第15章 リズム リズム リズム      2014・5・26記  




  
日本語表現のリズム(1)音数律




 日本語表現のリズムといえば、575(俳句)や57577(短歌)がす
ぐに浮かぶ。七五調や五七調などの定型詩も浮かぶ。日本語表現には、五音
と七音との繰り返しの音数律が多い。その他の音数の繰り返しももちろんあ
る。
 本稿では、音数律でリズムを形作っている日本語表現を種類別に分けて大
雑把な一覧を作成してみようと思う。わたしのコメントはひかえて、一目見
て、日本語表現の音数律にはこんなリズムの作品があるんだという資料集を
作ってみようと思う。リズムを考える時の資料メモとして、これを作成して
みようと思う。

 資料として取り上げている俳句、短歌、詩、その他作品は、わたしが目に
ついた出たとこの作品を、その場その場で順不同で拾い出して、書き出して
いる。系統だった採集と配列ではない。今後も、付け加えていきたい。

参考・音数律と拍数

短歌    57577
俳句、川柳 575
片歌    577
旋頭歌   577/577
長歌    57×n+7
連歌    (575/77)×n
仏足石歌  575777
和讃、今様 75×4   または85×4
謡曲    575+75×n
浄瑠璃   75×n
都都逸   7775




          
★★俳句★★


≪575の音数律をもつ。季語を入れることが原則とする。俳諧の連歌の発
 句が独立したもの。≫

菜の花や 月は東に 日は西に       与謝蕪村    575
梅雨晴れや ところどころに 蟻の道    正岡子規    575
古池や かわずとびこむ 水の音      松尾芭蕉    575
夏草や 兵どもが 夢の跡         松尾芭蕉    575
やれ打つな 蠅が手をすり 足をする    小林一茶    575
毛布あり 母のごとくに あたたかし    松本たかし   575
さじなめて 童たのしも 夏氷       山口誓子    575
柿くへば 鐘が鳴るなり 法隆寺      正岡子規    575
ゆさゆさと 大枝ゆるる 桜かな      村上鬼城    575
赤とんぼ 葉末にすがり 前のめり     星野立子    575
朝顔に つるべとられて もらい水     加賀千代女   575
蜻蛉釣り 今日はどこまで 行ったやら   加賀千代女   575
いくたびも 雪の深さを 尋ねけり     正岡子規    575



           
★★川柳★★


≪575の音数律をもつ。切れ字、季語などの制約がない。滑稽、風刺が
 特色。≫

芭蕉翁 ぼちやんといふと 立留り     江戸古川柳   575
はへば立て 立てば歩めの 親心      江戸古川柳   575
本降りに なつて出てゆく 雨やどり    江戸古川柳   575
寝ていても 団扇のうごく 親心      江戸古川柳   575
逃げしなに 覚えて居ろは 負けたやつ   江戸古川柳   575
孝行のしたい時分に親はなし        江戸古川柳    575



          
★★短歌★★


 ≪漢詩に対して日本固有の歌を和歌といった。 和歌は、長歌、短歌、旋
 頭歌、片歌などの総称だが、平安時代以降は主に短歌をさすようになった。
 短歌は、57577の音数律をもつ。≫

東の 野にかぎろひの 立つ見えて かへりみすれば 月かたぶきぬ   
                   柿本人麻呂    57577

道の辺に 清水流るる 柳かげ しばしとてこそ 立ちどまりつれ    
                   西行法師     57577

見渡せば 花も紅葉も なかりけり 浦の苫屋の 秋の夕暮れ      
                   藤原定家     57577

ふるさとの 訛なつかし 停車場の 人ごみの中に そを聴きにゆく   
                   石川啄木     57577

みちのくの 母のいのちを 一目見ん 一目見んとぞ ただにいそげる  
                   斎藤茂吉     57577

ひぐらしの 一つがなけば 二つなき 山みな声と なりて明けゆく   
                   四賀光子     57577

隣屋に 書読む子らの 声聞けば 心に沁みて 生きたかりけり 
                   島木赤彦     57577

楽しみは まれに魚煮て 児らみなが うましうましと いひて食ふ時
                   橘曙覧      57577

山ねむる 山のふもとの 海ねむる かなしき春の 国を旅ゆく 
                   若山牧水     57577



           
★★長歌★★


≪長歌は、5音句と7音句とが57575757と交互に続き、最後だけ  
 7となる音数律である。普通これに反歌(多くは短歌形態)を伴った。≫

     山部赤人の長歌

   天地の 分かれし時ゆ     57
   神さびて 高く貴き      57
   駿河なる 富士の高嶺を    57
   天の原 振りさけ見れば    57
   渡る日の 影も隠らひ     57
   照る月の 光も見えず     57
   白雲の い行きはばかり    57
   時じくぞ 雪は降りける    57
   語り継ぎ 言い継ぎ行かむ   57
   富士の高嶺は         7



