ここから始めよう 音読授業(1)       01・04・26記



  昔から、「読み,書き、そろばん」と言われます。国語と算数はすべて
の教科の基礎基本です。
 最新流行している、または先端となっている教育の理論や方法の教室実践
への取り入れも重要です。しかし、それら教室実践の基礎基本となっている
学力は、やはり国語と算数です。「読み、書きそろばん」(最近は「読み、
書き、パソコン」だそうで)の中でも「読み」は基礎基本となる学力の中核
となっていると言えましょう。何はともあれ、文字(文章)を意味内容に導
かれて明瞭に音声で表現できなければ、文章を意味内容の区切りで声に出し
て読めなければ、出発点が砂上の楼閣で、何をか言わんや、です。文字を言
葉の区切りでしっかりと読める、これが基礎基本です。

 あなたの学級の児童たちは、文章内容に導かれて、区切って、上手に音声
に現れるように読めていますか。これができなくて、先へはすすめません。



   
第一ステップ・音読初期指導の重点目標    



  新学期が始まりました。
 さあ、音読指導も重点をおいた学級経営をしていきましょう。1学期はつ
ぎの五つに重点をおいた指導をしていきましょう。


       
(1)大きな声、はぎれよい声で読む


 蚊の鳴くような声、補聴器をかけないと聞き取れないような声で読む子は
いませんか。「大きな声」とは「ばかでかい声」ではありません。
 最近の子供たちの声量の衰弱が指摘されています。せめて教室の中にりん
りんと響くような声量で読ませたいものです。天子のような声とはいかなく
てもはればれしていて、すがすがしく、子どもらしい声で読ませたいもので
す。はぎれよい(発音が明瞭で)、教室内にきんきん響く、勢いと張りのあ
るよく通る声、声に輝きがあり、文章内容を全身の声で楽しんで表現してい
る、そうした聞いていてほれぼれするような発声発音で読ませたいもので
す。

          
(2)ゆっくりと読む


 子供たちは、上手な音読とは「つっかえないで、早口で読むことだ」と考
えているようです。「つっかえないで、早口」をねらうと、文字(文章でな
く)をなぞることに強制されて、読み声がつまって硬直した読み方になりま
す。これでは読み手の意識が意味内容のより深い部分まで届き、何かが生ま
れ、文章内容が溢れ出す音声表現とはなり得ません。
 ゆったりとした、余裕のある読み声にして読むと、自然とその読み声は文
章内容に触発され、意味内容を産出する音声表現となっていくはずです。
 ゆっくりと読めば、自然と文章内容が音声に凝縮(含みこまれ、乗っか
る)され、過剰な、饒舌な表現内容の音調となっていくはずです。
 宇野重吉氏は有馬稲子氏に「台詞はゆっくり、たっぷり、きっちりネ」と
語ったそうだが,まさに至言です。ゆっくりと読むことで、言葉は自由にあ
やつられ、余裕でもてあそび、多層な、複数の、豊穣な音声表現となってい
くはずです。


       
(3)意味内容で区切って読む


 文章の意味内容のまとまりごとに区切って読ませます。まとまりごとに、
間(ま)を開けて読む、音読では、とても、とても、大切です。
 「間は魔に通ず」と言われています。間だ,間だ、間だ、です。上手,下
手を決めるもの、それは間だと言ってよいほどです。
 下読みの段階で文章に記号(しるし)をつけておくのも一つの方法です。
ここはひとつながりに読む、ここのテンは一つ分(二つ分)開けて読む、こ
このテンはつなげて読む、ここのマルはいくつ分開けて読む、ここの段落変
わりは一つ分(二つ分、三つ分)開けて読む、など下調べの段階で記号をつ
けます。


      
(4)会話文と地の文とを区別して読む


 会話文は発話者が語っている言葉です。発話者の生活(状況)に身をお
き、表現意図を探り、発話者の気持ちになって、気持ちを前面に押し出して
音声表現するとうまくいきます。会話文には「相手に話しかけている会話
文」と「ひとり言の会話文」とがあります。二つの音調を区別して音声表現
することも大切です。
 地の文は、語り手が事件の流れや因果関係を説明したり、情景を描写した
り語り手の解釈(感想、注釈,意見,批評)を付け加えたりしている文章部
分です。客観的、説明的に淡淡とした音調で読みます。


      
(5)へんな読み癖をつけないで読む


 訓練されてない児童の読み声には、へんな読み癖がみられます。独特な節
のついた読み,歌うような音調の読み、周期的な陥没読み、文末や文節末の
しゃくりあげ(または下がる)み、早口読み、小声読み、ずらずらの一本調
子読み、口先読み、学芸会読み(操り人形が読んでいるみたいな)、などで
す。
 へんな読み癖をこわすには、情感をこめて読もうとすることを忘れて,文
字のひとつ一つをていねいに拾って、意味のつながりと切れをはっきりさ
せ、ゆっくりと淡淡と読むようにさせます。アナウンサーの二ュース読み、
あれの音調を手本に初期指導をするとよいでしょう。へんに感情を入れよう
とせず、意味内容の区切り、ひとかたまりに気をつけて、中立的に、簡素
に、淡と読むようにさせます。



              次へつづく