本稿の目次                  
第8節 時間順序の音声表現のしかた     2018・07・15記
  (1)時間順序を示す言葉が書いてある文章
     時間順序のある音声練習をしよう
  (2)時間順序を示す言葉が書いてない文章
     時間順序のない音声練習をしよう
第9節 個条書きの音声表現のしかた
     個条書き文の音声練習をしよう




 
第8節  
  時間順序の音声表現のしかた


 時間の順序で書いてある文章には、観察記録文、実験記録文、紀行文、
旅行記、生活作文などがあります。物語文も多くが時間の経過を追った出来
事・事件の流れで書いてあります。
 時間の順序で書いてある文章を音声表現するときは、時間の経過にそっ
た出来事(事柄)の順番が聞き手にわかりやすく伝わるように読むことが大
切です。時間系列で継起していく事象や事柄の順序、その一つ一つの順番が
音声でひとかたまりの連鎖として区切って読むようにします。そうすると聞
き手に分かりやすく伝わるようなります。

 時間の順序で書いてある文章には、二種類があります。
  (イ)時間順序を示す言葉が書いてある文章
  (ロ)時間順序を示す言葉が書いてない文章

 はじめに(イ)から書きます。後半で(ロ)を書きます。



(イ)時間順序を示す言葉が書いてある文章



 日付や時刻を追って書いてある文章、出来事の順番を示す言葉が書いてあ
る文章などがあります。「○月○日、○時○分」、「はじめに、次に、それ
から」などが書いてある文章です。
 このような文章の音声表現は、時間経過の進行にそった出来事や事柄の順
番に区切って、一つ一つの順番のまとまりをおさえて、間をあけて読むよう
にします。


  
時間順序の言葉が書いてある文章の音声表現のしかた


 次の文章には、時間順序の言葉が書いてあります。時間順序のまとまりご
とに区切って読むと、聞き手に分かりやすく伝わります。
 例文で説明します。

(例文1)
 みんなで、おみせやさんごっこのじゅんびをしました。
 はじめに、くだものやさんでうっているしなものの名前を、一つ一つか
きました。
 つぎに、しなものの絵をかきました。
 それから、おきゃくさんがたくさん来てくれるように、せんでんのちら
しを作りました。

(音声表現のヒント)
 時間の順序を示している言葉があります。「はじめに」「つぎに」「そ
れから」がそうです。このような文章は、時間の順序のまとまりごとに区切
って読むようにします。「はじめに」のまとまり、「つぎに」のまとまり、
「それから」のまとまり、それらの区切りで間をあけて読むようにします。
 「はじめに」の最後の文章個所(一つ一つかきました)を読み終えたら、
そこで軽く間をあけます。一つの区切りの話が終わったよ、次の新しい事柄
の話に移るよ、というしるしの軽い間をあけます。「つぎに」の最後の文章
個所(絵をかきました)も、同じ理由で軽い間をあけます。
 また、時間の順序を示す言葉「はじめに」「つぎに」「それから」を新
しい起こしで明るい高めの声立てで読み出していくと区切りがはっきり伝わ
ります。前の事柄の話しが終わったよ、次に新しい事柄に話しが移ったよ、
というしるしのやや高めの明るい声だてにして読みだしていきます。そうす
ると前との区切りがはっきりします。

 みんなで、おみせやさんごっこのじゅんびをしました。
(間)
 
はじめに、くだものやさんでうっているしなものの名前を、一つ一つか 
きました。
(間)
 
つぎに、しなものの絵をかきました。(間)
 
それから、おきゃくさんがたくさん来てくれるように、せんでんのちらし
を作りました。
(間)


(例文2)
 さてつあそびをしました。さいしょ、下じきの下にじしゃくをつけてうご
かすと、さてつはおとうさんのおひげのようになりました。つぎにうごかす
と、こんどはひろがって、しばふみたいになりました。またうごかすと、ま
るくきれいな形にならんで、きくの花のようになりました。
 かずおくんが、
「うまい、うまい。」
と、手をたたきました。

(音声表現のヒント)
 時間順序を示している言葉は、「さいしょ」「つぎに」「また」です。こ
れらの言葉(下記赤字)を新しい起こしで明るい高めの声立てで読み出して
いきます。これらの言葉(赤字)の直前にある前文章の文末部分を読み終え
たら、そこで軽く間をあけます。そして赤字の言葉を新しい起こしの読み調
子で読み出していくようにします。

 さてつあそびをしました。
(間)
さいしょ
、下じきの下にじしゃくをつけてうごかすと、さてつはおとうさん
のおひげのようになりました。
(間)
つぎに
うごかすと、こんどはひろがって、しばふみたいになりました(間)
また
うごかすと、まるくきれいな形にならんで、きくの花のようになりまし
た。
(間)
 かずおくんが、
「うまい、うまい。」
と、手をたたきました。
(間) 


(例文3)
  次の文章を時間の順序が分かるように音声表現してみましょう。どん
なことに気をつけて読めばいいですか。

          パン工場の見学

 きのう、わたしたちは、みなみ町のパン工場へ見学に行きました。
 はじめに、工場の前で、おじさんの話を聞きました。
 「一日、三万このパンを作ります。」
という話を聞いて、みんなびっくりしました。
 小麦こは、アメリカやオーストラリアから来るのだそうです。
 次に、工場の中へ入りました。入ったところで、水と小麦ことイースき
んをミキサーでまぜて、パンのきじを作っていました。
 こんどは、パンのきじをまるめるところを見ました。白くて、とろとした
パンのきじが、きかいから出てくる時は、たまごのような形になってま し
た。
 それから、はっこう室へ入りました。たまごの形のパンの生地が、ここで
はふっくらとふくらんでいました。これをやくのだそうです。
 おしまいに、パンをふくろにつめるところを見ました。長いおびのよう
なビニルのふくろの中に、パンが入ったかと思うと、きかいがガチャンと下
りて、ふくろづめができていました。
 見学が終わってから、工場のおじさんたちのお礼を言って、帰りました。

