってみることにした。わたしのコメントはひかえて、押韻の
ある詩歌を集めた資料集を作成してみることにした。わたしの簡単なメモを
右側に入れてる個所もある。一目見て、こんな押韻の繰り返しリズムになっ
ていると分かるようにしたつもりだ。

 本稿で資料として取り上げている作品は、わたしが目についた出たとこを
順不同で拾い出して書き出している。系統だった採集と配列ではない。今後
も、付け加えていきたい。

 なお、前節の「音数律」と、本節の「押韻」は、文章の形式面からみたリ
ズム、つまり「外在律」である。もうひとつ、文章の内容面からみたリズム、
つまり「内在律」がある。「内在律」については後日、別稿で書くことにす
る。



        
 ★★頭韻★★


  咲いたよ   

  咲いた    

  桜に     

  さくらそう  




    雨    八木重吉

  雨は土をうるおしてゆく         

  雨というもののそばにしゃがんで     

  雨のすることをみていたい        




    祝詞   川崎洋

  おめでと          
おめでと
  おめでとがんす       
おめでと
  おめでとがす        
おめでと
  おめでどござりすた     
おめでと
  おめでとがんした      
おめでと
  おめでとうがんすた     
おめでと
  おめでとうごぜんす     
おめでと
  おめでてえねえ       
おめでと
  おめでとうごいす      
おめでと
  おめでとござんす      
おめでと
     (以下省略)



    落葉松   北原白秋

  からまつの林を過ぎて、        
からまつ
  からまつをしみじみと見き。      
からまつ
  からまつはさびしかりけり。      
からまつ
  たびゆくはさびしかりける。

  からまつの林を出でて、        
からまつ
  からまつの林に入りぬ。        
からまつ
  からまつの林に入りて、        
からまつ
  また細く道はつづけり。
      (以下省略)



     風をぬりたい
             高橋睦郎

  あじさいのしげみは みどりだけど
  風には いろがない             

  えにしだの花は きいろいけれど
  風には いろがない             

  のぼりのひごいは まっかだけど
  風には いろがない             

  風に いろをぬりたいな
  くれよんを ぜんぶ使って
  風に いろをぬりたいな           

  虹よりきれいに ぬりたいな



      「ねこふんじゃった」   坂田寛夫

    ねこふんじゃった   ねこふんじゃった       「ねこ」の繰り返し
    ねこふんづけちゃったら  ひっかいた
    ねこひっかいた  ねこひっかいた
    ねこびっくりして  ひっかいた
    悪いねこめ  つめを切れ
    屋根を おりて  ひげをそれ
    ねこニャーゴ  ニャーゴ  ねこかぶり
    ねこなで声で  あまえてる
    ねこごねんなさい  ねこごめんなさい
    ねこおどかしちゃって  ごめんなさい
    ねこよっといで  ねこよっといで
    ねこかつぶしやるから  よっといで
       (以下略)



      もぐら     まど・みちお

    もぐらは もろもろの もののうち       「もぐら」または「も」の繰り返し
    もっとも もぐらな ものだから
    もったいぶっては もぐるのか
    もぐらは もぐらで もうそれだけで
    もうしぶんなく もぐらだから
    もはんの モデルで もぐるのか
    もぐらは もぐるので もぐらだから
    もうからなくても もうかっても
    もんくも もうさず もぐるのか
    もぐらは もちろん もぐらだから
    もぐりたいだけ もぐれるのか
    もっけの もうけで もぐるのか
      (以下略)   



よきひとの よしと よくみて よしといひし        

よしの よくみよ よきひと よくみ     天武天皇




    
★★行頭が同じ母音多用でリズム効果★★



     ゆうひのてがみ   のろ さかん

  U ゆうびんやさんが
  U ゆうひを せおって
  A さかみちを
  A まるで きりがみのように
  U ゆうひを すこしずつ ちぎって
  U 「ゆうびん」
  O ポストに ほうりこんでいく
  U ゆうびんやさんが かえったあと
  I いえいえのまどに
  O ぽっと ひがともる



宮沢賢治「やまなし」

二ひきのかにの子どもらが、青白い水の底で話していました。
「クラムボンは 笑ったよ。」       
クラムボンは 笑ったよ
「クラムボンは かぷかぷ笑ったよ。」   
クラムボンは 笑ったよ
「クラムボンは はねて笑ったよ。」    
クラムボンは 笑ったよ
「クラムボンは かぷかぷ笑ったよ。」   
クラムボンは 笑ったよ

