音読授業を創る  そのA面とB面と   06・1・5記



 「寿限無」の音読授業をデザインする



●「寿限無」の掲載教科書………………………教出4下、東書3上



           じゅげむ

      じゅげむ じゅげむ 
      ごこうの すりきれず
      かいじゃり すいぎょの 
      すいぎょうまつ うんらいまつ ふうらいまつ
      くう ねる ところに すむ ところ
      ヤブラコウジの ブラコウジ
      パイポ パイポ
      パイポの シューリンガン
      シューリンガンの グーリンダイ
      グーリンダイの ポンポココピーの
      ポンポコナーの
      ちょうきゅうめいの ちょうすけ



           
教材の扱い方


  「じゅげむ」は、東書版では3年生配当、教出版では4年生配当となっ
ています。「じゅげむ」は落語の演目の一つです。落語見習いの前座のやる
噺だそうです。
  本教材への導入として、この落語を教師が子供達へ読み聞かせすること
を希望します。中学年ですので、噺の内容は十分に理解でき、子ども達を楽
しませることができるでしょう。
  わたしの机上に「じゅげむ」の落語がはいってる書籍があります。林家
木久蔵『林家木久蔵の子ども落語その3』(フレーベル館、1998)、柳亭燕
路『古典落語子ども寄席』(こずえ、1975)の二冊があります。その他、他
社発行の「じゅげむ」の落語の書籍もたくさんあることでしょう。
  「寿限無」は、読んで字のごとくに「寿に限りが無い」という意味です。
落語という口頭伝承の話芸なので、落語家さんによって文句に若干の違いが
あります。

≪落語を聞かせた後の話し合い≫
この落語を読み聞かせた後、次のような内容の話し合いをしたらどうでしょ
う。

◎話し合い事項1
  赤ちゃんが産まれると両親はどんな名前を付けようかといろいろと考え
ます、なやみます。両親は、わが子によい名前を付けようといろいろと苦労
します。他人に相談したりもします。
  なぜ、両親はわが子の名前つけに苦労するのでしょうか。学級の子ども
達の考えを出させてみましょう。児童の中には両親から自分の名前のいわれ
・由来を聞いている子がいるかもしれません。いたら、それをも発表させて
みましょう。両親からわが子への、将来への大きな期待・願望・祈りがある
ことを知らせます。

◎話し合い事項2
  わが子への名づけを、村や町の著名人、物知り人、和尚などに依頼する
ということは、現在は少ないですが、昔はけっこう多くありました。親戚の
中の偉い人につけていただくということも多くありました。当時の著名人・
有名人にあやかった名前も多くありました。
  「じゅげむ」では、わが子への名づけを和尚さんに依頼しています。昔
は、そういうことはよくあった、ということを知らせます。

◎話し合い事項3
  この落語「じゅげむ」の噺の特徴(みそ)は、名付け噺のストーリーの
中に、次のような三つの観点がふくまれていることです。
(1)「うんと長生きして、おめでたい名前」の言葉を選ぶ。それらをでき

   だけ挙げて出す。
(2)考えついた名前(言葉)は、どれも捨てきれずに全部を次々とつなげ
   た名前にしてしまった。
(3)これが結果として、後半の「こぶのはなし」の落ちへとうまく適合し
   ていく。
  以上、三つの観点が落語「じゅげむ」のおもしろさを作っているからく
り(しかけ・構成)です。こうしたからくりも話し合ってみましょう。

◎話し合い事項4
  自分の名前は、短いほうが好きか、長いほうが好きか、友だちの名前
などもまじえて話し合ってみましょう。

◎話し合い事項5
  「じゅげむ」とはどんな意味か。「ごこうのすりきれず」とはどんな意
味か。「かいじゃり」とはどんな意味か。「すいぎょ」とはどんな意味か。
こうした難しい語句の説明を一つ一つ丁寧に指導する必要はないと思いま
す。これは「じゅげむ」の物語のストーリー野中で語られています。物語の
中でのストーリーの語りだけでいいと思います。改めての説明はしなくても
いいと思います。
  これら難しい言葉はすべて、「長生きができる、おめでたい、という
意味の言葉だ」ぐらいの理解でいいと思います。
  題名「じゅげむ」の、一つだけの説明はあってもよいでしょう。「じゅ
げむ」は、漢字で「寿限無」と書くこと、「じゅげむ」の「じゅ」は漢字で
「寿」と書くこと、「ことぶき」というおめでたい言葉であること、「じゅ
げむ」の「げむ」は漢字で「限無」と書くこと、「かぎりがない」(死ぬこ
とがない)という意味だということ、この題名ぐらいは改めての説明をして
教えてもよいでしょうが……。全部は必要ありません。

