本稿目次 20018・06・23記 第6節 連用修飾の音声表現のしかた (1)連用修飾の音声練習をしよう (2)トキトコロの音声練習をしよう 第7節 比喩の音声表現のしかた (1)直喩(連体修飾)の音声練習をしよう (2)直喩(連用修飾)の音声練習をしよう (3)直喩(述語)の音声練習をしよう (4)比喩の応用例文で音声練習をしよう 第6節 連用修飾の音声表現のしかた (1)連用修飾部分の音声練習をしよう 修飾とは、限定する、説明する、詳しく描写して規定することです。意 味内容を詳しく定めることです。情報の内容量を増やし具体性を強めること です。主語や補語の指し示す対象の性質や状態を詳しく補って規定したり、 述語の様態や出来事の起こった時や場所を詳しく説明したりすることです。 修飾語の指導で重要なことは、文章の中のどの部分がどの部分に係って いるかを調べさせること、言葉の係り受けの関係を理解させることです。ど の面が詳しく限定されているか、どのように修飾(限定、描写)されている か調べさせることです。 修飾語の音声表現では、修飾語が被修飾語に係っていくように、二つがひ とつながりに、ひとまとまりになるように音声表現すること、とても重要で す。 日本語では、連用修飾語は、文中のどこにも位置することができます。 次の例文では、連用修飾語「ふしぎそうに」が、3か所に位置することがで きます。 (例文1) 三びきのとらは、大きな口をあけたままでいるわにをふしぎそうに見てい ます。 (例文2) 三びきのとらは、ふしぎそうに大きな口をあけたままでいるわにを見てい ます。 (例文3) ふしぎそうに、三びきのとらは、大きな口をあけたままでいるわにを見て います。 (例文4) 兄さんのかには、はっきりとその青いものの先が、コンパスのように黒く とがっているのを見ました。 (例文3)は、連用修飾語「ふしぎそうに」が文頭に位置しています。文 頭に位置するの場合、連用修飾語「ふしごそうに」と文末の被修飾語(「見 ています」)との位置が離れてしまいます。位置が離れていると、「ふしご そうに」が「見ています」まで係っていくように、ひとつながりに読むのが 難しくなってきます。 (例文4)では、連用修飾語「はっきりと」と被連用修飾語「見ました」 との距離がかなり離れています。ひとつながりに結びつくように読むのが困 難になってきます。 この点、連体修飾語は、常に被修飾語の直前に位置しており、自由に位置 を変えることができません。(例文3)では、連体修飾語は、「三びきの」 「大きな」「大きな口をあけたままでいる」です。それぞれ「とら」「口」 「わに」の直前に位置しております。ひとつながりに読むのは容易ですね。 ところが、連用修飾語は自由に位置を変えることができるので、連用修 飾語が文頭にあって(文中にあった場合も)、文末用言の被修飾語との位置 が離れすぎている場合は、ひとつながりに、ひとまとまりに係るように読む のが困難になります、音声表現に注意を要します。 位置が離れすぎていると、走った息苦しい息づかいで読むようになります。 へんな個所で間をあけて意味内容が切断してしまう読み方にもなりかねませ ん。ですから、このような場合は、意味内容の切れ目を大切にしながら、 ところどころで小さく間をあけ、そこで軽く息を吸いつつ、連用修飾語が文 末述語まで係る意識を心において、ひとつながりを意識した息づかいで読み、 そうした音調で読み進めていくことがとても大切です。 次に、声に出して、連用修飾語の音声練習をしていきましょう。赤色は連 用修飾語部分です。青色は被修飾語部分です。赤色が青色にひとつながりに 係るように音声表現していきましょう。 連用修飾語の音声練習のしかた (例文1) マサエは、おばあちゃんといっしょにこたつに当たりながら、本を読んでい ました。 杉みき子「わらぐつの中の神様」 解説 「おばあちゃんといっしょにこたつに当たりながら」全体が、「本を読ん でいました」に係っています。「おばあちゃんといっしょにこたつに当たり ながら」の連用修飾全体が「本を読んでいました」に係っていくように、つ ながっていくようの読みます。 (例文2) ゆみ子は、知らず知らずのうちに、お母さんのこの口ぐせを覚えてしまった のです。 今西祐行「一つの花」 解説 「知らず知らずのうちに」は、直接には用言「覚えてしまった」に係って いるのですが、意味内容から考えて、音声表現では「知らず知らずのうち に」(修飾語)は、「お母さんのこの口ぐせを」(補語部分)を含めて、 「お母さんのこの口ぐせを覚えてしまったのです」全体に係るように、 「(知らず知らずのうちに)(お母さんのこの口ぐせを覚えてしまったので す)」のように区切って、ひとつながりを求めて読んでいくようにします。 (例文3) ゆみ子は、お父さんに花をもらうと、キャッキャッと足をばたつかせて喜び ました。 今西祐行「一つの花」 解説 「(キャッキャと)(喜びました)」、「(足をばたつかせて)(喜びま した)」、ではありません。「(キャッキャと足をばたつかせて)」(連用 修飾全体)が「喜びました」(述語用言)に係っているのです。ですから音 声表現は、「(キャッキャッと足をばたつかせて)(喜びました)」のよう に区切って読みます。 もし「キャッキャッと」のあとに読点(テン)がうってあれば、「キャッ キャッと」は「足をばたつかせて喜びました」全体にに係ることがはっきり します。ですから、「(キャッキャッと)(足をばたつかせて喜びました)」 と区切って読むようになります。 (例文4) つり橋は、今にもふじづるが切れそうなほど、ギュッ、ギュッと、きしむの です。 長崎源之助「つり橋わたれ」 解説 「今にもふじづるが切れそうなほど」と「ギュッ、ギュッと」との二つの 連用修飾部分があります。二つが対等に「きしむのです。」に係っているの ではありません。連用修飾「今にもふじづるが切れそうなほど」は、「きし む」だけでなく、「ギュッ、ギュッと、きしむのです」全体に係っています。 ですから音声表現は「(今にもふじづるが切れそうなほど)(ギュッ、ギ ュッと、きしむのです)」と区切って読みます。「(ギュッ、ギュッと、き しむのです)」はひとまとまりに読みます。 このように音声表現では、文章内容を考えながら大まかな修飾と被修飾の 係り受けを調べて読むことが大切です。 (例文5) はっきりと兄さんのかには、その青いものの先が、コンパスのように黒く とがっているのを見ました。 解説 「はっきりと・・・見ました」です。「はっきりと」と「見ました」との 距離がかなり離れていますが、「はっきりと」が「見ました」までひとつな がりに係っているように読みます。 はっきりと兄さんのかには、その青いものの先が、コンパスのように黒く とがっているのを見ました。 兄さんのかには、はっきりとその青いものの先が、コンパスのように黒く とがっているのを見ました。 兄さんのかには、その青いものの先が、コンパスのように黒くとがってい るのをはっきりと見ました。 このように連用修飾語は文中のどこにも位置します。例文のように文頭に ある場合は「はっきりと」が強調されて前に位置していると考えてよいでし ょう。