          
★★旋頭歌★★


≪旋頭歌は、577577の音数律をもつ。和歌の歌体の一つである。元来
ふたりによって唱和された三句ずつ二首の問答歌が合わさって一首となった
ものである。ひとりで作るようになっても問答の性質を残して、第三句と第
六句が同じ、または近似したものが多く、第三句は言いきりになっている。≫

柿本朝臣人麻呂の旋頭歌 
春日(はるひ)すら 田に立ち疲(つか)る 君は哀(かな)しも 577
若草の 妻なき君は 田に立ち疲る               577

良寛の旋頭歌
やまたづの 向ひの岡に さを鹿たてり             577
神無月(かみなづき) しぐれの雨に ぬれつつ立てり      577



           
★★今様★★


≪今様とは、当世風・今風という意味である。平安末期に流行した声楽  
 をさす。75757575の音数律である。この韻律は、現代の唱歌  
 などに受け継がれている。以下の引用は、「梁塵秘抄」と「いろは歌」
 と唱歌からである≫
 

  仏は常に いませども          75
  現(うつつ)ならぬぞ あはれなる    75
  人の音せぬ 暁に            75
  ほのかに夢に 見えたまう        75

  遊びせんとや 生まれけむ        75
  戯れせんとや 生まれけむ        75
  遊ぶ子どもの 声聞けば         75
  わが身さへこそ 揺るがるれ       75
            「梁塵秘抄」



  いろはにほへと ちりぬるを       75
  わかよたれそ  つねならむ       65
  うゐのおくやま けふこえて       75
  あさきゆめみし ゑひもせず       75
            「いろは歌」



      我は海の子
              作詞者・不明  
              作曲者・不明

  我は海の子 白浪の            75
  さわぐいそべの 松原に         75
  煙たなびく とまやこそ         75
  我がなつかしき 住家なれ。       75



       蛍の光
           原曲・スコットランド民謡
           作詞者・稲垣千頴
  蛍の光、 窓の雪、           75
  書読む月日、 重ねつゝ、       75
  何時しか年も、 すぎの戸を、     75
  開けてぞ今朝は、別れ行く。       75



       花
           作詞者・竹島又次郎
           作曲者・滝廉太郎
  春のうららの 隅田川         75
  上り下りの 舟人が          75
  かいのしずくも 花と散る       75
  ながめを何に たとうべき       75

  今は山中 今は浜           75
  今は鉄橋 渡るぞと          75
  思う間もなく トンネルの       75
  やみを通って 広野原         75


     どこかで春が
             百田宗治

  どこかで「春」が 生まれてる、    75
  どこかで水が ながれ出す。      75

  どこかで雲雀が 啼いている、     85
  どこかで芽の出る 音がする。     85

  山の三月 東風吹いて         75
  どこかで「春」が 生まれてる。    75
      


     お日さん、雨さん   
              金子みすず

  ほこりのついた しば草を       75
  雨さんあらって くれました。     85
      

  あらってくれた しば草を       75
  お日さんほして くれました。     75

  こうしてわたしが ねころんで     85
  空を見るのに よいように。      75



         
★★都都逸★★


≪江戸時代以降に発達した俗謡である。もともと唄うことを前提に作られた
 ものなのでリズムを大切にしている。「七、七、七、五」形式の26文字
 である。男女の情の機微を表現した内容が多くある。「七、七、七、五」
 を更に細かく 「三・四、四・三、三・四、五」の字数に合わせることが
 原則になっている。≫

 何がなんでも 添わねばならぬ 添うて苦労が してみたい
  7(34)  7(43)  7(34)    5
            ↓
 苦労する身は 何いとわねど 苦労し甲斐の あるように
  7(34)  7(43)  7(34)   5
            ↓
 あの時あなたに 会いさえせねば わたしゃ苦労の 味知らず
  7(34)  7(43)    7(34)   5

 寝ても覚めても 忘れぬ君を 焦がれ死なぬは 異なものじゃ
  7(34)  7(43)  7(34)    5




        
★★小唄・小歌★★


≪公的な儀式歌謡の大歌に対して、民間で流行した歌謡のことをいう。気軽
 に口ずさめる短い通俗的な民間歌謡のこと。特定の音数律をもたない。≫


      お座敷小唄
             作詞・不詳
             作曲・陸奥 明

  1、富士の高嶺に 降る雪も   75
    京都先斗町に 降る雪も   75
    雪に変わりは ないじゃなし 75
    とけて流れりゃ 皆同じ   75

