音読授業を創る そのA面とB面と         07・6・2記




  「五月」の音読授業をデザインする




●詩「五月」(室生犀星)の掲載教科書……………………………東書6上



           五月
               室生犀星


       悲しめるもののために
       みどりかがやく
       くるしみ生きむとするもののために
       ああ みどりは輝く



         
作者(室生犀星)について


  室生犀星記念館のホームページ
  http://www.city.kanazawa.ishikawa.jp/bunho/saisei/

  室生犀星の生涯について
  http://www.designroomrune.com/magome/s/saisei/saisei.html

  そのほか、室生犀星についての記事はウェブサイトで検索するとたくさ
ん見つかります。


             
教材分析


  この教材の導入指導として、子ども達に下記の二つの質問をして話し合
ってみたらどうでしょう。

質問(1)
  あなたは、春・夏・秋・冬、それぞれの季節についてどんなイメージ
をもっていますか。
  春といえば、どんなイメージですか。夏といえば……。秋といえ
ば……。冬といえば……。
   または、連想ゲームをします。春という言葉から連想するほかの言葉
にはどんなものがありますか。夏という言葉から連想する……。秋という言
葉から連想する……。冬という言葉から連想する……。それぞれの季節から
どんな事柄・言葉を連想しますか。

質問(2)
   あなたは、春・夏・秋・冬、それぞれの中で、どの季節が好きです
か。それはなぜですか。

話し合い学習
  次に本番の解釈深めの話し合い学習に入ります。
  はじめに詩の全文を黙読または微音読させます。繰り返して黙読または
微音読をさせてイメージをふくらませます。様子や気持ちで分かったこと・
気づいたこと・少し感じてきたこと、分からないことや疑問などを行間に書
き込みをさせます。
  それから学級全員による話し合い学習にはいります。

  まず題名よみです。「五月」からどんなイメージ、事柄が思い浮かびま
すか。「五月」はどんな季節か、季節の特徴について話し合いましょう。
  風薫る五月です。新緑の五月です。若芽新芽の五月です。日ざしは柔ら
かく、風はさわやかで、一年で一番快適な季節です。
  青葉若葉のまっさかりの五月です。大自然のいのちが燃えいずる、生命
力に満ちている五月です。新芽がふくらみ、若葉が満ちあふれ、これから花
を咲かせ、実をみのらせていくスタートの五月です。さわやかな、ここちよ
い風、気持ちよい風が吹く五月です。朝のさわやかさで、遅くまで寝ていて
はもったいない、早起きをしたくなる五月です。

  この詩は四行詩です。たった四行の短い詩です。意味内容からは1行目
・2行目がひとまとまり、3行目・4行目がひとまとまりとなっています。
  ≪悲しめるもののために→みどりかがやく≫
  ≪くるしみ生きむとするもののために→みどりは輝く≫です。

  古語表現が二つあります。「悲しめる」の「める」と、「生きむ」の
「む」です。「くるしみ生きむ」を、便秘・糞詰まりで排便困難なときのよ
うに「苦しんで、お腹に力を入れていきむ」と誤って理解してしまう子ども
がいるかもしれません。昔の言葉づかいであることを知らせましょう。

  「める」
 助動詞「めり」の連体形。
(1)推量「……のように見える。……ようだ」
(2)婉曲「……のようだ。……かと思われる」

  「む」
 助動詞「む」の終止形、連体形。
(1)推量「……だろう」
(2)意志「……う。……よう」
(3)仮定・婉曲「……とすれば、その……」
(4)適当・当然「……するのがよい。……するはずだ」
(5)勧誘「……しないか」

