モダリティと音声表現               2012・10・07記
文末表現(動詞、助動詞、終助詞、
述部にある形式名詞「の」、
イントネーション)




      
モダリティと音声表現


モダリティとは


 語り手の主観的な判断や態度を表している表現のしかたをモダリティと
言います。
 例えば「太郎は学校へ行った。」という文があります。これは「太郎は
学校へ行った。」という客観的事態をあらわしている命題文です。これに対
して「太郎は学校へ行ったらしい。」「太郎は学校へ行ったようだ。」「太
郎は学校へ行ったかしら。」などの文は、「太郎が学校へ行った。」という
客観的事態に、語り手の主観的な判断、態度を付け加えている文です。
 これら三つの文は、「太郎が学校へ行った。」という命題文に対して、語
り手がプラスアルファー(発話時の語り手の心的態度、客観的事態に対する
語り手の主観的な言表態度)を付け加えています。「らしい」「ようだ」
「かしら」などは、語り手の主観的な判断、態度を表明しています。これら
文章個所をモダリティと言います。

 モダリティは、文法論でいうヴォイス、テンス、アスペクトとならぶ文法
範疇のひとつです。モダリティはムードと呼ばれることもあります。モダリ
ティは、音声表現するときに語勢や上げ下げや強弱や緩急などを伴うことが
多くあります。話し手の主観的な態度や気持ちの表明ですから、文学作品で
は会話文の話しぶりや話調に多く表れ出てきます。日常の言語生活で使用し
てる会話文にも多く表れ出てきます。

 説明文は、筆者が読者に向かって、ある事柄を解説したり、自分の主張
を表明したりしている文章です。筆者の社会事象や自然事象に対する主観的
な判断、気持ち、評価が文章のいたるところにちりばめられています。筆者
の主観がちりばめられている文章がモダリティ個所です。つまり、筆者が読
者にここを主張したい、訴えたいという事柄は、音声表現では種々の抑揚を
伴って表現されます。説明文は解説文や意見文や主張文ですから、強調表現
の抑揚づけが多く用いられます。

  モダリティをしめす語句には、次のようなものがあります。動詞(命令
形、断定形)、助動詞(らしい、ようだ、そうだ等)、副詞(たぶん、おそ
らく、きっと等)、副助詞(さえ、だけ、こそ等)、接続助詞(ので、から、
が等)、終助詞(ね、さ、よ等)、形式名詞+だ(はずだ、のだ、わけだ
等)などです。

 本章(第16章)では、モダリティを含む文として下記のものを扱ってい
ます。

    文末の音声表現(動詞、助動詞、終助詞)
    述部にある形式名詞の音声表現(のだ。はずだ。ことだ。)
    副詞の音声表現
    副助詞の音声表現
    感動詞の音声表現
    イントネーション

 なお、モダリティを含まない文は、「命題論理と音声表現」の項目で詳述
しています。


モダリティと音声表現

 次にこれらモダリティを含む文を使用して、実際に音声表現をしながら
種々の音調を添える練習をしていくことにします。モダリティでは、種々の
音調の中でも、強調になる表現が多くあります。下記の練習文では、モダリ
ティの語句を赤字で書いてあります。赤字を強調音声の表情にして読んでみ
ましょう。赤字個所を目立たせて、際立たせて読んでみましょう。

 以下の練習文の総ての赤字個所が、いつでも強調した音声表現になると
いうことではありません。文章内容(文脈)によって強調した音声表現にな
る場合と、ならない場合があります。読み手主観の解釈の仕方によっても違
ってくるでしょう。読み手主観の解釈の違いによって、どの程度の目立たせ
にするか、強い、弱いの度合いも違ってくるでしょう。

 モダリティの音声表現のトレーニング練習をしましょう。ここでは、文章
の意味内容(文脈)は傍に置いといて、モダリティ語句の語彙的意味から推
測して、練習文の一文が意味してる(読みとれる)範囲内で強調した音声表
現をすることにします。ここに前後の文章を詳細に引用できませんので。