  2、好きで好きで 大好きで   65
    死ぬ程好きな お方でも   75
    妻と言う字にゃ 勝てやせぬ 75
    泣いて別れた 河原町    75



       船頭小唄
             作曲: 中山晋平
             作詞: 野口雨情

   1. おれは河原の 枯すすき   75
    おなじお前も 枯すすき    75
    どうせ二人は この世では   75
     花の咲かない 枯すすき   75

  2. 死ぬも生きるも ねえお前  75
    水の流れに なに変ろ    75
    おれもお前も 利根川の   75
    船の船頭で 暮そうよ    75



         
★歌舞伎台詞★★   


≪七五調が多い。語りに軽妙な感じのリズムが作り出している。≫

 「三人吉三」のお嬢吉三の台詞
月もおぼろに 白魚の かがりもかすむ 春の空、つめてえ風も ほろ酔い
に 心持よく うかうかと、浮かれ烏の ただ一羽、ねぐらへ帰る 川端で
(以下略)

 「白浪五人男」の弁天小僧菊之助の台詞
知らざァ言って 聞かせやしょう。浜の真砂と 五右衛門が 歌に残した
ぬすっとの 種はつきねえ 七里ガ浜、その白浪の 夜働き、以前をいやあ
 江の島で 年季づとめの 稚児が淵(以下略)

 「白浪五人男」の南郷力丸の台詞
さてどんじりに 控えたは、潮風荒き こゆるぎの そなれの松の 曲がり
なり 人となったる 浜育ち、仁義の道も 白河の 夜舟へ乗りこむ 舟盗
人、波にきらめく 稲妻の 白刃でおどす 人殺し(以下略)



           
★古文★★


作者不明「平家物語」
 祇園精舎の 鐘の声、         75
 諸行無常の 響きあり。        75
 娑羅双樹の花の色、          65
 盛者必衰のことわりをあらはす。    854

 おごれる人も久しからず、       76
 ただ春の夜の夢のごとし。       76
 たけき者もつひには滅びぬ、      644
 ひとへに風の前の塵に同じ。      466
(七五調のリズムを基本とした対句表現が独特な味をかもし出してる)



紀貫之「土佐日記」
 男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。      
    4335、4364。


鴨長明「方丈記」
ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。淀みに浮かぶうた
かたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたる例なし。
  545、3、333。435、46、465。


吉田兼好「徒然草」
つれづれなるままに、日くらし、硯にむかひて、心に移りゆくよしなし事を、
そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。
  45、4、44、4543、66、68。



           
★★童謡★★


≪子どものために作られた歌。子どもがうたう歌。各連内部の各行とそ  
 の順序の音数が一定して繰り返す。≫


         赤とんぼ

             作詞:三木露風
             作曲:山田耕筰

   1 夕やけ小やけの 赤とんぼ    445   85
     負われて見たのは いつの日か  445   85

   2、山の畑の くわの実を      345   75
     小かごにつんだは まぼろしか  345   75



         待ちぼうけ     

             作詞:北原白秋
             作曲:山田耕筰

   1、待ちぼうけ 待ちぼうけ     55    55
     或る日せっせと 野良かせぎ   345   75
     そこへ兎が とんで出て     345   75
     ころり転げた 木のねっこ    345   75

   2、待ちぼうけ 待ちぼうけ     55    55
     しめたこれから 寝て待とか   345   75
     待てばえものは 駈けてくる   345   75
     兎ぶつかれ 木のねっこ     345   75



   うらしまたろう   作者不詳

 むかし むかし うらしまは       335    65
 たすけた かめに つれられて      435    75
 りゅうぐうじょうへ きて みれば    723    77
 えにも かけない うつくしさ      345    75

 おとひめさまの ごちそうに       75     75
 たいや ひらめの まいおどり      345    75
 ただ めずらしく おもしろく      255    75
 月日の たつのも ゆめのうち      445    85



   はなさかじいさん   石原和三郎作詞

 うらの はたけで ぽちが なく     345    75
 しょうじき じいさん ほったれば    445    85
 おおばん こばんが ザクザクザクザク  448    88

 いじわる じいさん ぽちかりて     445    85
 うらの はたけを ほったれば      345    75
 かわらや かいがら ガラガラガラガラ  448    88



    ももたろう     作者不詳

 ももたろうさん ものたろうさん     77     77
 おこしにつけた きびだんご       75     75
 一つ わたしに くださいな       345    75

 やりましょう やりましょう       55     55
 これから おにの せいばつに      435    75
 ついて 行くなら やりましょう     345    75



   いっすんぼうし   巌谷小波

 ゆびに たりない いっすんぼうし    347    77
 小さな からだに 大きな のぞみ    4443   78
 おわんの ふねに はしの かい     4332   75
 京へ はるばる のぼりゆく       345    75

