音読授業を創る そのA面とB面と 06・7・10記 「なぜ、おばけは夜に出る」音読授業のデザイン ●「なぜ、おばけは夜に出る」(なだ いなだ)…………………大書5上 音読実験にご協力を 文章には句読点がついています。句読点とは、句点(まる)と読点(て ん)のことです。句読点は、文章の論理的なつながりを示したり、音読する ときの区切りの間を示したりします。しかし、音読するとき、句点では全部 といってよいほど間をあけて読みますが、読点では間をあけて読むこともあ れば、間をあけないで続けて読むこともあります。読点がついていない文章 個所でも間をあけて読むところもたくさんあります。 「文章の句読点」と「音読の句読点」とは違うのです。そのことを、本号 では読者のみなさんのご協力を得て、音読の実験をしたいと思います。みな さんのご協力を得ることで、句読点についてより一層のご理解がいただける のではないかと思います。 (注記 「音読の句読点」とは音声表現するとき、区切りとしての間をあけ て読むことをさしています。) 実験の要領は、簡単です。 わたしの設問の指示にしたがって、そのとおりに声に出して音読してい ただければけっこうです。 引用文は、すべて「なぜ、おばけは夜に出る」から、原文そのままに引 用しています。 教科書原文の中から幾つかの例文を引用して音読練習文を作っていま す。下記の例文1〜5の文章はすべて筆者・なだいなだ氏の教科書原文から そのままの引用です。句読点個所もそのままです。 例文の一つ一つを、設問の指示にしたがって順番に音読練習をやってい ただければと思います。 例文1の音読実験 ●例文1の文章 人間を、いろいろな発見につながる、知的なぼうけんにさそうのも、こわ さだし、人間にさまざまな発明をさせるのも、このこわさという感情なの だ。 ●問1 上の例文1の文章を、句点ごと、読点ごと、それら一つ一つで、ていねい に間をあけて、声に出して読んでみましょう。この読み方を、読み声1とし ます。 ●問2 次に例文1の文章を、下記のしるしのしたがって音読してみましょう。 ( )の中はひとつながりに続けて読みます。( )と( )とのあ いだではきちんと間をあけて音読します。この読み方を、読み声2としま す。 (人間を、)(いろいろな発見につながる、知的な冒険にさそうのも、こわ さだし、)(人間にさまざまな発明をさせるのも、このこわさという感情な のだ。) ●荒木のコメント 二つを比較して、いかがですか。読み声1よりも読み声2の方が意味内容が 音声にのっかってより上手な音読になることがお分かりいただけたのではな いかと思います。 読み声2は、読点個所3個を、間をあけないでひとつながりに読んでいま す。「読点ごとに区切って音読」するよりは、「意味内容の区切りで間をあ けて音読」するほうが上手な音読になることがお分りになっていただけたこ とと思います。これが意味内容を音声表現するという「表現よみ」というも のなのです。 短文の場合は、読点で区切って読んでもそれほどでないですが、例文1のよ うに長い一文の場合は読点ごとで区切って読むと、意味内容のつながりがあ ちこちで切れてしまい、意味の全体・まとまりが分らない音読になってしま いがちです。 さて、読み声2に、さらにメリハリをつけてじょうずな音読にしてみましょ う。下記のような区切りで、間をあけて音読してみましょう。 (人間を)(いろいろな発見につながる、知的な冒険にさそうのも、)(こ わさだし、)(人間にさまざまな発明をさせるのも、)(このこわさとい う)( 感情なのだ。) さらなるメリハリのつけ方はこうなります。「……冒険にさそうのも」と持 ち上げて(つまり、クレシェンドに読む)、「こわさだし」と読み下します (つまり、デクレシェンドに読む)。そこでたっぷりと間をあけます。 