音読授業を創る そのA面とB面と   05・11・15記




「じどう車くらべ」の音読授業をデザインする


                           


●「じどう車くらべ」の掲載教科書………………………………光村1上



             
文章構成


 一年生教科書の上巻ですので、文章も、文章構成も、ごく簡単かつ単純に
できています。書かれ方も明快で、説明文の見本といえるほど論理的記述も
よくできています。

(1)の段落…………課題提示文の段落です。児童用語としては、分かりや
すく「問題の文」とか「問題をだしている文」とか名づけて指導していくと
よいでしょう。

(2)〜(4)の段落…………(1)段落の「問題の文」に対する「答えの
文」または「答えがかいてある文」です。
(2)の段落…………答えの文。バス、乗用車のこと。
(3)の段落…………答えの文。トラックのこと。
(4)の段落…………答えの文。クレーン車のこと。
(5)の段落…………「はしご車」について記述する作業文。

(1)の段落の問題提示文の質問は、次の二つです。
  「それぞれのじどう車は、どんなしごとをしていますか。」
  「どんなつくりになっていますか。」

(1)の冒頭の一文「いろいろなじどう車が、どうろをはしっています。」
は、問題提示の質問文ではありませんが、冒頭から二つの質問文を書き出す
のはへんなので、まず本題に入る前に、まくら言葉・前置き言葉・導入の言
葉を置いているわけです。みなさんは自動車の現物を見たり、乗ったり、自
動車を絵本や映像で見たり、読んだりしていますね。これから自動車のお話
をしていきますよ。という、まあいわば、ごあいさつ言葉を述べているわけ
です。

(2)から(4)までは、二つの質問について、次のような文章形式で対応
しています。
問題提示文の質問内容は、次の二つです。
  (A)それぞれの自動車の働き(機能)は何か。
  (B)その働き(機能)のため、それぞれの自動車はどんなしくみ(構
     造)になっているか。

それに対する「答えの文」は、こうなっています。

(2)の段落
  (A)バス、乗用車は、人を乗せて運ぶ自動車だ。
  (B)そのため、座席が広い。外の景色が見えるように大きな窓があ
     る。
  (人を乗せるから、座席がゆったりしている。人を乗せるから、外が見
   えるようになっている。という二者関係になっている。)

(3)の段落  
  (A)トラックは、荷物を運ぶ自動車だ。
  (B)そのため、荷物を載せる広い荷台がある。タイヤがたくさんつい
     ている。
  (重い荷物を載せるから、荷台が広く作ってある。重い荷物を載せるか
   ら、パンクしないようにタイヤがたくさんついている。という二者関
   係になっている。)

(4)の段落 
  (A)クレーン車は、重い荷物を吊り上げる自動車だ。
  (B)そのため、丈夫な腕が、のびたり、うごいたりする。車体が傾か
     ないようにしっかりした車台がついている。
  (重い荷物を吊り上げるため、丈夫な腕が、のびたり、うごいたりす
   る。重い荷物を吊り上げるため、しっかりした車台がついている。と
   いう二者関係になっている。)


           
情報集めと記述問題


  本教材は、後半の文章では、ほかの自動車の情報を集め、これまでの文
章形式(思考形式)を参考にして、それをまねて、ほかの自動車についてに
説明的文章を児童が記述していく作文指導の内容になっています。

(5)の段落
  すぐに「ハイ、自動車の作文を書きましょう」でなく、それへの導入指
導として「はしご車」と「救急車」の例文が挙げられています。
  (A)はしご車は、高いビルが火事のときに消火するはたらきをする。
  (B)そのため、水をすいあげるポンプや長いホースだけでなく、高く
     のびあがるはしごがついている。

(6)の段落
  救急車の見本文、例文が提示されています。

  こうした例文の文章構成を参考にして各自(共同)で、選択した他の自
動車の機能と構造との文章記述をさせていくようになっています。参考図書
を探し、それを読み、調べて、自分なりに資料をまとめて、記述する学習作
業の活動内容は、一年生には自主作業としては難しいかもしれません。
  各学級児童の能力の実態にもよりますが、自分が知っている自動車につ
いて学級全員の前に出し合って、その話し合いから、ある一つの、または二
つの自動車の種類を選んで共同作業で文章記述をまとめていく学習活動でも
よいでしょう。

  学校図書館や各家庭にある乗り物絵本、図鑑などを見ながら、他の自動
車「何は、(はたらきとして)何をする自動車です。そのため、(しくみと
して)何がどうなっています。」の文章形式で書かせていく方法もありま
す。

  (1)の段落に「それぞれのじどう車は、どんなしごとをしています
か。」とあります。「それぞれのじどう車」にはどんなものがあるか、
「それぞれ」について児童たちに話させて、自動車の種類をあげさせてみま
しょう。
  他の自動車として、パトカー、スポーツカー、スクールバス、レーシン
グカー、ブルドーザー、ダンプカー、キャリアカー、ロードローラー、タン
クローリー、こううんき、れいとうしゃ、けんけつしゃ、バキュームカー、
フォークリフト、ミキサーしゃ、パワーショベル、ワゴン、ごみしゅうしゅ
うしゃ、などがあるでしょう。これらの中から1,2個を選んで指導するよ
うにします。

            
音声表現の仕方


  一年生の子どもたちは、天子のような声質を持っています。一年生の声
質をいかんなく出させて音声表現させたいものです。やや甲高くて細くて、
りんりんと響く、すがすがしい、はぎれよい、たっぷりした声量で音声表現
させたいものです。