「はっきりと」をやや強めに読み、そこで軽い間をあけてから、「見 ました」まで係るように読んでいきます。「はっきりと」と「見ました」と の間がかなり長いですが、ひとつながりの息づかいで、とぎれないように読 んでいきます。 連用修飾語の音声練習 次の連用修飾語の音声表現のしかたを考えましょう。どこが、どこに係る ように読みますか。 (練習文1) ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。 新美南吉「ごんぎつね」 (練習文2) じさまは、ころりとたたみに転げると、歯をくいしばって、ますますすごく うなるだけだ。 斎藤隆介「モチモチの木」 (練習文3) 医者様は、ねんねこばんてんに薬箱と豆太をおぶうと、真夜中のとうげ道を、 えっちら、おっちら、じさまの小屋へ上ってきた。 斎藤隆介「モチモチの木」 (練習文4) すーっと、ここちよい風が、ぼくのそばをすりぬけていった。 (練習文5) エルマーは、一生けんめい足を持ち上げました。すぽんと、長ぐつが足から ぬけてしまいそうになるくらい、引っぱりました。 ガネット作、渡辺茂男訳「エルマー、とらに会う」 (練習文6) 海中に棒になって差しこんだ光が、波の動きにつれ、かがやきながら交差す る。 立松和平「海の命」 (練習文7) あわてて、まついさんはぼうしをふりまわして、チョウを追いかけました。 (練習文8) ぼくは、思わず大きな声を出した。運動靴の底に、さっきから不思議なひび きを感じていたからだ。 坂田寛夫「いたいいたい虫」 (練習文9) ちょうどたたきつけられた大つぶのひょうみたいに舗装道路の上に冷たいど しゃぶりの雨がバシャバシャと降ってきた。 (練習文10) あたりはまるですべてのものが魔法にかかったように、海岸には風もなく、 波の音も聞こえず、しいーんと静まりかえっていた。 (練習文11) ぼうしをつまみあげたとたん、ふわっと何かが飛び出しました。あわてて、まついさんはぼうしをふりまわしました。 (12) かにの子どもらは、あんまり月が明るくて水がきれいなので、ねむらないで 外に出て、しばらくだまってあわをはいて天井の方を見ていました。 答え(赤色と青色で示した係り受けは狭義の直接の係り受けです。音 声表現の仕方は、それらをふまえつつ広い範囲の係り受けで読むようにし ます。音声表現では、文全体の文内構造の第1次の大まかな分析(修飾関 係)で読んでいくようにします。) (練習文1) ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。 「ぐったりと目をつぶったまま」が、「うなずきました。」に係るように読 む。 (練習文2) じさまは、ころりとたたみに転げると、歯をくいしばって、(ますます) (すごく)うなるだけだ。 「ころりと」は「たたみに転げると」全体に係るように読む。「ますます」 は「すごくうなるだけだ。」全体に係るように読む。 (練習文3) 医者様は、ねんねこばんてんに薬箱と豆太をおぶうと、真夜中のとうげ道を、 えっちら、おっちら、じさまの小屋へ上ってきた。 「えっちら、おっちら」は「じさまの小屋へ上ってきた。」全体に係るよう に読む。雪の降る寒い真夜中のとうげ道を薬箱と豆太を背に負って「えっち ら、おっちら」なので、「えっちら、おっちら」を強めにゆっくりと強調し て読み、「上ってきた」も、きっぱりと強めに読むとよいでしょう。 「(ねんねこばんてんに薬箱と)(豆太をおぶうと)」と区切ってはいけま せん。「(ねんねこばんてんに)(薬箱と豆太を)(おぶうと)」です。 (練習文4) すーっと、ここちよい風が、ぼくのそばをすりぬけていった。 文頭の連用修飾語「すーっと」が、「ここちよい風が」から文末述語「すり ぬけていった」までひとまとまりになるようにつなげて音声表現する。 (練習文5) エルマーは、一生けんめい足を持ち上げました。すぽんと、長ぐつが足から ぬけてしまいそうになるくらい、引っぱりました。 「一生けんめい」は「足を持ち上げました」全体に係るように読む。「すぽ んと」は「ぬける」に係り、「引っぱりました」ではない。「(すぽんと) (長ぐつが足からぬけてしまいそうになるくらい)」でいったん軽く切る。 でも気持ちは「引っぱりました。」につながっている息づかいで読み進めて いく。(長ぐつが足からぬけてしまいそうになるくらい)全体が、「引っぱ りました。」の連用修飾語となっている。 (練習文6) 海中に棒になって差しこんだ光が、波の動きにつれ、かがやきながら交差す る。 「かがやきながら」は「交差する。」に係るように読む。「かがやきなが ら」なので、声立ては明るく発音明瞭に鮮明にするとよい。「波の動きにつ れ」は、「かがやきながら交差する。」全体に係るように読む。 これは連体修飾語であるが、「海中に棒になって差しこんだ光が」個所は、 「(海中に)(棒になって差しこんだ光が)」のように区切って読むとよい でしょう。 (練習文7) あわてて、まついさんはぼうしをふりまわして、チョウを追いかけました。 文頭連用修飾語「あわてて」が、まついさんは」から文末述語「追いかけま した」までひとつながりになるように音声表現する。 (練習文8) ぼくは、思わず大きな声を出した。運動靴の底に、さっきから不思議なひび きを感じていたからだ。 「思わず」は「大きな声を出した。」全体に係るように読む。「さっきか ら」は「不思議なひびきを感じていた」に係っている。 「さっきから不思議なひびきを感じていた」全体が「からだ。」に係ってい るように読む。「から」は形式名詞であり、これの詳細は、本章第1節 「(3)文末表現「述部表現「のだ」」の項目を参照しましょう。 (練習文9) ちょうどたたきつけられた大つぶのひょうみたいに舗装道路の上に冷たいど しゃぶりの雨がバシャバシャと降ってきた。 「ちょうどたたきつけられた大つぶのひょうみたいに」全体が「(舗装道路 の上に)(冷たいどしゃぶりの雨がバシャバシャと降ってきた)」全体に係 るように読む。「ちょうど………みたいに」は陳述副詞の呼応です。詳細は 本章の第2節「(3)陳述副詞の音声練習をしよう」の項目を参照しましょ う。また、第7節「比喩の音声表現」の項目を参照しましょう。 (練習文10) あたりはまるですべてのものが魔法にかかったように、海岸には風もなく、 波の音も聞こえず、しいーんと静まりかえっていた。 「あたりはまるですべてのものが魔法にかかったように」全体が「(海岸に は)(風もなく、波の音も聞こえず、しいーんと静まりかえっていた)」全 体に係るように読む。修飾語と被修飾語との距離が離れているが、途中で小 さく間をあけて息継ぎをしながらも、文頭が文末述語までひとまとまりにつ ながっているように読み進めていく。 「まるで………ように」は、(練習文7)と同じに陳述副詞の呼応です。 (練習文11) ぼうしをつまみあげたとたん、ふわっと何かが飛び出しました。あわてて、 まついさんはぼうしをふりまわしました。 「ふわっと・・・飛び出しました」。「あわてて・・・ふりまわしました」 です。