命題論理と音声表現          2012・07・29記
指示語・はめこみ文




            
指示語




 指示語は、同じ言葉を使わなくてもよいように文と文とをつなぐ役目を
しています。指示語は、前文と後文との論理関係をしめしており、この点で
接続詞や代名詞と似ている働きがあります。接続詞は、前文と後文とがど
んな接続の論理関係になっているかを示しています。指示語は、代名詞と同
じに前文の内容を後文に取り入れた接続関係を示しています。

 指示語を音声表現するときは、指示語は何をさしているか、指示内容を頭
の中にイメージしながら音声表現することが大切です。前文にあった指示内
容を受けている言葉ですから、その指示内容を頭に入れて音声表現するよう
にします。一つの方法として、指示語にちょっとした強めのアクセントをつ
けて音声表現すると、前後の意味内容の論理的つながりがより明確に音声に
浮き出るようになります。

 指示語は「こそあど言葉」ともいわれており、品詞は代名詞です。
 指示語がついた連語(二つの単語が連結して一つの単語と似た働きをして
いる語)にも、指示語と同じ働きをしている単語があります。連語になって
いる指示語の品詞はいろいろです。
 「そのため」接続詞。「その上」接続詞。「そのかわり」接続詞。「その
くせ」接続詞。「それで」接続詞。「それから」接続詞。「それとも」接続
詞。「その場かぎり」名詞。「その節」名詞。「それだけ」名詞。「そうし
て」副詞。「そのまま」副詞。「それきり」副詞。「それとなく」副詞。
「これから」=「(これ・代名詞)+(から・格助詞)」など、いろいろで
す。これら連語全体が、ひとつの指示語と似た働きをしていますから、これ
らの連語を音声表現するときは、連語全体をほんのちょっと強めのアクセン
トをつけた読み方にするとよいでしょう。



       
指示語の音声練習(その1)



 次の練習文は、どう表現よみすればよいでしょうか。

(練習文1)向こうに三階建の、クリーム色の建物が見えるでしょう。
あれ
      が市役所です。

(練習文2)「ひとつだけちょうだい。」
      
これが、ゆみ子のはっきり覚えた最初の言葉でした。
                      今西祐行「一つの花」

(練習文3)「ろくべえ、元気を出しい。」
      えいじ君は、
そう言って、「どんぐりころころ」の歌をうた 
      いました。     灰谷健次郎「ろくべえまってろよ」


【音声表現のヒント】

 (練習文1)は、指示語「あれ」だけが強調されるのでなく、「あれが」
まで全体をやや強めて読むと、よいでしょう。「三階建の、クリーム色の建
物が」は全体をゆっくり気味に読んで強調し、「が」のあとで気持ち間をと
ってから、「見えるでしょう」と読み進めるとよいでしょう。
 指しているものは「クリーム色の建物」だけではありません。「三階建の、
クリーム色の建物」です。ここは、ひとつながり・ひとまとめになって読み
ます。

 (練習文2)は、「これ」だけが強調されることは少なく、「これが」全
体が強調されるのが普通でしょう。「ひとつだけちょうだい。」も目立たせ
て読むこともできるし、「はっきり」だけを強調して読むこともできるし、
「はっきり覚えた」全体を強調して読むこともできます。また「最初の言
葉」をゆっくりと読んで強調することもできます。どれが正しく、どれが間
違いということはできません。読み手の解釈のありようや、読み手の言語感
覚・センスの違いによって変わってきます。

 (練習文3)では、「そう」だけが強調されることは少なく、「そう言っ
て」全体が強調されるのが普通でしょう。「ろくべえ、元気を出しい。」は、
力強く、呼びかけて、奮い立たせる気持ちをこめて読むとよいでしょう。



      
指示語の音声練習(その2)



  では、実際に声に出して、指示語をやや強めに音声表現する練習を
 していきましょう。

  指示語がさしている事柄をアタマに思い浮かべて、指示語をやや目立た
 せて音声表現しましょう。

(1)指示語(こそあど言葉)は、どこにありますか。どの言葉ですか。

(2)指示語だけを強めに読むのでなく、文章内容に合わせて、ほかのとこ
   ろも強めに読んだ方がよいところがあったら、そこも強めに読みまし
   ょう。


(練習文1)「マッチは、手前から向こうにむけてこすります。」
      「
そんなことは、知ってるよ。」

(練習文2)「ねえ、わたしを買ってください。あんたが買ってくれたら、
       うれしいな。」
      おみつさんには、雪げたが
そうよびかけているように思われま
      した。        杉みき子{わらぐつの中の神様」

