音読授業を創る そのA面とB面と     07・4・20記




  詩「大木」の音読授業をデザインする




●詩「大木」(原田直友)の掲載教科書………………………………教出6上



              大木
                  原田直友

         わたしは どこにもいけないから
         上へ歩いた
         わたしは どこへも歩いていけないから
         ぐんぐん
         上へ上へと歩いた
         そして 百年歩いた



         
作者(原田直友)について


  1923年、山口県生まれ。山口師範学校卒。詩人。
  師範学校卒業後、上京する。教師をしながら詩作にはげむ。羽曽部忠ら
と「子どもと詩」文学会を結成する。詩と批評誌「ぎんやんま」を創刊。日
本児童文学者協会、日本現代詩人会会員。
  「神さまと雲と小鳥たち」「木かげのベンチ」「じぞうさま」「スイッ
チョの歌」「はじめて小鳥が飛んだとき」など。



             
教材分析


  まず、題名読みをしてみよう。題名「大木」について語り合ってみよ
う。
  わたしたちは大木を見ると、まっすぐに空へ向かって伸びている圧倒す
る姿にほおっと感動するでしょう。大木の真下でその樹木の根元を見ると、
幹の太さや周囲はどれくらいかと考えます。そして、幹の根元からずうっと
大木のてっぺんへと視線を移動させます。すると、幹はしだいしだいに細く
なって天へつきさすようにぐうっと伸びて小さく細くなっていて、目がくる
くる回るような幻覚に襲われます。

  次は本文の詩について話し合いです。
  「わたし」とは、誰でしょうか。この詩は「大木」が自分自身をさして
「わたし」と言っています。大木は人間ではありません。「わたし」とはへ
んです。
  大木は自分自身を人間であるかのように「わたし」と語っています。ま
た、大木は人間であるかのように上へ上へとぐんぐん伸びて成長しているこ
とを「歩く」と語っています。つまり、擬人法という表現法をとっていま
す。
  大木は根を張ったその場所から移動はできません。その場所にじっと留
まってひたすら上へ上へと伸びていくだけです。その場所(土地)に留まっ
て「百年歩いた」とは「百年上へ上へと伸びて生長してきた」ということで
す。樹齢百年なんてざらにあります。樹齢二百年、樹齢三百年という大木
だって少ないとは言えません。大木は、ただひたすら同じ場所(土地)に留
まって上へ上へと、今までもそうであったように、今後も変わらずに伸び上
がっていくだけなのです。
  この詩は卒業間近の六年生に配当されている教材です。この詩を読む六
年生たちは、この大木のようにぐんぐんと成長していこうとする心構えを与
えられるかもしれません。この詩を教材として採用した編集者は、少年少女
たちに大木のように成長していってほしいという願いをこめて配当している
のかもしれません。
  この詩を読む成人や熟年や老年の人々は、自分がひたすら愚直にひとつ
のこと(目標、価値)にこだわって生き続けてきたこと、今後もそうした
「大木」の行き方をしていくだろう自分の人生を、この「大木」の生き方と
重ねて読みとるのかもしれません。


           
音声表現のしかた


  固い決意を込めて、力強く、ゆっくりと音声表現していきます。
  次の太字の個所は、強めの声立てで、ゆっくりと読んで目立たせて音声
表現します。

  わたしは(間)どこにも(間)いけないから(間)
  上へ(間)歩いた(間)

  わたしは(間)どこへも(間)歩いて(間)いけないから(間)
  ぐんぐん(間)

  
上へ(間)上へと(間)歩いた(間)
  そして(間)百年(間)歩いた(間)


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