 モダリティ語句を赤字で書いています。ここでは、総ての赤字文字を目立
たせて印象に残る強調の声立てにして読む練習をすることにします。強調の
音声表現に慣れる、習熟する練習をするのが大きな目標ですから。

 強調の仕方には次の五つの方法があります。どれを採用して音声表現する
かは、読み手(練習者)の自由な選択にまかせします。

      強調のしかた1……「高く,強く読む」
      強調のしかた2……「低く,弱く読む」
      強調のしかた3……「のばして読む」
      強調のしかた4……「速く読む」
      強調のしかた5……「間をあけて読む」

 強調の音声表現は、文章全体の目立たせない流れの中に一か所だけ目立つ
個所があるから強調される読み方になるのです。文章のいたるところが目立
つ(強調する)個所では、ただワンワンとガナリタテルだけの、ひたすら大
声で叫んでるだけになり、これでは聞き手(聴衆)に訴えかけない、目立た
ない、うるさいだけの読み方になってしまいます。
 ということを前提にして、下記の文末表現の赤字個所を強調した音声表現
にする練習をしていきましょう。




        
文末の音声表現




 文末表現には、語り手が聞き手に対してどんな気持ち・態度で話している
かが表現されています。語り手の主観的な判断、態度がこめられています。
命令、禁止、さそいかけ、疑問、推量、感動、強意などいろいろあります。



    
文末表現1(動詞、助動詞の部)


 文末表現には、語り手の伝達意図がはっきりと出ている言い方があります。
強い言い方、やわらかい言い方、いろいろあります。
 、同じ「食べる」でも、「食べましょうね。」「食べましょうか。」と比
べて、「食べろ」「食べなさい」「食べてはいけない」「食べてはだめで
す」などは強い言い方です。同じ「食べろ」でも、叱りつけるような「食べ
ろ」もありますし、「たべましょうね」という気持ちでそっと、低く、やさ
しくいう言い方もあります。
 強い言い方は、語り手の強い意志や要求がこめられており、音声表現では
強調した目立たせた言い方になります。文末表現には、つよい言い方、柔ら
かい言い方、文章内容によっても、語られる場面によっても違ってきます。

 次は、強い言い方の文です。そのように表現よみしてみましょう。

1、ごはんを食べ
。 (命令)

2、ごはんを食べ
なさい。 (命令)

3、ごはんを食べては
いけない。 (禁止)

4、ごはんを食べては
だめです。 (禁止)

 これらは、語り手の強い意志や要求がこめられており、音声表現では目立
たせた命令口調の強い言い方になります。


 次は、同じ内容での、やわらかい言い方の文です。表現よみしてみましょ
う。

1、ごはんを食べ
ましょう。  (さそいかけ)

2、ごはんを食べ
ましょうね。 (さそいかけ)

3、ごはんを食べ
ましょうか。 (さそいかけ)

4、ごはんを食べ
ましょうよ。 (さそいかけ)

 これらは、愛情のこもったていねいな言い方になります。しかし、語られ
てる場面によっては強い言い方の音声表現になる場合もあります。


    強い言い方の音声練習(その1)


 文末表現には、強く言いきった断定的表現、自分の考えを強く押し出てい
る言い方、確信をこめ自信をもって相手に語ってる言い方などがあります。
この言い方は、語り手の独断的な色彩が強い言い方です。「命令形、はずだ。
はずである。はずがない。ねばならない。のだ。のである。」などがそうで
す。

 次の文を「強い言い方」で読んでみましょう。どんな場面か自分で自由に
想像しながら、赤字個所にこだわらないで、文意が外へ表れでるように「強
い言い方」で表現よみをしましょう。遠慮しないで、思いきって、図太く、
大胆に、ドカンと表現していくことが上手に読むコツです。

(練習文1)うるさい、だまって聞
。(命令)

(練習文2)うるさい、だまって聞き
なさい。(命令)

(練習文3)さっさと歩
。(命令)

