命題論理と音声表現          2012・08・25記
オノマトペの音声表現
重ね言葉の音声表現





  
  オノマトペ
       (擬声語、擬音語、擬態語)




 擬声語とは、ものの音や声を人間の使っている言葉でまねて写しとったも
のです。音をまねた言葉を「擬音語」、声をまねた言葉を「擬声語」と言い
ます。擬音語は、擬音(演劇で使う似せて作った音、効果音)とまちがわれ
ることがあるので、二つを合わせて「擬声語」と呼ぶこともあります。これ
ら二つは、「カタカナ」で表記することになっています。

 (1)新しい靴が、歩くたびに
キュッキュッと音を出します。
    (物音をまねた言葉・擬音語)

 (2)にわとりが、
コケコッコーと鳴いている。
    (鳴き声をまねた言葉・擬声語)

 もう一つ、「擬態語」があります。擬態語とは、ものの様子や人物の気持
ちを表わした言葉です。擬態語は「ひらがな」で表記することになっていま
す。

 (3)ひょうたんが、
ぶらりぶらりとゆれている。
       (様子を表わした言葉・擬態語)

 (4)父親は、ジャイアンツが負けて、
いらいらしている。
       (気持ちを表わした言葉・擬態語)

 擬声語か擬態語か、区別のつかない言葉もあります。

 (5)池で、ありが
あっぷあっぷしている。
  (あっぷあっぷと声を出しているのか、水におぼれている様子なのか、
   はっきりしない。)

 (6)屋根から雪が、
どさっと落ちてきた。
  (雪が落ちた音なのか、様子なのか、はっきりしない。)

 このように区別がつかないということから、擬声語、擬音語、擬態語の三
つを合わせて「オノマトペ」「写音語」「声喩」「象徴語」とか呼ぶことも
あります。三つとも品詞は、すべて副詞(状態副詞)です。

 ここでは、三つをまとめて利便性から「オノマトペ」と呼ぶことにします。
これらオノマトペは、具象性、感覚性、臨場性、音楽性、親近性に富む表現
の言葉です。音声表現すると、口当たりのよさ、読みやすさから、リズムが
ついたり、メロディーがついたり、へんに浮き上がってしまったりしがちで
す。
 これら言葉そのものがありありと見える、聞こえる、感じとられる言葉、
その場に居合わせてる生き生きした臨場性と具象性に富む表現です。ですか
ら、そのままの素直な読み方で十分な表現性をもっており、大げさに目立た
せる必要はなく、押さえ気味でよいと思います。前後の読みの流れとのバラ
ンスが大切であり、擬声語、擬態語だけがへんに浮き上がった、突出した読
み方をしないようにします。もちろん、文章内容によっては、わざとオー
バーに音声表現する場合も出てきます。



       
オノマトペの音声練習



 次の練習文を実際に声に出して表現よみしてみましょう。

(練習文1)電話のベルが、
ジリジリジリと鳴っているのに、だれも出ませ
      ん。

(練習文2)男の子が
タタタタタと走って、小犬を追いかけている。

(練習文3)うさぎが、
ぴょーんぴょーんとはねている。

(練習文4)重い荷物を、
えっちらおっちらと二階まではこび上げました。

(練習文5)正夫君が物かげから
わあっとさけんで飛び出してきた。ぼくは、
      急に手をつかまれ、
どきっとした。

(練習文6)こわそうな犬が門の前に
どっかと横になっていたり、やしきの
      中を
うろうろしていたり、おそろしくて近づけません。

(練習文7)おじいさんが、おせんべえを
ばりばりと食べて、お茶をがぶが
      
と飲んでいます。

(練習文8)チョコレートがとけて、ズボンのポケット中で
べったりとくっ
      ついてるよ。

(練習文9)弟は、カレーを
ぱくぱく、ぱくぱくと食べている。

(練習文10)
 人間の歩き方を見ていると、
のっそりのっそり歩く人もいれば、ちょこち
ょこ
歩く人もいる。つうつうとすべるように歩く人もいれば、ぴょんぴょん
ととびはねるように歩く人もいる。
たたたたとせわしなく歩く人もいれば、
タンタ、タンタと調子をつけて歩く人もいる。