  二行目に「みどりかがやく」、四行目に「みどり輝く」とあります。
「かがやく」(二行目)と、「輝く」(四行目)と、「ひらがな」と「漢
字」の二つに書き分けています。ひらがなと漢字で使い分けています。どん
な意味があるのでしょうか。どんな違いがあるのでしょうか。
  「ひらがな」は、柔らかい感じがする文字です。漢字は硬い感じがする
文字です。「悲しめるもの」には「かがやく」と柔らかい感じの「ひらが
な」を使っています。「くるしみ生きむとするもの」には「輝く」と硬い感
じの「漢字」を使っています。後者には硬い感じの「漢字」を使って「くる
しみ生きむ」の意味内容を硬い感じにして強調しているのだと考えます。
  「悲しめるもの・者・人間」より「くるしみ生きむとするもの・者・人
間」のほうが一層強く「みどり」は輝いて、こうして一層強く生きんとする
生命力のエネルギーに満ちあふれ、それを必要としているのだ、ということ
から、硬い感じの漢字表現(表記)にしているのはと思います。

  しかし、わたしには「悲しめるもの」と「くるしみ生きむとするもの」
の二つにそんなに大きな差異はないと思うのですがどうでしょう。たった四
行だけの詩に、同じ「ひらがな」の言葉の同一単語を使うと、表現内容の意
味する力が弱くなります。二つに変化をつけることが必要です。
  「くるしみ生きむ」のほうを難儀・苦悩から立ち上がる力の強さが必要
だということから「漢字」にしたのだではと考えられます。
  「みどり」は両方とも「ひらがな」になっています。これは、五月は若
葉青葉にむせかえっていますから硬さはありません。わかば青葉の新緑の柔
らかさを出すために両方とも「みどり」としたのではと考えられます。

  以下に、わたしの自分勝手な解釈をざっくばらんに書いてみよう。

  この詩の前半の意味するところはこうでしょう。「悲しめる者のために
大自然のみどりはかがやいているのです。悲しいときには新緑若葉に満ちあ
ふれている大自然のみどりを想像してみましょう。青葉若葉の生命力旺盛な
力、エネルギーに満ちあふれて生長していく元気な逞しい姿を想像してごら
ん。その姿に自分を重ねてごらん。生命力の横溢さを想像することで、あな
たの悲しみなんか消えてしまうことでしょう、ふっとんでしまうことでしょ
う。「五月のみどりのかがやき」は、そんなことを思わるエネルギーとパ
ワーを持っていますね。

  この詩の後半の意味するところはこうでしょう。人間だれしも、苦しみ
ながらも必死に生きようとがんばっているのです。苦しみをのりこえようと
がんばっている人間たちなのです。あなたもそうでしょう。
  あなたが苦しいながらも必死に生きようと頑張っているとき、五月のみ
どり、青葉若葉にむせかえっている新緑の生命力の力強さと旺盛さに満ちて
いる大自然を想像してみよう。頭の中にいっぱいにしてみよう。それら青葉
若葉のパワーに、自分の生きる姿を重ねてみましょう。重ねることで、苦し
いけどがんばる力、苦しみながらも必死に生きようとする力、そうした元気
や活力や気力を与えられるでしょう。

  この詩は、落胆や失意や絶望などうちひしがれている時に読むと、うん
と元気づけられます。「よし、がんばってやろう。再チャレンジだ」という
衝動にかられ、魅惑的な誘惑にかられ、とりこにされるでしょう。そうした
勇気と元気とエネルギーが与えられるでしょう。


           
音声表現のしかた

  
  四行だけの詩です。祈りの詩です。
  ゆっくりと、かみしめるように音声表現しましょう。詩内容を吟味しつ
つ、納得し、首肯しつつ、聞き手に活力と奮励鞭撻を与えるつもりで、それ
が声になるように音声表現していきましょう。

  次は、音声表現の一例です。「ああ」は、「すばらしいみどりよ」とか
「そうよ、そうだよ」という思いを込めながら音声表現するとよいでしょ
う。

「かなしめる・ものの・ために / みどり・か・が・や・く // 」
「くるしみ・生きむと・する・ものの・た・め・に / あー / み・ど・
り・は / か・が・や・く // 」

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