命題論理と音声表現           2012・10・15記
対比表現の音声表現





         
対比表現




 二つ以上のものをならべて、同じ点や違っている点を明らかにしている文
があります。ただならべているだけでなく、ならべ部分を、付き合わせて、
比べている文です。このような文の音声表現のしかたは、付き合わせ、比べ
ている思いをこめて読みます。


       
対比の音声表現のしかた


次の(例文)は、どのように音声表現すればよいでしょうか。
どんなことに気をつけて読めばよいでしょうか。
例文で調べてみましょう。


(例文1)
 けれど、豆太のおとうだって、くまと組みうちして、頭をぶっさかれて死
んだほどのきもすけだったし、じさまだって、六十四の今、まだ青じしを追
っかけて、きもをひやすような岩から岩のとびうつりだって、見事にやって
のける。                斎藤隆介「もちもちの木」

【音声表現のしかた】
豆太のおとうと、じさまを比べています。おとうも、じさまも、すごく勇気
のある行動をした人だったとあります。二人を自慢している気持ちをこめて
音声表現します。二人の偉さを強調して音声表現します。
「豆太のおとうだって、これこれだ。」「じさまだって、これこれだ」と、
豆太の弱虫と比べて、おとうとじさまの勇気ある行動を際立てて音声表現
するようにします。赤字個所は、やや強めに読んで目立たせます。

 
けれど□、豆太のおとうだって、くまと組みうちして、頭をぶっさかれ
て死んだほどのきもすけだったし
じさまだって六十四の今まだ
じしを追っかけて、きもをひやすような岩から岩のとびうつりだって、
見事
やってのける

 □は、そこで間をあけるしるしです。じさまと、おとうと、二人の区切り
個所で少しだけ間をあけます。おとうの文章部分をひとつながりに読み、じ
さまの文章部分もひとつながりに読みます。
 「けれど」は逆接の接続詞です。「けれど」の「け」を強めの音にして読
み出し、前段落と意味内容が違っていることを転調した音調で示します。


(例文2)
 この地図は、わたしたちが学校などでよく目にするものである。日本が真
ん中に、東側に南北アメリカ、西側にアジア、ヨーロッパ、アフリカ、南側
にオーストラリアがある。

【音声表現のしかた】
 地図に描いてあるそれぞれの国の位置の違いについて語っています。
日本を真ん中に置く。すると、東側に……、西側に……、南側に……と、そ
れぞれ東側、西側、南側を付き合わせ比べています。「東側に……、西側に
……、南側に……」の区分けがはっきりと分かるように読むことが、ここで
はとても重要です。

 この地図は、わたしたちが学校などでよく目にするものである。□□

真ん中に□□東側に南北アメリカ□□西側にアジア、ヨーロッ
パ、アフリカ□□
南側にオーストラリア□がある。

□は、間をあけるしるしです。□の数は、間をあける時間の長さをしめしま
す。□の数が多いほど長い間になります。(   )の中はひとつながりの
読みます。
それぞれの間隔を□で区切っています。「日本」の「に」、「真ん中」の
「ま」、「東側」の「ひ」、「西側」の「に」、「南側」の「み」、の出だ
しの音を少しばかり強めに読み出すと対比していることがはっきりと声に出
ます。


(例文3)
 わたしたち人間の本当の不幸は、貧しいことや、病気や空腹で死ぬことで
はない。本当に不幸なことは、貧しかったり病気だったりするために、だれ
からも相手にされないことだ。みんなから見捨てられて、さびしい思いに追
いやられることが、いちばんつらいことだ。そうテレサは考えたのです。

【音声表現のしかた】
 テレサが考えた「本当の不幸とは」について書いています。「本当の不幸
は、コレコレでない。本当に不幸なことは、コレコレである」という大枠の
区切りを大切にして読みます。二つの対比・区別を意識して音声表現します。
 前者「本当の不幸は」、後者「本当に不幸なことは」の違いに注目します。
この二つは話題提示のリードことばですので、二つの「本当」を強めに読み
出します。特に後者「本当に不幸なことは」にはより一層に強めて読み出し
て聞き手の意識を喚起させます。
 また、「だれからも相手にされない」と「みんなから見捨てられて、さび
しい思いに追いやられることが、いちばんつらい」に気持ちや思いをこめて
読んでいくとよいでしょう。

 わたしたち人間の
本当の不幸は、貧しいことや、病気や空腹で死ぬこと
ではない。)本当に不幸なことは、貧しかったり病気だったりするため
に、だれからも相手にされないことだ。)(みんなから見捨てられて、さび
しい思いに追いやられることが、
いちばんつらいことだ。】のように音声
表現します。「本当に不幸なことは」は、ゆっくりと読んで強調するという
方法もあります。


