2018・07・25記 本稿目次 第5節 連体修飾の音声表現のしかた (1)連体修飾部分の音声練習をしよう (2)格助詞「の」連続の音声練習をしよう 第5節 連体修飾の音声練習のしかた (1)連体修飾語の音声練習をしよう 修飾とは、意味内容を詳しく定める言葉です。情報の内容量を増やし、具 体性を強めることです。 修飾語の指導で重要なことは、何(被修飾語)について、どの面が詳しく 説明されているか、どのように修飾(限定・描写)されているか、を調べる ことです。 修飾語の音声表現では、修飾語が被修飾語に係っていくように、二つ(修 飾語と被修飾語)がひとつながりに読むようにします。二つがひとつながり に、ひとまとまりになるように読むことが大変に重要です。 日本語では、連用修飾は文中のどこにも位置しますが、連体修飾は、連用 修飾と違って、被修飾語の直前に位置しています。直前に位置している ので、ひとつながりに音声表現することは難しくありません。 連体修飾部分の文章個所が長すぎる場合は、ちょっと困難です。長い連体 修飾部分があった場合は、途中で小さな間をあけて息継ぎをしつつ、ひとつ ながりになる意識で読み進めていくようにします。 (例文1) ほりばたで乗せたお客のしんしが、話しかけてきました。 解説 あまんきみこ作「白いぼうし」にある一文です。 「ほりばたで乗せた」「お客」ですね。「ほりばたで乗せたお客の」「し んし」ですね。連体修飾が二段階合成で形成されています。 さらに「ほりばたで乗せたお客の」は「しんしが」までを修飾しています。 修飾語部分を赤色で、被修飾語部分を青色で書くと、 「ほりばたで乗せたお客のしんしが、話しかけてきました。」 のようになります。 文法的には文内構造の成分としては「ほりばたで乗たお客の」が修飾語成 分であり、「しんしが」の文節が被修飾語成分です。しかし、被修飾部分を 「しんしが」の「が」まででなく、「ほりばたで乗たお客の」「しんし」 (「が」を削除する)のほうが児童には理解しやすいと思われます。 このほうが修飾(限定)している部分と、されている部分との事実関係 が理解しやすいですね。「ほりばたで乗せたお客の」は「しんしが」までで なく「しんし」にだけ係るとしたほうが児童には理解しやすいと思われます。 それで、本稿では、修飾語と被修飾語との色付けは、すべて後者の方法で 記述していくことにします。ここでは、修飾部分(赤色)、被修飾部分(青色) にします。 「ほりばたで乗せたお客のしんしが、話しかけてきました。」のようにです。 (例文2) これが、ゆみ子のはっきり覚えた最初の言葉でした。 解説 今西祐行作「一つの花」にある一文です。 「ゆみ子のはっきり覚えた」と「最初の」が「言葉」にふたつ対等関係で 係っています。「ゆみ子のはっきり覚えた」の、「ゆみ子の」の「の」は、 主格助詞「が」の代行ですから、一つの単位文(「ゆみ子のはっきり覚えた」) の文末が連体形「覚えた」となって「言葉」(体言)に係っています。ふた つが対等とはいっても、音声表現では「(ゆみ子のはっきり覚えた)(最初 の言葉)」のような意味内容の区切りで読んでいくとよいでしょう。 (例文3) 原爆ドームは、広島市のほぼ中心を流れるかわのほとりに建っている。 解説 大牟田稔「平和のとりでを築く」にある一文です。 音声表現のしかたは、「広島市のほぼ中心を流れるかわ」その川の「ほと り」という意味内容ですから「(広島市のほぼ中心を流れるかわの)(ほと り)」のような係り受けで読むとよいでしょう。「ほとり」は「かわのほと り」一語性の結びつきが強いですから、「(広島市のほぼ中心を流れる) (かわのほとり)」のような音声表現のしかたもできます。 (例文4) 父もその父も、その先ずっと顔も知らない父親たちが住んでいた海に、 太一も住んでいた。 解説 立松和平「海の命」にある一文です。 音声表現のしかたは、「父もその父も、その先ずっと顔も知らない父親た ちが住んでいた」「海」です。