 京は さんじょうの だいじんどのに   357    87
 かかえられたる いっすんぼうし     77     77
 ほうしほうしと お気に入り       345    75
 ひめの おともで きよみずへ      345    75



   いなばのしろうさぎ  石原和三郎

 大きな ふくろを かたにかけ     445     85
 だいこくさまが 来かかると      75      75
 ここに いなばの 白うさぎ      345     75
 かわを むかれて あかはだか     345     75

 だいこくさまは あわれがり      75      75
 「きれいな 水に みをあらい     435     75
 がまのほわたに くるまれ」と     345     75
 よくよく おしえて やりました    445     85



         
★★物語文★★


≪定型の音数律をもつ物語詩または散文詩とでも言えるかも。子どもたちは
 口当たりのよさ、調子よさ、リズム感の快さから、楽しんで読む≫≫

羽曽部 忠「おむすび ころりん」(光村 1年上)

 むかし むかしの はなしだよ。     345    75
 やまの はたけを たがやして、     345    75
 おなかが すいた おじいさん。     435    75
 そろそろ おむすび たべようか。    445    85
 つつみを ひろげた その とたん、   445    85
 おむすび ひとつ ころがって、     445    85
 ころころ ころりん かけだした。    445    85
 まて まて まてと おじいさん、    2235   75
 おいかけて いったら おむすびは、   545    95
 はたけの すみの あなの なか、    435    75
 すっとんとんと とびこんだ。       75    75
 のぞいて みたが まっくらで、     435    75
 みみを あてたら きこえたよ。     345    75
 おむすび ころりん すっとんとん。  446    446
 おむすび ころりん すっとんとん。  446    446

 これは これは おもしろい。      335    65
 ふたつめ ころんと ころがすと、    445    85
 きこえる きこえる おなじ うた。   445    85
 おむすび ころりん すっとんとん。  446    446
 おむすび ころりん すっとんとん。  446    446


夏目漱石「草枕」の導入部。
 智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とか
くに人の世は住みにくい。   75、75、75、455.



           
★★唱歌★★


≪明治以降、学校の音楽教育でうたわれた歌。文部省唱歌のこと。音   
 数律は、童謡と同じ。≫

       「夕焼け小焼け」
                作詞:中村雨紅
                作曲:草川 信
   夕やけ 小やけの 赤とんぼ      445
   おわれて 見たのは いつの日か    445

   夕やけ 小やけの 赤とんぼ      445
   とまって いるよ さおのさき     445


        「ふじの山」
                作詞:巌谷小波
                文部省唱歌
   あたまを 雲の 上にだし       435(75)
   四方の 山を 見下ろして       435(75)
   かみなりさまを 下にきく       435(75)
   ふじは 日本一の 山         372

   青ぞら 高く そびえたち       435(75)
   からだに 雪の きものきて      435(75)
   かすみの すそを とおくひく     435(75)
   ふじは 日本一の 山         372




        
★★わらべうた★★


 ≪昔から子どもに歌いつがれてきた歌。遊戯唄、子守唄などが多い。作詞
  者不詳が多い。特定の音数・韻律はもたない。「わらべうた」のリズム
  にあわせて、体を動かし、遊び楽しみながら、音読することができる。≫

  ホー ホー ほたるこい          25
  あっちの水は 苦いぞ           74
  こっちの水は 甘いぞ           74


  うさぎ うさぎ              33
  何見て はねる              43
  十五や お月さん             45
  見て はねる               23


  かくれんぼするもの よっといで      95
  じゃんけんぽんよ あいこでしょ      75
  もういいかい まあだだよ         55
  もういいかい まあだだよ         55
  もういいかい もういいよ         55


  ねんねん ころりよ おころりよ      445
  ぼうやは よい子だ ねんねしな      445

  ぼうやの おもりは どこへ 行った    445
  あの山 こえて 里へ 行った       445



          
★★軍歌★★


≪軍隊の愛国心と士気を高めるために作られ、歌われた歌。七五調が多いが、
ほかもある≫

       暁に祈る

      作詞:野村俊夫  作曲:古関裕而 
  1、
  あぁ あの顔で あの声で       75
  手柄頼むと 妻や子が         75
  ちぎれる程に 振った旗        75
  遠い雲間に また浮かぶ        75

  2、
  あぁ 堂々 の 輸送船        75
  さらば祖国よ 栄えあれ        75
  遥かに拝む 宮城の          75
  空に誓った この決意         75



      ラバウル小唄
       作詞:若杉雄三郎 作曲:島口駒夫

  1
  さらば ラバウルよ また來るまでは   77
  しばし 別れの 涙がにじむ       77
  戀し懷し あの島 見れば        77
  椰子の 葉かげに 十字星        75