「……発明をさせるのも」と持ち上げて(つまり、クレシェンドに読む)、 「このこわさという」の「こわさ」部分を強く読んで目立たせ、「感情なの だ」をも強く読んで目立たせて断言・断定するように読み下します。 ここでまとめを言えば、音声表現には、まず区切りの間を考えること、次に テンポ、強弱変化、遅速変化、声量変化、イントネーションなどのメリハリ づけを考えて音読することが重要なことがお分かりになるでしょう。 例文2の音読実験 ●例文2の文章 やみは、それだけで、ぼくたちにこわさを感じさせる。そして、そこが 墓地だったらもっとこわい。というのは、そこに死んだ人たちがうめられて いるのだが、人間には、死んでから自分がどうなるのか、全くわからないか らだ。そして、人間に、自分の知らないことが、こわい感情を起こさせる。 昔の迷信深い人たちが、やみをこわがったことは、今の人間と比べて、ずっ と大きかったにちがいない。 ●問1 上の例文2の文章を、句点ごと、読点ごと、それら一つ一つで、ていねいに 間をあけて、声に出して読んでみましょう。この読み方を、読み声1としま す。 ●問2 次に例文2の文章を、下記のしるしにしたがって音読してみましょう。 ( )の中はひとつながりに続けて読みます。( )と( )とのあ いだではきちんと間をあけて音読します。この読み方を、読み声2としま す。 (やみは、)(それだけで、ぼくたちにこわさを感じさせる。)(そし て、そこが)(墓地だったら)(もっとこわい。)(というのは、)(そこ に死んだ人たちがうめられているのだが、)(人間には、死んでから自分が どうなるのか、)(全くわからないからだ。)(そして、人間に、)(自分 の知らないことが、)(こわい感情を起こさせる。)(昔の迷信深い人たち が、やみをこわがったことは、)(今の人間と比べて、)(ずっと大きかっ たにちがいない。) ●荒木のコメント 二つを比較して、いかがですか。読み声1よりも読み声2の方がより上手な 音声表現になることがお分かりいただけたのではないでしょうか。 読み声2は、読点5個を、間をあけないで、ひとつながりに読んでいます。 また、読点がついてない個所で2箇所の間をあけて読んでもいます。 一つ一つの読点ごとで間をあけて読むと、その文全体の意味内容がばらばら になって聞こえてきます。「読点ごとで区切って音読」するよりは、「意味 内容の区切りで間をあけて音読」するほうが伝えたい内容がよく伝わり、上 手な音読になることがお分かりになるでしょう。これが意味内容の「表現よ み」というものなのです。 さて、読み声2に、さらなるメリハリをつけて、より上手な音読にしてみま しょう。 「もっとこわい。」の「もっと」を、強く読んで目立たせてみよう。 「というのは、」の下で長い間をあけ、「そこに死んだ人がうめられている のだが、人間には、死んでから自分がどうなるのか、全くわからないから だ。」までをひとつながりの意識で読みすすめます。ひとまとまりの具体的 理由が書いてあるからです。ひとつがりの具体的理由は、途中で間をあけた り息を吸ったりしたとしても、途中で降調にして切断する音調にすることな く、ひとつながりにつながる平調の音調にして読みすすめていくようにしま す。 「まったくわからないからだ。」の「全くわからない」を強く読んで目立た せます。「からだ」を軽く読みます。 「ずっと大きかったにちがいない」の「ずっと大きかった」を強く読んで目 立たせます。 「ちがいない」を軽く押さえた読み方にします。 例文3の音読実験 ●例文3の文章 おばけのおそれているのは朝だ。太陽がのぼってきて、明るい光が差 し、地上から暗やみを消してしまうことだ。 おばけは、なぜ夜にだけ出るのだろうかと考えると、答えを出すのがな かなかむずかしいが、どうして昼間に出られないのかと考えると、問題をと くかぎが見つかる。おばけは、明るみに出て、正体がばれるのがこわいの だ。「ゆうれいの正体見たりかれおばな」ということわざがあるのを知って いるだろう。