(練習文11)
 おにはうなり声を上げて立ちあがった。そして、おにの岩屋の前にあった、
山ほどでかい大岩にだきつくと、
よっさ、ゆっさ、ゆっさ、とゆらしていた
が、
やあっ、かけ声かけて大岩を持ち上げると、ズテーン、そこへほうり出
したと。             松谷みよ子「海にしずんだおに」

(練習文12)
 トッコは、
きゅっとくちびるをかみしめて、ゆれるつり橋を見ました。ふ
じづるでできた橋の下には、谷川が
ゴーゴーとしぶきを上げて流れています。
 橋はせまいくせに、ずいぶん長くて、人が歩くと、よくゆれます。おまけ
に、今にもふじづるが切れそうなほど、
ギュッ、ギュッと、きしむのです。
                   長崎源之助「つり橋わたれ」

(練習文13)
 
シューッ、シューッ、シューッ──。とつぜん、霧の中からすうっと巨大
な黒いかげが現れ、目の前をザトウクジラが潮をふきながら通り過ぎていっ
たのです。                 星野道夫「森へ」

(練習文14)
 
ビシッ、ビシッ、ビリッ、ビリッ、ビリビリビーッ。
氷の割れる音が辺りに鳴りひびく。不気味な音が絶え間なく聞こえる。その
音におびえて、犬ぞりの犬たちが遠ぼえをする。
                高倉健「南極のペンギン」大書6上
(練習文15)
 風が
どうどうとふいて、草はザワザワ、木の葉はカサカサ、木はゴトンゴ
トン
と鳴りました。         宮沢賢治「注文の多い料理店」

(練習文16)
「作法のきびしいうちだ。きっと、よほどえらい人たちが、たびたび来るん
だ。」
 そこで二人は、きれいにかみをけずって、くつとどろを落としました。
 そしたら、どうです。ブラシを板の上に置くやいなや、そいつがぼうっと
かすんでなくなって、風が
どうっと部屋の中に入ってきました。
 二人はびっくりして、たがいに寄りそって、戸を
ガタンと開けて、次の部
屋へ入っていきました。早く何か温かいものでも食べて、元気をつけておか
ないと、もうとほうもないことになってしまうと、二人とも思ったのでした。
                  宮沢賢治「注文の多い料理店」
(練習文17)
 木なんか、みんなザラメをかけたようにしもで
ぴかぴかしています。
「かた雪
かんこ、しみ雪かんこ。」
 四郎ととかん子とは、小さな雪ぐつをはいて
キックキックキック、野原に
出ました。
 森の中から、
「しみ雪
しんしん、かた雪かんかん。」
と言いながら、
キシリキシリ雪をふんで、白いきつねの子が出てきました。
                     宮沢賢治「雪わたり」
(練習文17)の解説
<「かた雪かんこ、しみ雪かんこ。」と「しみ雪しんしん、かた雪かんか
ん。」とがオノマトペであるかどうかは微妙ですが、言葉調子のリズムをと
るためにオノマトペを利用していると解釈して、一応オノマトペに入れてお
きます。
(練習文11)の「やあっ」は、掛け声です。品詞では感動詞です。擬声語
擬音語は副詞・状態副詞です。擬声語とするには無理なところもありますが、
ここでは擬声語として扱っています。>




         
重ね言葉




 「重ね言葉」とは、同じ言葉を重ねることです。重ねることで、その言葉
の意味内容を強めることになります。

次の例文の赤字個所が「重ね言葉」です。

(例文1)
「さあ、およぐぞ。」
くじらは、
あおいあおい空のなかを、げんきいっぱいすすんでいきました。
うみのほうへ、むらのほうへ、まちのほうへ。
みんなは、うたをうたいました。空は、
どこまでもどこまでもつづきます。
            なかがわりえこ「くじらぐも」光村1下