(音声表現のヒント)
 時間の順序を示している言葉は、「きのう」「はじめに」「次に」「こ
んどは」「それから」「おしまいに」「見学が終わってから」です。それぞ
れは、一つの段落を形作っています。一段落の内部はひとまとまりに音声表
現します。その段落の最終の文末部分が読み終わったら、そこで軽く間をあ
けます。そして次の時間順序を示す言葉(下記赤字)を新しい起こしで、明
るい高めの声だてにして読み出していきます。

          パン工場の見学

 
きのう、わたしたちは、みなみ町のパン工場へ見学に行きました(間)

 
はじめに、工場の前で、おじさんの話を聞きました。
 「一日、三万このパンを作ります。」
という話を聞いて、みんなびっくりしました。
 小麦こは、アメリカやオーストラリアから来るのだそうです。
(間)

 
次に、工場の中へ入りました。入ったところで、水と小麦ことイーストき
んをミキサーでまぜて、パンのきじを作っていました。
(間)

 
こんどは、パンのきじをまるめるところを見ました。白くて、とろとろし
たパンのきじが、きかいから出てくる時は、たまごのような形になってい
ました。
(間)

 
それから、はっこう室へ入りました。たまごの形のパンの生地が、ここで
はふっくらとふくらんでいました。これをやくのだそうです。
(間)

 
おしまいに、パンをふくろにつめるところを見ました。
 長いおびのようなビニルのふくろの中に、パンが入ったかと思うと、きか
いがガチャンと下りて、ふくろづめができていました。
(間)

見学が終わってから
、工場のおじさんたちのお礼を言って、帰りました。



     
時間順序の音声練習(1)をしよう



 次の文章には時間の順序を示す言葉が書いてあります。時間の順序が分
かるように音声表現してみましょう。どんなことに気をつけて読めばいいで
しょうか。
 区切り個所に(間)と書き入れましょう。みなさんが鉛筆で(間)を書き
入れる場合は、チェックでも、レ点でも、何でもかまいません。そこで軽く
間をあけます。時間の順序を示す言葉は新しい起こしで明るい高めの声だて
にして読み出していきます。

(練習文1)
 秋になるころから、大人のさけは、たくさんあつまって、たまごをうみに、
海から川へやってきます。そして、いきおいよく川を上ります。三メートル
ぐらいのたきでものりこえて、川上へ川上へとすすんでいきます。
 やがて、水のきれいな川上にたどりつくと、さけは、おびれをふるわせて、
すなや小石の川底をほります。ふかさが五十センチメートルぐらいになると、
そのあなのそこにたまごをたくさんうんで、うめてしまいます。
 冬の間、たまごからさけの赤ちゃんが生まれます。大きさは二センチメー
トルぐらいです。はじめは、ちょうど赤いぐみのようなものをおなかにつけ
ていますが、やがて、それがなくなって、三センチメートルぐらいの小魚に
なります。
 春になるころ、五センチメートルぐらいになったさけの子どもたちは、海
にむかって川を下りはじめます。水にながされながら、いく日もいく日もか
かって、川を下っていきます。
               「さけが大きくなるまで」教出2より


(練習文2)
 ライオンの赤ちゃんは、生まれて二か月ぐらいは、おちちだけのんでい
ますが、やがて、おかあさんのとったえものを食べはじめます。一年ぐらい
たつと、おかあさんのするのを見て、えもののとりかたをおぼえます。
 しまうまのあかちゃんは、生まれて三十分もたたないうちに自分で立ち
上がります。そして、つぎの日には、走るようになります。だから、つよい
どうぶつにおそわれてもにげることができるのです。
             「どうぶつのあかちゃん」光村1より

(練習文3)
 やがて、山の木のはがおちて、ふゆがやってきました。ゆきがふりはじめ
ると、きこりのふうふは、村へ下りていきました。
 はるになって、また、きこりのふうふは、山おくのこやにもどってきまし
た。とをあけたとき、おかみさんはあっとおどろきました。
                      岸なみ「たぬきの糸車」

(練習文4)
 ねむりの長さは、年齢によって大きなちがいがあります。生まれたばかり
の赤んぼうは、ほとんど一日中ねむっています。5才ぐらいの子どもは二
時間ぐらい、小学生で十時間ぐらい、二十才ぐらいの青年で八時間ぐらい
です。このことは、ねむりが、人間の発育と深い関係があることを示してい
ます。                  宮城音弥「ねむりについて」


 
答え(一つの例です。この通りでなくてもかまいません)

(練習文1)
 
秋になるころから、大人のさけは、たくさんあつまって、たまごをうみ
に、海から川へやってきます。
(間)そして、いきおいよく川を上ります
(間)三メートルぐらいのたきでものりこえて、川上へ川上へとすすんでい
きます。
(やや長めの間)
 
やがて、水のきれいな川上にたどりつくと、(間)さけは、おびれをふる
わせて、すなや小石の川底をほります。
(間)ふかさが五十センチメートル
ぐらいになると、そのあなのそこにたまごをたくさんうんで、
(間)うめて
しまいます。
(やや長めの間)
 
冬の間、たまごからさけの赤ちゃんが生まれます。(間)大きさは二セン
チメートルぐらいです。
(間)はじめは、ちょうど赤いぐみのようなものを
おなかにつけていますが、
(間)やがて、それがなくなって、(間)三セン
チメートルぐらいの小魚になります。
(やや長めの間)
 
春になるころ、五センチメートルぐらいになったさけの子どもたちは、
海にむかって川を下りはじめます。
(間)水にながされながら、いく日もい
く日もかかって、川を下っていきます。
(やや長めの間)


(練習文2)
 ライオンの赤ちゃんは、
生まれて二か月ぐらいは、おちちだけのんでいま
すが、
(間)やがて、おかあさんのとったえものを食べはじめます。(間)
一年ぐらいたつと
、おかあさんのするのを見て、えもののとりかたをおぼ
えます。
(やや長めの間)
 しまうまのあかちゃんは、
生まれて三十分もたたないうちに自分で立上
がります。
(間)そして、つぎの日には、走るようになります。(間)だか
ら、つよいどうぶつにおそわれてもにげることができるのです。
(間)


(練習文3)
 