「海」の連体修飾部分がかなり長いですが、 ひとつながりの息づかいで「海に」までつながるように読み進めていきます。 「父もその父も」のあとでほんの軽く間をあけてもよいし、そこで切らず に、そこから一気にたたみかけるように「その先ずっと顔も知らない父親た ちが住んでいた」「海に」のように読み進めていくのもよいでしょう。 (例文5) 竹とりのおきなというおじいさんが、心のやさしいおばあさんとくらし ていました。 解説 昔話「かぐやひめ」にある一文です。 「竹とりのおきなという」「おじいさん」という連体修飾関係にあります。 もう一つ、「心のやさしい」「おばあさん」という連体修飾関係にあります。 連体修飾と被修飾との結びつく個所が二つあります。 音声表現のしかたは、「(竹とりのおきなというおじいさんが、)(心の やさしいおばあさんと)くらしていました。」のような二つの区切りで読む とよいでしょう。ふたつとも、修飾語と被修飾語とはひとつながりに、「おじ いさん」と「おばあさん」を区分けして音声表現するとよいでしょう。 連体修飾の音声練習(その1) 次の連体修飾の音声表現のしかたを考えましょう。どこが、どこに係る ように読めばいいでしょうか。 (練習文1) たかし君は、うれしいようなさびしいような気持ちになった。 (練習文2) アメンボは、うっかり水面に落ちてばたばたもがいている虫を食べ物にして います。 (練習文3) アメンボは、水の表面に落ちてきた虫だけをねらって食べるという生き方を するようになった昆虫なのです。 (練習文4) はらいたがなおって元気になったじさまは、医者様が帰った後で、こう言っ た。 (練習文5) 動物の死がいや落ち葉などのくさってできたやわらかい土が、学校の裏山の 林にあった。 (練習文6) 生まれたての赤んぼのわたしをかかえ、女手一つで魚屋をやらなければなら なかった母は、どんなに苦労したかしれません。 (練習文7) かつて炭は、多くの家庭で、部屋をあたためたり、お湯をわかしたり、魚を 焼いたりする燃料として使われていました。 (練習文8) さあ、大きな丸太がパチパチと燃え上がり、しょうじには自在かぎとなべの かげがうつり、すがすがしい木のにおいのするけむりの立ちこめている、山 家のろばたを想像しながら、この物語をお読みください。 (練習文9) 春には花がさき、秋にはおいしい実のなる木が、町外れの植木屋さんにあり ました。世界の国々から送られてきためずらしい花が、わたしがきのう行っ たとなりの町の花屋さんの店先にありました。 答え(赤色は修飾語部分、青色は被修飾語部分です。赤色が青色に係るよ うに音声表現しましょう。) (練習文1) たかし君は、(うれしいような)(さびしいような)気持ちになった。 (「うれしいような」「さびしいような」の連体修飾がふたつ、対等で 「気持ち」に係っています。) (練習文2) アメンボは、((うっかり水面に落ちて)(ばたばたもがいている))虫 を食べ物にしています。 (練習文3) アメンボは、水の表面に落ちてきた虫だけをねらって食べるという生き方を するようになった昆虫なのです。 (「水の表面に落ちてきた」「虫」)がさらに(「水の表面に落ちてきた虫 だけをねらって食べるという」)「生き方」となり、さらに「水の表面に落ち てきた虫だけをねらって食べるという生き方をするようになった」「昆虫」 と、連体修飾部分の三段階合成になっています。 (練習文4) ((はらいたがなおって)(元気になった)じさま)は、医者様が帰った後で、 こう言った。 (練習文5) 動物の死がいや落ち葉などのくさってできた(やわらかい土)が、学校の裏 山の林にあった。 (練習文6) 生まれたての赤んぼのわたしをかかえ、女手一つで魚屋をやらなければなら なかった母は、どんなに苦労したかしれません。 (練習文7) かつて炭は、多くの家庭で、部屋をあたためたり、お湯をわかしたり、魚を 焼いたりする燃料として使われていました。 (練習文8) 長崎の町についてあらかじめ知っておかねばならないことは、江戸時代が鎖 国(外国と付き合わないこと)だったことである。 (形式名詞「こと」が主文素、「こと」の上部はすべて連体修飾部分である) (練習文9) さあ、大きな丸太がパチパチと燃え上がり、しょうじには自在かぎとなべの かげがうつり、すがすがしい木のにおいのするけむりの立ちこめている、 (山家のろばた)を想像しながら、この物語をお読みください。 長い修飾語部分ですが、(山家のろばた)に係る息づかいで、途中で小さ く息を吸いつつも、途切れないで、ひとつながりにして読み進めていきます。 (練習文10) 春には花がさき、秋にはおいしい実のなる木が、町外れの植木屋さんにあり ました。世界の国々から送られてきためずらしい花が、わたしがきのう行っ たとなりの町の花屋さんの店先にありました。 連体修飾の音声練習(その2) 次の連体修飾語の音声表現のしかたを考えましょう。どこが、どこに係る ように読めばいいですか。 (練習文1) ピーターは、世界で三番目に大きいビクトリア湖の近くでくらす、ルオ族の 話をした。 (練習文2) 頭には、お母さんの作ってくれた、わた入れの防空頭巾をかぶっていきまし た。 今西祐行「一つの花」 (練習文3) ヨーグルトは、人間がミルクから作り出した最初の食べ物です。 (練習文4) 日本の軍隊がぼくたちのふるさとを占領していた、あの苦しかった時代、大 人のように、母さんと苦労をわかちあっていた。 (練習文5) 激しい潮の流れに守られるようにして生きている、二十キロぐらいのクエも 見かけた。 立松和平「海の命」 (練習文6) チリのイースター島は、首都サンティアゴから西に約三千八百キロメートル はなれた、太平洋に浮かぶ絶海の孤島である。 (練習文7) 広島市には、一発の原子爆弾で破壊され、そのままの形で今日まで保存され てきた「原爆ドーム」とよばれる建物がある。 (練習文8) ふと、顔を上げたとき、強い日差しの照りつける道ばたにすわりこんでいる 人たちの姿が目に入った。 (練習文9) 凧は日本だけのものではなく、世界中どこにもあるんだということを知った、 父の感激はどんなだったでしょう。 (練習文10) ただのときは水につかることのない、川べりのすすきやはぎのかぶが、黄色 くにごった水に横だおしになって、もまれています。 新美南吉「ごんぎつね」 (練習文11) 子どもたちが帰ったはまべには、お人形やら、ヨットやら、ロケットやら、 お化けやらの、すなの絵だけがのこりました。 (練習文12) タクシー乗り場に消えていくおじさんを見えなくなるまで送り、満足そうに せなかをのばして深呼吸をした母は、いつものやさしいえがおになった。 答え(赤色は修飾部分、青色は被修飾部分です。赤色部分が青色部分 に係るように音声表現しましょう。) (練習文1) ピーターは、世界で三番目に大きいビクトリア湖の近くでくらす、(ルオ族 の話)をした。 (練習文2) 頭には、お母さんの作ってくれた、(わた入れの防空頭巾)をかぶって いきました。 (練習文3) ヨーグルトは、人間がミルクから作り出した(最初の食べ物)です。 (練習文4) 日本の軍隊がぼくたちのふるさとを占領していた、(あの苦しかった時代)、 大人のように、母さんと苦労をわかちあっていた。 (練習文5) 激しい潮の流れに守られるようにして生きている、(二十キロぐらいのク エ)も見かけた。 (練習文6) チリのイースター島は、首都サンティアゴから西に約三千八百キロメートル はなれた、太平洋に浮かぶ(絶海の孤島)である。 (練習文7) 広島市には、一発の原子爆弾で破壊され、そのままの形で今日まで保存され てきた(「原爆ドーム」とよばれる建物 )がある。 (練習文8) ふと、顔を上げたとき、強い日差しの照りつける道ばたにすわりこんでいる 人たちの姿が目に入った。 (練習文9) 凧は日本だけのものではなく、世界中どこにもあるんだということを知った、 (父の感激)はどんなだったでしょう。 (練習文10) ただのときは水につかることのない、(川べりのすすきやはぎのかぶ)が、 黄色くにごった水に横だおしになってもまれています。 (練習文11) 子どもたちが帰ったはまべには、(お人形やら、ヨットやら、ロケットやら、 お化けやらの)(すなの)絵だけがのこりました。 (練習文12) タクシー乗り場に消えていくおじさんを見えなくなるまで送り、満足そうに せなかをのばして深呼吸をした母は、いつもの(やさしいえがお)になった。 「母」の連体修飾部分が長いですが、ひとつながりに「母」にかかるように 読み進めていくようにします。 (特記事項) 修飾、被修飾の指導で大切なことは、「どの言葉が、どの言葉に係る」 「ひとまとまりにして音声表現する」ということだけではありません。それ もとても大切です。それだけでなく、「どういう観点から限定しているか, 詳しく書いているか」をきちんととらえさせることも重要です。 物語文では、その修飾語をありありとイメージすること、場面や状況を身 につまされるように感情ぐるみで表象する指導が大切です。 説明文では、なぜ筆者が事柄についてそのように限定して詳しく書いてい るか、筆者の意図を探る指導も大切です。読解指導では、そうした話し合い を組織することも重要となります。 特に主張文や議論文やコマーシャル文に連体修飾語がつかわれている場合、 それが「どういう観点から限定しているか」をはっきりとらえさせる指導が 大切です。送り手がどのような切り口から主張しているか、送り手の意図、 どういう評価、価値づけをして送っているか、受け手がどう受け取ってほ しいと願って語っているか、などを吟味する指導が大切です。送り手の主張 について、言わないうそ・ごまかし・論理的破綻がないかを調べさせる(見 抜く)センスを身につけさせる指導も必要です。 「対米従属で日本の安全を守る安保条約」(1) こういう連体修飾語句(赤色)があったとします。これを表層構造とすれば、 その深層構造として、 「(その)安保条約は、対米従属で日本の平和を守る」(2) という判断があります。前記した連体修飾語句(赤色)は、(2)が表層構 造として変形してオモテに表れ出た連体修飾語句(1)と考えられます。 文法学者の山田孝雄は(1)を「想定」と名づけ、(2)を「述定」と名 づけました。イエスペルセンは「想定」を「ジャンクション」、「述定」を 「ネクサス」と名づけました。芳賀綏は「想定」を「凝縮的表現」、「述 定」を「展開的表現」と名づけました。 ある日の新聞記事(2018年7月)に下記のようなことが書いてありま した。 IR整備の前提となるギャンブル依存症対策法は7月6日の参議院本会議 で可決成立した。安倍晋三首相はIR法案の質疑で「健全なカジノ事業の収 益を活用してIR整備を推進し、世界中から観光客を集める滞在型観光を実 現する統合型リゾート施設(IR)整備法案だ」と強調した。 安倍晋三首相が質疑に回答した文を取り上げてみよう。これは、かなり長 い連体修飾語のついた(想定)表現の文になっています。 健全なカジノ事業の収益を活用してIR整備を推進し、世界中から観光客を 集める滞在型観光を実現する統合型リゾート施設(IR)整備法案 これを(述定)表現に直してみましょう。 (この)統合型リゾート施設(IR)整備法案は、健全なカジノ事業の収益 を活用してIR整備を推進し、世界中から観光客を集める滞在型観光を実現 する。 安倍晋三首相のこの答弁(主張文)に対して、次のような記事が続いて書 いてありました。 IR法案の質疑では、国民民主党の矢田稚子氏が「国際観光政策としてカ ジノを位置づける構想は大いなる勘違いがある。賭博推奨の無謀な法案であ る」と指摘。立憲民主党の杉尾秀哉氏は「カジノで経済成長という夢物語を 国民にふりまいている。負の影響の最たるものはギャンブル依存症がさらに 広がることだ」と批判した。 