◎話し合い事項6
  時間の余裕があれば、落語「じゅげむ」の後半、「こぶができた・へっ
こんだ」部分の噺だけを取り出して、その部分だけを「わらい話」として子
どもに語らせたらどうでしょう。落語家になって言わせたらどうだろう。こ
の部分だけだったら、子どもには簡単にできるし、喜んでやるでしょう。家
庭での自由宿題として、翌日、希望者だけ、こぶのはなし部分だけを教室前
面に出させて発表させたらどうでしょう。


           
音声表現のしかた


  わたしの体験を思い出してみましょう。わたしの子ども時代も「じゅげ
む」は子ども達に喜ばれていました。ことば遊びとして喜んで楽しんでいま
した。
  この話は、どんな意味内容であるか、経文の中の言葉だなんてことは知
りませんでした。これらの意味内容を知りたいとも思いませんでした。ただ
ひたすらにことば遊びとして楽しんでいました。
  無意味な言葉の連なり、リズムやメロディーがあって、舌でころがして
言い続けるのに快い響きがあり、どこの個所まで一息で言い続けることがで
きるか、友だちと競争したりしました。そうした遊びの中で繰り返して言う
ことで、丸暗記してしまっていました。どんなに練習しても、一息で、最後
まで一気に言い終えることができなかったことを記憶しています。つまり、
「じゅげむ」は、早口言葉の遊びとして楽しんでいました。

  「歴史は繰り返す」と言います。今の子ども達も、「じゅげむ」を、そ
うした早口言葉の遊びとして楽しむだけでよいのではないでしょうか。今の
子ども達も、「じゅげむ」の早口言葉の遊びに興味を示すことでしょう。舌
でころがして、言葉の連なりの響きを楽しめばいいのです、ひたすら遊んで
いいのです。「じゅげむ」の難しい語句の説明、屁理屈をこねた指導は必要
ないと思います。


             
参考資料


  ねじめ正一(詩人、作家)さんは、詩は関節の外れた言葉だと述べ、続
いて「寿限無」について次のように書いています。みなさんの学級児童の様
子はどうでしょうか。言葉リズムを楽しんでいるうちに自然と暗誦してしま
う子どもが多いのではないでしょうか。

  「言葉の関節を外す」とは、言葉(単語の連なり)から意味をなくして
ぐにゃぐにゃにしてしまうことです。意味をなくすことで言葉はすっぱだか
になり、ぐにゃぐにゃになって、頭ではなくカラダの回路に入っていけるよ
うになります。
  同じリズムが延々と続く気持ちよさはとても強力です。記録映画でヒッ
トラーの演説を見たことがありますが、ヒットラーの喋り方も同じリズムで
延々と繰り返すものでした。
  今子ども達のあいだで「寿限無」が大ブームになっていますが、あの寿
限無も意味ではなくリズムです。というか、わざわざ意味をなくしてリズム
だけにしたところがすごいのです。
  大人は意味がないと覚えられない、覚えにくいのですが、子どもは逆で
リズムだけの方がよく覚えます。子どものことばの覚え方は頭ではなく、カ
ラダの回路で覚えるからです。
  じつはうちのオクサンは寿限無が全部言えます。家で寿限無ブームが話
題になったとき、「あら、私言えるわよ」と言うや「じゅげむじゅげむごこ
ーのすりくれ……」と始めたのです。そして「ぽんぽこなのちょーきゅーめ
ーのちょーすけ」まで、みごとに言ってのけたのには驚きました。
  聞けばオクサンは小学校のとき、おやじさんの好きな落語のラジオを聞
いて覚えたのだそうです。レコードではなく、何回かラジオを聞いただけで
覚えたのにもビックリですが、四十年ぶりだというのに口からすらすら出て
きたのにもビックリです。ふだんのオクサンはダンスは踊れないし、歌もア
ップテンポの歌はいつも遅れてしまうというリズム感の悪い人なのですが、
寿限無だけは落語家顔負けでした。カラダの回路で覚えた言葉よりはるかに
寿命が長いんですね。

   ねじめ正一『NHK日本語なるほど塾9月号 言葉よ、立ち上がれ』
        (日本放送出版協会発行、2004・9・1) 24ぺより引用



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