  2
  船は 出てゆく  港の沖へ       77
  いとし あの娘の 打ちふるハンカチ   78
  声をしのんで  こころで泣いて     77
  両手 合わせて ありがとう       75



      
★★ことわざ(かるた)★★


≪音数律は自由であるが、一文節や連文節や一句全体が7音節を形成するの
 が多い。7音に集結するのが、おさまりが一番いいからのようだ。    
「かわいい子には旅をさせ」「かわいい子には旅をさせよ」の「よ」を 
 カットしているのは、7音結句がおさまりがいいからと考えられる。ま 
 た、句末が5音になっている個所も多い。5音も、おさまりがいいから
 と考えられる。2音、3音、4音は、一単語としての区切りとなっている≫

  い  犬も歩けば棒にもあたる    347(77)
  ろ  論より証拠          43(7)
  は  花よりだんご         43(7)
  に  にくまれっ子世にはばかる   66
  ほ  骨折り損のくたびれ儲け    77
  へ  下手の横好き         34(7)
  と  灯台下暗し          45(9)
  ち  ちりも積もれば山となる    345(75)
  り  良薬口に苦し         433(46)
  ぬ  ぬかに釘           32(5)
  る  類は友をよぶ         35
  お  老いては子に従う       424(46)
  わ  笑う門には福来たる      345(75)
  か  かわいい子には旅をさせ    435(75)
  よ  宵っぱりの朝ねぼう      65
  た  旅は道ずれ、世は情け     75
  れ  礼もすぎれば無礼になる    3442(76)
  そ  損をして、得をとる      55
  つ  月とすっぽん         34(7)
  ね  念には念をいれ        45
  な  泣きつらに蜂         52(7)
  ら  楽あれば苦あり        53
  む  無理が通れば道理引っこむ   3434(77)
  う  嘘から出たまこと       423(63)
  の  のど元すぎれば熱さ忘るる   4434(447)
  お  鬼に金棒           34(7)
  く  臭いものには蓋        342(72)
  や  安物買いの銭失い       76
  ま  負けるが勝ち         42
  け  芸は身を助ける        36
  ふ  武士は食わねど高楊枝     345(75)
  こ  転ばぬ先のつえ        432(72)
  え  縁の下の力もち        335(65)
  て  出る杭は打たれる       54
  あ  頭かくして尻かくさず     76
  さ  猿も木から落ちる       333
  き  聞いて極楽見て地獄      3423(75)
  ゆ  ゆだん大敵          34(7)
  め  目の上のたんこぶ       54
  み  身から出たさび        52(7)
  し  知らぬが仏          43(7)
  ひ  人のふり見て我がふり直せ   3443(77)
  も  門前の小僧習わぬ経を読む   5345
  せ  急いてはことを仕損じる    435
  す  好きこそものの上手なれ    435(75)

  住めば都              33(6)
  猫に小判              33(6)
  善は急げ              33(6)
  馬鹿のひとつ覚え          333(36)
  煮ても焼いても食えぬ        343(73)
  馬鹿も休みやすみ言え        3332(362)
  時は金なり             34(7)
  怪我の功名             34(7)
  なくて七癖             34(7)
  鬼に金棒              34(7)
  うそも方便             34(7)
  月とすっぽん            34(7)
  顔にどろをぬる           35(8)
  類は友を呼ぶ            35(332)
  恩をあだでかえす          333
  負けるが勝ち            42(6)
  論より証拠             43(7)
  知らぬは仏             43(7)
  ひとはたあげる           43(7)
  急がば回れ             43(7)
  高みの見物             44(8)
  びんぼうひまなし          44(8)
  たなからぼたもち          44(8)
  火中の栗を拾う           433(46)
  転ばぬ先のつえ           433(46)
  枯れ木も山のにぎわい        434(47)
  飛ぶ鳥後をにごさず         434(47)
  箸にも棒にもかからない       445
  立板に水              52(7)
  焼け石に水             52(7)
  身から出たさび           52(7)
  七転び八起き            53(8)
  習うより慣れろ           53
  ぬれぎぬをきせる          53
  猫の手も借りたい          54
  どんぐりの背比べ          55
  雨降って地固まる          55
  飼い犬に手をかまれる        524(56)
  石橋をたたいて渡る         533(56)
  早起きは三文の得          57
  井の中のかわず大海を知らず     5353(88)
  一寸の虫にも五分の魂        5434(97)
  親の心子知らず           64
  縁の下の力持ち           65
  案ずるより産むがやすし       66
  聞いて極楽見て地獄         75
  飛んで火に入る夏の虫        75
  渡る世間に鬼はなし         75
  触らぬ神にたたりなし        75
  安物買いの銭失い          76
  人のふり見てわがふり直せ      77
  帯に短したすきに長し        77
  おぼれる者はわらをもつかむ     77
  壁に耳あり障子に目あり       77
  坊主憎けりゃ袈裟まで憎い      77
  落は苦のたね苦か楽のたね      77
  おぼれる者はわらをもつかむ     77
  無理が通れば道理がひっこむ     78