(練習文3)妹が、リカちゃん人形で遊んでいます。
あれは、おばあちゃん
      がきのう買ってくれたものです。

(練習文4)トンボは、こん虫のなかまです。金魚は、魚のなかまです。キ
      ツツキは、鳥のなかまです。
この三つのなかまをまとめていう
      言葉は、動物です。

(練習文5)空気中には、目に見えないものがたくさんただよっていて、

      
もいっしょに鼻からすいこまれます。その中には、病気の原
      因になる微生物もいるのです。

(練習文6)
このカメは、草や木の芽を食べ、島の中をゆうぜんと歩いてい
      る。
この島には、ゾウガメと同じ食物をうばい合うすばしこい
      草食動物や、カメの肉や卵を食べる肉食動物がいない。
そのた
      
、ゾウガメは大きくなり、のんびり生き続けることができた
      のだ。また、
ここには体長四十センチメートル、体重二キロく
      らいしかない小形のペンギンもいる。

(練習文7)「はあて、ふしぎな。どうしたこっちゃ。」
      おかみさんは、
そう思いながら、土間でごはんをたきはじめ 
      ました。

(練習文8)すな地の植物の根は、ふつうよりも広がっていたり、長くのび
      たりしています。
これは、すな地の中で成長するための仕組み
      なのです。


解説(指示語が指しているもの)

(練習文1)「そんなこと」は、「マッチは、手前から向こうにむけてこ
        すります。」をさしている。

(練習文2)「そう」は、「ねえ、わたしを買ってください。あんたが買
       ってくれたら、うれしいな。」を、さしている。

(練習文3)「あれ」は、「妹が遊んでいるリカちゃん人形」をさしてい
       る。

(練習文4)「この三つ」は、「トンボ(昆虫)、金魚(魚類)、キツツ
       キ(鳥類)」の三つを指している。

(練習文5)「それ」は、「空気中にただよっている目に見えないもの」
        をさしている。
       「その」は、「鼻から吸い込まれた、空気中にただよってい
        る目に見えないもの」をさしている。

(練習文6) 「このカメ」の「この」、「この島」の「この」、「ここに
        は」の「ここ」は、前文または後文が書いてないので、不
        明である。「そのため」は、何のためかというと、「その
        ため」の「その」は、「すばしこい草食動物や、カメの肉
        や卵を食べる肉食動物がいない」をさしている。

(練習文7)「そう思いながら」の「そう」は
      「はあて、ふしぎな。どうしたこっちゃ。」をさしている。

(練習文8)「これ」は、「すな地の植物の根は、ふつうよりも広がって
       いたり、長くのびたりしています」をさしている。





        
はめこみ文




  はめこみ文とは、一文の中に他の文が完全な形ではめこまれている構造
の文です。次のような文です。

(1)
大作は女の子というものが、男の子とちがって、ひどく痛みやすい感
   
情をもっているものだと思った。

(2)
しかは自分をうちそこなった猟師は、今ごろは家の中でじゅうの手
   
入れをしているだろうと考えた。

 これらの文内構造は次のようになっています。

(1)は、「
大作は……………と思った。」の点線個所に完全な形の文が
   はめこまれています。

(2)は、「
しかは……………と考えた。」の点線個所に完全な形の文が
   はめこまれています。

  このような「
だれが……………と思った。」の形を「母型文」と言い
ます。点線部分を格助詞「と」で受けて、「思う。考える。言う。たずねる。
聞く。答える。要望する。発表する。」などの動詞でしめくくっている文が
多くあります。点線部分には、情報がたくさん詰め込まれており、全体とし
てかなりの長文になっているものが多くあります。

  はめこみ文の音声表現は、母型文の主語と述語のあいだに長い点線部分
がはめこまれており、母型文の主述の位置が離れています。ですから、主語
と述語との照応があいまいになってしまいがちです。母型文の「だれが」部
分と、「と思う」部分が結びつくように音声表現することが重要です。

 はめこまれた点線部分の長い文を読んでいるうちに息が切れてしまい、間
があいたり、途中で言い納めの読みぶりになってしまったりすると、全体の
意味内容のつながりが切れて、文全体で何を語っているのかが分からなくな
ってしまいます。母型文の主述がつながることに気をつかって音声表現する
ことが大切です。