区切りはしっかりとりつつも、やや早口に読むとよいでしょう。 (12) かにの子どもらは、あんまり月が明るくて水がきれいなので、ねむらないで 外に出て、しばらくだまってあわをはいて天井の方を見ていました。 かにの子どもらは、あんまり月が明るくて水がきれいなので、ねむらない で外に出て、しばらくだまってあわをはいて天井の方を見ていました。 宮沢賢治「やまなし」にある一文です。「あんまり」は「月が明るくて水 がきれい」まで係るように読みます。「しばらく」は、「黙って」に係るの か、「だまってあわをはいて」まで係るのか、「だまってあわをはいて天井 の方を見ていました」まで係るのか、「見ていました」に係るのか、解釈の しかたによって音声表現が違ってきます。ひとつながりの、ちょっとした区 切り方や間の開け方が違ってきます。 {特記事項} 修飾、被修飾の関係をとらえるということは、「どの言葉が、どの言葉 に係る」「ひとまとまりにして音声表現する」ということだけでなく、それ もとても大切ですが、「どういう観点から限定しているか、描写しているか」 をきちんととらえることです。物語文では、その修飾語をありありとイメー ジすること、場面や状況を身につまされるように感情ぐるみで表象すること、 説明文では、なぜ筆者が事柄についてそのように限定して詳しく修飾して書 いているのか、筆者の意図を探ることが大切です。そうした解釈にのっとっ て音声表現していくようにします。 (2)トキトコロの音声練習をしよう 連用修飾語になる成分には、副詞、形容詞・形容動詞の連用形、用言連用 形+て、トキトコロなどがあります。ここでは、トキトコロをあらわす連用 修飾語について学習します。 (1)むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがすんでいま した。 「むかし、むかし、あるところに」は、「トキトコロ」を示しており、 「すんでいました」を修飾している連用修飾語です。「むかし、むかし、あ るところに」は、この文の「トキトコロ」成分を示す連用修飾語です。 (2)むかしむかし、おじいさんとおばあさんがすんでいました。 (3)あるところに、おじいさんとおばあさんがすんでいました。 (2)の「むかし、むかし」は「トキ」を示し、(3)の「あるところ に」は「トコロ」を示しています。「トキ」も「トコロ」も文法的には連用 修飾語として同じ成分の働きをしていますので、「むかしむかし」も「トキ トコロ」、「あるところに」も「トキトコロ」と呼んで、二つを区別しない で、「トキトコロ」一つに含めて使うことにします。 (4)むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがすんでいま した。 (5)おじいさんとおばあさんが、むかしむかし、あるところに、すんでい ました。 「むかしむかし、あるところに」の「トキトコロ」の位置が、(1)は文 頭に、(2)は文中にあります。(1)はすっきりと気持ちよく読めますが、 (2)は気持ちよくありません。(2)は、日本語の表現として間違いとは いえないでしょうが、何となくぎこちなく、落ち着きがなく、居心地がよく ありません。 日本語の連用修飾語は、一般的に文のどこにも位置することができます。 このことは前述しました。ところが「トキトコロ」の連用修飾語は、文頭に 位置するのが普通です。文頭が通常の姿です。もちろん、文中に位置する場 合も少ないですがあります。 文の意味内容として「トキトコロ」(「いつ、どこで」)は常に付いて 回っています。「トキトコロ」は、いつも付いて回っているものなので、い ちいち「トキトコロ」を書いたり言ったりすると、くどすぎる文章表現にな ってしまいます。言わなくてもいい、書かなくてもいい場合は省略するのが 普通です。何時のことか、何処のことか、を知らせたい・知らせなければな らない場合だけ筆者は記述することになります。 昔話に「昔々、あるところに、あったとさ」という書かれ方が多くあり ます。まず冒頭で大枠のトキトコロのあみをはっちゃうわけです。あとは特 別な事件が起こったり、ある時間、ある場所の、特別な場面で、必要に応じ てトキトコロを書くことになります。ですから、トキトコロの連用修飾語の 記述位置は文中よりも文頭にくることが多くなるのだと考えられます。 「トキトコロ」の音声表現のしかた (例文1) お父さんが戦争に行く日、ゆみ子は、お母さんにおぶわれて、遠い汽車の駅 まで送っていきました。 今西祐行「一つの花」 解説 「お父さんが戦争に行く日」が連用修飾語のトキトコロです。正しくは、 「トキ(時)連用修飾語部分」です。(例文2)のように「トコロ」 (所)連用修飾語部分」もあります。二つは構文的職能が同じですので、 二つを一つにして「トキトコロ」と総称して便利に使用することにします。 先ず冒頭で、何時のことかを言っています。「お父さんが戦争に行く 日」は、用言「送っていきました」だけに係っているというよりも、トキト コロの以下の文「お母さんにおぶわれて、遠い汽車の駅まで送っていきまし た。」全体に係っています。トキトコロは、それ以下に書いてある文全体 を修飾するように音声表現していくとうまくいきます。 「お父さんが戦争に行く日」のあと、ほんの気持ち軽く間をあけてから 「ゆみ子は、お母さんにおぶわれて、遠い汽車の駅まで送っていきました」 のように読むのも一つの読み方です。 (例文2) お父さんは、プラットホームのはしっぽの、ごみすて場のような所に、わす れられたようにさいていたコスモスの花を見つけたのです。 今西祐行「一つの花」 解説 「プラットホームのはしっぽの、ごみすて場のような所に」が連用修飾 語の「トキトコロ」成分です。「プラットホームのはしっぽの、ごみすて場 のような所に」は、述語用言「見つけたのです」だけに係っているというよ りも、トキトコロの以下の文「わすれられたようにさいてい たコスモスの 花を見つけたのです」全体に係っています。トキトコロは、そこから後ろの 文全体を修飾しているといえます。ですから、「お父さんは」「プラット ホームのはしっぽの、ごみすて場のような所に」「わすれられたようにさい ていたコスモスの花を見つけたのです」のように区切って音声表現していく とよいでしょう。 トキトコロの音声練習(1) 次の文のトキトコロの音声表現のしかたを考えましょう。どこが「トキ トコロ」の文章部分ですか。どこが、どこに係るように音声表現すればよい ですか。 (練習文1) 出征する前の日、お父さんは、ちいちゃん、お兄ちゃん、お母さんをつれ て、先祖のはかまいりに行きました。 (練習文2) 武士の時代が終わってまもない明治の初め、田中正造は、無実の罪で三年 ほどとらえられていたことがあります。 (練習文3) 町が観光客でにぎわう七月十五日から八月三十一日までの間、海岸のパト ロールは、夜も行われます。 (練習文4) このお母さんは、ミーちゃんと呼ぶこの赤ちゃんと、はなれた所にいると き、あのおそろしいことが起こったにちがいありません。 (練習文5) 蜃気楼のようにうかび上がった小さな町にたどり着いた時、一頭の年老い たロバと出会った。 (練習文6) 原爆ドームが世界遺産の候補として、世界の国々の審査を受けることにな ったとき、わたしはちょっぴり不安を覚えた。 (練習文7) 日本が一九九二年(平成二年)にユネスコの世界遺産条約に加盟した直後 から、広島では、原爆ドームを世界遺産にしようという動きが高まった。 (練習文8) 一九四五年(昭和二十年)八月六日午前八時十五分、よく晴れた夏空が広 がる朝、広島市に原子爆弾が投下された。 (練習文9) この原爆ドームが、平和を築き、戦争をいましめるための建造物として、 ユネスコの世界遺産への仲間入りを果したとき、わたしは、この傷だらけの 建物がたどった年月を思わずにはいられなかった。 (練習文10) エネルギーのむだを省き、資源を節約して余分なよごれを減らすというこ とが、住みよい平和な社会のためにどうしても必要だと、みんなが自覚した 時、社会のしくみが変わるでしょう。 答え(赤色全体が青色全体に係るように音声表現します。赤色はひとつ ながりの息づかいで読み、青色もひとつながりの息づかいで、そ れぞれがひとまとまりになるように音声表現します。「トキトコ ロ」部分を読み終えたとき、そこでほんの気持ちちょっと間をあ けるのもよいでしょう。長い文章部分は、途中で軽く間をあけつ つ息継ぎをしながらも、全体がひとまとまりになる息づかいで読 み進めていきます。早口の一気読みはいけません。) (練習文1) 出征する前の日、お父さんは、ちいちゃん、お兄ちゃん、お母さんをつれ て、先祖のはかまいりに行きました。 (練習文2) 武士の時代が終わってまもない明治の初め、田中正造は、無実の罪で三年 ほどとらえられていたことがあります。 (練習文3) 町が観光客でにぎわう七月十五日から八月三十一日までの間、海岸のパ トロールは、夜も行われます。 (練習文4) このお母さんは、ミーちゃんと呼ぶこの赤ちゃんと、はなれた所にいると き、あのおそろしいことが起こったにちがいありません。 (練習文5) 蜃気楼のようにうかび上がった小さな町にたどり着いた時、一頭の年老い たロバと出会った。 (練習文6) 原爆ドームが世界遺産の候補として、世界の国々の審査を受けることにな ったとき、わたしはちょっぴり不安を覚えた。 (練習文7) 日本が一九九二年(平成二年)にユネスコの世界遺産条約に加盟した直後 から、広島では、原爆ドームを世界遺産にしようという動きが高まった。 (練習文8) 一九四五年(昭和二十年)八月六日午前八時十五分、よく晴れた夏空が広 がる朝、広島市に原子爆弾が投下された。 (練習文9) この原爆ドームが、平和を築き、戦争をいましめるための建造物として、 ユネスコの世界遺産への仲間入りを果したとき、わたしは、この傷だらけの 建物がたどった年月を思わずにはいられなかった。 <トキトコロ全体が長いですが、途中で軽く間をあけつつ息継ぎをしながら も、トキトコロ全体がひとまとまりになるように音声表現していきます> (練習文10) エネルギーのむだを省き、資源を節約して余分なよごれを減らすというこ とが、住みよい平和な社会のためにどうしても必要だと、みんなが自覚した 時、社会のしくみが変わるでしょう。 <ここも練習文9と同じ。トキトコロ全体が長いですが、途中で軽く間をあ けつつ息継ぎをしながらも、トキトコロ全体がひとまとまりになるように音 声表現していきます> トキトコロの音声練習(2) 次の文のトキトコロの音声表現のしかたを考えましょう。どこが「トキ トコロ」の文章部分ですか。どこが、どこに係るように音声表現すればよい ですか。 (練習文1) ふと、顔をあげたとき、強い日ざしの照りつける道ばたにすわりこん でいる人たちの姿が目に入った。 (練習文2) やがて、ミシンの音がまたいそがしく始まったとき、買い物かごをさげた ゆみ子が、スキップをしながら、コスモスのトンネルをくぐって出てきまし た。 (練習文3) やせこけた老婆がてっきり死んでいると思っていたテレサが、おいのりの 十字を切ってはなれようとしたとき、老婆の針金のようなうでがぴくりと動 いた。 (練習文4) 今から約千六百年前、ポリネシア人たちが、それまでだれ一人として人間 が上陸したことのなかったイースター島に上陸したとき、島はヤシ類の森林 に おおわれていた。 (練習文5) 父もその父も、その先ずっと顔も知らない父親たちが住んでいた海に、太 一もまた住んでいた。 (練習文6) せみの声も川の音も聞こえない、しめっぽい防空ごうの暗やみの中で、 ノリオは早く出たいとぐずぐず文句を言っている。 (練習文7) 道がつづら折りになって、いよいよ天城峠に近づいたと思う頃、雨脚が杉 の密林から、すさまじい早さで麓から私を追って来た。 答え(赤色全体が青色全体に係るように音声表現します。赤色はひとつ ながりの息づかいで読み、青色もひとつながりの息づかいで、そ れぞれがひとまとまりになるように音声表現します。「トキトコ ロ」部分を読み終えたとき、そこでほんの気持ちちょっと間をあ けるのもよいでしょう。長い文章部分は、途中で軽く間をあけつ つ息継ぎをしながらも、全体がひとまとまりになる息づかいで読 みます。早口の一気読みはいけません。) (練習文1) ふと、顔をあげたとき、強い日ざしの照りつける道ばたにすわりこん でいる人たちの姿が目に入った。 <「ふと」は、「顔を挙げたとき」全体に係る連用修飾語です。> (練習文2) やがて、ミシンの音がまたいそがしく始まったとき、買い物かごをさげた ゆみ子が、スキップをしながら、コスモスのトンネルをくぐって出てきまし た。 <「やがて」は「ミシンの音が……始まった」まで係る連用修飾語です。 「すきっぷしながら」は「トキトコロ」ではありませんが、「出てきまた」 に係る連用修飾語です。> (練習文3) やせこけた老婆がてっきり死んでいると思っていたテレサが、おいのりの 十字を切ってはなれようとしたとき、老婆の針金のようなうでがぴくりと動 いた。 (練習文4) 今から約千六百年前、ポリネシア人たちが、それまでだれ一人として人間 が上陸したことのなかったイースター島に上陸したとき、島はヤシ類の森林 に おおわれていた。 (練習文5) 父もその父も、その先ずっと顔も知らない父親たちが住んでいた海に、太 一もまた住んでいた。 (練習文6) せみの声も川の音も聞こえない、しめっぽい防空ごうの暗やみの中で、 ノリオは早く出たいとぐずぐず文句を言っている。 (練習文7) 道がつづら折りになって、いよいよ天城峠に近づいたと思う頃、雨脚が杉 の密林から、すさまじい早さで麓から私を追って来た。 <川端康成「伊豆の踊子」の中にある一文です。「すさまじい早さで麓から 私を追って来た」は、ややスピードをつけて読むとよいでしょう。> (3)連体・連用の混合文の音声練習をしよう 次の混合文(連体修飾語、連用修飾語の両方)の音声表現のしかたを考 えましょう。声に出して表現よみしてみましょう。どこが、どこに係ってい るように音声表現すればよいですか。 (練習文1) すーっと、ここちよい風が、ぼくのそばをするぬけていった。 (練習文2) 太一は、あらしさえもはね返す屈強な若者になっていたのだ。 