クラムボン。作者が作った言葉。意味はよく分からない。




         
★★脚韻★★



      白い         

      かわいい       

      うさぎさん
      お耳が 長い     

      目が 赤い      




    春が来た    高野辰之

春が来た 春が来た どこに来た  555   
キタ キタ キタ
山に来た 里に来た 野にも来た  555   
キタ キタ キタ

花が咲く 花が咲く どこに咲く  555   
サク サク サク
山に咲く 里に咲く 野にも咲く  555   
サク サク サク

鳥がなく 鳥がなく 鳥がなく   555   
ナク ナク ナク
山でなく 里でなく 野でもなく  555   
ナク ナク ナク



   十ぴきのねずみ  谷川俊太郎

  おうみの ねずみ     

  くるみを つまみ     


  さがみの ねずみ     

  さしみを うのみ     


  つるみの ねずみ     

  ゆのみで ゆあみ     


  ふしみの ねずみ     

  めやみに なやみ     


  あたみの ねずみ     

  はなみで やすみ     

      (以下省略)



   あなたが好き
            立原えりか

  あなたが好き           
好き
  生きてるから好き         
好き
  笑ってるから好き         
好き
  くすぐったがりやだから好き    
好き
  くいしんぼうだから好き      
好き
  ねごと言うから好き        
好き
  わがままだから好き        
好き
  わたしより大きいから好き     
好き
  うそがへただから好き       
好き
  つめがきれいだから好き      
好き
  いっしょうけんめいだから好き   
好き
  愛してくれるから好き       
好き
  愛してるから好き         
好き



   竹取物語

 今は昔、竹取の翁といふものあり
けり。野山にまじりて竹を取りつつ、よ
ろづのことに使ひ
けり。名をば、さかきのみやつことなむいひける
 その竹の中に、もと光る竹なむ一すぢあり
ける。あやしがりて、寄りて見
るに、筒の中光
たり。それを見れば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうて
たり



    鶴が渡る   新谷彰久       
「渡る」の繰り返し
                       
のリズム
  鶴が渡る
  渡る                   
または「る」の繰り返し
  湿原の空を鳴きながら渡る         
のリズム
  こう こうと渡る

  夕日が燃える
  山脈が燃える
  鶴が渡る
  力づよく渡る
  ならんで渡る
  湿原には もうすぐきびしい冬がくる
  凍てつく雪もくるだろう

  鶴が渡る
  渡る
  まっ直ぐに首をのばして渡る
  お互いの位置をたしかめ合いながら渡る
  鳴きかわしながら渡る

  鶴が渡る
  渡る
  こう こうと渡る
  白い花のように渡る



   ぎゅうにゅう のむ   友田多喜雄

  ぎゅうにゅう のむ           
「のむ」の繰り返し
  ごくごく のむ              
のリズム
  わいわい のむ
  まっしろな ぎゅうにゅうを
  わらいながら のむ
  神さまが おつくりになった
  しろい うつくしい おくりもの
  きょうも のむ あすも のむ
  たくさーん のむ
  かしこくなる やさしくなる
             (以下省略)



    竹のように   竹中 郁

   
のびろ のびろ        脚韻・命令形の繰り返しの多用
   まっすぐ 
のびろ
   こどもたちよ
   竹のように 
のびろ

   風をうけて さらさら
鳴れよ   
   日をうけて きらきら
光れよ   
   雨をうけたら じっと
してろよ  

   雪がつもれば いっそう
こらえろ
   石をなげつけられたら
   かちんと
ひびけ

   ぐんぐん 根を
はれ       「ぐんぐん」力強く読む
   土の中で その手とその手を
   がんじがらめに
にぎりあえ
   竹 竹 竹 竹のように      
「竹」の繰り返しリズム
   
のびろ
   五月のみどりよ 
もえあがれ



    しずかな地面     藤田圭雄

  しずかなしずかな 地面です        
「地面です」の繰り返
  なんにも見えない 地面です         
しのリズム
  まいにちふんでる 地面です
  石ころばかりの 地面です

  そこからいきなり芽が出ます      
「芽が出ます」の繰り返し
  茎がのびます葉が出ます         
のリズム
  つぼみがまあるくふくれます       
「ます
  花がさきますにおいます         
「ます」
            (以下省略)



   かぼちゃのつるが  原田直友

  かぼちゃのつるが           
「はい上がり」と「ひろげ
  はい上がり               
のリズム
  はい上がり     
  葉をひろげ               
最下段の
  葉をひろげ                  
連用中止法参照
  はい上がり
  葉をひろげ
  細い先は
  竹をしっかりにぎって
  屋根の上に
  はい上がり
  短くなった竹の上に
  はい上がり
  小さなその先端は
  いっせいに
  赤子のような手を開いて
  ああ 今
  空をつかもうとしている



    とる   川崎洋

  はっけよい     5          
5の音数律リズムと
  すもうとる     5          
「とる」のリズム

  こんにちわ     5
  ぼうしとる     5

  てんどんの     5
  でまえとる     5

  セーターの     5
  ごみをとる     5

  のらねこの     5
  しゃしんとる    5
       (以下省略)



   つい昨日
       たけお・たく

  月も星だと             
「だと」「の」「こと」の
  太陽も星だと             
繰り返しのリズム
  地球も星だと
  わかったのは
  つい昨日のこと