(例文4)
 川には瀬とよばれる所と、淵とよばれる所があります。瀬は川の水が浅く
速く流れている所、淵は川の水が深くよどんでいる所のことです。

【音声表現のしかた】
 瀬と淵とをつき合わせて比較してます。瀬とはこれこれだ。淵とはこれこ
れだ。瀬と淵とを、比較してるように区分けしながら読みすすめます。瀬と
淵との区別がはっきりするように読みます。赤字個所は、やや強めに読んで
目立たせます。

川には
とよばれる所と)(とよばれる所があります。)(は川の水
が浅く速く流れている所
)(は川の水が深くよどんでいる所のことです。


(例文5)
 いつもは、赤いさつまいもみたいな元気のいい顔が、今日はなんだかしお
れていました。               新美南吉「ごんぎつね」

【音声表現のしかた】
 ごんぎつねが、いつもと違う兵十の顔色の様子の変化をよみとって語って
います。いつもは元気のいい顔、きょうはしおれている顔、と比べて語って
います。「いつも」と「きょう」の対照的な顔を、比べてるように読みます。
赤字個所は、やや強めに読むとよいでしょう。

 (
いつもは、赤いさつまいもみたいな元気のいい顔が、)(今日はなんだ
かしおれていました。) 



      
 対比表現の音声練習


【練習問題】


 次の文は、何と何とを比べていますか。
・ひとつながりに読むところにカッコを書き入れましょう。
・どんなことに気をつけて読めばよいですか。


(練習文1)
 お向かいのけんちゃんは、わけもなくぼくをぶつし、おすましのくみちゃ
んは、ぼくに会うたびに顔をしかめます。のら犬はうなって歯をむき出すし、
自動車は、タイヤをきしませて走っていきます。

(練習文2)
 まんがのコマは、物語の展開に重要な役割を果たします。細かいコマや小
さなコマがくり返されると、物語のテンポが速まり、大きなコマや変わった
形のコマが入ると、場面の印象が強まります。

(練習文3)
 人と話をするときに、相手の目をじっと見るか、それほど見ないようにす
るかは、その文化あるいは習慣によってだいたい決まっているらしい。日本
では、話をしている相手をあまりじっと見つめるのは、特に相手が目上の人
の場合には失礼だとされる。ところが、ヨーロッパやアメリカでは、話すと
きには、相手の目をしっかり見るのが誠意を表す態度で、礼儀にかなったこ
とであり、そうしないような人は信用できないとされるそうだ。

(練習文4)
 日本の米とインドの米とでは、形がちがうことに気づくでしょう。日本の
米は丸く、インドの米は細長い形をしています。
ちがうのは、形だけではありません。はしでつまんでみると、日本のご飯は
つまみやすいけれど、インドのご飯はつまみにくく、こぼれ落ちてしまいま
す。手でつまんでみると、日本のご飯はねばり気があり、手にくっつきます
が、インドのご飯はさらさらして手につきません。
             森枝卓士「手で食べる、はしで食べる」
(練習文5)
 日本では、くらしの基本である「衣食住」のどれにも、「和」と「洋」が
あり、「食」には和食と洋食があり、「住」には和室と洋室があります。
「和」は、伝統的な日本の文化にもつづくもので、「洋」は、主としてオン
米の文化から取り入れたものを指します。
 和室は、ゆかにたたみをしいて仕上げ、あまり家具を置かないようにしま
す。一方、洋室は、板をはったり、カーペットをしいたりしてゆかを仕上げ、
いすを代表として、テーブル、ベットなど、部屋の目的に合わせた家具を置
きます。

(練習文6)
 最近になって、ゲンジボタルのおすが集団でまたたくときの光の間隔が、
東日本と西日本とではちがっていることが発見されました。西日本では約二
秒ですが、東日本では約四秒とのんびりしているのです。

(練習文7)
 ゲンジボタルは、はらの先たんに近いところが光りますが、あすとめすと
では、その光の強さにちがいがあります。強く光り、つけたり消したりしな
がら飛び回っているのがおすです。一方、草や木の葉の上にじっととまって、
弱く光っているのは、たいていめすです。
 おすは、めすの弱い光を見つけると、飛びながら近づいてきます。そして、
いちだんと明るく光をつけたり消したりします。すると、めすも、強い光に
またたいて、おすにこたえます。