下記に、(想定)表現のコマーシャル文を二つ、書きます。読み流してし まわないで、(述定)表現に直して考え、ほんとかな、ごまかしがないかな、 大げさ過ぎる表現のCM文じゃないかな、と疑義を抱き、探りを入れて、吟 味するセンスが大切です。これは、メディアリテラシー教育とも関連します。 (想定)皮膚の角質にすばやく浸透し、シミを元から抑えこむ薬用美白化粧 品 (述定)この薬用美白化粧品は、皮膚の角質にすばやく浸透し、シミを元か ら抑えこむ (想定)痔・湿疹・肩こり・疲労回復・あせも・しもやけ・冷え性・腰痛・ うちみ・神経痛・リウマチ・にきびに効果を発揮する入浴剤「○○ ○○」 (述定)この入浴剤「○○○○」は、 痔・湿疹・肩こり・疲労回復・あせ も・しもやけ・冷え性・腰痛・うちみ・神経痛・リウマチ・にきび に効果を発揮する。 (2)格助詞「の」連続の音声練習をしよう 格助詞「の」は、語や文節を結びつけ、連体格を示す助詞です。主格助詞 として働くこともあります。 格助詞「の」の連続によって、連体修飾語の連文節を作る文があります。 格助詞「の」がつくと連体修飾語となります。「何の何の何の何」という ような「の」が連続した連文節の連体修飾部分も多くあります。「の」のつ いた文節が、下の文節を次々と修飾(限定)していく連文節の形です。 これらの音声表現は、連文節の区切り方に注意が必要です。格助詞「の」 が連続した連文節個所の音声表現では、ほんの軽い間あけが必要となる文章 内容もあります。 下記の例文解説で説明します。必要となる区切り個所に、間あけの□のし るしをつけています。□個所で軽く間をあけて音声表現してみましょう。 (例文1) 海岸の灯台の光が月の明るい海面を青白く照らしています。 解説 「海岸の」の「の」は場所を示しています。「灯台の」の「の」は所属を 示しています。「月の」の「の」は主格助詞「が」の代行としてとして働い ています。 意味内容で係り受けを調べると、「灯台の光」に「海岸の」が係っていま す(修飾している)ので、音声表現するときは「海岸の□灯台の光が」と区 切るようになります。短いつながりですから区切る必要もありませんが、そ んな息づかいで読む必要があります。客文素(「海面を」)個所は、「月の 明るい□海面を」となります。わざとらしく間と開ける必要はありませんが、 そんな息づかいで音声表現していくとよいでしょう。 全文の音声表現の感じは下記のようになるでしょう。一つの例です。他の 区切り方も、もちろんあります。 海岸の□灯台の光が□□月の明るい□海面を□□青白く照らしています。 (例文2) 北の町の町外れに、小さなかばん屋がありました。 安房直子「かばんの中にかばんを入れて」 解説 区切り方は、「北にある町の」の意味ですから「北の町の□町外れに □、」または「北の□町の□町外れに□、」のどちらかでしょう。「北の 町」という固有名詞の場合だったら「北の町の□町外れに□、」となります。 (例文3) かじ屋の新兵衛のうちのうらを通ると、新兵衛の家内が、かみをすい ていました。 新美南吉「ごんぎつね」 解説 区切り方は、 (かじ屋の新兵衛のうちの□うらを□通ると□、)または (かじ屋の新兵衛の□うちの□うらを通ると□、)などがあるでしょう。 どちらにしても、微妙な区切りの息づかい、語勢、上げ下げなどが影響し てきます。 (例文4) 「にわの こいしの こみちのはじの、きいちごの しげみのちかく に、いきものをほかのいきものに かえることのできる、まほうのとか げがすんでいるそうだよ。」 解説 レオ・レオニ作、谷川俊太郎訳「アレクサンダとぜんまいねずみ」にある 一文です。 「にわの こいしの こみちのはじの、きいちごの しげみのちかくに、 いきものをほかのいきものに かえることのできる、まほうの」は「とか げ」に係る長い連体修飾語部分です。「とかげ」に長い修飾限定がついてい ます。 どんな「とかげ」かというと、「まほうのとかげ」です。