  あの子も人だと
  この子も人だと
  自分と同じ人だと
  わかったのも
  つい昨日のこと

  虫も生きものだと
  草も生きものだと
  自分と同じ生きものだと
  わかったのも
  つい昨日のこと



    便所掃除    浜口国雄

 扉をあけます                
「ます。です。」の
 頭のしんまでくさくなります          
繰り返しリズム
 まともに見ることが出来ません
 神経までしびれる悲しいよごしかたです    
 澄んだ夜明けの空気もくさくします      
 掃除がいっぺんにいやになります
 むかつくようなババ糞がかけてあります

 どうして落着いてしてくれないのでしょう  
「のでしょう」のリズム
 けつの穴でも曲がっているのでしょう
 それともよっぽどあわてたのでしょう     
 おこったところで美しくなりません
 美しくするのが僕らの務めです
 美しい世の中も こんな処から出発するのでしょう

 くちびるを噛みしめ、戸のさんに足をかけます。   
「ます」のリズム
 静かに水を流します。
 ババ糞に、おそるおそるほおきをあてます。
 ポトン、ポトン、便壺に落ちます。
 ガス弾が、鼻の頭で破裂したほど、苦しい空気が発散します。
 心臓、爪の先までくさくします。
 落とすたびに糞がはね上ってきます。

 かわいた糞はなかなかとれません。   
「ません」「ます」のリズム
 たわしに砂をかけます。
 手を突き入れて磨きます。
 汚水が顔にかかります。
 くちびるにもつきます。
 そんなことにかまっていられません。
 ゴリゴリ美しくするのが目的です。
 その手でエロ文、ぬりつけた糞も落とします。
 大きな性器も流します。

 朝風が壺から顔をなぜ上げます。       
「ます」のリズム
 心も糞になれてきます。
 水を流します。
 心に、しみた臭みを流すほど、流します。
 雑巾でふきます。
 キンカクシのウラまで丁寧にふきます。
 社会悪をふきとる思いで、力いっぱいふきます。

 もう一度水をかけます。
 雑巾で仕上げをいたします。
 クレゾール液をまきます。
 白い乳液から新鮮な一瞬が流れます。
 静かな、うれしい気持ちですわってみます。
 朝の光が便器に反射します。
 クレゾール液が、糞壺の中から、七色の光で照らします。
 
 便所を美しくする娘は
 美しい子供をうむ、といった母を思い出します。
 僕は男です。
 美しい娘に会えるかもしれません。



大阿蘇     三好達治      
補助動詞「ている」アスペクト
                  現在進行形・継続態の風景・臨場感

雨の中に 馬がたっている
一頭二頭子馬を交えた馬の群れが 雨の中にたっている
雨は簫々と降っている
馬は草をたべている
しっぽも背中もたてがみも ぐっしょりとぬれそぼって
彼らは草をたべている
あるものはまた草もたべずに きょとんとしうなじをたれてたっている
雨は降っている 雨は簫々と降っている
山は煙をあげている
中岳の頂から うすら黄いろい 重っ苦しい噴煙がもうもうとあがっている
空いちめんの雨雲と
やがてそれはけじめもなしにつづいている
やがてそれはけじめもなしにつづいている
馬は草を食べている
草千里浜のとある丘の
雨にあらわれた青草を 彼らはいっしんにたべている
たべている
彼らはそこにみんな静かにたっている
ぐっしょりと雨に濡れて いつまでもひとつところに 彼らは静かに集まっ
ている
もしも百年が この一瞬の間にたったとしても何の不思議もないだろう
雨が降っている 雨が降っている
雨は蕭々と降っている

(各句の末尾で一定の韻をふむようにして声調を整えたリズム表現。)




      
★★頭韻と脚韻との両用★★


≪同音、同語の繰り返しのリズム≫


    手をください   工藤直子

   からっぽの手は さむい     
「からっぽの手」頭韻
   からっぽの手は ねむい     
「−−い」脚韻
   からっぽの手は おくびょうで
   からっぽの手は さびしい

   つなぎあう 手があれば     
「つなぎあう 手」頭韻
   つなぎあう 手さえあれば    
「あれば」脚韻

   からっぽの手のひとよ      
「からっぽの手」頭韻
   ポケットの その手をだして

   その手をだして         
二回目の「その手をだして」を
   わたしに ください       
強めに、リズムをつけて読む



     せいのび
          ぶしか えつこ

   まぶしい くもに さわりたくて
   きは
   きのうも せいのび       
「きのうも せいのび」「きょう
   きょうも せいのび        
も せいのび」繰り返し

   とりのように くもを
   とまらせたくて
   きょうも せいのび       
「きのうも せいのび」「あした
   あしたも せいのび        
も せいのび」の繰り返し



     生きる
          谷川俊太郎

   生きてるという
こと
   いま生きてるという
こと
   それはのどがかわくという
こと
   木もれ陽がまぶしいという
こと
   ふっと或るメロディを思い出すという
こと
   くしゃみする
こと
   あなたと手をつなぐ
こと