  まず、息切れしない、たっぷりとした声で読ませたいものです。息切れ
しない、たっぷりとした声、これの指導の留意事項を、下記に簡単に書いて
みよう。
  お腹をふくらませたり、へこませたりの呼吸練習、そうしてから文章を
読む練習をします。おへそやお尻に向かって息を吸うと、お腹にたっぷりと
息が入ります。そうした指導をやったあとで、実際に文章を声に出させて読
ませます。
  お腹のふくらみ、へこみを意識して声を出させます。そうすると、声に
勢いやパワーが出るようになります。
  次に、教室の壁面に声を当てるようにして教科書の文章を読ませます。
起立して読むことも大切です。構えが違ってきます。バカデカイ声を出させ
て読ませる必要はありません。これでは声帯を痛めてしまいます。
座席のすみずみの人にも十分に声が届く声の力で文章を読む、それを意識し
て、感じをつかんで、読むことをねらって指導します。

  こうした指導の後で、一年生の持ち前の地声である、やや甲高くて細
い、リンリンと響く、すがすがしい、はぎれよい、たっぷりとした声量で、
読ませるようにします。そして、「じどう車くらべ」の文章では、急がず、
ゆっくりと、たっぷりとした声量と読みのテンポで音声表現させます。

  「いろいろなじどう車が、どうろをはしっています。」の一文を読むと
きは、ゆっくりと、たっぷりと読みつつも、一文内部はひとつながりになる
ように読み進めます。そこの文末のマル(句点)では、たっぷりと間をあけ
てから、次の文へと読み進みます。
  次に「それぞれのじどう車は、どんなしごとをしていますか。」と読み
進めていきます。ここも、一文のひとつながりのまとまりとして読みつつ、
一文内部はゆっくりと、落ち着いたたっぷりとした声量で読んでいきます。
  ここの「どんなしごとをしていますか。」と、次の「どんなつくりに
なっていますか。」の二つの文は質問の文です。問いかけているように、聞
いているように尻上がりの音調にして音声表現するとよいでしょう。

  答えの文は「バスやじょうよう車は、人をのせてはこぶしごとをしてい
ます。」まで、ゆっくりと、たっぷりと読みつつも、ひとつながりの意識で
読みます。ここの一文の文末のマル(句点)ではたっぷりとした間をあけま
す。
  「そのために」は、前文を受けての接続語です。前文を受けている感じ
を音声に出すために、「そのために」を、やや声高にして明るく転調させて
読み出します。前文を受け継ぐ意識をこめて、つまり、前文とつながってい
ながらも、新しく起こしているのだという意識をこめて、転調して読み出し
ていくようにします。
  次の「ざせきのところが、ひろくつくってあります。」と「そとのけし
きがよく見えるように、大きなまどがたくさんあります。」とは、それぞれ
を二文として区切りながら、つまり、マル(句点)で間をあけて読みながら
も、「そのために」で前文を受けている点ではひとつながりですから、ここ
の二文の意味内容が離れてばらばらに離散しないように、二文に区切りつつ
も、二つの全体の読みのトーンを変えない、同じトーンにして読み進めてい
くようにします。一文内部は、ゆっくりと、たっぷりと読むことは前と同じ
です。

  以下、トラックの段落、クレーン車の段落、これまで述べてきたバスや
じょうよう車の段落と音声表現の仕方は全く同じです。重複になりますか
ら、省略します。

  こうした説明文や解説文を音声表現するときは、一般的に、聴衆(クラ
スのみんな、父母、兄弟姉妹)に聞かせているつもりになって、聴衆に分
かっていただく読み方に気を使って音声表現していくようにするとうまくい
きます。

           
分担読みを利用する


  「じどう車くらべ」の文章構造に即応して、児童4名のグループを作っ
て、次のような分担読みの掛け合いをやってみたらどうでしょうか。
  文章構成からいって、A児とB児とは機能ペアーの組み合わせ、C児と
D児とは構造ペアーの組み合わせになっています。あるいは、A児とC児と
は、質問者ペアーの組み合わせ、B児とD児とは、回答者ペアーの組み合わ
せになっています。

(2)の段落
A児  バスやじょうよう車は、どんなしごとをしていますか。
B児  バスやじょうよう車は、人をのせてはこぶしごとをしています。
C児  バスやじょうよう車は、そのために、どんなつくりになっています
    か。
D児  そのために、ざせきのところが、ひろくつくってあります。そとの
    けしきがよくみえるように、大きなまどがたくさんあります。

(3)の段落
A児  トラックは、どんなしごとをしていますか。
B児  トラックは、にもつをはこぶしごとをしています。
C児  トラックは、そのために、どんなつくりになっていますか。
D児  そのために、うんてんせきのほかは、ひろいにだいになっていま
    す。おもいにもつをのせるトラックには、タイヤがたくさんついて
    います。

(4)の段落
A児  クレーン車は、どんなしごとをしていますか。
B児  クレーン車は、おもいものをつりあげるしごとをしています。
C児  クレーン車は、そのために、どんなつくりになっていますか。
D児  そのために、じょうぶなうでが、のびたりうごいたりするように、
    つくってあります。車たいがかたむかないように、しっかりしたあ
    しが、ついています。

  こうした分担読みのほか、教科書文章をそのままにして、文章構造で対
応する個所を、同じ色でぬりつぶすのもよいでしょう。質問と答えの「しご
と部分」を赤色とか、質問と答えの「つくり部分」を黄色とかで塗りつぶす
方法です。
  あるいは、教科書文コピーを印刷配布して、はさみで切断して、冒頭の
二つの質問部分に対応する、それぞれの自動車部分の答えの文章部分を並べ
替えさせ、二つの質問部分に対応する「しごと部分」と「つくり部分」とを
組み替えてくっつきあわせる作業もよいでしょう。


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