やがて、山の木のはがおちて(間)ふゆがやってきました。(間)ゆきが
ふりはじめると、
(間)きこりのふうふは、村へ下りていきました(間)
 
はるになって(間)また、きこりのふうふは、山おくのこやにもどて
きました。
(間)とをあけたとき、おかみさんはあっとおどろきました。
(間)


(練習文4)
 ねむりの長さは、年齢によって大きなちがいがあります。
(間)生まれた
ばかり
の赤んぼうは、ほとんど一日中ねむっています。(間)5才ぐらの
子ども
は十二時間ぐらい、(間)小学生で十時間ぐらい、(間)二十才ぐら
の青年で八時間ぐらいです。(間)このことは、ねむりが、人間の発育と
深い関係があることを示しています。
(間)              



(ロ)時間順序を示す言葉が書いてない文章



 次の例文には「時間の順序をしめす言葉」が書いてありません。しかし、
文章内容を読むと、時間の順序で配列された出来事(事柄)が継時的に叙述
されていることが分かります。

(例文1)
 ゆっくりと地下をくぐってきたわき水は、集まって谷川になり、小さな川
になり、やがて大きな流れになって、平野をうるおしてくれます。

ゆっくりと地下をくぐってきたわき水は、
(わき水は、どうなったの)
集まって谷川になり、(中止形)
(1番目に、谷川になった)
小さな川になり、(中止形)
(2番目に、小さな川になった)
やがて大きな流れになって、(動詞連用音便形+接続助詞て)
(3番目に、大きな流れになった)
平野をうるおしてくれます。(終止形)
(最後に、平野の田畑の作物を豊かに実らせてくれる)

 時間順序を示す言葉が書いてありませんが、1番目から最後(4番目)ま
で、こんな時間の順序で出来事(事柄)が継時的な経過をたどったという叙
述になっています。
 (例文1)の文章には、用言の中止形(中止法)の連鎖が多く使われてい
ます。中止形(中止法)とは、用言活用の連用形が、言表の途中で中止して、
次へと続く形で言いとめられる用法です。終止形で文を切ってしまうかわり
に、一度途中で止めて、さらに文を並列・添加していく働きをしています。
上の文では「なり」「なり」「なって」という連鎖で続いています。「な
り」も「なって」も、連用中止法の使い方で、「なり」は動的感じが強く、
「なって」は情態的感じが強い、という違いがあります。

 時間順序が書いてない文章の音声表現のしかたを調べてみましょう。
 時間の順序の中のひとまとまりはひとつながりに読みます。1番目はひと
つながりに、2番目もひとつながりに、3番目もひとつながりに読みます。
時間の順序のひとつながりと、ひとつながりは、ひとまとまりに読みます。
ひとまとまりとひとまとまりの間は、ほんの軽く、気持ちだけの区切りの間
をあけて読みます。
 下記(例文1)には(間)のしるしが書き入れてあります。そこが時間系
列のひとまとまりの区切りを意味しています。そこで軽く間をあけます。

 ゆっくりと地下をくぐってきたわき水は、
(間)集まって谷川になり、
(間)小さな川になり、(間)やがて大きな流れになって、(間)平野をう
るおしてくれます。

[おことわり]
 間の位置は、筆者(荒木)がこの文章内容では、この位置が標準的かつ一
般的だろうと考えた間のあけ方の例です。一つの例でしかありません。この
通りでなくてもかまいません。
 また、間の長さは、たっぷりと、きっちりとあけるということではありま
せん。ほんの軽く、短く、区切りが分かる程度にあけるということです。息
づかいは次へと続いていきます。言い納め、言い切りにはしてはいけません。


 次の文章はどんなことに気をつけて読めばよいでしょうか。鉛筆をもっ
て間をあける個所にしるしを書き入れましょう。記号はチェックでも、レ点
でも、何でもかまいません。

(例文2)
 山に降った雨が、いつの間にか集まって一筋の流れになり、たくさんの土
砂を運び、海まで流れていきます。

(例文3)
 それに、あんまり山がものすごいので、その白くまのような犬が、二ひき
いっしょにめまいを起こして、しばらくうなって、それからあわをはいて死
んでしまいました。          宮沢賢治「注文の多い料理店」

(例文4)
 水そうの中に土を入れ、上を平らにして、軽くおさえ、じょうろで水をか
け、土をしめらせてから、ミミズを入れて、中を暗くしました。


 答え(一例でしかありません。この通りでなくてもかまいません)

(例文2、間を書き入れた文)
 山に降った雨が、
(間)いつの間にか集まって一筋の流れになり、(間)
たくさんの土砂を運び、
(間)海まで流れていきます。

(例文3、間を書き入れた文)
 それに、あんまり山がものすごいので、
(間)その白くまのような犬が、
二ひきいっしょにめまいを起こして、
(間)しばらくうなって、(間)それ
からあわをはいて
(間)死んでしまいました。

(例文4、間を書き入れた文)
 水そうの中に土を入れ、
(間)上を平らにして、(間)軽くおさえ、
(間)じょうろで水をかけ、(間)土をしめらせてから、(間)ミミズを入
れて、
(間)中を暗くしました。
 または、
 水そうの中に土を入れ、
(間)上を平らにして、軽くおさえ、(間)じょ
うろで水をかけ、
(間)土をしめらせてから、ミミズを入れて、(間)中を
暗くしました。


 次の文章はどうでしょう。間のしるしを書き入れましょう。

(例文5)
 箱をあけると、その中に、また小さな箱があって、その小さい箱をあける
と、またその中に、もっと小さい箱があって、そいつをあけると、また、小
さい箱があって、その小さな箱をあけると、また箱があって、そうして、七
つも、八つも、あけていって、とうとうおしまいに、さいころくらいの小さ
い箱が出て来て、そいつをそってあけてみて、何もない、からっぽ、あの感
じ、少し近い。             太宰治「女生徒」

(例文6)
 水はサラサラ鳴り、天井の波はいよいよ青いほのおを上げ、やまなしは横
になって木の枝に引っかかって止まり、その上には、月光のにじがもかもか
集まりました。             宮沢賢治「やまなし」