(練習文8)
 アジアは、西は地中海沿岸からアフガニスタン、イラクやクウェート、サ
ウジアラビアなどです。北は広大な高原をかかえるモンゴル、南はインドや
パキスタン、赤道の通るインドネシアの島々まで入ります。東は中国大陸、
朝鮮半島、そして、そのいちばん東に日本列島があります。

(練習文9)
みなさんは、自分がアジアの一員であるという自覚を持っているでしょうか。
日本の一員と呼ばれてもおかしくはないが、アジアの一員と呼ばれることに
は、とまどう人もいるかもしれません。



答え(一つの参考例です。このの通りでなくてもよい。)

(練習文1)
 のら犬や自動車まで書いてあると、何となく被害妄想な「ぼく」みたいで
すね。「ぼく」に対して、「けんちゃんは、こうだ。くみちゃんは、こうだ。
のら犬は、こうだ。自動車は、こうだ。」と、「ぼく」に対する態度につい
て、四つをならべて、比較しています。赤字個所は、強めに読んで、目立た
せるとよいでしょう。
【(お向かいの
けんちゃんは、わけもなくぼくをぶつし、)(おすましの
みちゃんは
、ぼくに会うたびに顔をしかめます。)】【(のら犬はうなって
歯をむき出すし、)(
自動車は、タイヤをきしませて走っていきます。)】

(練習文2)
 まんがのコマは、物語の展開に重要な役割を果たします。「
細かいコマや
小さなコマは
、こうだ。」「大きなコマや変わった形のコマは、こうだ」と、
比べています。8   )の中は、ひとつながりに読みます。
 カッコの書き入れはこうします。(まんがのコマは、物語の展開に重要な
役割を果たします。)(細かいコマや小さなコマがくり返されると、物語の
テンポが速まり、)(大きなコマや変わった形のコマが入ると、場面の印象
が強まります。)
 赤字個所は、強めに読んで、目立たせるとよいでしょう。

(練習文3)
 人と話しをするとき、相手の目を「じっと見るか」「それほど見ないか」
は、その国の文化や習慣によって違う、と書いています。ここでは「日本
人」と「ヨーロッパやアメリカ人」とを比べています。
音声表現の区切り方は、下記のようにします。

(人と話をするときに、
相手の目をじっと見るかそれほど見ないようにす
るか
は、その文化あるいは習慣によってだいたい決まっているらしい。)
日本では、話をしている相手をあまりじっと見つめるのは、特に相手が目
上の人の場合には失礼だとされる。)(
ところが、ヨーロッパやアメリカで
は、
話すときには、相手の目をしっかり見るのが誠意を表す態度で、礼儀に
かなったことであり、そうしないような人は信用できないとされるそう
だ。)
 この文はあまり細かく区切って読むと、文全体の意味内容が分かりにくく
 なります。(   )の中のひとまとまりは、ひとつながりに読みます。
赤字個所は、強めに読んで、目立たせるとよいでしょう。
 下記の(   )の中は、ひとつながりの読みます。
 □は、ほんの少しだけ間をあけるしるしです。
 赤字は、やや強めに読んで目立たせて、日本人と欧米人との違い、その区
切りと比べをはっきりと分かりやすく伝えるようにします。

(練習文4)
 日本の米とインドの米を比較しています。
「日本の米はコレコレで、インドの米はコレコレだ」と、二項対立で比べて
いるように読み進めていきます。

(日本の米とインドの米とでは
、形がちがうことに気づくでしょう。)□
(日本の米は
丸く、□インドの米は細長い形をしています。)□
(ちがうのは、
形だけではありません。)□
はしでつまんでみると、□日本のご飯はつまみやすいけれど、□インドの
ご飯はつまみにくく、こぼれ落ちてしまいます。)□
手でつまんでみると、□日本のご飯はねばり気があり、手にくっつきます
が、□インドのご飯はさらさらして手につきません。)□

(練習文5)
はじめに、「日本では、くらしの基本である「衣食住」のどれにも、「和」
「洋」がある」と、前提条件を述べています。それから、「和」ではコレコ
レだ、「洋」ではコレコレだ、と二つの違いを具体例をあげて説明していま
す。「衣食住のどれにも」とかいてあるが、「衣」について触れてないとこ
ろが気になります。
 音声表現のしかたは、(   )の中は区切りつつも、意味内容がひとつ
ながりになるように読み進めます。赤字個所は、和様が対立する区別をはっ
きりと伝えるため、やや強めの読み方の出だしにして、コレコレだと説明
を加えていきます。
 (日本では、くらしの基本である「衣食住」のどれにも、「
」と「
があり□、
「食」には和食と洋食があり□、「住」には和室と洋室がありま
す。)□(
「和」は、伝統的な日本の文化にもつづくもので□、「洋」は
主として欧米の文化から取り入れたものを指します。)□
 (
和室は、ゆかにたたみをしいて仕上げ、あまり家具を置かないようにし
ます。)□(
一方、洋室は、板をはったり、カーペットをしいたりしてゆか
を仕上げ、いすを代表として、テーブル、ベットなど、部屋の目的に合わせ
た家具を置きます。)□