夜、ゆうれいだとこわがったのもが、昼間見たら実はかれすす きだった、ゆうれいの正体なんて、そんなものだということわざなのだ。 ●問1 上の例文3の文章を、句点ごと、読点ごと、それら一つ一つで、ていねい に間をあけて、声に出して読んでみましょう。この読み方を、読み声1とし ます。 ●問2 次に例文3の文章を、下記のしるしにしたがって音読してみましょう。 ( )の中はひとつながりに続けて読みます。( )と( )とのあ いだではきちんと間をあけて音読します。この読み方を、読み声2としま す。 (おばけのおそれているのは)(朝だ。)(太陽がのぼってきて、明るい 光が差し、)(地上から暗やみを消してしまう)(ことだ。) (おばけは、なぜ夜にだけ出るのだろうかと考えると、)(答えを出すの がなかなかむずかしいが、)(どうして昼間に出られないのかと考える と、)(問題をとくか ぎが見つかる。)(おばけは、)(明るみに出て、正体がばれるのが)(こ わいのだ。)(「ゆうれいの正体見たりかれおばな」という)(ことわざが あるのを知っているだろう。)(夜、ゆうれいだとこわがったのもが、) (昼間見たら実はかれすすきだった、)(ゆうれいの正体なんて、そんなも のだという)(ことわざなのだ。) ●荒木のコメント 二つを比較して、いかがですか。読み声1よりも、読み声2の方が意味内容 が音声にのっかってより上手な音読になることがお分かりになったのではな いでしょうか。これが意味内容の「表現よみ」というものなのです。 読み声2は、読点個所4個を間をあけないで、ひとつながりに読んでいま す。また、読点がついてない個所でも5個所の間をあけて読んでいます。 機械的に「読点ごとに区切って音読」するよりは、「意味内容の区切りで間 をあけて音読」するほうがより上手な音読になることがお分かりいただけた のではないでしょうか。 さて、読み声2にさらなるメリハリをつけて、より上手な音声表現にしてみ ましょう。 「朝だ」を強く読んで強調します。「ことだ」も強く読んで強調します。 「答えを出すのがなかなかむずかしいが、」の下でたっぷりとした間をあけ ます。こうしてこの一文の前後を二分して、前半と後半とはひとつながりの 意味内容になる息づかいにして、かっこで区切りつつもひとつながりにして 音声表現します。 「(正体がばれるのが)(こわいのだ。)」の部分を強く読んで強調しま す。 最後の「ことわざなのだ。」部分をはぎれよい発音にして目立たせ断定的な 言い方にします。 例文4の音読実験 ●例文4の文章 きみがいたずらな友達と大ぜいで、おばけやしきを探検するつもりだっ たら、こわさなんかは問題でなくなる。おばけが現れなかったら、きみは きっと失望するにちがいない。その場合でも、きみが友達とはぐれて、ひと りぼっちになったとたん、こわさは、急にもくもくと、心の中にわき上がる だろう。 このように、人間の周りには、こわさを感じさせる条件もあるし、ま た、そのこわさを消していく条件もある。それらが組み合わさって、こわさ が増したり、減ったりしているのだ。 ●問1 上の例文4の文章を、句点ごと、読点ごと、それら一つ一つでていねいに間 をあけて、声に出して読んでみましょう。この読み方を、読み声1としま す。 ●問2 次に例文4の文章を、下記のしるしにしたがって音読してみましょう。 ( )の中はひとつながりに続けて読みます。( )と( )とのあ いだではきちんと間をあけて音読します。この読み方を、読み声2としま す。 (きみが)(いたずらな友達と大ぜいで、おばけやしきを探検するつもり だったら、)(こわさなんかは)(問題でなくなる。)(おばけが現れな かったら、きみはきっと)(失望するにちがいない。)(その場合でも、) (きみが友達とはぐれて、ひとりぼっちになったとたん、)(こわさは、急 にもくもくと、心の中にわき上がるだろう。) (このように、)(人間の周りには、)(こわさを感じさせる条件もあ るし、)(また、そのこわさを消していく条件もある。)