音読授業を創る  そのA面とB面と      03・07・24記



 
「夕日がせなかをおしてくる」の音読授業をデザインする



●「夕日がせなかをおしてくる」の掲載教科書……大書3上、東書3上、
                       教出3下、学図3下、


           
教材化にあたって


 この詩を読むと、わたしは少年時代の田舎の風景をノスタルジックに思い
出します。わたしの個人的体験をちょっとだけ書きましょう。いまでは田舎
の道路は殆んど舗装されていますが、わたしの少年時代はすべてがでこぼこ
の砂利道でした。自動車はたまにしか通らず、ふだんは牛や馬が引く荷車と
村人達が通るぐらいでした。村に結婚式があるときは、荷車に文金高島田の
花嫁さんがのり、長持ちや家財道具一式を荷車につけ、家族・仲人・親戚の
行列がつづいて、でこぼこの砂利道をお婿さんの家へ向って通りました。そ
の行列を見るのが田舎では正月と盆と秋祭りにならぶ大イベントでした。
 わたしは少年時代。友だちとめいっぱい遊び、大きな夕日が沈もうとする
頃、一日の遊びが終わる時間でした。まだ遊び足りないなあ、いつも日暮れ
るのがはやいなあと思いつつ、家路を急いだものでした。大きな夕日が山の
端に今にも沈もうとする、それが遊び終わりの合図で、友だちと名残り惜し
んでさよならをしたものでした。暗くならないうちに家に帰らなくてはと、
田舎のでこぼこ道を、疲れた体で、走って家に帰ったものでした。
  現在の都会の子ども達は林立する高層マンションやビルの陰になってい
る個人住宅に居住し、この詩の情景は体験できません。しかし、海(山)に
沈む夕日の大きさや夕焼けに染まった大自然の美しい光景は絵本、写真、テ
レビ画像などで目にする機会がけっこうあります。だから、この詩が表現し
ている情景は現在の子どもたちにも容易に想像できると思われます。
 この詩のよさは、友だち同士で「さよなら」「バイバイ」「またあした」
と挨拶を交わして別れるのではなく、夕日(太陽)と子ども達が別れの挨拶
を交わしている、この発想のおもしろさ、奇抜さ、個性的な感覚、その表現
性にあります。


           
音読の指導計画


  大きな夕日が帰宅する子ども達に向って背後から大声で呼びかけていま
す。子ども達は振り向いて大声で元気に応答します。こんな光景が描かれて
います。

 出だしの「夕日が」は、歯切れよく明晰に印象強く発音します。「何が、
どうだ」の「何が」を、まずはっきりと声に出します。

 「夕日が、どうする」「どのような何で、どうする」「どこから、どうす
る」の述語部分の動作性が、これまたはっきりと様子が出るように音声表現
します。例えば、「まっかな」の「まっ」、「うでで」の「う」、「おして
くる」の「お」に強めのアクセントを置きます。「まっかな/ うでで/ お
してくる」の、三つのパートごと十な区切りの間を開け、それぞれ三つの語
句を印象強く音声表現します。急がず、あわてず、ゆっくりと、それぞれの
パートを読み手も味わいつつ、思いを入れて、声で場面(光景)を一つ一つ
描くように、作成していくように音声表現します。

 第一連に「でっかい声でよびかける」と書いてあります。ですから、続く
あとの四行は、夕日がぼくらの後ろから大声で呼びかけている音調で音声表
現します。どんな呼びかけ音調か、学級全員であれこれと声に出して、探ぐ
りの試みをして発表させ、よいものをみんなにまねさせてみましょう。

 第二連に「ぼくらも負けずにどなるんだ」と書いてあります。ですから、
あとの四行は、ぼくらが夕日に向って、どなっている口調で音声表現しま
す。「どなる」には、二つの意味があります。「大声で言う、叫ぶ」と「大
声で叱る」です。ここでは「大声で言う、叫ぶ」の意味です。
 「「そんなにおすな」「あわてるな」は、地の文になっていますが、会話
口調にして読むとよいでしょう。
 「ぐるり」「ふりむき」は、発音しにくい言葉です。歯切れよく読むよう
に注意させます。あとに続く子ども達の応答文は、口にメガホンを当てる動
作をして全員で声を揃えて呼びかけさせると児童は喜びます。どさくさにま
ぎれて声の小さい子も、いつのまにか大きな声を出して読むようになりま
す。


           
関連資料・録音


 本ホームページの第19章第2節「読み声例2・夕日がせなかをおしてく
る」録音を聴取してみよう。荒木学級の児童たちの群読読み声です。同じ詩
ですが、グループによってかなり群読表現がちがっていることに気づきます。



           
 参考資料


 わたしは、この詩を群読にして音声表現する指導をしました。学級児童を
三つのパートに分けます。ナレーター役、夕日役、子ども達役の三つのパー
トです。夕日役は、集団(群)でなく一名の児童を当てて読ませてもよいで
しょう。
 ナレーター役は、各連のはじめの四行を音声表現します。第一連のあとの
四行は夕日役が、第二連のあとの四行は子ども達役が音声表現します。ナ
レーターの解説は説明口調で、あとの夕日と子ども達の音調は、対話してい
る口調、つまり大きな声で呼びかけ・話しかけている口調で音声表現させま
す。
 児童の座席配置。三つのパートを、コの字形に配置します。夕日役と子ど
も達役を対面させます。
 第一連では夕日役が子ども達の背後から呼びかけます。第二連では「ぐる
リふりむき太陽に……」で、子ども達をふりむかせ、太陽と対面させて応答
します。太陽役には、大きな夕日のお面を顔につけさせると、臨場感が出ま
すし、その場面に身体ごと入り込んで音声表現することができます。
  


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