          
★★標語★★


≪標語は、警句の働きが最大の役割だから、倒置文が多くみられる。先頭に
 来ると、その語が強調される。意味内容では、問いかけ文や誘いかけ文で
 始まる標語が多くある。また、標語には、同音数の繰り返しが多い。「5
 445」「575」などが多くある。第一句が「5」音で始まり、第二
 句が「4」音か「3」音の場合は第四句まであり、第二句が「7」音の場
 合は俳句5・7・5で結句している標語が殆どである。標語は、口でころ
 がして言ったときの、リズム調子のよさ、軽快さ、爽快感があるリズムの
 文句が多い≫

  とびだすな はしる車が かみつくぞ      575 
  はみがきで むしば やっつけ きれいな歯   575
  おかあさん へやの そうじは ぼくがする   575
  ちりひとつ ひろう子 いい子 いい心     575
  もういちど よく見てわたれ 手をあげて    575
  よく見たね 車こないね わたれるね      575     
  あわてるな 黄色は すぐに 赤信号      575
  じてんしゃも、いちじていしで、みぎひだり   575
  待つゆとり ゆずる心に 事故はなし      575
  あんぜんは 一人一人の 思いやり       575
  ふみきりだ 鳴らせ 心の 警報機       575
  ポイ捨ては しぜんはかいの はじまりだ    575
  わすれるな あそんだ あとの あとしまつ   575
  おいかけた ボールのさきに じこがまつ    575
  歯みがきが ごちそうさまの しめくくり    575
  いそぐとも 守れスピード 車間距離      575
  じてんしゃの ライトをつけて じこぼうし   575
  しめようね シートベルトは いのちづな    575     
  かていゴミ ぶんべつすれば しげんゴミ    575
  とびだすな 車は急に とまれない       575
  やめようね あぶない自転車 一人のり     575
  あんぜんは 車と 人のゆずりあい       575
  ねらってる あなたのバック かごの中     575
  きえたかな 気になる あの火 もう一度    575
  ゴミひろい にっこり わらう よい子ども   575
  みぎ ひだり しっかり 見てから わたろうよ 5445(585)
  あぶないよ かけ
だし とびだし まがりかど  5445(585)
  しめたかな げんかん うらぐち まどのカギ  5445(585)
  しょくじまえ 手あらい さっぱり きもちいい 5445(585)
  かみくずを ひろって こころも さっぱりと  5445(585)
  すききらい なんでも たべよう のこさずに  5445(585)
  すてきです しろい歯 かがやく その笑顔   5445(585)
  やめようね じぶんに されたら いやなこと  5445(585)
  むしばはね はみがき ひとつの こころがけ  5445(585)
  防犯は 鍵
かけ 声かけ 心がけ        5445
  手を合わせ にっこり 笑顔で「いただきまーす」5447(587)
  あそびません こわい 車の とおる道     6345     
  なかよし よい子は おそうじ じょうず    4443
  「どうしたの」 さしのべようよ やさしい心  577
  おはようの 声ひびきあう 朝の学校      577
  
はやね はやおき よくねむれ         345
  マッチ一本 火事のもと            75
  よい子はここで遊ばない            75
  注意一秒 けが一生              76
  命
落とすな スピード落とせ          77
  
んだらるな るならむな        77



        
★★キャッチコピー★★


≪七五調、五七調、短歌や俳句だけでなく、通常文や宣伝意図をずばりと言
 い得たフレーズのキャッチコピーが多い。最近は、後者の宣伝文が多くあ
 る。以下には音数律をもつキャッチコピーを列挙してみた。最近のキャッ
 チコピーは、以前ほど音数律にこだわらないのが多くなった。≫

