音読授業を創る そのA面とB面と          07・6・2記




「はたはたのうた」の音読授業をデザインする




●詩「はたはたのうた」(室生犀星)の掲載教科書…………………教出5下




           はたはたのうた
                   室生犀星

         はたはたといふさかな、
         うすべにいろのはたはた、
         はたはたがとれる日は
         はたはた雲といふ雲があらはれる。
         はたはたやいてたべるのは
         北国のこどものごちそうなり。
         はたはたみれば
         母をおもふも
         冬のならひなり。



         
作者(室生犀星)について


室生犀星記念館のホームページ
http://www.city.kanazawa.ishikawa.jp/bunho/saisei/

室生犀星の生涯について
http://www.designroomrune.com/magome/s/saisei/saisei.html

そのほか、室生犀星についてのウェブ検索がたくさんあります。


「はたはた」という魚について
http://www.asahi-net.or.jp/~jf3t-sgwr/
菅原徳蔵氏のHP「山釣り紀行」が出ます。
左側のタテ列「自然・人・文化」をクリックして、
「秋田・食の民俗シリーズ」のすぐ下、
男鹿市北浦「初冬、ハタハタ来たどぉー」
男鹿市北浦「今年も…ハタハタきたどぉー」の二つをクリックしましょう。

http://www.shunmaga.jp/zukan/gyokairui/hatahata/hatahata.htm

そのほか、「はたはた」でウェブ検索すると、たくさんのサイトがありま
す。



             
教材分析


  はじめに全文の音読をします。微音読で繰り返し音読をさせます。
  次に読んだ感想を発表します。様子や気持ちで、感じたこと、分かって
きたこと、思ったこと、浮かんできたこと、そして分からないことなどを発
表させます。事前にそれらについての書き込みをしてもよいでしょう。
  自由に発表させます。教師は話し合いの柱の大体の見当をつけておきま
しょう。どんなことを話し合えばよいか、その内容や柱の見当を持って授業
に臨みましょう。
  下記のようなことが話し合われるでしょう。


(1)古いことばづかい・古い言い方がある
  旧仮名遣い(歴史的仮名遣い)があります。「いふ」「あらはれる」
「おもふ」「ならひ」がそれです。現代仮名遣いでは「いう」「あらわれ
る」「おもう」「ならい」という表記になることを確認します。
  現代かなづかいになったのは、昭和21年11月からです。それ以前は
旧かなづかいでした。


(2)題名について
  題名は「はたはたのうた」です。ここでは「はたはた」と「うた」につ
いて確認しておくことが必要です。
  子ども達は「はたはた」についてどれぐらいの知識を持っているでしょ
うか。実際に食べた経験があるでしょうか。「はたはた」の魚を知らないこ
とには、この詩の学習が始まりません。魚屋さんで売っていればしめたもの
です。一匹だけでも実物を児童に示してやれば、この詩の理解が容易になり
ます。現在、ウェブサイトでも「はたはた」で検索すれば「はたはた」のカ
ラー写真入りの記事があります。学校図書館から探した図鑑資料を見せるの
もよいでしょう。
  「はたはたのうた」の「うた」についても話し合う必要があります。国
語辞書で「うた」を引くと「歌。唄。詩」の漢字が当てて書いてあります。
ひらがな書きの「うた」には、大体は三つの意味内容があるようです。
  「歌」は「歌を歌う」の「歌」です。
  「唄」は「こもり唄」や「わらべ唄」などとして使われますが、「歌を
歌う」の「歌」と大体が似た使われ方をすることもあります。
  「詩」と漢字で書いて「うた」と読ませる場合もあります。古代の和
歌、旋頭歌、長歌、歌謡、それから近代の短歌、近代詩などを総称して
「うた」と呼ぶことがあります。「詩」と書いて「うた」と振り仮名をつけ
ている活字も目にします。


(3)「はたはた」についての知識
  広辞苑(岩波書店)より
  ハタハタ科の海産の硬骨魚。口は大きく体には鱗がない。背部は黄白色
で、褐色の流紋がる。体長15センチメートル内外。北日本のやや深海に産
し、11月から12月産卵のため沿岸に群遊するときに漁獲。その季節によ
く雷鳴があるので、この名があり、カミナリウオともいう。「しょっつるな
べ」の材料とし、また卵は「ぶりこ」と呼ばれ、賞味。