(例文7)
 その木の下の大きな岩の根もとからきれいないずみがわきだしました。そ
のいずみは夏がきても、秋がきても、少しもかれないで、一時の休みもなく、
こんこんとわき続けました。それで、やがてそれは小さな小川になり、山を
下って谷を流れ、谷を下ってまた谷にはいり、いく曲がりしたのち、それは
野原に出てゆきました。そして広いその野原を流れ流れて、遠い空の向こう
まで続いていきました。おしまいはきっと海に流れこんだことでありましょ
う。                 坪田壌治「サバクのにじ」

 
答え(一つの例です。この通りでなくてもかまいません)

(例文5、間を書き入れた文)
 箱をあけると、
(間)その中に、また小さな箱があって、(間)その小さ
い箱をあけると、またその中に、もっと小さい箱があって、
(間)そいつを
あけると、また、小さい箱があって、
(間)その小さな箱をあけると、また
箱があって、
(間)そうして、七つも、八つも、あけていって、(間)とう
とうおしまいに、さいころくらいの小さい箱が出て来て、
(間)そいつをそ
ってあけてみて、何もない、からっぽ、
(間)あの感じ、(間)少し近い。

<完結性のある文章でなく、その時々に少女が感じた感性のはじける想いを
心に浮かんだままを言葉にして発したという文章です。話者の息づかい、心
の微妙な動きをそのまま表わしている文章です。息継ぎの場所を意識して、
そこですばやく息を吸うようにします。まだ息が残っているうちに継ぎ足し
ていく息の補給が大切です。終止してはいけません。次へ次へとつづく息づ
かいが大切です。>

(例文6、間を書き入れた文)
 水はサラサラ鳴り、
(間)天井の波はいよいよ青いほのおを上げ、(間)
やまなしは横になって木の枝に引っかかって止まり、
(間)その上には、月
光のにじがもかもか集まりました。             

(例文7、間を書き入れた文)
 その木の下の大きな岩の根もとからきれいないずみがわきだしました。
(間)そのいずみは夏がきても、秋がきても、(間)少しもかれないで、
(間)一時の休みもなく、(間)こんこんとわき続けました。(間)それで、
(間)やがてそれは小さな小川になり、(間)山を下って谷を流れ、(間)
谷を下ってまた谷にはいり、
(間)いく曲がりしたのち、(間)それは野原
に出てゆきました。
(間)そして広いその野原を流れ流れて、(間)遠い空
の向こうまで続いていきました。
(間)おしまいはきっと海に流れこ
んだことでありましょう。                 
<格助詞「の」の連続が3個つづいている個所があります。「その木の下の
(間)大きな岩の根もとから(間)きれいないずみがわきだしました」のよ
うに区切ると分かりやすい読み方になります。詳細は第5節(2)を参照>


     
 時間順序の音声練習(2)をしよう


 次の文章を時間の順序が分かるように音声表現します。どう区切って読
めばよいでしょうか。時間の区切りの個所に(間)のしるしを書き入れまし
ょう。チェックでも、レ点でも、何でもかまいません。

 (問題文1)
 自動車道路の工事が、ブナやミズナラの大木を切りたおし、花の咲く山腹
をけずり、最後に残った三平峠の泉をも、えぐりとってしまいました。

(問題文2)
 それから何日かたつと、岩の割れ目の種は、細い根をのばし始めた。根は
岩のすきまにしのびこみ、わずかな水をすい上げ、もろくなった岩から養分
を取った。

(問題文3)
 渡良瀬川は、栃木県北西部の足尾の山々を源にして、栃木・群馬を流れ、
茨城県古河市に入り、埼玉県栗橋近くで利根川に合流する。

(練習文4)
 法隆寺に使われた木材は、樹齢二千年のヒノキでした。このヒノキは、山
の中で二千年生き、切られて建物になってから、また千三百年以上も生き、
これからさらに千年以上なお生き続けることになるのです。

(問題文5)
 砂防林の作業は、地面をならすことから始まり、水はけをよくしたのち、
風を防ぐ垣根をとりつけ、それが終わると、今度は牧草の種をまく。

(問題文6)
 秋になると、茶色いぴかぴか光った実を、いっぱいふり落としてくれる。
その実を、じさまが、木うすでついて、石うすでひいてこなにする。こなに
したやつをもちにこね上げて、ふかして食べると、ほっぺたが落っこちるほ
どうまいんだ。            斎藤隆介「もちもちの木」

(問題文7)
 外はすごい星で、月も出ていた。とうげの下りの坂道は、一面の真っ白い
霜で、雪みたいだった。霜が足にかみついた。足からは血が出た。豆太は、
なきなき走った。いたくて、寒くて、こわかったからなぁ。
 でも、大すきなじさまの死んじまうほうが、もっとこわかったから、な
きなきふもとの医者様へ走った。    斎藤隆介「もちもちの木」

(問題文8)
 体の中にも、微生物と戦うすばらしい仕組みができています。入り込んだ
微生物がふえて、毒を出し始めると、まず、血の中にある小さな白血球が、
その付近に引き付けられていき、微生物を食べ始めます。食べつくせないと
きには、今度は、大きな白血球が働きだします。大きな白血球は、やわらか
い角のようなものを出して、微生物をつかまえます。
                  中村桂子「体を守る仕組み」
(問題文9)
 いくたびも春はめぐり、次々に芽ぶく草や木の根は岩をもろくしていき、
くだけた岩は、やがて土に変わった。辺りには、こけがくし始め、風に乗っ
てきた小さな虫たちが、草むらをいそがしくはい回るようになった。
 その間にも、いちばん初めの種は、深く深く山の心臓に向かって根をのば
した。小さな芽は、やがて木になり、しだいにみきが太くなって、空高くえ
だをはりめぐらした。とうとう根は、山のひびわれた心臓にとどき、やさし
い指のようにわれ目をふさいで、いたみを取りのぞいた。
 「小鳥を好きになった山」アリス=マクレーラン作。ゆあさふみえ訳。


 答え(一つの間のあけ方例です。参考例です)

 (問題文1)
 自動車道路の工事が、
(間)ブナやミズナラの大木を切りたおし、(間)
花の咲く山腹をけずり、
(間)最後に残った三平峠の泉をも、えぐりとって
しまいました。