   生きているという
こと
   いま生きているという
こと
   
それはミニスカート
   
それはプラネタリウム
   
それはヨハン・シュトラウス
   
それはピカソ
   
それはアルプス
   すべての美しいものに出会うという
こと
   そして
   かくされた悪を注意深くこばむ
こと
      (以下 省略)

参考資料
 本詩「生きる」は全体が5連から成っています。5連の詩句の中には頭韻
や脚韻の個所があちこちにみられます。これらの繰り返しが、この詩の音声
表現にこころよい響きとリズムを与えています。
 本ホームページの第1章「学年別教材の音読授業をデザインする」の「6
年生教材」の中に、本詩「生きる」の指導方法(授業デザイン)が記載して
あります。本詩を授業の中で、どう指導していけばよいかについて一例が書
いてあります。本詩の頭韻や脚韻の詩句をどう音声表現していけばよいかに
ついても書いてあります。



     竹
         萩原朔太郎

  光る地面に竹が
生え、          「生え」の繰り返し
  青竹が
生え、               のリズムは強力。
  地下には竹の根が
生え、             最下段参照
  根がしだいにほそらみ、          
連用中止法の繰り返し
  根の先より繊毛が
生え、          「かすかに」「竹」
  
かすかにけぶる繊毛が生え、        「根」の多用のリズム
  
かすかにふるえ。             「かすかに」頭韻

  
かたき地面に竹が生え、          頭韻「」「すかに」
  地上にするどく竹が
生え
  まっしぐらに竹が
生え
  凍れる節節りんりんと、          
「節節」「りんりん」
  青空のもとに竹が
生え、           の繰り返しリズム
  竹、竹、竹が、
生え

参考資料
 上記の詩「竹」のリズムについて、熱っぽく対立的見解が語られている下
記の諸論文がとても参考になる。「わたげ」か「せんもう」かをはじめ、ほ
か多方面から詳細に論じられている。
  岡井隆「律とモチーフ」 『ユリイカ』 70年2月号
  那珂太郎「音韻・リズムをめぐって」『ユリイカ』72年4月臨時   
  増刊号・総特集萩原朔太郎
  岡井隆『韻律とモチーフ』(大和書房、1977)8〜80ぺ
  菅谷規矩雄『詩的リズム 続篇』(大和書房、1978)7〜47ぺ
  那珂太郎『萩原朔太郎詩私解』(小沢書店、1985)




          
★★腹韻★★


  やんまにがした       7     
んま
  ぐんまのとんま       7     
んま
  さんまをやいて       7     
んま
  あんまとたべた       7     
んま
       谷川俊太郎「ことばあそびうた」




  
★★同じ言葉を繰り返してリズム効果★★


梅一輪一輪ほどの暖かさ       服部嵐雪   
一輪 一輪

春の海ひねもすのたりのたりかな   与謝蕪村   
のたり のたり

雀の子そこのけそこのけ御馬が通る  小林一茶  
そこのけ そこのけ

むまそうな雪がふうはりふうはりと  小林一茶  
ふうはり ふうはり

分け入っても分け入っても青い山  種田山頭火
分け入っても分け入っても

やれ打つな蠅が手を摺る足をする   小林一茶  
する する

梅の花あかいはあかいはあかいはな  惟然坊  あかいは

木の葉ふりやまずいそぐなよいそぐなよ 加藤楸邨
いそぐなよいそぐなよ

冬薔薇をむしゃむしゃ食べる夕日です 本田ひとみ 
むしゃ むしゃ

松島や ああ 松島や 松島や  松尾芭蕉?(田原坊?)  
松島や

白鳥は 哀しからずや 空の
 海のあをにも 染まずただよふ 若山牧水

みちのくの 母のいのちを 
一目見ん 一目見んとぞ ただにいそげる  
                             斎藤茂吉 
松かぜの おともこそすれ 松かぜは 遠くかすかに なりにけるかも 
                             斎藤茂吉
いにしえの奈良の都の
八重桜けふ九重ににおひぬるかな    伊勢大輔

君ならで誰にか見せむ梅の花色
をもをも知る人ぞ知る    紀友則

あし引の
山のしづくに妹まつとわれ立ちぬれぬ山のしづくに  大津皇子

ねむる 山のふもとに海ねむる かなしき春の国を旅ゆく  若山牧水

かにかくに渋民村は恋しかり
おもいでのおもいでの川    石川啄木

逢坂や 
ひとひと故吾はまた吾ゆゑ旧き自転車で行く    岡井隆

聖断はくだりたまひて
かしこくも畏(かしこ)くもあるか涙しながるる
                             斎藤茂吉


われ男(オ)
の子意気の子の子つるぎの子の子の子ああもだえの子
                            与謝野鉄幹
よきひとのよしとよくみてよしといいしよしよくみよよきひとよく
                             天武天皇
萩の
 尾 なでしこの をみなえし また藤袴 朝顔の
                             山上憶良
(秋の七草といえば、萩の花、すすき、くずの花、なでしこ、おみなえし、
ふじばかま、朝顔の花である)

数学の
の公式解くよりもわからないのはあなたの心    中三、女子
  (「解カイ」「解くトク」 同一漢字使用の視覚的リズムあり?)