  ありがとう、いいくすりです   57   太田胃散
  目指してる 未来がちがう    57   シャープ
  くしゃみ三回ルル三錠      76   ルル
  セブンイレブン いい気分    75   セブンイレブン
  コクがあるのにキレがある    75   アサヒスーパードライ
  痛くなったら すぐセデス    75   セデス
  三井住友ビサカード       75   三井住友銀行
  明日の自分に借りるのだ     75   アコム
  セブン・イレブン・いい気分   75   セブンイレブン
  三井住友VISAカード       75   三井住友銀行
  歯並びなんて 気にしない?   75   はならびジャパン
  お口くちゃくちゃモンダミン   75   モンダミン
  貼ってすっきりサロンパス    75   サロンパス
  ゴホンといえば 龍角散     76   龍角散
  キンチョーの夏、日本の夏    77   キンチョウ
  何も足さない 何も引かない   77   サントリー
  おいらはボイラー 三浦のボイラー77   三浦ボイラー
  それにつけても おやつはカール 77   カール
  電話でネット、そんぽ24    77   そんぽ24
  24時間 戦えますか      77   リゲイン24
  スカッとさわやかコカ・コーラ  85   コカコーラ
  ラッパのマークの正露丸     85   正露丸
  目のつけどころがシャープでしょ 85   シャープ
  お口の恋人 ロッテガム     85   ロッテ
  100人乗ってもだいじょうぶ  85   稲葉物置
  んーっまずい、もういっぱい   66   キューサイ青汁
  ピッカピカの一年生       66   小学館
  お尻だって洗ってほしい     67   TOTO
  清く正しく美しく        345(75) 宝塚歌劇団
  目の疲れは、奥へ奥へと攻めて来る  675 Q&Pコーワアイ
  六十代 寒い夜ほど よく起きる   675 ノコギリヤス
  わんぱくでもいい たくましく 育ってほしい 857  丸大ハム
  いいもの、ゴロゴロ、ワウワウ    444  WOWOW
  ぶり返す、その痛み、ちゃんと治したい! 558   痛散湯
  高麗人参で ピンピン強く逞しく   775   金氏高麗人参
  折れない自信 あの喜びが甦る!  775   金氏高麗人参

  美ックリするほど ぐっぐっーと アップ  863
     サッとひと塗り 白肌マジック  78 ラモーナ化粧品本舗



         
★★語呂合わせ★★


≪暗誦用の唱えコトバ。日本史、西洋史、暦、電話番号などに多くある。
唱えるのに調子がよく作成されている。言葉の語呂合わせなので、5音7音
は上記したものと比べて格段に少なくなっている。2音、3音の組み合わせ
が多い。4音、5音、6音、7音、8音が多い。同数音の繰り返しも多くあ
る。どの語群が年号であるかを知ることが大事となる。≫

日本史の例
538年 仏教伝来  「ごみ屋が拾った仏教」   84
593年 聖徳太子が摂政となる 「国民のため、と太子立つ」  76
607年 小野妹子が遣隋使となる 「群れなすカモメ妹子行く」 75
645年 大化の改新 「蒸し米炊いて祝う大化の改新」  738
701年 大宝律令  「大宝律令縄一つ」  85 
710年 平城京に遷都  「なんと綺麗な平城京」   76
794年 平安京遷都 「鳴くよウグイス(坊さん)平安京」  76
894年 遣唐使廃止   「白紙に戻す遣唐使」    75
1192年 源頼朝が鎌倉に幕府 「いい国つくろう鎌倉幕府」 87
1333年 鎌倉幕府滅亡  「鎌倉の一味散々敗れたる」  575 
1549年 キリスト教伝来 「以後よく広まるキリスト教」  86
1600年 関ヶ原の戦い 「誰でも知ってる関ヶ原1600年」 4458
1603年 徳川家康が江戸幕府開く「江戸に広まる三河の家康」744
1853年 黒船来航   「いやーござったペリーさん」   75
1868年 明治維新    「一つやろうや明治維新」  76
1871年 廃藩置県  「もう言わないで藩の名を」   75
1872年 学制・富岡製糸工場「いや、何をおいてもまず学べ」275
1889年 大日本帝国憲法公布「アジアでいち早く憲法を作る」 457
1923年 関東大震災   「震災で人、国散々」     544
1941年 太平洋戦争始開戦 「行くよ、一途に真珠湾」  345

 
世界史の例
870年 フランク王国分裂  「離ればなれのフランク王国」  78
1096年 第一回十字軍  「イスラムととっくむ十字軍」  545
1453年 東六間帝国滅亡  「いーよ、降参」   7
1492年 コロンブスのアメリカ大陸到着「コロンブス石の国発見」59
1688年 名誉革命起こる   「色はやっぱり名誉革命」   77
1840年 アヘン戦争  「アヘンは、嫌よー」     44
1914年 第一次世界大戦勃発 「行く意思あるのか一次大戦」 447
1917年 ロシア革命 革命得意なソビエト政権  4444
1920年 国際連盟成立  「平和には特に大きな国際連盟」  578
1939年 第二次世界大戦開戦 「戦苦しい二次大戦」    77