(例文2)
それからというもの、たぬきは、
まいばんまいばんやってきて、     
糸車をまわすまねをくりかえしました。
                 岸なみ「たぬきの糸車」光村1下


重ね言葉について、谷崎潤一郎(作家)は、次のように書いています。

 『何事も忍ぶに忍ぶ』は、この場合「忍ぶ」の文字を重ねたために果たし
て効果が強くなっているかどうか、事実は反対でありまして、重ねたことが
少しも役立っていないのみか、却って文意を弱めております。……ちょうど
下手な俳優が騒々しい所作を演ずるのと同じ結果に陥っております。「暗い
暗い気持」「嫌な嫌な予感」なども、「暗い気持」「嫌な予感」で沢山であ
ります。こういう風に同じ形容詞を二つ重ねることは、口でしゃべる場合に
はアクセントの働きによって効果を上げることができますけれども、文字で
書いては、大概の場合、重ねたことが感銘を薄くさせるのみであります。 
               『文章読本』中公文庫、182ぺより

 谷崎氏は、重ね言葉について「口でしゃべる場合にはアクセントの働きに
よって効果を上げることができますが、…」と書いています。谷崎氏のいう
「アクセント」とは音声的力点(強調表現)のことでしょう。話し言葉にお
いては確かに音声的力点をおくと、その意味内容が強まることはあります。
  しかし、とかくすると、子ども達の重ね言葉の音声表現では、教室で読
む読み声を聞いていると、節をつけて歌うような、へんにメロディーをつけ
た読み方になりがちです。へんに調子(くりかえしリズム)をつけて、そこ
だけが浮き上がる、オーバーで、嫌味な読み方になりがちです。
  くりかえしリズムがつきますから、文章内容とかけ離れた読み方になり
がちです。特に児童の読み方はそうなりがちです。文章内容と無関係にへん
いメロディーをつけた読み方になりがちです。注意を喚起し、指導をします。

 そうならないためには、「重ね言葉」の最初の言葉をさらりと読み、二番
目をほんの少し強めに読む、というように変化をつけ、二番目をほんの少し
だけ強めた読み方にする方法もあります。または、二つ全部をさらりと読み
ながら「暗い(間)暗い(間)気持」のように心持ちょっとの間をあけて強
調した読み方にすることもできます。初めを強調して、次を更に一層強調し
て読んでもいいですが、へんな調子のつけ過ぎ、誇張のやり過ぎ、行き過ぎ、
オーバーで臭味のある読み方にならないように気をつけさせます。際立てか
げん、全体のバランスかげんが大切です。

 書き手(作家)は、同じ言葉を二回も繰り返して書いて、その意味を強め
ているのですから、更に音楽的メロディーで輪をかけて強調しなくても、二
つをさ
らりと読んでも強調内容は伝わるはずです。



       
 重ね言葉の音声練習



次の練習文を実際に声に出して表現よみしてみましょう。
 (節がついた歌うような読み方にならないようにします。)

(練習文1)
 小さな犬は、入口からそっとぬけ出し、雪の上に
小さな小さな足あとをつ
けながら、ちょこちょこ走っていきました。

(「ちょこちょこ」は様子の擬態語です。重ね言葉とは違うと考えます>

(練習文2)
 ある日、小ゆびほどの
小さな小さな男の子が生まれました。おじいさんと
おばあさんは大喜びで、その子に「いっすんぼうし」と名前をつけました。
ふたりは、いっすんぼうしを、だいじにだいじにそだてました。
                    今西祐行「いっすんぼうし」

(練習文3)
 
くらいくらい夜が、ふろしきのようなかげをひろげて、野原や森をつつみ
にやってきましたが、雪はあまりに白いので、
つつんでもつつんでも、白く
うかび上がりました。          新美南吉「てぶくろを買いに」