坂は照る照る鈴鹿は曇 あいの土山雨が降       鈴鹿馬子唄


参考資料
 金田一春彦は、詩における脚韻活用について次のように書いている。

 われわれが日本語の詩を作るときに、ヨーロッパや中国の詩に見られるよ
うな一拍ずつについての脚韻を活用しにくい。旗野士郎は『古事記』の
  おつきどり(ri) 鴨つく島に(ni) わがゐねし(si) 
           妹は忘れじ(zi)  よろづよまでに(ni)
という歌を「配韻珠を並ぶるがごとし」とほめた。が、これは外国の詩を無
理にあてはめたのではないか。一般の日本人は、一拍分が完全に同じ音で、
  坂は照
鈴鹿は曇 あいの上山雨が降
のようになっていないと、脚韻のおもしろさを感じない。
      金田一春彦著作集4巻(玉川大学出版部、2005)111ぺより




   しっぽ   北村蔦子        
「しっぽ」の繰り返し
                      
のリズム
  しっぽ
  しっぽ
  ぞうのしっぽ
  しっぽ
  しっぽ
  かばのしっぽ
  しっぽ
  しっぽ
  ぶたのしっぽ

  しっぽが しっぽで
  ないしょの ように
  おまけのように
  おっこちない ように
  つかまって い る



     ゆきがふる             
音数律と「ふる」の
           まど・みちお      
繰り返しリズム

  ふるふる ふるふる ゆきがふる       445
  ゆきを みあげて たつ ぼくに       75
  ふるふる ふるふる ゆきが ふる      445
  とつぜん ぼくは のぼってく        75
  せかいじゅうから ただ ひとり       75
  そらへ そらへと のぼってく        75
  ふと きがつくと ゆきが ふる       75
  ゆきを みあげて たつ ぼくに       75
  ふるふる ふるふる ゆきが ふる      445



     花ふぶき
           坂本越郎

  さくらの花の散る下に         
「花」「花びら」の
  小さな屋根の駅がある          
多用のリズム
  白い花びらは散りかかり
  停車場の中には
  花びらで いっぱい
  花びらは 男の子の帽子にも
  せおった荷物の上にも来てとまる。
  この村のさくらの花びらをつけたまま
  遠くの町へ行く子もあるんだな。
  待合室のベンチの上にも。
  白い花びらは散りかかり、
  旅人は 花びらの上にこしかけて
  春の山脈をなげめている。



    ののはな  谷川俊太郎

  はなののののはな        
「は」「な」「の」の
  はなのななあに          
多用のリズム
  なずななのはな
  なもないのばな



    きりん はゆらゆら
           ぶしか えつこ

  きりんは ゆらゆら
  よってくる              
「よってくる」の
  うえから そっと           
規則的な繰り返しリズム
  よってくる
  かおだけ ぼくに
  よってくる
  からだは むこうに おいといて

  きりんは ゆらゆら
  よってくる
  なぜだか ぼくに
  よってくる
  やさしい め して
  よってくる
  こえも むこうに おいといて



    夜明け前     島崎藤村
 木曽路はすべて山の中である。
あるところは岨(ソバ)づたいに行く崖の
道であり、
あるところは数十間の深さに臨む木曽川の岸であり、あるところ
山の尾をめぐる谷の入口である。一筋の街道はこの深い森林地帯を貫いて
いた。



     沈黙      遠藤周作
 その時、
踏むがいいと銅版のあの人は司祭にむかって言った。踏むがいい
お前の足の痛さをこの私が一番よく知っている。
踏むがいい




  
★★同じ言葉+脚韻使用でリズム効果★★



   開いた開いた   わらべうた

  開いた 開いた             
「開いた」のリズム
  何の花が開いた              
文末「た」のリズム
  蓮華の花が開いた
  開いたと思ったら
  いつのまにかつぼんだ

  つぼんだ つぼんだ           
「つぼんだ」のリズム
  何の花がつぼんだ             
文末「だ」のリズム
  蓮華の花がつぼんだ
  つぼんだと思ったら
  いつのまにか開いた



   原爆詩集・序   峠三吉

  ちちをかえせ ははをかえせ      
「かえせ」の繰り返しリズム
  としよりをかえせ
  こどもをかえせ

  わたしをかえせ わたしにつながる
  にんげんをかえせ

  にんげんの にんげんのよのあるかぎり
  くずれぬへいわを
  へいわをかえせ



     あめ   まど・みちお

  あめがふる              
「あめがふる」のリズム
  あめがふる
  あめがふる
  そらが おおきな かお あらう

  あめがやんだ             
「あめがやんだ」のリズム
  あめがやんだ
  あめがやんだ
  そらが きれいな かお だした



          雪
               三好達治

   太郎をねむらせ、太郎の屋根に雪ふりつむ  766   
文型の
   次郎をねむらせ、二郎の屋根に雪ふりつむ  766   
リズム



         雪がくる
                百田宗治
   また雪がくるのだなとおもうと、            
文型の
   なにかさびしい気もちになる。             
リズム