(問題文2)
 それから何日かたつと、
(間)岩の割れ目の種は、細い根をのばし始め
た。
(間)根は岩のすきまにしのびこみ、(間)わずかな水をすい上げ、
(間)もろくなった岩から養分を取った。

(問題文3)
渡良瀬川は、
(間)栃木県北西部の足尾の山々を源にして、(間)栃木・
群馬を流れ、
(間)茨城県古河市に入り、(間)埼玉県栗橋近くで利根川に
合流する。

(問題文4)
法隆寺に使われた木材は、樹齢二千年のヒノキでした。
(間)このヒノキ
は、山の中で二千年生き、
(間)切られて建物になってから、また千三百年
以上も生き、
(間)これからさらに千年以上なお生き続けることになるので
す。

(問題文5)
 砂防林の作業は、
(間)地面をならすことから始まり、(間)水はけをよ
くしたのち、
(間)風を防ぐ垣根をとりつけ、(間)それが終わると、今度
は牧草の種をまく。

(問題文6)
 秋になると、
(間)茶色いぴかぴか光った実を、いっぱいふり落としてく
れる。
(間)その実を、(間)じさまが、木うすでついて、(間)石うすで
ひいてこなにする。
(間)こなにしたやつをもちにこね上げて、(間)ふか
して食べると、
(間)ほっぺたが落っこちるほどうまいんだ。      

(問題文7)
 外はすごい星で、月も出ていた。
(間)とうげの下りの坂道は、一面の真
っ白い霜で、雪みたいだった。
(間)霜が足にかみついた。(間)足からは
血が出た。
(間)豆太は、なきなき走った。(間)いたくて、(間)寒くて、
(間)こわかったからなぁ。(間)
 でも、
(間)大すきなじさまの死んじまうほうが、もっとこわかったか
ら、
(間)なきなきふもとの医者様へ走った。

(問題文8)
 体の中にも、微生物と戦うすばらしい仕組みができています。
(間)入り
込んだ微生物がふえて、毒を出し始めると、
(間)まず、血の中にある小さ
な白血球が、その付近に引き付けられていき、
(間)微生物を食べ始めます。
(間)食べつくせないときには、(間)今度は、大きな白血球が働きだしま
す。
(間)大きな白血球は、やわらかい角のようなものを出して、(間)
生物をつかまえます。

(問題文9)
 いくたびも春はめぐり、
(間)次々に芽ぶく草や木の根は岩をもろくして
いき、
(間)くだけた岩は、やがて土に変わった。(間)辺りには、こけ
が生え始め、
(間)風に乗ってきた小さな虫たちが、草むらをいそがしくは
い回るようになった。
(間)
 その間にも、
(間)いちばん初めの種は、深く深く山の心臓に向かって根
をのばした。
(間)小さな芽は、やがて木になり、(間)しだいにみきが太
くなって、空高くえだをはりめぐらした。
(間)とうとう根は、山のひびわ
れた心臓にとどき、
(間)やさしい指のようにわれ目をふさいで、いたみを
取りのぞいた。


 
特記事項
 これまで区切りの間について学習してきました。区切りの間の長さは「短
く、軽く」でした。次へつづく息づかいであける間でした。
 間には、区切りの間のほかにいろいろな種類の間があります。間について
は書くことがたくさんあり、本稿では詳細は割愛せざるを得ません。拙著
『音読の練習帳2』(一光社、1989)には、次のような間の種類が書いてあ
ります。
  「会話文」にある間
 意味の切れ目の間。係り受けの間。はさみこみの間。文終止の間。会話文
と地の文との区別の間。期待もたせの間。ためらいの間。言いよどみの間。
内容整理の間。コトバ選びの間。返事待ちの間。反応確かめの間。真意探り
の間。考えさせの間。気持ち変化の間。やりとりの間。沈黙の間。
  「地の文」にある間
 意味に切れ目の間。強調の間。はさみこみの間。場面変えの間。期待もた
せの間。思いひたりの間。驚きの間。時間経過の間。余韻の間。

 本ホームページにも、間について下記の章で書いています。
   第8章 句読点の音声表現のしかた
       間のあけ方で音声表現の7割は決まる
       間はたっぷり気味に長めにあけるとよい
   第13章 表現よみ授業の指導方法(その5)
       表現よみ授業の指導方法(その6)

 文章の意味内容の区切り方がデタラメでは、聞き手によく伝わりません。
意味内容の切れ目で区切って読むことはとても大切です。区切りの間は、音
声表現に第一に要求される基礎基本の間であり、客観的な間です。
 間の長さについてヒトコト書き加えます。間の長さには「一つ分の間」
「二つ分の間」「三つ分の間」などがあります。「一つ分の間」にも「イ
チ」と短いものや「イーチ」とやや長いもの、「二つ分の間」にも「イチ・
ニ」と短いものや「イーチ、ニーイ」とやや長いもの、「三つ分の間」にも
「イチ、ニ、サン」と短いものや「イーチ、ニーイ、サーン」とやや長めに
あける間があります。どれぐらいの長さの間をあけるかは、読み手の文章解
釈のしかたや、これまで読みすすめてきた読みのリズム(音調、気分、感情
の乗り)によって違ってきます。作品世界への入り込み度の深さ、浅さや感
情評価的態度の違いによって間のあけ方が違ってきます。同じ読み手でも、
その都度、違ってきます。このように読み手の解釈や気分の乗り方によって
違う、かなり主観的な間もあります。

 下記に例文6個が書いてあります。それぞれの例文に一つ分、二つ分、三
つ分の間を書き入れています。音声表現するとき、こんな間のあけ方で読む
方法もあります、という例を書いています。筆者(荒木)が音声表現すると
したら、こんなあけ方で読むだろう、という例です。句点(マル)では殆ど
間をあけますが、読点(テン)では、間をあけたり、あけなかったりします。
句読点が書いてない個所でも間をあけたりもします。
 一つ分の間は(間)と書いています。二つ分の間は(間)(間)と書いて
います。三つ分の間は(間)(間)(間)と書いています。これら間のあけ
方は、一つの参考例です。この通りでなくてもいっこうにかまいません。た
めしにあなたもこの通りに音声表現してみてください。きっと「なるほど、
こんな間のあけ方もあるのか」と感心してくださることを期待しています。
 はじめに、上段の(例文・原文)にあなたの間のあけ方、一つ分、二つ分、
三つ分の間のしるしを書き入れて下さい。それから、下段(間記入の原文)
に進んで、間記入してある通りに実際に音声表現してみて下さい。

