音読授業を創る そのA面とB面と       07・5・3記




「あなたの心のなかに」音読授業をデザインする




●詩「あなたの心のなかに」(工藤直子)の掲載教科書……………東書5下




           あなたの心のなかに
                  工藤 直子


           あなたの心のなかに
           海がある
           昔々から浮かびつづけた
           海がある
           あなたが うたうと
           魚たちも うたう
           あなたが わらうと
           魚たちも わらう

           あなたが 美しいものを
           みつめるとき
           海は あふれて
           優しい涙になる



        
        
作者(工藤直子)について 


  詩人、児童文学作家。昭和10年、台湾生まれ。本名・松本直子。お茶
の水女子大学中国文学科卒。博報堂に勤め、女性初のコピーライターとして
活躍するが、昭和40年退職しフリーとなる。ブラジル、フランス日本国内
を放浪する。
  日本児童文学者協会新人賞「てつがくのライオン」
  児童福祉文化賞「のはらうた」
  サンケイ児童出版文化賞「ともだちは海のにおい」
  芸術選奨新人賞「ともだちは海のにおい」


            
教材分析


  はじめに題名よみをします。題名は「あなたの心のなかに」です。「あ
なたの心のなかに」「何がどうだ」と言っているのでしょう。何かが「あ
る。住んでいる。生きている」ということだろう、の大体は予想がつきま
す。「何が、ある、住んでいる、生きている」と言っているのでしょうか。
  題名よみで子どもたちにさまざまに予想をさせてみましょう。詩本文を
既に読んでいる子もいるでしょう。本文を読んでいる子には、本文を読む前
にどんなことを予想したか・考えたかを語らせましょう。

  次に詩本文の解釈の話し合いに移ります。題名よみから受け継いだ内容
で話し合っていきます。
  「あなたの心のなかに海がある。昔々から浮かびつづけた海がある」と
書いてあります。「海」とは何でしょうか。いろいろな解釈ができそうで
す。いろいろな解釈があってよいでしょう。詩本文の言葉全体と照らし合わ
せてぴったりな「海」とは何かについて語り合っていきましょう。
  いろいろな解釈があってよいでしょう。児童各人がそれぞれの解釈を持
った内容で、その解釈の思いで、一人一人が音声表現していくようにしまし
ょう。
  音声表現のしかたは、この詩をどう解釈するか、解釈のありようでいろ
いろと変化してきます。この詩を、荒木は荒木なりの解釈でもって音声表現
していくことにします。自分なりの解釈をしたならば、その解釈で自信を持
って音声表現していくようにします。その解釈での思いをこめて音声表現し
ていくようにします。

  「あなた(人間でもよい)が歌うと、海に生きる魚たちも歌い、あなた
(人間)が笑うと、海に生きる魚たちも笑う。あなた(人間)が美しいもの
をみつめると、海は優しい涙にあふれる。」と書いてあります。
  どうも「海」とは、人類(日本人でもよい)の歴史が築きあげてきた貴
い遺産、それを一人一人が生活体験の中で身につけ、受け継いできた、人
類(日本人)の知的かつ情緒的な感性、喜怒哀楽の価値感情、豊かなセンス
(分別、良識、感受性)といったようなもの、これを、「海」と言っている
ように思われますが、どうなんでしょう。
  人類(日本人)の誰でもが持っている、受け継いできた、身につけてき
た素朴な心情、そうした豊饒な高貴な美的センスや価値感情や知的かつ情緒
的な感性、これを「海」と言っているように、荒木には思われます。
  これらを日常的な、ごくありふれた生活感情にしていこうよと、この詩
は主張しているように思われます。この読みとりは、深読み取りで、そこま
で考えないほうがよいとも思われますが、書いてしまいました。
  「あなたが美しいものをみつめるとき」とは、「あなたの心の中に存在
する美しいものと交わったり、触れ合ったり、行動し合ったり」するとき、
ということでしう。そうすれば「あなたの心は、他者の心は、揺さぶられ、
うるおい、優しさの涙や感動の涙でいっぱいとなり、あなたの心の海(生き
てる世界)は一層の豊かさを増していくことでしょう」と語りかけて(主張
して)いるように思われます。


           
音声表現のしかた


  この詩は、語り手がいて、語り手が語って聞かせています。語り手はこ
の詩を作った人・工藤直子さんとは限りませんが、工藤直子さんと特定し
て、工藤直子さんになったつもりで語り聞かせ音調にして読んでいってもよ
いでしょう。
  語る相手の「あなた」は、ここでは誰ということない不特定な相手な
のでしょう。が、五年生教科書の教材ですから五年生児童の中から特定の誰
かを選んで、その子に向かって語りかけて読むと、つまり相手意識をはっき
りさせて読むと、音声表現がしやすくなるでしょう。
  急がずにゆったりと読みましょう。落ち着いた声でたっぷりと気持ちを
こめて読みましょう。愛情に満ちた優しい声で読みましょう。沈んだ声でな
く、明るく輝きのあるで声で読みましょう。元気づける意識で、はずんだ声
で読んでいきましょう。あなたの心の中には、すばらしいもの、心の豊か
さ、美しいものがいっぱいあるのです、素敵な心の持ち主ですと、教えてい
る・元気づけている気持ちをこめて音声表現していきましょう。

  第一連は、2行ずつがひとつながりになっています。
「あなたの/ 心のなかに// 海が、あ、る///」
「昔々から/ 浮かび/ つづけた// 海が、あ、る///」
「あなたが/ うたうと// さかなたちも/ う、た、う///」
「あなたが/ わらうと// さかなたちも/ わ、ら、う///」
  第一連の5、6行と7、8行とは対句になっています。並列表現で、同
一文型をたみかけて追いかけ、重ねていって、対比して際立たせ、強調した
表現効果とリズムとを与えて音声表現していきましょう。

  第二連は全4行全体がひとつながりになっています。
「あなたが/ 美しいものを/ み、つ、め、る、と、き///
  うみは/ あ、ふ、れ、て// やさしい/ な、み、だ、に、な、る///」
 うみは/ あふれて// や、さ、し、い/ な、み、だ、に、な、る///」
  最後尾の「な、み、だ、に、な、る。」は、だんだんゆっくりと、し
だいに声量を落として下げていき、思いを残すような音声表現にしていきま
しょう。

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