   また雪がくるのだなとおもうと、
   なにかたのしい気もちになる。

   また雪がくるのだなとおもうと、
   なにか勇気が出てくるような気がする。



       生い立ちの歌
               中原中也

            幼年時
   私の上にふる雪は        75         
文型の
   真綿のようでありました。    75         
リズム

            少年時
   私の上にふる雪は        75
   みぞれのようでありました。   75

            十七〜十八
   私の上にふる雪は        75
   あられのようでありました。   75

           二十〜二十二
   私の上にふる雪は        75
   雹であるかと思われた。     75

            二十三
   私の上にふる雪は        75
   ひどい吹雪とみえました。    75

            二十四
   私の上にふる雪は        75
   いとしめやかになりました……  75
           (以下略)



      愛      宮沢和史 
    
   ガラスより壊れやすいものが     
   あるとすれば それは愛だ     「それは・も・が・愛だ」
                       の繰り返し
   鋼より打たれ強いものが     
   あるとすれば それも愛だ
     
   憎しみより強い感情が     
   あるとしたら それは愛だ 
    
   裏切りよりも醜い行為が     
   あるとしたら それも愛だ
     
   それが愛だ



    いるか   谷川俊太郎

  いるか いるか           
「いるか」「いない」「るか」
  いないか いるか           
の多用のリズム
  いない いない いるか
  いつなら いるか
  よるなら いるか
  また きて みるか



       恐ろしく憂鬱なる
                  荻原朔太郎

  こんもりとした森の木立のなかで
  いちめんに白い蝶類が飛んでいる。
  むらがる むらがりて飛びめぐる
  てふ てふ てふ てふ てふ てふ てふ
  みどりの葉のあつぼったい隙間から
  ぴか ぴか ぴか ぴかと光る そのちひさな鋭い翼
  いっぱいにひろがってとびめくる てふ てふ てふ てふ
  てふ てふ てふ てふ てふ てふ てふ てふ
  ああ これはなんといふ憂鬱な幻だ
  この重たい手足 重たい心臓
  かぎりなくなやましい物質と物質との重なり
  ああ これはなんといふ美しい病気だろう。
  つかれはてたる神経のなまめかしいたそがれどきに
  私はみる ここに女たちの投げ出したおもたい手足を
  つかれはてた股や乳房のなやましい重たさを
  その鮮血のやうなくちびるはここにかしこに
  私の青ざめた屍体のくちびるに
  額に 髪に 髪の毛に 腋に 股に 腋の下に 手くびに
  足に 足のうらに みぎの腕にも ひだりの腕にも
  腹のうへにも 臍のうへにも
  むらがりむらがる 物質と物質との淫らなかたまり
  ここかしこに追いみだれる蝶のまっくろい集団。
                (以下、略)    
擬態語、文型の
                          
リズム



     甃のうえ
           三好達治

  あはれ花びらながれ            
音数律とア行頭韻と
  をみなごに花びらながれ          
連用形と「なる、なり」
  をみなごしめやかに語らひあゆみ      
など。
  うららかの跫音空にながれ
  をりふしに瞳をあげて
  翳りなきみ寺の春をすぎゆくなり
  み寺の甍みどりにうるほひ
  廂々に
  風鐸のすがたしづかなればひとりなる
  わが身の影をあゆまする甃のうへ 

甃(いし。石)。跫音(あしおと)。翳り(かげり)。甍(いらか。屋根の
かわら。こけむして緑青色になっているのでしょう)。廂(ひさし)。風鐸
(ふうたく。本堂や塔の軒の四隅に下がっている風鈴)




 
★★同母音多用の繰り返しでリズム効果★★
     (同音の照らし合い、響き合い、照応によるリズム作り)

白鳥はかなしからずや空の青海のあをにも染まずただよふ  若山牧水
IAOIAAAIAAUAOAOAOUIOAOIOOAUAAOU
   (Aが13個で42%をしめてる)


あまの原ふりさけみればかすがなるみかさの山にいでし月かも 安倍仲麻呂
AAOAAUIAEIEAAUAAUIAAOAAIIEIUIAO
    (Aが14個で45%をしめてる)


金色のちひさき鳥のかたちして銀杏ちるなり夕日のおかに  与謝野晶子
INIOOIIAIOIOAAIIEIOIUAIUIOOAI 
     (Iが13個で42%をしめてる)


銀も金も玉も何せむにまされる宝子にしかめやも      山上憶良
IOAEOOAEOAAOAIEUIAAEUAAAOIIAEAO
      (Aが12個で38%をしめてる)