(例文1・原文)
 兵十のうちのうら口から、うちの中へいわしを投げこんで、あなへ向かっ
てかけもどりました。とちゅうの坂の上でふり返ってみますと、兵十がまだ、
いどの所で麦をこいでいるのが小さく見えました。
                      新美南吉「ごんぎつね」
(例文1・間記入原文)
 兵十のうちのうら口から、うちの中へいわしを投げこんで、あなへ向かっ
てかけもどりました(間)。とちゅうの坂の上でふり返ってみますと(間)
(間)(間)、兵十がまだ、いどの所で麦をこいでいるのが(間)小さく
(間)見えました。           

 (例文2・原文)
 ごんは、川下の方へと、ぬかるみ道を歩いていきました。
 ふと見ると、川の中に人がいて、何かやっています。ごんは、見つからな
いように、そうっと草の深い所へ歩みよって)、そこからじっとのぞいてみ
ました。
「兵十だな。」と、ごんは思いました。    新美南吉「ごんぎつね」

 (例文2・間記入原文)
 ごんは、川下の方へと、ぬかるみ道を歩いていきました。(間)
 ふと見ると(間)(間)、川の中に人がいて、何かやっています(間)
(間)(間)。ごんは、見つからないように、そうっと草の深い所へ歩みよ
って(間)(間)(間)、そこからじっと(間)(間)のぞいてみました。
(間)
「兵十だな。」(間)と、ごんは思いました。 

(例文3・原文)
 ガンは、昨日の失敗にこりて、えをすぐには飲みこまないで、まず、くち
ばしの先にくわえて、ぐうと引っぱってみてから、いじょうなしと認めると、
初めて飲みこんだらしいのです。    椋鳩十「大造じいさんとガン」

(例文3・間記入原文)
 ガンは、昨日の失敗にこりて、えをすぐには飲みこまないで、まず、くち
ばしの先にくわえて、ぐうと引っぱってみてから(間)(間)(間)、いじ
ょうなし(間)と認めると、初めて飲みこんだらしいのです。  
                  
(例文4・原文)
 わかい大工さんは、道具箱をむしろの上に置いて、そのわらぐつを手に取
ると、たてにしたり横にしたりして、しばらくながめてから、今度はおみつ
さんの顔をまじまじと見つめました。   
                  杉みき子「わらぐつの中の神様」

(例文4・間記入原文)
 わかい大工さんは、道具箱をむしろの上に置いて、そのわらぐつを手に取
ると(間)、たてにしたり(間)横にしたりして(間)、しばらくながめて
から(間)(間)(間)、今度はおみつさんの顔をまじまじと見つめました。
                 

(例文5・原文)
 かにの子どもらは、あんまり月が明るく水がきれいなので、ねむらないで
外に出て、しばらくだまってあわをはいて天井の方を見ていました。
                     宮沢賢治「やまなし」

(例文5・間記入原文)
 かにの子どもらは、あんまり(間)月が明るく水がきれいなので(間)、
ねむらないで外に出て(間)、しばらくだまってあわをはいて(間)(間)
(間)天井の方を見ていました。        
<「あんまり」は「月が明るく水がきれい」全体に係っている。「月が明る
く」だけではない。「月が明るく水がきれい」はひとつながりに読む>

(例文6・原文) 
 じいさんは、今日こそ、あのガンを射とめてやるぞと決意した。じいさん
のむねは、わくわくしてきた。しばらく目をつぶって、心の落ち着くのを待
った。そして、冷え冷えするじゅう身を、ぎゅっとにぎりしめた。
                   椋鳩十「大造じいさんとガン」

(例文6・間記入原文)
 じいさんは、今日こそ、あのガンを射とめてやるぞと決意した(間)。じ
いさんのむねは、わくわく(間)してきた。しばらく目をつぶって、心の落
ち着くのを待った(間)(間)(間)。そして、冷え冷えするじゅう身を
(間)、ぎゅっと(間)にぎりしめた。




  
第9節 
  個条書きの音声表現のしかた


 次のような個条書きで書いてある文章形式があります。

(文例1)
 なぜ、このようなことが起こったのでしょうか。
 第一の理由は、……………
 第二の理由は、……………
 第三の理由は、……………

文例2)
 なぜ、このようなことが起こったのでしょうか。
 ひとつめは、……………
 ふたつめは、……………
 みっつめは、……………

このような個条書きの文章は、どのように音声表現すればよいでしょうか。
例文で考えてみましょう。

(例文)
インスタント食品にも、いくつかの問題点があります。
一つ目は、家ごとの味がうしなわれてしまうことです。
二つ目は、料理をすることが少なくなるために、料理が下手になってしま
うのではないかという心配です。
三つ目は、栄養のかたよりということです。

 上の例文の音声表現の仕方を考えてみましょう。

 インスタント食品の問題点を三つにまとめて書いています。「一つ目は、
こうだ」「二つ目は、こうだ」「三つ目は、こうだ」と、問題点を三つに整
理して書いています。このような文章は、問題点が整理
されていて、読み手に分かりやすく伝わり、とてもよい書き方です。
 このような文章を音声表現するときは、三つのそれぞれがひとかたまり
になるように読みます。せっかく三つにまとめて書いているのですから、三
つの区切りをはっきりと区分けして読みます。ひとつめごとの文章(段落)
のおしまい(文末)で軽く間をあけると区切りがはっきりと聞き手に伝わり
ます。
「一つ目は」「二つ目は」「三つ目は」の出だしの言葉は、明るく高めの
声立てで読み出していくと、区切りがさらにはっきりします。