立松和平「海の命」 (練習文3) 加助が、ひょいと後ろを見ました。ごんはびくっとして、小さくなって 立ち止りました。 新美南吉「ごんぎつね」 (練習文4) 葉っぱのかさをさした十匹の子ねずみたちは、きらきらしたきれいな目を、 そろってきつつきにむけました。 (練習文5) ちょっとの間、かたをすぼめてつっ立っていた松井さんは、何を思いつい たのか、急いで車にもどりました。。 (練習文6) よそ行きの着物を着て、こしに手ぬぐいを下げたりした女たちが、表のか まどで火をたいています。 新美南吉「ごんぎつね」 (練習文7) エンジンをかけた時、遠くから、元気そうな男の子の声が近づいてきました。 (練習文8) 小さなぼうしをつかんで、ため息をついている松井さんの横を、太ったお まわりさんが、じろじろ見ながら通りすぎました。 あまんきみこ「白いぼうし」 (練習文9) 水色の新しい虫とりあみをかかえた男の子が、エプロンを着けたままのお 母さんの手を、ぐいぐい引っぱってきます。 あまんきみこ「白いぼうし」 (練習文10) ゴムの前かけをしめ、長ぐつをはいて、うろこのはりついたうでで、てきぱ きと魚を切る母、その背中でのけぞって泣いているわたし、そんなすがた を想像すると、今でもきゅんと胸が痛くなります。 (練習文11) お留伊は小づつみを打っていた。加賀国森本で一番の絹問屋の娘で、年は 15になる。目鼻だちは優れて美しいが、その美しさはすみ通ったギヤマン のつぼのように冷たく、勝ち気な、おごった心をそのままえがいたように見 える。ひとみは激しい光を帯び、朱いくちびるを引き結んでけんめいに小づ つみを打っている姿は、美しいというよりはすさまじいものを感じさせる。 山本周五郎「つつみくらべ」 答え (連体連用の区別なく、修飾語部分を赤色で、被修飾語部分を青色で色付け しています。( )は音声表現するときの区切りの間あけの一例です) (練習文1) (すーっと)(ここちよい風が、ぼくのそばをするぬけていった。) 「すーっと」は、「すりぬける」だけでなく、「すーっと」以下の全体に係 る連用修飾語と考えて音声表現するとよい。「ここちよい風」です。 (練習文2) 太一は、あらしさえもはね返す(屈強な若者に)なっていたのだ。 「あらしさえもはね返す」は「屈強な若者」に係るように音声表現します。 (練習文3) (加助が、ひょいと後ろを見ました)(ごんはびくっとして)(小さくな って立ち止りました) 「ひょいと」は「後ろを見ました」に係る。「びくっとして」それから、 「小さくなって立ち止まった」です。「小さく」は「立ち止まりました」の 様子をを限定している連用修飾語です。 (練習文4) 葉っぱのかさをさした(十匹の子ねずみたちは)きらきらした(きれいな 目を)、そろって(きつつきにむけました) 「葉っぱのかさをさした」は「十匹の子ねずみたち」に係ります。「きら きらした」は「きれいな目」に係ります。「そろって」は「(きつつきに) むけました」に係ります。 (練習文5) (ちょっとの間、かたをすぼめてつっ立っていた松井さんは)(何を思いつ いたのか)(急いで車にもどりました) 「ちょっとの間」は「つっ立っていた」に係る「トキトコロ」です。「(ち ょっとの間、かたをすぼめてつっ立っていた)松井さん」です。「急いで」 は「もどる」に係る連用修飾語です。 (練習文6) よそ行きの着物を着て、こしに手ぬぐいを下げたりした女たちが、表のかま どで火をたいています。 「よそ行きの着物を着て、こしに手ぬぐいを下げたりした」は「女たち」に 係る連体修飾語部分です。「表のかまどで」(トキトコロ)は「火をたいて います」に係る連用修飾語です。 (練習文7) エンジンをかけた時、遠くから、元気そうな(男の子の声)が近づいてき ました。 「エンジンをかけた時」(トキトコロ)は、それ以下の文全体にかかります。 「(元気そうな)(男の子の声)」です。「(遠くから)近づいてきまし た」です。 (練習文8) 小さなぼうしをつかんで、ため息をついている(松井さんの横を)、太っ たおまわりさんが、じろじろ見ながら通りすぎました。 「(小さなぼうしをつかんで、ため息をついている)松井さん」です。 「(太った)おまわりさん」です。「(じろじろ見ながら)通りすぎまし た」です。 (練習文9) 水色の新しい虫とりあみをかかえた男の子が、エプロンを着けたままの(お 母さんの手を)、ぐいぐい引っぱってきます。 「(水色の新しい虫とりあみをかかえた)男の子」です。(エプロンを着 けたままの)〔(お母さんの)手〕」です。「(ぐいぐい)引っぱってきま す」です。 練習文10) ゴムの前かけをしめ、長ぐつをはいて、うろこのはりついたうでで、てき ぱきと魚を切る母、その背中でのけぞって泣いているわたし、そんなすがた を想像すると、今でもきゅんと胸が痛くなります。 「(ゴムの前かけをしめ、長ぐつをはいて、うろこのはりついたうでで、て きぱきと魚を切る)母」です 「(その背中でのけぞって泣いている)わたし」です。 「そんなすがたを想像すると、(今でもきゅんと)胸が痛くなります」です。 (練習文11) お留伊は小つづみを打っていた。加賀国森本で一番の絹問屋の娘で、年は15 になる。目鼻だちは優れて美しいが、その美しさはすみ通ったギヤマンのつ ぼのように冷たく、勝ち気な、おごった心をそのままえがいたように見える。 ひとみは激しい光を帯び、朱いくちびるを引き結んでけんめいに小づつみを 打っている姿は、美しいというよりはすさまじいものを感じさせる。 <「加賀国森本で」はトキトコロで、(お留伊は)加賀国森本で一番の絹問 屋の娘だ、となる。「目鼻だちは優れて美しいが」のあと、ちょっとだけ長 めの間をあける。「ギヤマン」とはダイヤモンドのこと。「その美しさは (まるで)すみ通ったギヤマンのつぼの(ように)冷たく、勝ち気な、おごっ た心」「心」に係る長い連体修飾語となっている。「心を」のあとでほん の軽く間をあけ、「(まるで)そのままえがいた(ように)見える」となる。 次は、「ひとみはこうで、くちびるはこうで、小づつみを打っている姿」と いう長い連体修飾語が「姿」の係っているので、「姿」にひとつながりに係 るように音声表現していく。> 特記事項(1) 連用修飾語には、「むかし」「三時に」「公園で」「手をふって」「口を ふきながら」などのように「とき」「ところ」「状態」などから限定する比 較的客観的、叙事的なものと、もう一つ、「さびしそうに」「泣きながら」 「子どもらしく」「ねこみたいに」などのように話し手の感情や推量判断や 印象をこめて限定するかなり主観的なものとがあります。ですから「トキト コロ」は比較的客観的な事柄を表した連用修飾語といえます。 前記したように連用修飾語になる成分には、副詞、形容詞・形容動詞の連 用形、動詞連用形+て、トキトコロなどがあります。 本章第2節「副詞の音声表現のしかた」で述べている程度副詞、情態副詞、 陳述副詞は連用修飾語の音声表現の練習ということになります。陳述副詞の 「まるで……のように」は接続が連用形ですから連用修飾語となります。 