音読授業を創る  そのA面とB面と  06・12・12記



  「ぼく」の音読授業をデザインする



●詩「ぼく」(木村信子)の掲載教科書……………………………光村4上



               ぼく
                  木村信子

            たとえば
            このクラスのなかの
            たった ひとり
            この学校のなかの
            たった たった ひとり
            地球の上の
            かずにならないくらいの
            ひとり
            の ぼく
            だけど
            これ ぜんぶ
            ぼくなんだ
            ぼくという
            宇宙なんだ



            
作者について


  木村信子(きむら・のぶこ) 1936年、茨城県生まれ。
 作品に「おんな文字」「てがみって てのかみさま?」「わたしというま
つり」「時間割にない時間」「おんな文字」「仮りの仮り」「でていった」
などがある。


             
教材分析


 ≪ ぼくは、
  クラスの中では「たった、ひとり」の人物、
  学校の中では「たった、たった、ひとり」の人物、
  地球の上では「かずにならないくらいの、ぼく」という人物、
  なのである。≫
 と語っています。

  ぼくが所属している集団が広がっていくにつれ、ぼくはしだいに極小・
微小な存在になっていくから、こう言えるわけです。
  地球上に住んでいる総人口は、いま約26億人だと言われています。
26億人という億単位の総人口からみると、「ぼく」一人の人間なんか数
の上からいえば省略され、見捨てられてしまう、そんなちっぽけな存在で
しかありません。

  この詩の後半では、だけども、「ぼく」という人物は、それのみではな
いのだ。
  数にならないくらいの、見捨てられてしまうくらいの、たった一人の極
小な・微小な「ぼく」なんだけれども、ぼくは、ぼくとしての、かけがえの
ない、輝いて生きる、一人の人間として尊厳ある存在としての「ぼく」なの
だ。自己のアイデンティティーの尊大かつ高貴なる矜持を与えられている存
在としての人間なのだ。宇宙という大きな存在と匹敵する偉大なる存在なの
だ。
  これが「ぼく」というたった一人の人間の存在意義(価値)なのだ、と
語っています。


           
音声表現のしかた


  意味内容の区切りでは、間をきちんととって音声表現します。
  「 / 」は短い間、「 // 」、はやや長い間で音声表現するしるしで
す。

  たとえば //

  このクラスのなかの / たったひとり //

  この学校のなかの / たった たった ひとり //

  地球の上の / かずにならないくらいの / ひとり //

  の //

  ぼく //

  だけど ///

  これ // ぜんぶ / ぼくなんだ //

  ぼくという / 宇宙なんだ //


メリハリづけでは、
●三つの「たった・ひとり」は強めて、粒立て、目立たせて読みます。
 ほかにも、強めて、粒立てて、目立たせて音声表現する個所があります。

   「 タッタ /  ヒ・ト・リ」
   「タッタ / タッタ / ヒ・ト・リ」
   「コレ / ゼーンブ / ボ・ク / ナーンダア」
   「ボ・ク / トユウ / ウチュウ / ナーンダア」

●「 の / ぼく / だけど / 」の区切りは、次につながる全体の意識(音
調)はありますが、それぞれの区切りで、十分に、はっきりと、切断し、断
止して、間をあけて音声表現すべきでしょう。
  「クラスの中のたった一人、学校の中のたった・たった一人、地球の上
のかずにならないくらいの一人」「の」「ぼく」「だけど」「いやいや、そ
んなちっぽけな一人の人間ではないぞよ。偉大なる存在であるぞよ」と意味
内容でつながっていくことを意識して読みすすめていきます。「ノ」「ボ
ク」「ダケド」と、ここも強めて、粒立てて、目立たせて、一つ一つきっぱ
りと間をあけて、音声表現します。
  つまり、間をあけると、その間をあける直前の語句が強調されるので
す。間をあけることで直前の語句「の」「ぼく」「だけど」が強調されて、
どうしてどうしてそんなちっぽけな存在ではありません、となります。
  直前の語句が強調されることにより、<尊厳絶大なる存在であります
ぞ>よという一種の反語表現になって音声表現されていきます。

● この詩を、群読や分担読みの音声表現にして読むのもおもしろいでしょ
う。一例を次に書きます。
  Aは1人の読み手。Bは4人の読み手。Cは7人の読み手、Dはほか
全員とします。


    B  たとえば
       このクラスのなかの
    A   たった ひとり

    C  この学校のなかの
    A   たった たった ひとり

    D  地球の上の 
       かずにならないくらいの
    A  ひとり

    B  の

    A  ぼく

    C  だけど

    D  これ ぜーんぶ

    A  ぼく・なんだ

    B  ぼく・という

    D  宇宙・なんだ


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