  平凡社百科事典「マイペディア」より
  ハタハタ科の魚。地方名はカタハ、シロハタ、ハタなど。全長22セン
チ。体には鱗がない。北洋〜東北地方の太平洋岸、日本海に分布。普通水深
150〜400メートルの砂泥底にすむが、初冬の産卵期には水深2メート
ルぐらいの海藻の多い沿岸に来遊。秋田県、山形県の名産だが、山陰地方で
も多量にとれる。煮付け、塩焼き、酒粕漬け、干物などにする。卵は「ぶり
こ」として喜ばれる。


(4)うすべにいろ
  大辞林(三省堂)によると、「べにいろ」で引くと「紅花の花びらから
採った鮮やかな赤い色素。また、その色」とあります。ですから、「うすべ
にいろ」とは「薄い、鮮やかな赤色」ということでしょう。なにはともあれ
「はたはた」の実物を見ることが先決です。


(5)はたはた雲
 「はたはた雲」とは、どんな雲なんでしょうか。いかなる雲のことをさす
のでしょうか。
  上記した菅原徳蔵氏のHP「初冬ハタハタ来たどぉー男鹿市北浦」に
は、以下ような記事が書いてあります。「はたはた雲」に関係がある記事を
荒木が太字にしています。以下の引用文を読むと、「はたはた雲」とはの結
論として次のことが分かります。
(イ)「はたはた」を漢字で「魚へん」に「雷」または「魚へん」に「神」
   と書く、そのわけ。「はたはた」の名前の由来が分かります。
(ロ)初冬、鉛色の空に雷鳴がとどろき、みぞれ混じりの寒風が吹き荒れる
   頃、大波にのってハタハタの大群がおしよせてくる。「初冬、鉛色の
   空と雷鳴」これが「はたはた雲」だと分かります。「はたはた雲」と
は「初冬、はたはた漁を告知する雷雲、積乱雲」のことだと分かります。

ーーーーー引用開始ーーーーー
  11月下旬〜12月、鉛色の空に雷鳴がとどろき、みぞれ混じりの寒風
が吹
き荒れる頃、大波に乗ってハタハタの大群が産卵に寄って来る。
年の北浦漁港では、12月1日夜に先発隊、12月4日夕方には本隊が接岸。シケ
の日が多かったが、季節ハタハタ漁は豊漁で、しかも20cmを超える大型が多
かった・・・「木枯らし吹きて 稲妻光る/舟人勇み 躍るハタハタ・・・」
(「男鹿に寄せて」大場直利)・・・

  ▼鰰・ハタハタ・・・「鰰という魚は、冬の空かき曇り、海の上荒れて荒
れて、なる神などすれば、喜びて、群れけるぞ。しかるゆえにや、世に、は
たはた神とう・・・文字の姿も魚と神とは並びたり」(菅江真澄記)

  秋田の初冬、雷が鳴る頃にハタハタが産卵のため沿岸に押し寄せる。こ
れを見た人は、ハタハタは「雷の魚」すなわち「はたたがみうお」に違いな
いと考えた。いつの間にか、それが「ハタハタ」になったと言われている。
漢字では、魚へんに神、または雷と表現され、名前の由来の名残をとどめて
いる。

 「ハタハタの町北浦と、言うのは昔のことで今は、ほとんど取れません。
むかしは、ハタハタがありあまるほど取れて、1箱50円とかだったそうで
す。ハタハタは、カミナリが鳴るといっぱい取れるという言い伝えがあり
ました。

  ハタハタは、漢字で「鰰」・・・つまり「神の魚」という意味がある。
かつては、一年間で獲れる魚の半分以上をハタハタが占め、11月中旬から12
月中旬のわずか1ヶ月だけの収入で一年間暮らせた人もいた。だから漁師に
とってハタハタは、神様からの贈り物と考えた。現在は、「年に一度の冬の
ボーナス」みたいなものとも言う。

  シケで荒れると大漁になるので無理して、死んだ人たちもおりました。
また37,8年頃には、ワッカでのすくい網も随分使われて、女や子どもでも結
構な漁があり、私もトラックに積んで農村部落へ何度となく売りに出掛け、
ハタハタがないと年越しが出来ないもののようにみんな買ってくれました」
(菊地琴・八森町網元夫人)
ーーーーー引用終了ーーーーーー