 次の練習文で考えてみましょう。

(練習文1)
 カブトガニがこんなに長い間生きつづけることができた理由は、次のよ
うなことだと考えられています。
 一つは、性質がたいへんおとなしく、海のそこのどろの中でひっそりと
生活してきたことです。そのため、てきにおそわれることが少なく、気候の
大きな変化にもえいきょうを受けなくてすんだのです。
 二つめは、食べ物がおどろくほど少なくてすむということです。カブト
ガニは、何も食べなくても、半年以上もどろの中で生きているのです。
 三つめは、とくべつな卵の産み方が挙げられます。ふうう、卵を産む動
物は、一か所にまとめて産みますが、カブトガニは、海岸の砂の中に、数百
個ずつ分散して産むのです。そのため、卵が全滅する心配がありません。
                       旧版光村4上より
(音声表現のしかた)
 「一つは」「二つめは」「三つめは」と、カブトガニが長い間生きつづ
けてきた理由を三つに整理して書いています。こういう書き方を「個条書
き」といいます。
 個条書きの音声表現のしかたは、これらの出だしの言葉を明るく強めの
声立てで読み出して、区切りをはっきり知らせます。新しい意味内容に入り
ましたよ、という告知を音調変化で知らせます。
 三つの区切り(段落)の最後尾の文末を読み終わったら、そこで軽い間を
あけて、三つの区切りが分かるようにします。一つの区切り(段落)の内部
は、ひとつながりに読みます。


(練習文2)
 いねには、いくつかの長所があります。
 第一に、お米は長くほぞんできます。
 もみのまま倉庫にしまっておけば、何年ももちます。
 食べ物が、たくさんとれるということと保存できるということは、なん
と大切なことでしょう。秋に収穫したお米は倉庫にしまって、一年間、分け
て食べることができます。豊作の年には、あまったお米をたくわえて、きき
んの年にそなえることができます。肉や魚などでは、そうはいきません。
 第二に、お米には栄養があります。
 わたしたちの体には、たんぱく質という栄養素が必要です。体の基本とな
る成分です。お米には良質のたんぱく質が、たくさんふくまれているのです。
小麦やとうもろこしとは、くらべようもないほどたんぱく質が豊富です。
 第三に、栄養のバランスもとれています。
 人間にはまた、たんぱく質のほか、しぼう、炭水化物、ビタミン、ミネ
ラルなどという、さまざまな栄養素が必要です。その、バランスのよいこと
でも、お米は優等生です。
 第四に、お米はせまい土地でも、たくさん作ることができます。そのう
え、毎年毎年、同じように作ることができます。たとえば、小麦は毎年毎年、
同じ畑に作ることができません。一年畑を使ったらあとの二年は牧草地にし
たり、肥料になる作物を植えたりして、土地を休ませます。ところがお米は、
同じ田に毎年毎年、作れます。
 第五に、お米はおいしく、嫌いな人はあまりいません。梅ぼしや、ほん
のわずかなつけものなどがあれば、ご飯を食べるだけで、十分満足できます。
ですからお米は、「世界のあらゆる食料のなかで、最も理想的なもの」と言
われています。

(音声表現のしかた)
 「第一に」「第二に」「第三に」「第四に」「第五に」と、稲を育てる
長所を五つに整理して書いています。各段落の最初の言葉「第一に」「第二
に」「第三に」「第四に」「第五に」は、明るく高めの声立てで読み出して
いきます。新しい意味内容に入りましたよ、といサインを音声で知らせます。
 各段落の最後尾の文末が読み終わったら、そこで軽く間をあけます。それ
ぞれの区切りのまとまり(段落)の内部は、ひとつながりに読みます。こう
して各段落との区切りとまとまりをはっきりさせて読みます。


       
個条書き文の音声練習をしよう


  箇条書きで区切って読む練習をしましょう。どう区切って読めば、聞

手に分かりやすく伝わるでしょうか。どこを区切るか、どこをひとつながり
に読むか。区切り方だけでなく、ほかに読み方で気をつけることは何でし

うか。それぞれの問題文について答えましょう。


(問題文1)         海の利用

 広くて深くて大きな海を、人間は、むかしから、いろいろなことに使っ
てきました。
 第一に、海には、魚や貝がいます。海草があります。人間は、それらを
取って食べ物にしてきました。
 第二に、海に重い物をうかべて運んだり、船でほかの土地と行き来しま
した。ほかの国の人と品物を売り買いするのにも、船に乗せて、海の上を運
びました。
 第三に、海水には、いろいろな物がとけこんでいます。たとえばしおで
す。
陸地全体を百五十メートルのあつさでおおってしまうほどたくさんおしお
が、海水にとけています。人間は、それを取り出して使ってきました。
 第四に、海の底には、石油や石炭などもうずまっています。ダイヤモン
ドや鉄などがあることもわかってきました。ですから、これらをほり取って
つかうことがこころみられています。

(問題文2)
 文字を使った通信手段である電子メールと手紙について考えてみよう。
 まず、手紙と比べて、電子メールの良いところは、相手に速くとどくと
いうことです。また、同じ内容の連絡をグループの人たちに送りたいときな
ど、手紙だと相手の数だけ文章を書かなければありませんが、電子メールな
ら一つの文章を複数の人にいっせいに送ることができて手間が省けます。そ
れに、受け取ったメールだけでなく、自分が送信したメールも簡単に保存で
きるので、記録したり読み返したりするのにも便利です。

(問題文3)
 みなさんは、動物のミルクがミラクル(ふしぎなこと)を起こして、さ
まざまな物に変身することを知っていますか。
 まず、一つめのミラクルはヨーグルトです。動物のミルクを利用し始め
たのは、今のエジプトの近くに住む人たちです。この地方では、暑いとき
には日中の気温が五十度ちかくにもなります。ここにミルクを置きっぱなし
にすると、いろいろな菌が空気中から飛び込んできて、どんどんふえていき
ます。このとき、ミルクの中に、にゅうさん菌という菌が入ると、ミルクの
変身が起きます。それまでさらっとしていたミルクが、だんだんどろっとし
てきて、食べてみると少しすっぱい味になります。これがヨーグルトです。
にゅうさん菌のおかげで、ミルクがくさらずにヨーグルトにかわりました。
これが一つめのミラクルです。
  二つめのミラクルは、バターです。ミルクをかき回すと、白いかたま
りができます。これはミルクの中のしぼう(油)がかたまった物です。こう
してできたかたまりがバターです。バターは、ほかの油にくらべて味やかお
りがよく、料理に使うと、とてもおいしくなります。また、ケーキなどのお
かし作りにも使います。
  三つめのミラクルは、チーズです。チーズは、ミルクの中のたんぱく
しつがかたまったものです。チーズにはえいようがあり、とてもおいしいの
で、今では世界中の人が食べています。