どんなまほうか というと、「いきものをほかのいきものに かえることのできる、」「まほ う」です。後半部分の音声表現のしかたは、「いきものをほかのいきものに かえることのできる、(間)まほうのとかげ」と表現よみすると分かりや すくなります。「まほうのとかげ」はどこにすんでいるかというと、「にわ の こいしの こみちのはじの、きいちごの しげみのちかくに」です。 「これこれの場所に(トキトコロ)」、「これこれができる」「(まほう の)とかげ」という長い連体修飾部分がある文です。 この文全体の音声表現のしかたは、「これこれの場所に」□「これこれの 魔法をかける」□「(まほうの)とかげ」のような大きな修飾関係の区切り で音声表現すると分かりやすくなります。 一例を示します。この例でなくてもかましません、 「にわの小石の□小道のはじの□、きいちごのしげみの近くに□」「生き ものを□ほかの生きものにかえることのできる□、まほうのとかげがす んでるそうだよ。□」 格助詞「の」連続の音声練習(1) 次の文(「の」連続の個所)の音声表現のしかたを考えましょう。声に出 して表現よみしてみましょう。どんな区切り方がよいですか。意味内容から 考えて区切ってみよう。 (練習文1) 子おには、向こうの谷の石の上にとんと立った。 (練習文2) おじさんのうちのボンボンどけいの中には、子どもが ふたり すんで いるんですよ。 千葉省三「チックとタック」 (練習文3) 兄さんのかには、その右側の四本の足の中の二本を、弟の平べったい頭に のせながら言いました。 宮沢賢治「やまなし」 (練習文4) 「ちいちゃんじゃないの」という声。ふり向くと、はす向かいのうちのお ばさんが立っています。 あまんきみこ「ちいちゃんのかげおくり」 (練習文5) しばらくすると、兵十は、はりきりあみのいちばん後ろのふくろのようにな ったところを、水の中から持ち上げました。 新美南吉「ごんぎつね」 (練習文6) 昔、わたしたちの村の近くの中山という所に、小さなおしろがあって、中山 様というお殿様がおられたそうです。 新美南吉「ごんぎつね」 (練習文7) だれもいない空き地のはずれの一本のにれの木の前に、やせた男の人がさ っきから立っていました。 あまんきみ子「おはじきの木」 (練習文8) 主人に死なれて、わたしたちは暮らせなくなったのです。今、主人の里の、 広島と島根の県境のこの村に来ているのですが、どうしてこの子を育ててい ったものか迷ったあげく、あの日のことを思い出し、もしや、この子の本当 の身内のかたが見つからないものかと、たずね人に出したわけでございます ……。 今西祐行「ヒロシマのうた」 答え(ひとつの区切り方例です。□は、そこで間をあけるしるしです。この 通りでなくてもかまいません。) (練習文1) 向こうの谷の□石の上に□とんと立った。 (練習文2) おじさんのうちの□ボンボンどけいの中には□、 (練習文3) その右側の□四本の足の中の□二本を□、 (練習文4) はす向かいのうちのおばさんが□立っています。または はす向かいのうちの□おばさんが□立っています。 (練習文5) はりきりあみのいちばん後ろの□ふくろのようになったところを□、 または はりきりあみの□いちばん後ろのふくろのようになったところを□など。 (練習文6) わたしたちの村の近くの□中山という所に□、 (練習文7) だれもいない空き地のはずれの□一本のにれの木の前に□、 または だれもいない空き地のはずれの□一本の□にれの木の前に□、など。 (練習文8) 今□、主人の里の□、広島と島根の県境の□この村に□来ているのですが、 この子の□本当の身内のかたが□見つからないもんかと□、 格助詞「の」連続の音声練習(2) 次の文(「の」連続個所)の音声表現のしかたを考えましょう。声に出し て表現よみしてみよう。どんな区切り方がよいですか。意味内容から考えて 区切ってみよう。 (練習文1) 雨上がりの青い空の色が美しいです。 (練習文2) 花だんの近くの岩の上に、ピーターがこしかけたので、ぼくも同じように すわった。 (練習文3) そこは、小さなだん地の前の小さな野原でした。 (練習文4) 車にもどると、おかっぱの小さい女の子が、ちょこんと後ろのシートにす わっています。 (練習文5) わたしの小学校は、東京のはずれの小さな町の小さな小学校で、プールは もちろん、たいいくかんも、こうどうもありませんでした。 (練習文6) わたしは、大きな森の中の川のほとりのあなに住んでいるもぐらです。 (練習文7) 大きなパラソルの下の白いテーブルの上におさらをならべて食事をしまし た。 答え (ひとつの区切り方の例です。□は、そこで間をあけるしるしで す。この通りでなくてもかまいません。) (練習文1) 雨上がりの□青い空の色が□美しいです。 (練習文2) 花だんの近くの□岩の上に□、 (練習文3) 小さなだん地の前の□小さな野原でした。 (練習文4) おかっぱの□小さい女の子が□、 (練習文5) 東京のはずれの□小さな町の□小さな小学校で、 (練習文6) 大きな森の中の□川のほとりのあなに□住んでいるもぐらです。または 大きな森の中の□川のほとりのあなに住んでいる□もぐらです。 (練習文7) 大きなパラソルの下の□白いテーブルの上に□おさらをならべて食事をし ました。または、 大きなパラソルの下の白いテーブルの上に□おさらをならべて食事をし ました。 格助詞「の」連続の音声練習(3) 次の文(「の」連続個所)の音声表現のしかたを考えましょう。声に出し て表現よみしてみよう。どんな区切り方がよいですか。意味内容から考えて 区切ってみよう。 (練習文1) あの自転車は、父さんの冬のボーナスで買ってもらったものでした。 (練習文2) そういえば、あの坂の上の空の色は、確かに海へと続くあさぎ色だ。 (練習文3) じいちゃんの手作りのくりの木のげたが、ぷっかぷっかと川下めざして流 れていく。 (練習文4) アイヌ村の山と山の間の小さな駅に今、一番列車が着きました。 (練習文5) 日光が、池のそこのすなの上の銀色の小魚をおいかける。 (練習文6) 山のおくのおくの村の、むかしむかしのおはなしです。 (練習文7) 小さいねずみは、山の上の木のねっこの小さなあなにすみついた。 (練習文8) だれもいない空き地のはずれの一本のにれの木の前に、やせた男の人が さっきから立っていた。 (練習文9) 高くのびたたんぽぽのくきの上のわた毛には、風がよくあたります。 (練習文10) 坂の左手の小さな農家の障子の窓には、ぼんやりと黄色い電灯の光のか げがさしていました。 答え (ひとつの区切り方の例です。□は、そこで間をあけるしるしで す。この通りでなくてもかまいません。) (練習文1) 父さんの□冬のボーナスで□買ってもらったものでした。 (練習文2) あの坂の上の□空の色は□、確かに□海へと続くあさぎ色だ。 (練習文3) じいちゃんの□手作りのくりの木のげたが□、または じいちゃんの手作りの□くりの木のげたが□、 (練習文4) アイヌ村の□山と山の間の□小さな駅に□ または アイヌ村の山と山の間の□小さな駅に□ (練習文5) 日光が、池のそこの□すなの上の□銀色の小魚をおいかける。 (練習文6) 山の□おくのおくの村の□、むかしむかしのおはなしです。または 山のおくのおくの村の□、むかしむかしのおはなしです。 (練習文7) 山の上の木のねっこの□小さなあなに□すみついた。または 山の上の□木のねっこの□小さなあなに□すみついた。 (練習文8) だれもいない空き地のはずれの□一本のにれの木の前に□、または だれもいない□空き地のはずれの一本のにれの木の□前に□、 (練習文9) 高くのびた□たんぽぽのくきの上のわた毛には□、または 高くのびたたんぽぽの□くきの上のわた毛には□、 (練習文10) 坂の左手の□小さな農家の□障子の窓には□、または 坂の左手の□小さな農家の障子の窓には□、 |
||
このページのトップへ戻る |