音読授業を創る  そのA面とB面と    07・4・20記




  詩「草の実」の音読授業をデザインする




●詩「草の実」(羽曽部忠)の掲載教科書…………………………大書4上



              草の実 
                   羽曽部忠

          秋草のなかをかけてきたから
          ポチのからだにも
          ぼくのからだにも
          草の実が
          いっぱいついた。

          庭ではたいたら
          おばあさんが
          来年
          そこに
          草がはえるよ
          と、言った。
              (以下省略)




         
作者(羽曽部忠)について


  羽曽部忠(はそべただし) 1924年、福島県生まれ。福島師範学校
卒。詩人、作詞家。長野県に移住し、小中学校の教師となる。のち、上京
し、小学校教師のかたわら詩や童話を発表する。与田準一、まど・みちおを
師と仰ぐ。少年詩誌「ぎんやんま」を創刊。原田直友らとともに編集同人と
して若手詩人を育てる。作風に郷土性・風土性を重視し、自然と人間の交流
共存をテーマにしたものが多い。また、陶芸、絵画にも造詣が深く、しばし
ば個展などをひらく。
  日教組文学賞、福島自由詩人賞、新美南吉児童文学賞など受賞。「子ど
もと詩」文学会、本郷文化土の会、会津ペンクラブ、日本音楽著作権協会会
員。
  「お誕生会のアイデアとお話」「お話の森3・4月」「けやきの空」
「ことりとふうせん」「ぜいたくな空」「ションベン小僧」「幼児のための
ポケット童話集」など。


             
教材分析


  草の実とは、衣服にくっつく草の実ですから、多分、「オナモミ」のこ
とでしょう。
  オナモミは、日本全国の山地、道端、荒地、野原などに自生していま
す。夏に黄色い花をつけ、秋になると、トゲのある2〜3cmの実となりま
す。農山村の荒地や野原を歩くと、たくさん衣服にくっついてきます。特に
ズボンに多くくっついてきます。手で衣服やズボンをはたいてもなかなか
落っこちません。
  農山村の子ども達は、くっついたオナモミを手でむしりとり、他人の衣
服をめがけてダーツのように投げつけて遊びます。オナモミは「ひっつき
虫」とか「くっつき虫」とか呼ばれます。自力で種子散布せず、動物の毛や
人間の衣服にくっついて広がる動物散布形式の植物の実です。
  この詩は、4連で構成されています。各連の行数がばらばらで、定型詩
にはなっていません。難語句もなく、一読すればすぐに理解できる詩内容と
なっています。物語文のようなストリーがある詩で、全4連は起承転結の構
成になっています。
  描かれている場所は、農山漁村の田舎です。季節は、秋です。少年「ぼ
く」が登場します。少年の家の庭には、ブドウ棚やバラの木が植えてあると
書いています。庭は広く、雑草が生えているようです。
  少年はおばあさんが同居しています。なので、3,4世代が同居してい
る大家族のようです。犬が「ポチ」という名前です。「ポチ「という名前か
ら、都会人が飼っている愛玩動物(ペット)とは違います。チワワとかプー
ドルとは違うようです。現在の都会っ子にはこんな田舎の生活(様子)は、
ちょっと理解できないのではないでしょうか。


           
音声表現のしかた


語り手をはっきりとさせましょう。

  この詩の語り手は誰でしょうか。語り手は、少年「ぼく」です。年齢
は、この教科書の読者である4年生ぐらいの少年のように考えられます。子
ども達は、この詩の語り手「ぼく」の気持ちに容易に入り込んで読み進める
ことでしょう。少年「ぼく」に同化して読み進めていくことになるでしょ
う。少年「ぼく」の気持ちになって・入り込んで音声表現していくことで
しょう。
  この詩は、少年「ぼく」の目や気持ちをとおして描写されています。こ
の詩全体は、少年のひとり言とか心内語といってよいぐらいに少年の心の中
の言葉として描かれています。少年「ぼく」の気持ちがストレートに、少年
のコトバで、語られています。「野っぱら」「ひょっとしたら」「草の実を
おとした。ここの、ここんところ。」などの言葉に使い方・言いぶりは、少
年の日常の語り言葉そのままです。


各連ごとの音声表現上の留意事項

 第一連

  意味内容の区切りがクリアーに声に出るように、区切りの間に注意して
音声表現させましょう。

    (秋草のなかをかけてきたから)
    【(ポチのからだにも)(ぼくのからだにも)】
    (草の実が)(いっぱいついた)

  (ポチのからだにも)と(ぼくのからだにも)とは、二つが対等の関係
で並ぶように音声表現します。同じ言葉「からだにも」が二つ並んで強調さ
れた音調となるでしょう。
  「いっぱいついた」の「いっぱい」を「いーーっぱい」のように目立た
せて音声表現してもよいでしょう。


 第二連

   (庭で)(はたいたら)
   (おばあさんが)
   (「来年、(そこに)草がはえるよ」)
   (と、言った)
のように区切って音声表現するとよいでしょう。
「来年、そこに草がはえるよ」の「そこに」を強めて、目立たせて音声表現
します。


 第三連

(どんな草のなかをとおってきたのか)と(なんという名の草か)との二つ
は一緒になって(知らないけれど)に係っていきます。そのように音声表現
していきましょう。

  (ブドウ棚の下の、バラの木の下の、バラの木のとなりに)
  (来年は)
  【(ぼくとポチが、野っぱらから運んできた)(草がはえて)】
  【(ひょっとしたら)(かわいい花がを咲かせるかもしれない)】

のような区切り方で音声表現するとよいでしょう。


 第四連
  
  語り手「ぼく」は、「ここんところ、草の実をおとした、ここんとこ
ろ」を忘れないでいよう、と、「ここんところ」にこだわって、固い決意で
語っています。くどいほど、自分自身に心にしっかり根付かせる気持ちを込
めて語っています。自分の心に言い聞かせて、念押しして、再度の確認をし
て自分に言い聞かせています。そのつもりで音声表現させましょう。
  少年「ぼく」が、落っこちた種子が来年にかわいい花を咲くだろうこと
を期待して、心をわくわくさせています。待ちわびて、心待ちに、楽しみな
気持ちで胸を膨らませています。この部分を読む読者もまた、わくわくした
楽しみな気持ちになってしまいます。
  「わすれないでいよう」は、固い決意をこめた言いぶりで音声表現しま
しょう。

  「ここんところ」
  「草の実をおとした、ここの、ここんところ」

  上の個所は、しっかりと粒立てて、強調して、目立たせて、音声表現し
ましょう。

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