(練習文4)さっさと歩き
なさい。(命令)

(練習文5)食事中に立ち歩くのは
やめろ。(禁止)

(練習文6)食事中に立ち歩くのは
やめなさい。(禁止)

(練習文7)ぼくは、ぜったいに行き
ません。(強い意志)

(練習文8)ぼくは、ぜったいに行か
ない。(強い意志)

(練習文9)歩きながら本を読んでは
いけない。(禁止)

(練習文10)もう、帰っ
。(強い命令)

(練習文11)さあ、どい
、どい。(強い命令)


    強い言い方の音声練習(その2)


(練習文1)ぼくは、行かない
つもりだ。(強い意志)

(練習文2)行き
たい、行きたい、ぜひ行きたい。(強い希望・願望)

(練習文3)君は、絶対に行く
べきだ。(当然・強い命令)

(練習文4)君は、絶対に行か
ねばならない。(当然・強い命令)

(練習文5)小学生になったら、近所の人には進んで挨拶をし
なさい。 
                            (当然)
(練習文6)そんなこと、ある
はずがない。(打ち消し)

(練習文7)静かにし
なさい。(強い命令)

(練習文8)うそをついては
いけません。(強い命令)

(練習文9)ぐずぐずしないで、早く出発
しろ。(強制、命令)

(練習文10)もう少し、はやく歩い
てくれ。(非難、命令)


    両方(強い、柔らかい)の音声練習


 次の練習文を、上は「柔らかい言い方」で、下は「強い言い方」で読んで
みましょう。


(練習文1)だまって、私の話しも聞いて
ちょうだい
(練習文1)だまって、私の話しを聞


(練習文2)さあ、急いであるき
ましょう
(練習文2)さあ、急いである
。急、急

(練習文3)食事中に立ち歩くのは
よしましょう
(練習文3)食事中に立ち歩いては
だめだ


(練習文4)小学生になったら、近所の人に進んで挨拶を
しましょう。
(練習文4)小学生になったら、近所の人に進んで挨拶を
しなさい。

(練習文5)これを、はこんで
ちょうだい
(練習文5)これを、はこ


(練習文6)静かにし
ましょう
(練習文6)静かにし


(練習文7)これを、そっと、見て
ごらん
(練習文7)これを、そっと、見


(練習文8)この本を、ぼくに貸して
くださいくれません?くれません
                      
)。
(練習文8)この本を、ぼくに貸し
。(貸)。



     やわらかい言い方の音声練習


 次の文を「やわらかい言い方」で読んでみましょう。

 語り手の主観的意志が入った言い方に「だろう」「そうだ」「ようだ」
「らしい」「かもしれない」「ちがいない」「まい」などの文末表現があり
ます。推量の根拠や確信の度合いが不確かな言い方です。これら文末表現は、
どちらかというとやわらかな言い方になります。どんな場面かを自由に想像
しながら表現よみしていきましょう。

(練習文1)この秋も、台風は、三つは上陸する
だろう。(推量)

(練習文2)彼はその頃はまだ小学生だった
そうだ。(推量)

(練習文3)この成績では、遊んでばかりで勉強しなかった
ようだ
                             (推量)

(練習文4)彼の話からすると、私は随分うらまれている
らしい
                             (推量)

(練習文5)彼の話からすると、私は随分うらまれいる
みたいです
                             (推量)

(練習文6)明日の試合は、練習量からみて優勝することはある
まい
                             (推量)

(練習文7)彼はひょっとすると、すでに家に帰っている
かもしれない
                             (推量)

(練習文8)ことしの冬は、きょねんの冬よりさむ
そうです。 (推測)

(練習文9)たかし君、きょう、サッカー練習に行く
みたいだ。(推測)

(練習文10)ひょっとすると、すでに母は家に帰っているかもしれません。
                             (推量)

(練習文11)さっき出て行った人は、きっと山田先生に
ちがいない
                             (推量)

(練習文12)この秋も、台風は少なくとも三つは上陸する
でしょう
                             (推量)