(練習文6)
 ゲンジボタルのオスの光のまたたく間隔が、東日本と西日本では違う、と
語っています。西日本と東日本との違い、その対比を書いています。
 音声表現のしかたは、(   )の中は、意味内容が途切れないように、
ひとつながりにして読み進めていきます。特に「ゲンジボタルのおすが集団
でまたたくときの光の間隔が」部分はちょっと長いですが、ひとつながりに
読みます。2文目の赤字個所を、ややゆっくりめの読んで対比を強調する方
法はよろしいかもしれません。
(最近になって、ゲンジボタルのおすが集団でまたたくときの光の間隔が、
東日本と西日本とではちがっていることが発見されました。)□(
西日本で
は約二秒
ですが、)□(東日本では約四秒とのんびりしているのです。)

(練習文7)
 ゲンジボタルのオス、メスの光り方の違いを語っています。オスとメスの
光り方の違いが声に表れ出るように読んでいくことです。下記の赤字個所は
強調して読むところです。全体の読み調子の流れによって変わってきます。
下記の通りでなくてもかまいません。
 (ゲンジボタルは、はらの先たんに近いところが光りますが、□
おすとめ
すとでは、その光の強さにちがいが
あります。)□(強く光り、つけたり消
したりしながら飛び回っているのがおす
です。)□(一方、草や木の葉の上
にじっととまって、弱く光っているのは
、たいていめすです。)□
 (
おすは、めすの弱い光を見つけると、飛びながら近づいてきます。□そ
して、いちだんと明るく光をつけたり消したりします。□ 
すると、めすも
強い光にまたたいて、おすにこたえます。)□

(練習文8)
 アジアの東西南北に位置する国々のアウトラインについて語っています。
西にはコレコレの国あり、北にはコレコレの国あり、南にはコレコレの国あ
り、東にはコレコレの国あり、と語っています。対比というよりも、単なる
ならべといったほうがよいかもしれません。下記の赤字個所を目立たせて読
み出していくことで対比の区別がはっきりします。
アジアは、西は地中海沿岸からアフガニスタン、イラクやクウェート、サ
ウジアラビアなどです。)□(
北は広大な高原をかかえるモンゴル、)□
南はインドやパキスタン、赤道の通るインドネシアの島々まで入りま
す。)□(
東は中国大陸、朝鮮半島、そして、そのいちばん東に日本列島が
あります。)

(練習文9)
 ここでの重要な対比事項は「日本の一員」と「アジアの一員」です。
赤字個所は、強めに強調して読むとよいでしょう。ゆっくりと読んで強調す
る方法がよいかもしれません。
(みなさんは、
自分がアジアの一員であるという自覚を持っているでしょう
か。)□(
日本の一員と呼ばれてもおかしくはないが、アジアの一員と呼ば
れることには、とまどう人もいるかもしれません。)



           
参考資料


 対比表現について修辞学的観点からは、次のようなことが言えるようです。
野内良三『レトリックのすすめ』(大修館、2007)からの引用です。

ーーーー引用開始ーーーー

 「対照」(対比)は、視点の取り方が鍵である。視点をうまくとると、突き
あわされた二つの事物がお互いに引き立つ。「対照法」は二つのものを対比関
係において両項の特徴や性質を引き立たせる文彩である。際立たされるのが
「類似」の場合もあるし、「差異」の場合もある。
 対照法についてよく「反対の事物」を云々という説明がなされることがある
が、それは間違いだ。なにも反対の事物を対比させる必要はない。なるほど反
対の事物のケース目につくことは事実だが、原則的にはどんなものでも「対照
する」ことは可能である。……
 要は対比の基準(視点)の取り方にかかっている。関係のないものどうしで
も基準の取り方によっては対照を形作ることができる。意外な新しい視点によ
って関係のないと思われていたもの同士が結びつくことになる。このプロセス
は隠喩の場合を彷彿とさせる。……対比(比較)によって眼目の論題がくっき
るする。これは「発想の対照法」と呼べるだろう。


ーーーー引用終了ーーーー
このページのトップへ戻る