 また、母型文の主述と(
……………)部分とは、それぞれがひとまとまり
になるように読むことも重要です。


 前出の(1)(2)の音声表現の仕方は、こうします。

 (1)の文では「
大作は………と思った。」までつながる息づかいで読み
進めていきます。「と思った」までつながる息づかい、意味内容のまとまり
に気をつけて読み進めていきます。
……………部分もひとまとまりになるよ
うに読んでいきます。

 (2)の文では、「
しかは………と考えた」までつながる息づかいで読み
進めていきます。途中で意味内容が途切れてしまう読み方にしないように注
意します。
……………部分もひとまとまりになるように読みます。



     
はめこみ文の音声練習(その1)



 次のはめこみ文を実際に声に出して表現よみしてみましょう。

(1)
赤色青色の色えんぴつで色づけしてみましょう。

(2)長い文は、途中で少しずつ小さく息を吸いながら読んでいってもいい
ですが、前と後ろの赤色どうしが結びつく息づかいで読んでいきましょう。


(練習文1)
 アキラは、はじめて会ったのに、ずいぶんなれなれしい子だなと思いまし
た。

(練習文2)
 良平は、みやげなんか、なくてもいい、健にいさんの元気な顔が、はよう
見たいなと思った。

(練習文3)
 正夫君は、こたつにあたってみかんを食べているとき、お母さんはこんな
吹雪に寒くないのかなあ、早く帰ってくればいいなあと考えた。

(練習文4)
 ウエゲナーは、アフリカと南アメリカだけでなく、現在、海をへだてては
なればなれになっているすべての大陸は、大昔は一つにつながっていたのだ、
と考えるようになった。

(練習文5)
 みすずは、この世に存在するすべてのものが、それぞれちがうからこそ大
切で、すてきなのだということを、「わたしと小鳥とすずと」という詩の中
で語っています。

(練習文6)
 マザー・テレサは、貧しくて学校へは行けないけれど、みんな文字が読め
るようになったらいいと思っていた。

(練習文7)
 アンリ・ヂュナンは、うえや病気、戦争や暴力などは、世界中の人々が手
を取り合って、みんなで立ち向かわなければ、何も解決できないと考えるよ
うになった。

(練習文8)
 友達が、もし、オリンピックに、動物が選手として参加したら、金メダル
は、みんな動物にとられるだろうと、笑いながら言った。

(練習文9)
 母さんぎつねは、かわいいぼうやの手にしもやけができたらかわいそうだ
から、夜になったら、町まで行って、ぼうやのおててに合うような毛糸の手
袋を買ってやろうと思いました。

(練習問題10)
 ママは、パパが返ってきたとき、むかえてくれる人がだれもいなかったら、
すぐ、がっかりするだろうって思ってる。



答え

(練習文1)
 
アキラははじめて会ったのに、ずいぶんなれなれしい子だなと思いまし
た。


(練習文2)
 
良平はみやげなんか、なくてもいい、健にいさんの元気な顔が、はよう
見たいな
と思った

(練習文3)
 
正夫君はこたつにあたってみかんを食べているとき、お母さんはこんな
雪に寒くないのかなあ、早く帰ってくればいいなあと考えた

(練習文4)
 
ウエゲナーはアフリカと南アメリカだけでなく、現在、海をへだてては
なればなれになっているすべての大陸は、大昔は一つにつながっていたのだ

と考えるようになった

(練習文5)
 
みすずはこの世に存在するすべてのものが、それぞれちがうからこそ大
切で、すてきなのだということ
「わたしと小鳥とすずと」という詩の中
で語っています。


(練習文6)

 マザー・テレサは、貧しくて学校へは行けないけれど、みんな文字が読め
るようになったらいい
と思っていた。

(練習文7)
 
アンリ・ヂュナンはうえや病気、戦争や暴力などは、世界中の人々が手
を取り合って、みんなで立ち向かわなければ、何も解決できない
と考えるよ
うになった。


(練習文8)
 
友達がもし、オリンピックに、動物が選手として参加したら、金メダル
は、みんな動物にとられるだろう
と、笑いながら言った。

(練習文9)
 
母さんぎつねは、かわいいぼうやの手にしもやけができたらかわいそうだ
から、夜になったら、町まで行って、ぼうやのおててに合うような毛糸の手
袋を買ってやろう
と思いました。

(練習問題10)
 
ママはパパが返ってきたとき、むかえてくれる人がだれもいなかったら
すぐ、がっかりするだろうって思ってる。



     
はめこみ文の音声練習(その2)