      
文末表現2(終助詞の部)


 終助詞は文の終止に用いられ、語り手の主観的な判断、態度を表していま
す。終助詞は、疑問、禁止、感動、強意、驚き、非難などの態度をあらわし
ます。
 次の練習文を、文意にそって、強めの言い方で、読んでみましょう。語っ
てること(表現してる内容)がはっきりと分かる読み方で表現よみしてみま
しょう。

     終助詞の音声練習(その1)


(練習文1)ほんとに百円で買えるんです
。(疑問、質問、驚き)

(練習文2)そんなこと、わたしにできるものです
。(反語)

(練習文3)やっぱり、あなたでした
。(驚き、問いかけ)

(練習文4)もう、そろそろ出かけます
。(問いかけ、質問非難)

(練習文5)きょろきょろする
。(禁止)

(練習文6)近寄ると、犬にかまれる
。(強い指示、忠告)

(練習文7)あしたハイキングに行こう
。(さそいかけ)

(練習文8)早くこっちへ来い
。(要求)

(練習文9)ほんとうに知らないんです
。(念押し、確かめ)

(練習文10)駅には三十分で行けます
。(確認告知)

(練習文11)そこはあぶない
。そんなことをしてはいけない
                        (確認・念押し)

(練習文12)そんなこと、あるものです
。(反語)


    終助詞の音声練習(その2)


(練習文1)ここは静かだ
ねえ。(感動、詠嘆)

(練習文2)これで、間違いはない
。(念おし、確かめ)

(練習文3)そんなこと、するな
。(要求)

(練習文4)実にみごとな食べっぷりです
。(感動)

(練習文5)まあ、きれいなバラの花です
こと。(感動、詠嘆)

(練習文6)へんだ
、おかしい。(強意)

(練習文7)みなさん、ふざけるのはよしましょう
。(さそいかけ)

(練習文8)もうすこし静かにしてくれません
。(お願い)

(練習文9)どうして、毎年毎年同じようにお米を作り続けることができ
       たのでしょう
。           (問いかけ)

(練習文10)きょう、図書館へ行って、おもしろい本を読んだ

                           (強意)

(練習文11)犬小屋に近づく
。犬にかまれる。   
                   (な。禁止)(ぞ。強い指示)

(練習文12)きみは、行く
。 行くとも
                 (か。質問)(とも。確実な断定)




    
述部にある形式名詞「の」




 形式名詞には、「の、こと、ところ、とき、あと、わけ、ていど、ひと、
もの、ほう」などがあります。形式名詞は、学者によって「形式体言」とか
「準体助詞」とか「吸着語」とか「吸着辞」とか呼んだりもします。
 ここでは、形式名詞「の」が文末にある文の音声表現のしかたについて
学習します。
 主部にある形式名詞「の」(……のは、)については、「命題論理と音声
表現」の章で説明しています。本章では、述部にある形式名詞「の」(……
のだ。……のです。)について説明します。文末表現(……のだ。……ので
す。)は、語り手の主観的態度のモダリティを示しますので、本章で説明す
ることになります。


述部にある形式名詞「の」の音声表現

(例文1)アフリカと南アメリカ大陸は、元は一つの大陸だったのだ。

 (例文1)の形式名詞は、述語部分「大陸だったのだ」の「の」です。
「の」は、文の述語の一部分を構成しています。
  形式名詞「の」は、「の」の前までの文「アフリカと南アメリカ大陸は、
元は一つの大陸だった」をひとくくりにくくって「の」でまとめています。
「の」は、「の」でひとくくりにして「の」以前の部分を名詞化する働きを
しています。「の」に断定の助動詞「だ」が接続して、断定した文終了の陳
述統括をしています。「のだ」は断定機能を強める言い方です。