(それらが組み合 わさって、)(こわさが増したり、減ったりしているのだ。) ●荒木のコメント 二つを比較して、いかがですか。読み声1よりも、読み声2の方が意味内容 が音声にのっかってより上手な音読になることがお分かりいただけたのでは ないでしょうか。これが意味内容を「表現よみ」するということなのです。 読み声2は、読点個所7個で間をあけないで、ひとつながりに読んでいま す。また、読点がついていない個所でも、5個所の間をあけて読んでいま す。 機械的に「読点ごとに区切って音読」するよりは、「意味内容の区切りで間 をあけて音読」するほうがより上手な音読になることが分ります。 さて、読み声2にさらなるメリハリをつけて、より上手な音声表現にしてみ ましょう。 「きっと」を強めに目立たせて読んで、それを「失望するにちがいない。」 まで引きずっていきます。 「「とたん」を強めに目立たせて読んで、それを「心の中にわき上がるだろ う。」まで引きずっていきます。 「このように」の「こ」を強めに読み出して転調させ、「これまでのことを まとめてひっくるめるとこうなる」という意識を頭に入れつつ、以下「増し たり、減ったりしているのだ。」まで読み下していきます。 その他、重文の条件節と帰結節とを意識して音読してみよう。「これこれこ ういう条件だったら、これこれの結果になる。」という「……だった ら、……になる」の話調・言いぶりを引きずって、それを音声に押し出して 音読することが大切です。 また、下記の二つの並べの構文(文型)にも注目し、意識して音読させてみ よう。 ◎きみがいたずらな友達と大ぜいで、おばけやしきを探検するつもりだっ たら、 ◎こわさなんかは問題でなくなる。 ◎おばけが現れなかったら、 ◎きみはきっと失望するにちがいない。 ◎きみが友達とはぐれて、ひとりぼっちになったとたん、 ◎こわさは、急にもくもくと、心の中にわき上がるだろう。 ◎こわさを感じさせる条件もあるし、 ◎こわさを消していく条件もある。 ◎こわさが増したり ◎減ったり 例文5・自由課題問題 ●例文5の文章 夜でなくても、真っ暗な地下室やどうくつなどの、暗くて何があるかわか らない所もこわいし、また、知った人が一人もいない、見知らぬ土地もなん となくこわい。そして、このこわさに向かい合っているとき、元気を出さ せ、勇気を出させるのが、いっしょにいてくれる自分のよく知った人間だ。 暗やみの中にいるとき、お父さんやお母さんがいっしょにいてくれれば、こ わさが少なくなる。手をにぎっていてもらうか、声をかけていてもらえば、 もっとこわくない。そのことで、信らいのできる人間が、自分のそばにいる ことが、こわさと反対の作用をもっていることが、きみにもわかるだろう。 暗やみがこわいというけれども、ひとりぼっちのさびしさがそのこわさをさ らに増すのだ、ということができる。 ●問1 上の例文5の文章を、句点ごと、読点ごと、それら一つ一つでていねいに間 をあけて、声に出して読んでみましょう。この読み方を、読み声1としま す。 ●問2 ここで、読者の皆さんに課題を出します。 あなたも、例文5の文章に「音読の句読点」のしるしを付けてみましょう。 つまり、音読するときに区切って間をあけて読むところはどこか、意味内容 のつながりから続けて読んだ方がよいところはどこか、区切って間をあけて 読んだ方がよいところはどこか、を探してみましょう。 つまり、下記の例文5の文章に( )のしるしを書き入れてみよう。 ( )の中はひとつながりに続けて読むところです。( )と( ) とのあいだではきちんと間をあけて読むというしるしです。 あなたの考えで、自由に( )を書き入れてみましょう。読み手各人によ って区切り方は違ってくるはずです。それでいいのです。いいかげんなしる しづけでなく、よく考えて、これがベストというしるしを書き入れてくださ い。