 次のはめこみ文を実際に声に出して表現よみしてみましょう。

(1)
赤色青色の色えんぴつで色づけしてみましょう。

(2)長い文は、途中で少しずつ小さく息を吸いながら読んでいってもいい
ですが、前と後ろの赤色どうしが結びつく息づかいで読んでいきましょう。


(練習文1)
 人間にとって、最もつらいことは、自分がだれからも必要とされていない
んだ、と感じることなのです。

(練習文2)
 大造じいさんは、長年の経験で、ガンは、いちばん最初に飛び立ったもの
の後について飛ぶということを知っていたので、このガンを手に入れたとき
から、ひとつ、これをおとりに使って、ガンの仲間をとらえてやろうと、考
えていました。

(練習文3)
 わたしは原爆ドームが、規模が小さいうえ、歴史も浅い遺跡であることか
ら、果たして世界の国々によって世界遺産として認められるだろうかと思っ
た。 

(練習文4)
 子ぎつねは、その歌声は、きっと、人間のお母さんの声にちがいないと思
いました。

(練習文5)
 残された日記には、あの痛々しい産業奨励館だけが、いつまでも、おそる
べき原爆のことを後世にうったえかけるだろう、と書かれていた。

(練習文6)
 国連憲章には、「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の
中にとりでを築かなければならない。」と記されている。

(練習文7)
 保存反対論の中には、「原爆ドームを見ていると、原爆がもたらしたむご
たらしいありさまを思い出すので、一刻も早く取りこわしてほしい。」とい
う意見もあった。

(練習文8)
 ねこは、やとわれても、やとわれなくても、自分ではどちらでもいいと思
っているような顔をしていました。

(練習文9)
 ママはため息をつきながら、
「今だって、何回も、人間は戦争をしていたのよ、初めてじゃないの。」
って言うけれど、わたしにとっては、初めてだもの。じょうだんじゃないわ。
まったく、いやになちゃう。


答え

(練習文1)
 
人間にとって、最もつらいことは自分がだれからも必要とされていない
んだ、
と感じることなのです。

(練習文2)
 
大造じいさんは長年の経験で、ガンは、いちばん最初に飛び立ったもの
の後について飛ぶということを知っていたので、このガンを手に入れたとき
から、ひとつ、これをおとりに使って、ガンの仲間をとらえてやろう
と、考
えていました。


(練習文3)
 
わたしは原爆ドームが、規模が小さいうえ、歴史も浅い遺跡であることか
ら、果たして世界の国々によって世界遺産として認められるだろうか
と思っ
た。 


(練習文4)
  子ぎつねは、その歌声は、きっと、人間のお母さんの声にちがいないと思
いました。


(練習文5)
 
残された日記には、あの痛々しい産業奨励館だけが、いつまでも、おそる
べき原爆のことを後世にうったえかけるだろう
と書かれていた。

(練習文6)
 
国連憲章には、「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の
中にとりでを築かなければならない。」
と記されている。

(練習文7)
 
保存反対論の中には「原爆ドームを見ていると、原爆がもたらしたむご
たらしいありさまを思い出すので、一刻も早く取りこわしてほしい。」
とい
う意見もあった。


(練習文8)
 
ねこはやとわれても、やとわれなくても、自分ではどちらでもいいと思
っている
ような顔をしていました。

(練習文9)
 
ママはため息をつきながら
「今だって、何回も、人間は戦争をしていたのよ、初めてじゃないの。」
って言うけれど、わたしにとっては、初めてだもの。じょうだんじゃないわ。
まったく、いやになちゃう。

コメント

(練習文8)について
 (練習文8)は、はめこみ文個所は、「ねこは、やとわれても、やとわれ
なくても、自分ではどちらでもいいと思っている」部分です。
 (練習文8)の文全体は、「ねこは……………顔をしていました」です。
「ねこは(これこれこのような)顔」という「顔」を説明している部分があ
ります。「顔」の前部に「(まるで)……………のような)顔」という比喩
の体言修飾部分がついています。
 この文全体が、ちょっと複雑な文内構造になっています。

(練習文9)について
 (練習文9)の「はめこみ文」は、【ママはため息をつきながら「………
……」って(と)言う】までです。これに接続助詞「けれど」が接続して、
重文を形作っています。ですから、下部に新しい情報文(単位文)が接続す
ることになります。
 しかし、ここでは、通常の主述の整った情報文(単位文)が接続していま
せん。この(練習文9)全体が語り手(わたし)の心内語(ひとりごと、つ
ぶやき)となっており、重文の下部が心に浮かんだことを、次々と一語文的
つぶやき言葉を投げ出し、鬱憤をぶちまけて語っています。
 という、ちょっと変形した文になっています。
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