 「……のだ」という言い方は、語り手の主観的な強意の価値評価を加えて
語っている言い方です。語り手が自信をもって「こうである」と断定して語
っている言い方です。語り手の確信的な断定的な判断をこめた言表態度です。
相手により強く印象づける、説得同意にひきこもうとする言い方です。語り
手が「これは、こうなのだ」と説明口調で、自分の主観的な解釈、評価を加
え、その情報を強調して語ってる言い方です。
 ですから、「……のだ。……のです。」を音声表現するときは、この個所
に音声的力点(アクセント)をおいた読み方になるのがふつうです。「元は
一つの大陸だったのだ」と、「のだ」の個所に自信をもって堂々と語ってい
る(主張している)言い方になります。「のだ」を強調音声にして読むとう
まくいきます。
 ただし「のだ」だけがとびだした読み方にしてはいけません。文全体の流
れを大切にして、文全体の強調変化の流れにも気をつけて読むようにしまし
ょう。


    述部にある形式名詞「の」の音声練習


 では、実際に声に出して、次の赤字個所を強調する音声表現で読んでみま
しょう。自信をもって、確信的に断定する言い方の音声表現にしましょう。
「の」以前の事柄をすべて「の」でひっくるめて、「のだ」と強調する言い
方で読みましょう。

 次の練習文の文末「のだ。のです」部分を、自信をもって確信をこめて
堂々とした言い方で読んでみましょう。

(練習文1)先生は、わたしたちのことを心配して、一生けんめい考えてく
      れている
のだ

(練習文2)コンピュータもブルドーザーもなかった時代に、古代の職人た
      ちは千年たってもびくともしない建物をつくり上げた
のだ

(練習文3)古代の建て方とできるかぎり同じ方法で、現代に再現しようと
      いう
のです。

(練習文4)大陸移動説は、科学の進歩によって見事に証明された
のだ

(練習文5)みな、かれに背を向けて、口をきく者
さえだれもいない。クク
      ルの気持ち
など、だれ一人分かろうとしないのだった
    (「さえ」「など」は副助詞なので、これも強めに読んでいい。)

(練習文6)アネハヅルの群れはヒマラヤ山脈をこえてインドにわたってい
      く
のです

(練習文7)こうして、サクラソウとトラマルハナバチは、おたがいにぴっ
      たりの、よい協力者となっている
のです

(練習文8)わたしはそのとき、水兵だったのです。
      広島から三十キロばかりはなれた呉の山の中で、陸戦隊の訓 
      練を受けていた
のです。そしてアメリカの飛行機が原爆を落 
      とした日の夜、七日の午前三時ごろ、広島の町へ行った
ので 
      


(練習文9)二人で話し合った結果、まず、なぜ富士山の噴火に備えた訓 
     練がこれまでなかった
のか、なぜ訓練をすることになったのか
     この二つの疑問を中心に取材しようと決めた
のだった。

<(練習文9)にある「なぜ」は、陳述副詞です。陳述副詞の呼応で、「な
ぜ」とくれば、結びは「か。の。」です。「なぜ………か。の。
(疑問表現)」は、ひとつながりに読むようにします。>


参考資料

 次の(例文1)と(例文2)とをくらべてみましょう。

(例文1)先生は、わたしたちのことを心配して、一生けんめい考えてく 
     れている
のだ

(例文2)先生は、わたしたちのことを心配して、一生けんめい考えてく 
     れている
のだった

 (例文1)の「のだ」は現在形、(例文2)の「のだった」は過去形、過
去からの継続形です。
(例文1)と(例文2)とは、意味内容に少しばかり違いがあります。

 (例文1)は、確信をもって断定している言い方です。語り手が論理的に
「こうである」と自信をもって断定している言い方です。語り手の主観が強
く出ている決めつけている言い方です。

 (例文2)の「のだった」は、文学的、詩的な言い方です。物語や小説や
詩などに多く使われる言い方です。
 (例文2)の言い方は、これまでの過去を思い出して回想し、ある種の情
緒的な気分にひたって過去を追想し、過去に思いをめぐらしている言い方で
す。音声表現のしかたは、余情や余韻を残している読み方になります。過去
を思いめぐらし、余情や情趣や感興をたっぷりと現在にまで引きずっている、
過去の思いがまだ残っていて切れてない、残響の余韻が継続しひびきあって
いる読み方になります。