(問題文4)
 わたしたちの体には、病気の原因になる微生物から自分の体を守るため
の仕組みがあります。
 まず、体をおおっている皮ふです。きずでもないかぎり、微生物は、皮
ふを通して体の中に入ることはありません。それだけでなく、皮ふが老化し、
あかになって落ちるとき、微生物も落ちてしまいます。
 それから、なみだも、目から入ろうとする微生物を流してしまいます。
しかも、なみだは、微生物を殺す働きもします。
 それから、のどのおくに生えているせん毛の働きです。せん毛は、鼻や
口から入ってきた微生物を、外へ外へとおし出す役目をしているからです。
 このほかにも、わたしたちの体には、微生物から守るための仕組みがあ
ります。体の中に入りこんだ微生物がふえて毒を出しはじめると、血の中に
ある小さな白血球が微生物を食べはじめます。食べつくせないときは、今度
は、大きな白血球が働き出します。大きな白血球は、やわらかい角のような
ものを出して、微生物をつかまえます。


 
答え(一つの間のあけ方の例です。この通りでなくてもかまいません)

(問題文1)
 海の利用について四つに整理して書いてあります。「第一に」「第二
に」「第三に」「第四に」と四つに区分けして書いています。最初の問題文
を入れると、全体が五つに区分けできます。五つを色別にしてみましょう。
一つの色の文章部分は、ひとまとまりに読み、ばらばらにならないように
します。
 「第一に」「第二に」「第三に」「第四に」の言葉は、明るく高めに読
み出します。各段落の最後尾文が読み終ったら、そこで二つ分の間(イチ、
ニー)をあけます。一つの段落の中はひとつながりに、ひとまとまりに読み
ます。

 広くて深くて大きな海を、人間は、むかしから、いろいろなことに使っ
てきました。
(二つ分の間)
 
第一に、海には、魚や貝がいます。海草があります。人間は、それらを
取って食べ物にしてきました。
(二つ分の間)
 
第二に、海に重い物をうかべて運んだり、船でほかの土地と行き来しま
した。ほかの国の人と品物を売り買いするのにも、船に乗せて、海の上を運
びました。
(二つ分の間)
 
第三に、海水には、いろいろな物がとけこんでいます。たとえばしおで
す。 陸地全体を百五十メートルのあつさでおおってしまうほどたくさんお
しおが、海水にとけています。人間は、それを取り出して使ってきました。

(二つ分の間)
 第四に、海の底には、石油や石炭などもうずまっています。ダイヤモン
ドや鉄などがあることもわかってきました。ですから、これらをほり取って
つかうことがこころみられています。



(問題文2)
  一つの段落の中に「まず」「また」「それに」と、三つのことが書い
てあります。この三つは、すべて電子メールの利点についての内容です。電
子メールの便利な点を「まず」「また」「それに」とたたみかけ、重ねて述
べています。
  最初の問題提示文を入れると、全体が四つに区分けできます。四つの
区切りで間をあけて読みながら、電子メールの便利な点を次々と重ねて並べ
立てている口調で読んでいきます。

 
文字を使った通信手段である電子メールと手紙について考えてみよう。
(間)
まず、手紙と比べて、電子メールの良いところは、相手に速くとどく
ということです。
(間)また、同じ内容の連絡をグループの人たちに送りた
いときなど、手紙だと相手の数だけ文章を書かなければありませんが、電子
メールなら一つの文章を複数の人にいっせいに送ることができて手間が省け
ます。
(間)それに、受け取ったメールだけでなく、自分が送信したメール
も簡単に保存できるので、記録したり読み返したりするのにも便利です。



(問題文3)
 ここでは、ミルクのミラクルについて三つのことが書いています。ミル
クが、ヨーグルト、バター、チーズに変身することを、ミラクルと言ってい
ます。それぞれが三つの段落になっています。
 はじめの問題文(課題提示文)は、聞き手に質問してるように、 問いか
けてるように、聞いてるように、文末をしり上がりに読むといいでしょう。
「まず、ひとつめの」「二つめの」「三つめの」の言葉は、明るく高めに読
み出します。
 各段落の最後尾文が読み終ったら、そこで長めの間をあけます。
 それぞれの三つの段落の中は、ひとつながりになるように、ひとまとま
りにして読みます。

(問題文4)
 ここには「病気の原因になる微生物から自分の体を守るための仕組み」
について三つに整理して書いてあります。
 段落のはじめに「まず」「それから」「このほかにも」という言葉で書
き出していて、それぞれが一つの段落を構成しています。
 これら三つの言葉を読み出すときは、新しい場面(意味内容)を開いて
いく感じにして、明るい高めの声立てにして読み出していきます。
 各段落の最後尾文が読み終ったら、そこで長めの間をあけます。段落の
終了ですから、そこで長めの間をあけて、区切りをはっきりと声で示します。
 「まず」の段落は、皮ふのきずでもないかぎり、微生物は、皮ふから侵
入しないという、皮膚は微生物から守っている、という気持ち(思い、意
図)をこめてこの段落全体を音声表現するとよいでしょう。
 「それから」段落は、涙は微生物を流し、殺しもする、という気持ち
(思い、意図)をこめてこの段落全体を音声表現するとよいでしょう。
 次の「それから」段落は、のどの繊毛の働きはのど・口からの微生物の
侵入をガードしている、という気持ち(思い、意図)をこめてこの段落全体
を音声表現するとよいでしょう。
 「このほか」段落は、微生物を退治する白血球の活躍はすばらしい、と
いう気持ち(思い、意図)をこめて、ここの段落全体をひとつながりにして
音声表現するとよいでしょう。

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