ねこの子のくびのすずがねかすかにもおとのみしたる夏草のうち 大隈言道
EOOOOUIOUUAEAUAIOOOOIIAUAUUAOUI
       (Oが10個で32%をしめてる)


大海の磯もとどろに寄する波われて砕けて裂けて散るかも    源実朝
OOUIOIOOOOOIOUUAIAEEUAEEAEEIUAO
  (Oが10個、前半に集中。後半にAEEが三回連続繰り返す)


流れ行く大根の葉の早さかな       高浜虚子  
やさかな
AAEUUAIONOAOAAAAA

ははははははとわらった (母は,「ハハハ」と笑った)   作者不明
AAAAAAOAAA

言ふことの(N
) かしこき国そ(S) くれなゐの(N
    いろにな出でそ(S
) 思ひ死ぬとも(M)  大伴坂上郎女


小夜深(
よふけ)に きて散るとふ 稗草(ひえく)の
         ひそやかにして 秋
りぬらむ       長塚節


【参考資料】
 日本語における同じ母音の連続について、井上ひさし(作家)さんが下記
のように書いています。

ーーーーーーー引用開始ーーーーーー
 日本語の特徴のひとつとして、同じ母音を持つ音節の連続が非常に多いと
いうことをお話しましょう。
 思いついた例をあげると、「山田長政」の母音は全部「a」なんです。
「やぁまぁだぁなぁがぁまぁさぁ」でしょう?「男心」、これはみんな
「o」ですね。「男心に男が惚れて」という、昔の流行歌がありますけれど、
こういう「オオオオオオ」は他の言語と比べて、珍しいのではないでしょう
か。それから、歌舞伎の台詞で「かかさまの名前は……」というのがありま
す。「かかさま」は、「アアアア」です。
 余談ですが、長谷川一夫さんは母音の使い方が上手でしたね。「忠臣蔵」
の大石内蔵助なんかをやりますけど、決まり文句で「おのおのがた」って言
いますよね。その「おのおの」は全部「o」なんです。こういうふうに日本
語には同じ母音を続けるという、これは非常に目立った特徴があります。
 だからどうしたと言われると困ります。なんにも得にならない(笑い)。
得にはならないけれど、私たちは無意識のうちに、この五つの母音の音色を
使い分けているのです。その一つの例が、本居宣長の「やまとごころを人問
はば……」という歌です。ぼくら子どもの頃、大和魂というのはこういうも
のだと言われて覚えさせられましたが……。
  しきしまのやまとごころを人問はば朝日に匂う山桜花
「やまとごころ」の母音は「アアオオオオ」です。これが、おそらく漢語が
入ってくる前の、つまり弥生語か縄文語か何か知りませんが、漢語は入って
くる前の和語、やまとことばの、ある基本をなしているのではないかという
ふうに私は勝手に考えています。つまり、やまとことばには、こういう母音
の連続が、非常に特徴的であるということです。
  井上ひさし『日本語教室』(新潮新書、2011)128ぺより
ーーーーーー引用終了ーーーーーー



       ゆうひのてがみ
               野呂昶(のろさかん)

 
   ゆうびんやさんが
 
   ゆうひを せおって
 
   さかみちを のぼってくる
 
   まるで きりがみのように
 
   ゆうひを すこしずつ ちぎって
 
   「ゆうびん」
 
   ポストに ほうりこんでいく
 
   ゆうびんやさんが かえったあと
 
   いえいえのまどに
 
   ぽっと ひがともる




        
★★だじゃれ★★


≪だしゃれは、同音をうまく使った言葉遊び。意味のずらし使用。同音の重
なりのおもしろさはあるが、音声表現(しゃべり)においてはリズムを作る
ことは余りなさそうだ≫

  このハエ、はえーなあ。    45

  佐藤君が言いました。あっ、砂糖だ。    6524

  本間君がいいました。あっ、ほんまだ。   6524

  おばさん、この電話、出んわ。    453

  百円玉を食ってみろ。ひゃあ、くえん。   7523

  そうだ村のそうださんが、ソーダのんで死んだそうだ。 6667

  そうしきまんじゅう、でっかいそうだ。     87

  かれいがカレーを食べて、かれーと言いました。  44345

  かえるは、いつ帰る?     45

  シャベルカーは、しゃべれるか?    65

  イルカは、いるか?    43

  布団が吹っ飛んだ   45

  トイレに行っといれ     45

  本がブックブックと沈む    373

  センタッキー・フライドチキン   67

  そんなしゃれ、やめなしゃれ。    55




      
★★その他のリズム例★★


≪音声表現にリズムを作るものは、他にもある。≫


(1)読点のうち方。読点は、文章を分かりやすくするためと、リズムをも
   たせるためにある。

(2)接続詞を効果的に使う。接続詞がない文章がだらだらつづくと、リズ
   ムもなくなる。

(3)文末を,た、た、た。である、である、である。これを繰り返すと、
   リズムを作る。短文の連続でないと、リズムが感じとれない。文体論
   でいう歴史的現在の文末(「た」止めの連続や現在形の挿入)の連続
   も、短文の連続で使われないと、リズムは感じとれない。