 「た」には、回想・追想のほかにも、いろいろな意味を表します。

   あれは、昨日のことだっ
。(回想・追想)
   きょうは遠足だっ
。(過去)
   いま、帰りまし
。咲い、咲い。(完了)
   旅に出
ときは、人の情けが身にしみる。(継続)
   わかっ
、わかっ。(確認)
   さあ、どい
、どい。(命令)


【ほかにもある形式名詞】

 形式名詞は「の」のほかにもいろいろあります。ほかにも形式名詞はたく
さんあります。
下記に形式名詞が文末表現になっている文を集めています。「はず」「わ
け」「こと」「とおり」「ばかり」「ところ」などです。

 音声表現のしかたは、「のだ」「のです」と同じ読み方です。そのつもり
で声に出して読んでみましょう。

(練習文1)いま、ちょうど、食事が終わった
ところです

(練習文2)人身事故があったんですか。道理で電車が混んでいた
はずだ

(練習文3)二人は立場が違いのだから、意見が合わない
はずです。

(練習文4)人身事故があったんですか。道理で、電車が混んでいた
はずだ。

(練習文5)どうやらこれで一件落着という
わけです。

(練習文6)それは、とんでもない
ことです。

(練習文7)遊びたければ、早く宿題を終わらせてしまう
ことです

(練習文8)ちょうどよかった。今、君に電話しようと思ってた
ところだ。

(練習文9)いま、君に電話しようと思っていた
ところだ。

(練習文10)ただただ朝から晩まで働く
ばかりだ。

(練習文11)そら、ごらん、ぼくが言った
とおりだ。




   
イントネーション


イントネーションによるモダリティ表現


 モダリティとは、語り手の発話時の心的態度、主観的な言表態度のことで
した。「発話時の心的態度、主観的な言表態度」の音声表現は、種々のイン
トネーションの変化で表現することもできます。
 次に読み声によるイントネーションの変化でモダリティを表現してみよう。
 下記の上部の「  」の文を、(1)と(2)の意味内容になるようにイ
ントネーションの変化で表現よみしてみましょう。意味内容に合うように文
全体のイントネーショの変化(上げ下げ変化、強弱変化、緩急変化、声量変
化、リズム変化)をつけて音声表現してみましょう。

「いたくない。」
  (1)打ち消して言う。
  (2)質問して言う。

「ごみ、ちらかしてかまいません。」
  (1)質問して言う。
  (2)「いいです」と認めている。答えている。

「これはなんですか。」
  (1)相手に質問してる。答えを求めている。
  (2)相手を大声でしかりつけいる。

「ドッジボールするの。」
  (1)うれしい気持ちで質問している。
  (2)ドッジボールは嫌いなの。いやだなあ、という気持ちで質問して
     る。

「勝った。」
  (1)ばんざあい。勝ったぞ。うれしい気持ちで叫ぶ。
  (2)疲れたなあ。やっと勝ったよ。ひとりごとで口からふっと出た。

「ワン、ワン」
  (1)かわいらしい小犬の鳴き声
  (2)こわそうな、大きな犬の鳴き声

「なに」
  (1)怒って言う
  (2)もう一度、言ってください。

「はい」
  (1)喜んで返事している
  (2)つまらなそうに返事している
  (3)名前を呼ばれて返事している

「行く。」
  (1)君は行くか。と、相手に質問している。
  (2)ぼくは行くつもりだ。自分の意思を語っている。
  (3)「行くなんて嫌だ。と自分の不満を語っている。

 以上の文例は、拙著『音読の練習帳3(ことばのきまりと音読のしか
た)』(一光社、1989)から引用しています。このような文例は、拙著『す
ぐ使える音読練習プリント』(民衆社、2000)低中高別の三冊などにも、た
くさん掲載してあります。
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