暦の例
西向く士は小の月(さむらい、十一月のこと) 455


電話番号の例
テレビショップで語呂合わせで申込電話番号を紹介している。また、友人、
知人、会社、学校などの電話番号を語呂合わせで暗誦している。
例。344−5710(みよしー来ないわ)
  541−4141(こよいーよいよい)
  441−1942(よよいー行くように)など


数学の例
円周率=3.14 159265 358979 32 38 46 26
    43 38 3279 5028 841971
産医師(4)異国に向こう(7)産後厄なく(7)産に(3)産婆(3)四
郎(3)次郎(3)死産(3)産婆(3)産に泣く(5)御礼には(5)早
よ行くない(5)

ルート2の平方根 ひとよ(3)ひとよに(4)ひとみごろ(5)
ルート3の平方根 人並みに(5)奢れや(4)
ルート5の平方根 富士山麓(6)オウム鳴く(5)
ルート7の平方根 菜に虫イナゴ(7)



         
 ★★地口★★


≪だじゃれの一種のコトバ遊び。唱えるのに調子がよい。5音7音が多い≫

言わぬが花の吉野山  75
驚き桃の木山椒の木  445
アイムソーリー、ヒゲソーリー、髭を剃るならカミソーリー 7575
願ったり叶ったり、晴れたり曇ったり   5545
馬勝った(美味かった)、牛負けた    55
「いずくも同じ秋の夕暮れ」→「水汲む親父秋の夕暮れ」  77
「しづ心無く花の散るらむ」→「しづ心無く髪の散るらむ」  77



       
 ★★定型詩★★


≪全体の行数や、一行の音数に一定の形式をもっている詩。≫


     初恋     
          島崎藤村

   まだあげ初めし前髪の  7・5
   林檎のもとに見えしとき 7・5
   前にさしたる花櫛の   7・5
   花ある君と思ひけり   7・5

   やさしく白き手をのべて 7・5
   林檎をわれにあたえしは 7・5
   薄紅の秋の実に     7・5
   人こひ初めしはじめなり 7・5



     千曲川旅情の歌
             島崎藤村

   小諸なる古城のほとり   5・7
   雲白く遊子悲しむ     5・7
   緑なすはこべは萌えず   5・7
   若草も藉くによしなし   5・7
   しろがねの衾の岡辺    5・7
   日に溶けて淡雪流る    5・7

   あたたかき光はあれど   5・7
   野に満つる香も知らず   5・7
   浅くのみ春は霞みて    5・7
   麦の色わづかに青し    5・7
   旅人の群はいくつか    5・7
   畠中の道を急ぎぬ     5・7



      落葉松
             北原白秋

   からまつの林を過ぎて、   5・7
   からまつをしみじみと見き。 5・7
   からまつはさびしかりけり。 5・7
   たびゆくはさびしかりけり。 5・7

   からまつの林を出でて、   5・7
   からまつの林に入りぬ。   5・7
   からまつの林に入りて、   5・7
   また細く道はつづけり。   5・7

   からまつの林の奥も、    5・7
   わが通る道はありけり。   5・7
   霧雨のかかる道なり。    5・7 
   山風のかよふ道なり。    5・7
      (以下略)



     てがみ
            寺山修司

   つきよのうみに     7
   いちまいの       5
   てがみをながして    8
   やりました       5

   つきのひかりに     7
   てらされて       5
   てがみはあおく     7
   なるでしょう      5

   ひとがさかなと     7
   よぶものは       5
   みんなだれかの     7
   てがみです       5



    おたまじゃくしは なかないね
                 宮沢章二

   おたかじゃくしは    7
   なかないね       5
   ぷる ぷる ぷるっと  8
   みずのなか       5
   あかちゃんなのに    7
   なかないね       5

   おたまじゃくしは    7
   なくんだよ       5
   けろ けろ けろっと  8
   かえるさん       5
   おおきくなって     7
   なくんだよ       5



    きりんは ゆらゆら
             ぶしか えつこ

   きりんは ゆらゆら   8
   よってくる       5
   うえから そっと    7
   よってくる       5
   かおだけ ぼくに    7
   よってくる       5
   からだは むこうに おいといて  8・5

   きりんは ゆらゆら   8
   よってくる       5
   なぜだか ぼくに    7
   よってくる       5
   やさしい め して   7
   よってくる       5
   こえも むこうに おいといて   7・5



     びりの きもち
             坂田寛夫

   びりのきもちが わかるかな    7・5
   みんなのせなかや 足のうら    8・5
   じぶんの鼻が みえだすと     7・5
   びりのつらさが ビリビリビリ   7・6

   だからきらいだ うんどうかい   7・6
   まけるのいやだよ くやしいよ   8・5
   おもたい足を 追いぬいて     7・5
   びりのきもちが ビリビリビリ   7・6



         このページのトップへ戻る