さあ、鉛筆をもって、どうぞ。 夜でなくても、真っ暗な地下室やどうくつなどの、暗くて何があるかわか らない所もこわいし、また、知った人が一人もいない、見知らぬ土地もなん となくこわい。そして、このこわさに向かい合っているとき、元気を出さ せ、勇気を出させるのが、いっしょにいてくれる自分のよく知った人間だ。 暗やみの中にいるとき、お父さんやお母さんがいっしょにいてくれれば、こ わさが少なくなる。手をにぎっていてもらうか、声をかけていてもらえば、 もっとこわくない。そのことで、信らいのできる人間が、自分のそばにいる ことが、こわさと反対の作用をもっていることが、きみにもわかるだろう。 暗やみがこわいというけれども、ひとりぼっちのさびしさがそのこわさをさ らに増すのだ、ということができる。 ●問3 ( )のしるしだけでなく、どの語句を、どんなメリハリを付けて読むと いいかも、考えましょう。 強調するところ、強弱変化、遅速変化、声量変化、イントネーション、プロ ミネンス、転調、ひとりごと、などのメリハリづけも考えてみましょう。 例文5の文章の、どの個所を、どんなメリハリにして音声表現するとよいで しょうか。 ●荒木のコメント みなさんは、どのように( )を付けたでしょうか。みなさん一人一人 ばらばらであると思われます。しかし、全くのばらばらということではない と考えます。案外に、みなさんの( )の付け方は類似しているのではな いでしょうか。みなさんが集まって話し合ったとしたら、殆んどが一致でき る個所が多いのではないかと思います。 荒木の児童たちへの記号づけ指導の体験からも、そのことが言えます。 子ども達に記号づけの指導をします。記号にはこんな種類がありますよ。こ こは、こういうメリハリで音読したほうがいいね。この記号を、文章のそば に書き入れておきましょう。という指示や言葉を与えます。 初めは、記号づけのやり方を、先生が全児童の前でやってみせます。 次に、「では、みなさんが自分一人の力で音読記号を教科書の文章に書き 入れてみよう。」と誘いかけます。 記号づけ初期は、児童ひとり一人はばらばらな付け方です。ひとり一人の 違いが大きいです。 しかし、音読指導を継続し、声に出す読み方に慣れてくると、ここの文章 内容はこんなふうにメリハリを付けて音読すればよい、が分ってきます。 記号づけや読み声練習を重ね、これに慣れてくると、児童ひとり一人の記 号づけは案外に類似・一致してくるようになります。 児童たちから発表される記号づけ個所や内容は、多くの一致点がみられ るようになります。不思議なほど類似・一致が出てきます。音読指導が3、 4か月も継続して指導すれば、児童ひとり一人からの音読記号の発表は各人 で大きく違う個所はぐっと少なくなります。 「記号づけ指導の方法・工夫、アイデア」については、拙著『表現よみ指 導のアイデア集』(民衆社)に詳述しています。詳しくは、そちらをご覧く ださい。 「不思議なほど類似・一致が出てくる」については、拙著『群読指導入 門』(民衆社)にも詳述しています。付録CDには、記号づけ発表と学級共 通の記号づけの実際の児童達の話し合い授業録音が収録されています。荒木 級の「学級共通の記号づけをしている話し合い授業録音。それの一斉音読練 習をしている読み声授業録音」を実際に耳にすることができます。詳しく は、そちらをどうぞ。 一般的な区切り方と思われる一つの例を、下記に書きます。 (夜でなくても、)(真っ暗な地下室やどうくつなどの、暗くて何がある かわからない所もこわいし、)(また、知った人が一人もいない、見知らぬ 土地もなんとなくこわい。)(そして、このこわさに向かい合っていると き、)(元気を出させ、勇気を出させるのが、いっしょにいてくれる自分の よく知った人間だ。)(暗やみの中にいるとき、)(お父さんやお母さんが いっしょにいてくれれば、こわさが少なくなる。)