 外はすごい星で、月も出てい
。とうげの下りの坂道は、一面の真っ白い
霜で、雪みたいだっ
。霜が足にかみつい。足からは血が出。豆太は、
なきなき走っ
。いたくて、寒くて、こわかったからなぁ。
 でも、大すきなじさまの死んじまうほうが、もっとこわかったから、なき
なきふもとの医者様へ走っ
。       斎藤隆介「もちもちの木」

 国境の長いトンネルを抜けると雪国であ
った。夜の底が白くなった。信号
所に汽車が止ま
った。            川端康成「雪国」


       ゆき    
            川崎 洋

     はつゆき ふ
った
     こなゆき だ
った
     くつの下で きゅっきゅとない


     どかゆき ふった
     のしのし ふ
って
     ずんずん つもり
     ねゆきに な
った

     べたゆき ふ
って
     ぼたゆき ふ
って
     ざらめゆきに な
って
     もうすぐ 春




(4)短い文の用言に連用中止法と使い、幾つか重ねていくと、リズムのあ
   る音声表現になる。本ホームページの第16章「時間の順序・個条書
   き」の項を参照すると、具体的な音声表現の仕方が書いてある。連用
   中止法と終止形と間とでリズムを作っていく。

 それから何日かたつと、岩の割れ目の種は、細い根をのばし始めた。根は
岩のすきまにしのびこみ、わずかな水をすい上げ、もろくなった岩から養分
を取った。

 渡良瀬川は、栃木県北西部の足尾の山々を源にして、栃木・群馬を流れ、
茨城県古河市に入り、埼玉県栗橋近くで利根川に合流する。

 砂防林の作業は、地面をならすことから始まり、水はけをよくしたのち、
風を防ぐ垣根をとりつけ、それが終わると、今度は牧草の種をまく。



(5)活用語の連用形に接続助詞「て」がついて、単に並列、羅列していく
   働きが繰り返されると、リズムを作る音声表現になる。


大海の 磯もとどろに 寄する波 われて くだけて さけて 散るかも 
                               源実朝

 秋になると、茶色いぴかぴか光った実を、いっぱいふり落としてくれる。
その実を、じさまが、木うすでついて、石うすでひいてこなにする。こなに
したやつをもちにこね上げて、ふかして食べると、ほっぺたが落っこちるほ
どうまいんだ。            斎藤隆介「もちもちの木」




(6)擬音語、擬声語、擬態語、かけ声などを重ねて(繰り返して)使うと、
   リズムのある音声表現になる。


         お祭り
               北原白秋

     わっしょい、わっしょい、
     わっしょい、わっしょい。
     祭りだ、祭りだ。
     背中に花がさ、
     胸には腹がけ、
     向こう鉢巻、そろいのはっぴで、
     わっしょい、わっしょい。

     わっしょい、わっしょい、
     わっしょい、わっしょい。
     みこしだ、みこしだ。
     みこしのおねりだ。
     さんしょは粒でも、ピリッとからいぞ、
     これでも勇みの山王の氏子だ。
     わっしょい、わっしょい。
          (以下略)



        なわとび
              芦村公博

       なわとび 
          ぴょん
       げんきに
          ぴょん
       ぴょん ぴょん ぴょん
       あせが
       きみちよくしてくれる

       なわとび
          ぴょん
       もういちど
          ぴょん
       ぴょん ぴょん ぴょん
       かぜが
       きもちよくしてくれる



       はしるの だいすき

      はしるの だいすき
      たった たった たっ
      つちを けって
      くさを けって
      かぜを けって
      たった たった たった たった
      おもしろい

      はしるの だいすき
      たった たった たっ
      あしも はしる
      むねも はしる
      かおも はしる
      たった たった たった たった
      おもしろい
            (日本書籍1上の教科書より)



      かもつれっしゃ
             有馬敲(ありまたかし)

    がちゃん がちゃん がちゃん
      がちゃん がちゃ んがちゃん
        がちゃああん がちゃああん

    がったん ごっとん がったん
      ごっとん がったん ごっとん
        がったん ごっとん がったん

    ごっと がった ごっと がった
      ごっと がった ごっと がった
        ごっと がった ごと がた

    がた ごと がた ごと がた ごと
      がた ごと がた ごと がた ごと
        がた ごと がた こと かた こと

    かた こと かた ことかたこと
      かたことかたことかたことかたこと
        かたことかたことことことことこと



     風の又三郎    宮沢賢治

  「どどっど どどうど どどうど どどう
   青いくるみも吹きとばせ
   すっぱいかりんも吹きとばせ
  「どどっど どどうど どどうど どどう
  「どどっど どどうど どどうど どどう」



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