 (6)「はたはたのとれる日」
  はたはたは、常時漁獲できるというわけではありません。最近は乱獲の
せいで「はたはた」の生息量が極端に少なくなり、漁獲できる期間や漁獲量
が決まっているようです。漁獲時期についは、最終行の「冬のならい」と関
連づけて話し合う必要があります。

  上記した菅原徳蔵氏のHPの記事が参考になります。「初冬ハタハタ来
たぞぉー男鹿市北浦」と「今年もハタハタ来たどぉー男鹿市北浦」には、次
のような記事が書いてあります。

ーーーーー引用開始ーーーーー
  ハタハタの漁獲量は、昭和38年〜昭和50年まで1万トンを越えていた
が、昭和51年以降激減、平成3年には72トンまで落ち込んだ。その原因は、
海の環境の変化、乱獲、産卵する藻場の減少の三つ。平成4年、漁業者は3年
間の自主禁漁に踏切った。さらに、産卵場の造成、漁網を利用した増殖、種
苗放流など、「育てる漁業」に大転換した。

 3年間の禁漁が明けた平成7年以降、漁業者間の自主協定として漁獲枠を
設定。「獲りながら増やす」には、「資源量の5割」が上限というもの。そ
のかいあって、漁獲量は着実に増加。2003年には、2,969トンで、対前年比
40.6%増。生産額は、11億2,600万円で全国一に返り咲いた。まさに「ハタハ
タの本場復活」と言える。

 ーーーーー引用終了ーーーーー


(7)「北国のこどものごちそうなり」
  「北国」とは、通常は北海道、東北地方をさしますが、室生犀星は子ど
も時代は金沢市で過ごしていますので、ここでの「北国」とは北陸地方まで
含めて「北国」といっていると考えるべきでしょう。
  「子どものごちそうなり」にはどんな意味内容が含まれているでしょう
か。学級児童たちに「子どものごちそう」はどんな食品なのでしょうか、と
問いかけてみましょう。
  「ごちそう」の言葉にある語感には普段の、いつも食べている料理物で
はなくて、「豪華な食べ物。普段では食べない、上等な高価な食べ物」とい
う意味内容が含まれています。「はたはた」はそんな食べ物だったと言うこ
とが分かります。


(8)「はたはたみれば母をおもふ」
  語り手(室生犀星と考えてもよい)は、子ども時代に母がはたはたを焼
いて食べさせてくれたことを思い出し、さらに子ども時代の母についてあれ
これと思い出しているのでしょう。子ども時代の母をあれこれと回想し、な
つかしく思い、故郷の郷愁にひたっているのでしょう。
  室生犀星と母親との関係についてはいろいろ書くことがありますが、犀
星の個人的情報を知らなくても、この詩だけで十分に鑑賞できる詩だと思い
ます。また、そうでなければならないと思います。つまり、語り手を犀星と
直結させないで、広義の語り手としてこの詩を解釈してよいでしょう。
  室生犀星と母との個人的情報をちょっとだけ書いてみよう。
  犀星は父(64歳)と、その家の女中(33歳)との間に生まれた私生
児です。出生して七日後、まだ命名もしないうちに実母(女中)から離され、
他家に貰い子として預けられました。実母(女中)は失踪し、犀星は実母の
顔も、名前も知らないで死んでいったと言われています。このことは犀星の
生涯に大きな影響を与えました。実母への屈折した切ない慕情と愛着、つき
とめようのない非難、捻じ曲げられた歪んだ実母へ思慕の情が生まれ、詩心
にも大きく影響を与えています。


(9)「冬のならひ」
  「ならい」は「習い事」とか「習い物」とかの「習い」です。国語辞書
で「ならい」を引くと「慣。習い。倣い」の漢字が当てられています。ここ
での「ならい」は「しきたり。習慣。風習」というような意味内容でしょ
う。「はたはた」の「冬のならい」は、今ではなつかしい思い出、郷愁、追
憶となって書かれています。