(手をにぎっていてもら うか、声をかけていてもらえば、もっとこわくない。)(そのことで、信ら いのできる人間が、自分のそばにいることが、)(こわさと反対の作用を もっていることが、)(きみにもわかるだろう。)(暗やみがこわいという けれども、)(ひとりぼっちのさびしさがそのこわさをさらに増すのだ、と いうことができる。) 上記は、意味内容での区切りで、一般的なと思われる区切り方だと言えまし ょう。普通に考えられる一般的な区切り方、基本となる区切り方、優等生の 区切り方だとも言えましょう。多少の違いはあっても、普通はこんな区切り 方になるのではないでしょうか。誰が区切ってもたいていはこう区切るだろ うと思われる一般的な区切り方と言えましょう。 上記の区切りでは、意味内容のつながりは明確になりますが、味も素っ気も ない音読になりがちです。ひとつながりの文章部分もかなり長くて、一息で 読み切れない部分もあります。筆者(語り手)の表現意図の強調点とかイン トネーションとかの、生きた語り口・音調・息づかい、語り癖や個性がもっ と読み声に出てくるようにしたいものです。 では、荒木の記号づけはどうなんだ、とご質問があるでしょう。 例文5への荒木の記号づけは下記のようになります。荒木の記号づけは、 一案、二案、三案ぐらいは考えられます。下記は、その中の一つを紹介して います。 みなさんの記号づけと比較してみてください。そんなに大きな違いはないで しょう。多少の違いは当然ですが。 (夜でなくても、)(真っ暗な地下室やどうくつなどの、暗くて何がある かわからない所も)(こわいし、)(また、)(知った人が一人もいない、 見知らぬ土地も)(なんとなくこわい。)(そして、)(このこわさに向か い合っているとき、)(元気を出させ、勇気を出させるのが、)(いっしょ にいてくれる自分のよく知った人間だ。)(暗やみの中にいるとき、お父さ んやお母さんがいっしょにいてくれれば、)(こわさが少なくなる。)(手 をにぎっていてもらうか、声をかけていてもらえば、)(もっとこわくな い。)(そのことで、信らいのできる人間が、自分のそばにいることが、) (こわさと反対の作用をもっていることが、)(きみにもわかるだろう。) (暗やみがこわいというけれども、ひとりぼっちのさびしさが)(そのこわ さをさらに増すのだ、と)(いうことができる。) さらなるメリハリうを付けてみましょう。 「(なんとなくこわい。)」を「(なんとなく)(こわい)」へ。区切るこ とで「こわい」が強調されます。 「(いっしょにいてくれる自分をよく知った人間だ。)」を「(いっしょに いてくれる自分をよく知った)(人間だ。)」へ。区切ることで「人間だ」 が強調されます。 「(もっとこわくない)」を「(もっと)(こわくない)」へ。「もっと」 と「こわくない」との二つを強めの声立てにして強調するようになります。 「(きみにもわかるだろう)」を「(きみにも)(わかるだろう。)」へ。 「きみにも」と「わかるだろう」の二つを強めの声立てにして強調します。 このように区切って、( )と( )とのあいだではもったいぶった間 をもたせて、聞き手を意識して強調した語りかけ音調にして音声表現しま す。 もう一個。「信らいのできる人間が、自分のそばにいることが」と「こわさ と反対に作用をもっていることが」との二個の「……ことが」を、同等に、 対等に並んで更なる言い換えの意味内容として、ふたつが並ぶように音声表 現します。 後記 句読点の音声表現のしかたについては、本ホームページのトップページ 「表現よみの授業入門」から「句読点の音声表現のしかた」をクリックして ください。 そこには、本稿「文章の句読点と、音読の句読点」の内容と関連してい る内容が書かれています。そちらも参考にしましょう。 トップページへ戻る |
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