(練習文4)
 勉強だって、少しやる気が出てきた。二けたの割り算の宿題を全部やって
いったら、
めずらしいめずらしいと先生にほめられた。    
                    加藤多一「五月になれば」
<「めずらしいめずらしい」はカギカッコなしの会話文とも考えられます。
 一応、ここでは、書き手の要約した説明の重ね言葉として扱っています。>

(練習文5)
ずうっと、ずっと,大すきだよ。」
          ハンス・ウィルヘム作 ひさやまたいち訳光村1下

(練習文6)
 ──あの坂をのぼれば、海が見える。
 のぼり切るまで、あと数歩。半ばかけだすようにして、少年はそのいただ
きに立つ。しかし、見下ろす行く手は、またも波のように、下ってのぼって、
その先の見えない、
長い長い山道だった。
                   杉みき子「あの坂をのぼれば」

(練習文7)
 きつねの体に勇気がわいて、おおかみとたたかった。おお、
たたかったと
も、たたかったとも
じつに、じつに、いさましかったぜ。
               あまんきみこ「きつねのおきゃくさま」

(練習文8)
 
来る日も来る日も、アレクサンダは、にわでむらさきの小石をさがしつづ
けた。     レオ・レオニ、谷川訳「アレクサンダとぜんまいねずみ」

(練習文9)
 そんなとき、お父さんは、決まってゆみ子を
高い高いするのでした。  
                       今西祐行「一つの花」

<「高い高い」は、両手で赤ちゃんを頭上に何回か押し上げる動作の名づけ
とも考えられます。この場合は固有名詞となります。ここでは、お父さんが
「たかーい、たかーい」と言いながら、ゆみ子を頭上に押し上げてる動作の
繰り返しと考えて、オノマトペと解釈して、問題作成をしています。>

(練習文10)
 のどのおくに生えているせん毛は、鼻や口から入ってきた微生物を、
外へ
外へ
と押し出す役目をしています。

(練習文11)
 南極探検をはじめて三日目、ようやく目的地の近くまでたどりついた。こ
こには
大きな大きな氷山の割れ目があった。

(練習文12)
 秋になると、大人のさけは、いきおいよく川をのぼります。三メートルぐ
らいのたきでものりこえて、
川上へ川上へとすすんでいきます。

(練習文13)
そこで、トッコは、山に向かってよびかけました。
「おうい、山びこうっ」
すると、「おうい、山びこうっ」という声が、
いくつもいくつも返ってきま
した。
トッコは、おもしろくなって、
何度も何度もよんでみました。
                    長崎源之助「つり橋わたれ」

(練習文14)
 エルマーは、まっすぐに歩くうちに、川から
どんどん、どんどん、はなれ
てしまいました。   ガネット作、渡辺茂男訳「エルマー、とらに会う」

(練習文15)
 おみつさんは、初めてわらぐつが売れたので、
うれしくてうれしくて、若
い大工さんをおがみたいような気がしました。  
                   椋鳩十「大造じいさんとガン」

(練習文16)
 おみつさんは、少しぐらい格好が悪くても、はく人がはきやすいように、
あったかいように、少しでも長持ちするようにと、心をこめて、
しっかりし
っかり
、わらぐつを編んでいきました。
                  杉みき子「わらぐつの中の神様」

(練習文17)
 
その次の市の日にも、またあの大工さんが来て、わらぐつを買ってくれま
した。
その次もまたその次も、おみつさんが市へでるたびに、あの大工さ
んが必ずやってきて、不格好なわらぐつを買ってくれるのです。
                   椋鳩十「大造じいさんとガン」

(練習文18)
 
小さな町の外れに、小さな歯医者さんがありました。この歯医者さんに、
小さな小さなかん者さんが来ました。それはなんと、一ぴきのねずみでした。
                安房直子「ねずみの作った朝ごはん」
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