            
音声表現のしかた


  前半は、語り手が、はたはたという魚について説明して、語って聞かせ
ています。誰かに語って聞かせているつもりで音声表現していくとよいで
しょう。

  一行目の「はたはたといふさかな」を、ゆっくりと音声表現して、「は
たはた」という魚の話題提示をするつもりで、聞かせるように「はたはた」
を目立たせて音声表現していくとよいでしょう。

  二行目の「うすべにいろの・はたはた」の「うすべにいろの」を強く高
く目立たせて読んで、強調して音声表現するとよいでしょう。

  三行目と四行目とは、文意ではひとつながりになっています。ひとつな
がりの意識で音声表現していきます。「はたはたがとれる日は / はたはた
雲 / といふ・雲が / あ・ら・は・れ・る //」のような区切りとテンポで
音声表現してみるのも一つの読み方でしょう。

  五行目と六行目とは、文意ではひとつながりです。ひとつながりに意識
で音声表現していきましょう。「はたはた・やいて・たべるのは / 北国の
・こどもの・ごちそう・なり //」と区切って、全体を北国の子どものご馳
走であることを知らせるつもりで音声表現するとよいでしょう。

  7行目、8行目、9行目は、文意ではひとつながりです。「はたはた・
みれば / 母を・お・も・ふ・も / 冬の・な・ら・ひ・な・り /」と区切っ
て、子ども時代を思い出し、母のことを思い出して語っているように音声表
現していきます。そうした郷愁にひたっている感慨深さの感情が音声に表現
できたらすばらしいです。

  子ども時代にはたはたを食べたこと、子ども時代そうした生活習慣や風
習があったことを思い出し、子ども時代の出来事をなつかしく思い出してい
ます。なつかしい思い出に感慨深くひたっている気持ちになって音声表現し
ていくようにします。


              
参考資料


  最近のハタハタ漁の現状についての新聞記事がありました。
  東京新聞・2007年11月26日朝刊に掲載してあった記事です。
筆者は、村田孝嗣(ひろさき環境パートナーシップ21副代表)さんです。

ーーーーー引用開始ーーーーーーーー

           ハタハタ復活の訳は

  この何年か、日本海でハタハタの豊漁が続き、地元の人たちを驚かせて
いる。ミゾレ降る初冬に、産卵のために沿岸に寄ってきたハタハタの白子
で、海が白く濁るのを何十年ぶりかで見たと、地元の猟師たちが喜んでいた。
実際、昭和50年を境に、青森・秋田のハタハタは、ぱたりと捕れなくなっ
ていた。当時、底引き網漁が手当たりしだいに乱獲したことが原因だと、漁
協では口をそろえて話していた。
  しかし、昭和30年代半ばから始まった拡大造林計画で、国有林の天然
林伐採量が増え、ブナ林から流れ出る河川の水位が低下した。また、まとま
った降水の後には、決まって泥で川が濁るようになっていた。青森県鯵ヶ沢
町の猟師は、沿岸の海藻類が泥をかぶって枯れ、海藻採りができないと話し
てくれた。
  確かに、海に流れ出た泥水は拡散されず、対馬暖流に押し上げられるよ
うに沿岸沿いに北上していく。さらに、牛の与える冬場の餌に、打ち上げら
れた海藻を乾燥させて与えたものだが、今はその海藻が全く打ち上げられな
くなったと嘆く農家の人もいた。
  生き物が減少することの原因は単純ではないが、繁殖環境が壊されるこ
との影響が最も大きいことは自明のことである。ハタハタは日本海を回遊し
ながら成長し、産卵期には沿岸に押し寄せて海藻に産卵する。その卵を産み
付けるべき海藻が枯れてなくなっていたとしたら、ハタハタの繁殖に致命的
な影響を受けるはずである。
  林野庁の天然林施行が見直され伐採量が激減した今、河川や沿岸の水環
境は少しずつ改善されてきている。また、秋田県が早々とハタハタの禁猟措
置をとってきたことも、ハタハタ回復に大きな力になったと思う。
  大事なことは、ハタハタ回復の原因を禁猟の成果と一元的に考えないこ
とだろう。森、川、海のつながりから、ハタハタ漁の今後の推移を興味深く
見守りたいものである。

ーーーーーー引用終了ーーーーーーー


           トップページへ戻る