音読授業を創る そのA面とB面と         07・6・2記




 「ぼくにはぼくの道がある」の音読授業をデザインする




●詩「ぼくにはぼくの道がある」(小海永二)の掲載教科書………学図5上



           ぼくにはぼくの道がある
                   小海永二

          わからんちんなど
          かってにせい
          ぼくにはぼくの道がある
          ぼくは自分を信じてる

          わからんちんなど
          相手にせん
          ぼくはひとりで道を行く
          ぼくは自分を大事にしたい

          わからんちんなど
          ほっておけ
          わかってくれる人がいる
          ぼくはそれで十分だ



        
 作者(小海永二)について


  1931年、東京都生まれ。東京大学仏文科卒。詩人、評論家。ミ
ショー、ロルカを中心にフランス現代詩の翻訳や評論、日本近代詩、国語教
育と幅広い活躍を行う。現代詩の鑑賞やアンソロジーの編著も多い。
横浜国立大学名誉教授。
  詩集「軽い時代の暗い歌」「峠」
  評論「近代詩から現代詩へ」「日本戦後詩の展望」
  その他、児童詩集や絵本の編集も多い。


             
教材分析


  この詩は、一読してすぐに理解できます。「わからんちん」は、この詩
で唯一の難解語句かもしれませんが、前後の文脈から容易に推察できるで
しょう。「わからん奴」「わからん人間」「わからず屋」という意味だと
推察できるでしょう。相手を唾棄すべき人間と評価した、相手を侮蔑し
た語感をもつ言葉です。

  この詩の語り手は、すごい自信家です。ゆるぎない信念をもっていま
す。強情ともいえるほどの強い意志をもっています。

  この詩は、五年生教材です。この詩は高学年向きの詩です。低学年や中
学年には向きません。下記のような理由からです。
  5、6年生の身体的、精神的な発達段階を考えてみましょう。高学年に
なると、低・中学年と違って完全に親から自立した考え方や行動をとりはじ
めます。自分の心の中を内省的に思考するようになります。友だちとの付き
合いに悩みを抱くようになります。自分とは何か、他人とどう付き合ってい
けばよいか、自分の実力(能力)の程度が分かってきます。
  親からのトップダウンの指示には反発をします。自我が芽生えて、自分
にできること、できないこと、将来の進路などをぼんやりと見定めつつ、あ
れこれと不安や悩みを持って行動していくようになります。自分はどう行動
していくべきか、自分の行動に十分な自信や信念をもっているわけではあり
ません。悩める不安定な揺れを抱きながら内面生活を送っている時期です。

  題名は「ぼくにはぼくの道がある」です。第一連の最後には「ぼくは自
分を信じてる」とあります。第二連の最後には「ぼくは自分を大事にした
い」とあります。第三連の最後には「ぼくはそれで十分だ」とあります。な
んという自信家でしょう。他人はどうでもよく、他人に気兼ねなどしない。
ぼくは自分の信じるところを迷うことなく前進するだけだ、と確信を持って
宣言しています。
  子ども達に、この詩を読んだ感想文を書かせてみたらどうだろう。自分
の現実の経験や内面生活と対比して、これらの詩内容とからませて内省的な
感想文を書かせてみたらどうだろう。自分の不安定な揺れている内面生活を
理性的に整理することができます。

  この詩は高学年生には、元気が与えられ、強く逞しく生きていくパワー
がもらえる自分への応援歌とも言えるでしょう。


           
 音声表現のしかた


  各連の一行目と二行目とは、「わからんちん」を軽蔑し蔑視している気
持ちをこめて、そんな口ぶり・言いぶり、そんな顔の表情まで作って音声表
現してみましょう。
  各連の三行目と四行目とは、自信たっぷりな、自己過信に満ちた、強い
信念にあふれた、堂々とした言いぶりの音声表現にするとよいでしょう。
「他人は他人、自分は自分だ。自分はこうするだけだ。わが道を進むだけ
だ」と自信と信念に満ちた言い方で、しゃべり方で、言葉にパワーをこめ
て、自信家のような口ぶりで堂々と音声表現していくようにします。

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