「まるで……ような」は接続が連体形ですから連体修飾語となります。 「みたいに、みたいな」も同じことがいえます。 また、本章第7節「比喩の音声表現のしかた」で述べている「直喩(連用 修飾)の音声練習をしよう」も同じく連用修飾語の音声表現の練習というこ とになります。 特記事項(2) 修飾、被修飾の指導で大切なことは、「どの言葉が、どの言葉に係る」 「ひとまとまりにして音声表現する」ということだけでなく、それもとても 重要ですが、「どのように事柄の意味内容が詳しく目に見えるように豊かに 表現されているか、表現の内容量が増えて、具体性や具象性が強められてい るか、情感性や感化性が豊かに表現されているか」をきちんと把握させる指 導が重要です。 物語文の指導では、描写されている修飾語句が「どう事件や場面に具体性 や具象性を強めて表象豊かに描写されているか」をとりあげて話し合うこと です。その修飾語句を、ありありとイメージ豊かに話し合うこと、事件の流 れや状況を身につまされるように感情ぐるみで把握させる指導が重要です。 次は、椋鳩十『大造じいさんとガン』の一節です。 よく日の昼近く、じいさんは、むねをわくわくさせながら、ぬま地に行き ました。昨ばんつりばりを仕かけておいた辺りに、何かバタバタしている物 が見えました。 「しめたぞ。」 じいさんはつぶやきながら、むちゅうでかけ付けました。 「ほほう、これはすばらしい。」 じいさんは、思わず、子どものように声を上げて喜びました。一羽だけであ ったが、生きているガンがうまく手に入ったので、じいさんはうれしく思い ました。 さかんにばたついたと見えて、辺り一面に羽が飛び散っていました。 ガンの群れは、これにきけんを感じてえさ場を変えたらしく、付近には、 一羽も見えませんでした。しかし、大造じいさんは、たかが鳥のことだ、ひ とばんたてば、またわすれてやってくるにちがいないと考えて、昨日よりも、 もっとたくさんのつりばりをばらまいておきました。 上の文章から連用修飾語句だけを削除してみましょう。 じいさんは、ぬま地に行きました。何かバタバタしている物が見えました。 「しめたぞ。」 じいさんはかけ付けました。 「ほほう、これはすばらしい。」 じいさんは、喜びました。一羽であったが、生きているガンが手に入ったの で、じいさんはうれしく思いました。 ばたついたと見えて、羽が飛び散っていました。 ガンの群れは、えさ場を変えたらしく、一羽も見えませんでした。しかし、 大造じいさんは、たかが鳥のことだ、ひとばんたてば、またわすれてやって くるにちがいないと考えて、もっとたくさんのつりばりをばらまいておきま した。 連体修飾語と補語と主語と述語とを残し、連用修飾語だけを削除していま す。文学的な表現性や論理性が全く欠落してしまいました。まあ何と無味乾 燥で殺風景な文章になってしまったことでしょう。 次に、連体修飾語と補語も削除してみましょう。主語と述語だけを残して みます。 じいさんは、行きました。物が見えました。 「しめたぞ。」 じいさんはかけ付けました。 「ほほう、これはすばらしい。」 じいさんは、喜びました。一羽であったが、ガンが入ったので、じいさんは 思いました。 見えて、羽が飛び散っていました。 群れは、変えたらしく、一羽も見えませんでした。しかし、大造じいさん は、考えて、ばらまいておきました。 読むも無残な、そっけない、意味不明の、キズだらけの文章になってしま いました。特に補語(「ぬま地に」「手に」「うれしく」「ばたついたと」 「えさ場を」「たかが鳥のことだ……やってくるにちがいないと」「つりば りを」)を削除すると、意味不明がぐんと増加します。 学校文法では、補語も連用修飾語として扱っています。これはいけません。 補語を削除すると意味不明になる、こうした事実から、補語は骨組み文(核 文)の必須成分だということがわかります。主語と補語と述語は、日本語の 文では、なくてはならない構文上の必須成分です。 もう一つ意味不明の原因は、日本語では初めから主語が省略されているこ とです。本引用個所では、主語「大造じいさん」が繰り返し書かれていて省 略がありませんが、日本語の文章では多く主語省略がみられます。日本語で は、主語省略は通常の姿ですが、主語と補語と述語は骨組み文(核文)の必 須成分です。だからといって主語をいちいち書くべきなどと言っているわけ ではありません。日本語の通常の文では、主語は「ない」のではなく、「る す」しているのです。 物語文の読解指導では、こうした修飾語句に注目させてイメージ豊かに表 象させる指導が重要となります。ありありと場面や状況を身につまされて、 感情ぐるみで受け入れさせる、そうした指導の中に連体と連用の修飾語句が 大きな役割を果たしていることを知らせます。修飾語句があった場合と、な い場合ではどう印象やイメージが違ってくるか、連体や連用の修飾語句が、 イメージ形成にどんな役割をはたしているか、連体修飾語句や連用修飾語句 を取り上げて、そうしたイメージを豊かにしている話し合い学習をする指導 がとても重要でしょう。 文法論としては主語と補語と述語とを必要成分(必須成分)、連体や連用 の修飾語などを自由成分(随意成分)と位置づけています(大久保忠利『楽 しくわかる日本文法』一光社、下川浩『現代日本語構文法』三省堂など参 照)。文法論としてはそうなのですが、学校教育における読解指導としては、 上記したように連体や連用の修飾語句の読み解き(イメージ膨らませ)が重 要な指導となるので、連体や連用の修飾語句は重要成分(必須成分)だとい えます。 文法論としては主語、補語、述語は必要成分(必須成分)であり、修飾語 は自由成分(随意成分)です。しかし、文章の意味内容を把握するには命題 を限定している修飾語が重要成分(必須成分)です。文脈上から主語、補語、 述語はすでに了解事項です。連体・連用の修飾語句は新情報の宝庫として現 出しています。ひとつ一つの形象をからみ合わせ、ひびき合わせ、いろどり あざやかに浮き立たせてイメージ世界を作り上げているもの、それが連体・ 連用の修飾語句だといえます。 第7節 比喩の音声表現のしかた 比喩には大きく分けて二種類があります。直喩と隠喩です。ここでは、直 喩(まるで……ような・ように)の音声表現について書きます。隠喩は、直 接には音声表現のしかたと文法的にはあまり関係がなく、修辞法(レトリッ ク)と関係します。 直喩表現は連体修飾語になったり、連用修飾語になったり、述語になった りします。 比喩は、文学作品に多用されます。文学作品では、比喩は表現に美的かつ 豊饒なふくらみを与え、好んで用いられます。比喩は、主張文や議論文にも 使われます。主張文や議論文における比喩は、主張の確かさ、もっともらし さを聞き手に印象づける大きな効果を発揮します。しかし、論証における飛 躍があり、真実性や論理性に欠けるきらいがあります。主張文や議論文など に比喩が使われている場合は警戒してかかる必要があります。比喩によるコ トバの魔術がないか、それを見破るセンスが必要です。 下記例文は、文学作品からの引用です。 (1)直喩(連体修飾)の音声練習をしよう 連体修飾語の直喩は、修飾語句の末尾が連体の形となり、体言に接続しま す。文型は (まるで、とんと、ちょうど)………みたいな、ような+体言 のようになります。(まるで、とんと、ちょうど)は省略されることもあり ます。「みたいな、ような」だけの比喩表現も多くあります。 音声表現のしかたは、(まるで、とんと、ちょうど)は陳述副詞ですから 「みたいな」「ような」まで係っていく勢いがあります。「まるで」から 「ような+体言」まで、つながっていくように、ひとまとまりになるように 音声表現します。 連体修飾語が直喩の例文 まるで空に大きな美しい花が咲いたような花火です。 解説 「花火」はどんなかと言うと、「まるで空に大きな美しい花が咲いたよう な」「花火」だと述べています。連体修飾部分「まるで空に大きな美しい花 が咲いたような」は「花火」を限定して述べています。限定とは、「花火」 はどんなか、を詳しく説明し描写していることです。 音声表現のしかたは、長い連体修飾語部分であっても、被修飾語「花火」 につながるように、係っていくように、ひとまとまりになるように読んでい くことが大切です。途中でつながりが切れた読み方になってはいけません。 次の直喩の音声表現のしかたを考えましょう。声に出して表現よみしてみ ましょう。 (練習文1) いたずらが見つかったような顔で、先生が笑った。 坂田寛夫「いたいいたい虫」 (練習文2) 展望台の中に入ると、お化けが出てきても不思議でないような暗さだった。 (練習文3) ぼくは、まるで、顔の分からない、いく人もの人たちがスクラムを組んで、 じっとぼくを見張っているような気味悪さを感じました。 (練習文4) やさしかったおじいちゃんの写真を見ていると、まるでおじいちゃんの大き な声が聞こえてくるような気がしました。 (練習文5) 運転席から取り出したのは、あの夏みかんです。まるで、あたたかい日の光 をそのままそめつけたような、見事な色でした。 あまんきみこ「白いぼうし」 (練習文6) 夏がいきなり始まったような暑い夏です。 あまんきみこ「白いぼうし」 (練習文7) お父さんかには、遠眼鏡のような両方の目をあらん限りのばして、よくよく 見てから言いました。 宮沢賢治「やまなし」 (練習文8) 指でこしらえた、小さな窓の中には、白いきつねの姿が見えるのでした。そ れは、ちょうど窓の中に、一枚のきつねの絵が、ぴたりとはめこまれたよう な感じなのです。 安房直子「きつねの窓」 答え(赤色が青色に係るように音声表現していく) (練習文1) いたずらが見つかったような顔で、先生が笑った。 (練習文2) 展望台の中に入ると、お化けが出てきても不思議でないような暗さだった。 (練習文3) ぼくは、まるで、顔の分からない、いく人もの人たちがスクラムを組んで、 じっとぼくを見張っているような気味悪さを感じました。 (練習文4) やさしかったおじいちゃんの写真を見ていると、まるでおじいちゃんの大き な声が聞こえてくるような気がしました。 (被修飾語は「気」だけだとすると、これだと「気」に係る連体修飾語と なります。また「気がする」という成句用言を受ける連用修飾語と見ること もできます。) (練習文5) 「まるで、あたたかい日の光をそのままそめつけたような」「見事な色」 (練習文6) 「夏がいきなり始まったような」(ほんの軽い間)「暑い夏」のような読み 方がよいかもね。 (「暑い夏が、いきなり始まったようだ」という判断が潜在しています。) (練習文7) お父さんかには、「遠眼鏡のような」「両方の目」をあらん限りのばして、 よくよく見てから言いました。 (両方の目が、遠眼鏡のようだ」という判断が潜在しています。) (練習文8) 「ちょうど窓の中に、一枚のきつねの絵が、ぴたりとはめこまれたような」 「感じ」です。 (2)直喩(連用修飾)の音声練習をしよう 連用修飾語が直喩の例文 花火は、まるで空に大きな美しい花が咲いたように見えました。 解説 (連用修飾語の直喩は、修飾語部分の末尾が連用の形となり、用言に接続し ます。上の例文では、用言「見えました」について、どのようの見えたか、 「まるで空に大きな美しい花が咲いたように」と、述語用言「見えました」 を限定しています。見え方の様子を詳しく描写し規定しています。 音声表現のしかたは、連用修飾語部分が被修飾語部分(文末用言)につな がるように、係っていくように、ひとつながりになるように読んでいきます。 つながりが切れた読み方になってはいけません。 「まるで」は陳述副詞であり、「ような。ように」と呼応する働きがあり ます。「まるで」と「ような。ように」とがかなり離れてしまう場合も多く あるが、そこまでつながる意識を心において、ひとつながりを求める息づか いで音声表現していくことが重要です。 次の直喩の音声表現のしかたを考えましょう。声に出して表現よみし てみましょう。 (練習文1) わたしは、ブランコからおりるとき、まるで胸がすうっとからっぽになった みたいに感じました。 (練習文2) ほそう道路の上に、つめたいどしゃぶりの雨がちょうどたたきつけられたお おつぶのひょうみたいに降ってきました。 (練習文3) 空は、ちょうど死んだ魚の目のようにどんよりとくもって、海には、たつま きがまるでいかりくるった大蛇のようにまきあがった。 (練習文4) かみなりに打たれたように、テレサの頭の中にカルカッタの町にあふれる貧 しい人たちの姿がうかびあがった。東書5下 (練習文5) 瑞枝は、なつかしいおうちを心いっぱいに思いうかべているようなまなざし をして言いました。 壷井栄「石うすの歌」 連体と連用ある (練習文6) 先生は、授業の前に楽しいお話しをしてくれたときのように、目を丸くして 答えた。 坂田寛夫「いたいいたい虫」 (練習文7) まだ枯れ木のままの、高いけやきのこずえの先も、まるで、息をこらして静 かにしている子どもたちのむれのように、はやふっくらと、春の季節の命は わきあがっている。 (練習文8) 墓地には、ひがん花が、赤いきれのようにさき続いていました。 新美南吉「ごんぎつね」 (練習文9) そこから、ミシンの音が、たえず速くなったり、おそくなったり、まるで、 何かお話しをしているかのように、聞こえてきます。 今西祐行「一つの花」 (練習文10) かき根には、あじさいの花が、まるで、大きな青いまりのようにさいて、雨 にぬれていました。 答え(赤色が青色に係るように音声表現していく) (練習文1) わたしは、ブランコからおりるとき、まるで胸がすうっとからっぽになった みたいに感じました。 (「ブランコからおりるとき」は、トキトコロの連用修飾語す。) (練習文2) ほそう道路の上に、つめたいどしゃぶりの雨がちょうどたたきつけられたお おつぶのひょうみたいに降ってきました。 (「ほそう道路の上に」はトキトコロの連用修飾語で、この後ろ全体に係 るように読む。) (練習文3) 空は、ちょうど死んだ魚の目のように(どんよりとくもって)、海には、た つまきがまるでいかりくるった大蛇のようにまきあがった。 (「ちょうど死んだ魚の目のように」は(「どんよりと」「くもって」) 全体に係っている。) (練習文4) かみなりに打たれたように、テレサの頭の中にカルカッタの町にあふれる 貧しい人たちの姿がうかびあがった。 (このように連用修飾語は、文頭にくることも多い。「かみなりに打たれ たように」は直接には「うかびあがった」に係っているが、音声表現では文 章内容から考えて「テレサの頭の中にカルカッタの町にあふれる貧しい人た ちの姿がうかびあがった」全体に係っているように読む。) (練習文5) 瑞枝は、なつかしいおうちを心いっぱいに思いうかべているようなまなざし をして言いました。 (「なつかしいおうちを心いっぱいに思いうかべているような」が連体修飾 語部分で「まなざし」を修飾し、それに「をして」がついて連用修飾句にな っている。このように連体修飾語が連用修飾語になる例は多くある。) (練習文6) 先生は、授業の前に楽しいお話しをしてくれたときのように、目を丸くして 答えた。 (練習文7) まだ枯れ木のままの、高いけやきのこずえの先も、まるで、息をこらして静 かにしている子どもたちのむれのように、(はやふっくらと、春の季節の命 はわきあがっている)。 (「まるで、息をこらして静かにしている子どもたちのむれのように」は、 「わきあがっている」だけでなく、「春の季節の命はわきあがっている」と いう文全体を修飾していると考えて音声表現していくとよい。「はやふっく らと」も「わきあがっている」に係る連用修飾語です。 (練習文8) 墓地には、ひがん花が、赤いきれのようにさき続いていました。 (練習文9) そこから、ミシンの音が、たえず速くなったり、おそくなったり、まるで、 何かお話しをしているかのように、聞こえてきます。 (練習文10) かき根には、あじさいの花が、まるで、大きな青いまりのようにさいて、雨 にぬれていました。 (3)直喩(述語)の音声練習をしよう 述語の直喩の例文 花火は、まるで空に大きな美しい花が咲いたようだ。 ミシンの音が、たえず速くなったり、おそくなったり、まるで、何かお 話しをしているようだ。 解説 述語部分そのものが直喩になっている文です。主語「なにが・は」どうか とい うと、述語「(まるで)……みたいだ。ようだ。」という文型になっていま す。 音声表現のしかたは、「なにが・は」「まるで……みたいだ」と、主部と 述部とを区切りつつも、ひとつながりになるように読みます。上の例文では、 「(花火は)(まるで……ようだ)」の区切り方になります。「まるで…… みたいだ」は、ひとつながりになります。) (4)比喩の応用例文で音声練習をしよう 「スイミー」(レオ・レオニ作、谷川俊太郎訳)に次のような文章個 所があります。 海には、すばらしいものがいっぱいあった。おもしろいものを見るたびに、 スイミーは、だんだん元気をとりもどした。 にじ色のゼリーのようなくらげ。 水中ブルドーザーみたいないせえび。 見たこともない魚たち。見えない糸でひっぱられている。 ドロップみたいな岩から生えている、こんぶやわかめの林。 うなぎ。かおを見るころには、しっぽをわすれているほどながい。 そして、風にゆれるもの色のやしの木みたいないそぎんちゃく。 赤色と青色を付けてみましょう。 にじ色のゼリーのようなくらげ。 水中ブルドーザーみたいないせえび。 見たこともない魚たち。見えない糸でひっぱられている。 ドロップみたいな岩から生えている、こんぶやわかめの林。 うなぎ。かおを見るころには、しっぽをわすれているほどながい。 そして、風にゆれるもの色のやしの木みたいないそぎんちゃく。 色がつかない個所も、語順変形して、書き換えて見ると、色がつきます。 見えない糸でひっぱられているような、見たこともない魚たち。 まるでかおを見るころにはしっぽをわすれてしまうような、ながいうなぎ。 指導のしかた例 「くらげ」は、どんなですか。どのような「くらげ」ですか。「にじ色のゼ リーのような」ですね。 「にじ色のゼリーのようなくらげ」をまねして、「まるで……のようなくら げ」の……個所を、自分で創作して作ってみましょう。 自分で「まるで……のような」「くらげ」「いせえび」「こんぶ」「いそ ぎんちゃく」「うちのペット名、父さん、母さん、兄さん」などを創作して みましょう。 次のカッコの中に言葉や文を入れてみましょう。 まるでしゃぼんだまのような(に) ( ) まるで小犬のぬいぐるにのような(に)( ) まるでわたあめのような (に)( ) お風呂に入ってる時に大地震が起こったときのように(な)( ) ライトアップされた東京スカイツリーは、まるで( )のようだ。 ( )は、まるでゆめみたいにきれいだった。 ( )は、まるでマシュマロみたいだ。 ( )のときは、まるで死ぬかと思った。 比喩の音声表現のしかた 次の比喩の練習文は、どのように音声表現すればよいでしょうか。 (練習文1) 木のえだの細かいところにまで、みんな灯がともって、木が明るくぼうっと かがやいて、まるでそれは、ゆめみてえにきれいなんだそうだが、そうして、 豆太は、「昼間だったら、見てえなあ。」とそっと思ったんだが、ぶるぶる、 夜なんて考えただけでも、おしっこをもらしちまいそうだ。 斎藤隆介「モチモチの木」 (答え) 比喩は、「まるでそれは、ゆめみてえにきれい(だ)」です。それに伝聞の 助動詞「そうだ」が接続しています。この文章全体は区切り方が重要です。 次のような区切り方はどうでしょう。カッコで区切ってみましょう。 (木のえだの細かいところにまで、みんな灯がともって)(木が明るくぼう っとかがやいて)(まるでそれは、ゆめみてえにきれいなんだそうだが) (そうして、豆太は、「昼間だったら、見てえなあ。」とそっと思ったんだ が)(ぶるぶる)(夜なんて考えただけでも、おしっこをもらしちまいそう だ。)の区切り方がよいでしょう。(ぶるぶる)は(夜なんて考えただけで も、ぶるぶるだ。夜のモチモチの木はとっても恐いんだよ)という意味内容 でしょう。豆太は夜のモチモチの木に特別な恐怖心を抱いてるのですね) (練習文2) ある朝、おにが目を覚ますと、すさまじいあらしだった。山々の木は、す すきがほをふるように、はげしい風にふきなびき、雨はたきとなって流れ、 がけが音をたててくずれ落ちた。大岩も、まりのようにはずんで落ちていき、 遠い谷間で音を立てた。 (答え) まず区切ってみましょう。区切り方が重要です。 (ある朝、おにが目を覚ますと、すさまじいあらしだった)(山々の木は、 すすきがほをふるように、はげしい風にふきなびき)(雨はたきとなって流 れ)(がけが音をたててくずれ落ちた)(大岩も、まりのようにはずんで落 ちていき、遠い谷間で音を立てた。)となるのがよいでしょう。これも一つ の方法です。 比喩は、(木は、まるですすきがほをふるようにふきなびく)(大岩は、ま るでまりのようにはずんで落ちていく。)の二つです。 「たき」は隠喩でしょう。「雨はたきとなって流れ」は「雨の降り方はまる でたきのようだ」という直喩が潜在しており、「雨の降り方」=「たき」と なり、「たき」という隠喩が形成されたと考えられます。 |
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