音読授業を創る そのA面とB面と    07・4・20記




   
詩「山」の音読授業をデザインする




●詩「山」(原国子)の掲載教科書…………………………………学図3上



              山
                 原 国子

            うれしいときは
            山をみる
            どっしり すわった
            山をみる
            ”しっかりやれよ”と
            いうように
            山はだまって
            ぼくをみる

            かなしいときも
            山をみる
            どっしり すわった
            山をみる
            ”だいじょうぶだよ”と
            いうように
            山はだまって
            ぼくをみる



          
作者(原国子)について


  1939年、東京都生まれ。日本童謡協会会員。日本児童文芸家協会会員。現
代少年文学の会会員。つくしんぼの会会員。詩集「ゆうべのうちに」など。



             
教材分析



  まず、題名よみをします。題名「山」について語り合います。子ども達
は「山」についてどんなイメージを持っているでしょうか。
  農山漁村と都会の子では全く違うイメージを持っていることでしょう。
都会の子でも、一度や二度は山や森に入って歩いたことはあるでしょう。そ
のときのことを思い出して語らせます。
  子ども達は、どんな山の名前を知っているでしょうか。富士山を知らな
い子はいないでしょう。そのほか、どんな山の名前を知っているでのでしょ
うか。
  実際に山に登ったことのある子、富士登山したことのある子、山小屋に
泊まったことのある子、山のスキー場に行ったことのある子、山間の道を自
動車でへめぐって通ったことのある子などいろいろいるでしょう。そのとき
のことを思い出して語らせてみましょう。
  毎日、見ている山。田舎に行ったときに見た山。遠くから雄大な山を見
たときにどんなことを子ども達は思ったでしょうか。山と対面して何を思っ
たでしょうか。語らせてみましょう。ヤッホーと山びこ遊びをしたことがあ
るでしょうか。

  荒木が小さかった頃、山をどう思っていたかを思い出してみましょう。
荒木は、長年、都会(横浜)に住んでいますので、山への憧れがあります。
山に行きたいなあ、山道を歩いてみたいなあという憧れを持っています。遠
く静かな、山間のひなびた温泉旅館で、ゆったりとくつろいでみたいなあな
どと思念しています。山道をとことこ歩いて足腰を鍛えたいなあと思ってい
ます。森林浴で心を癒したいなあ、しばらく粗末な山小屋で生活して、世俗
の雑事を忘れて、のんびりしたいなあなどと思っています。森の中の空気や
澄んだ静けさや匂いはなんともいえんなあ、などとも思います。

  荒木は小さかった頃は山形県の片田舎で成長しました。山の中で出会っ
たへびがとても恐かったことを思い出します。きつねにだまされて、山の中
の同一場所をぐるぐると回ったことがあって、とても恐かったことを思い出
します。
  山の神の民間伝承があったことも思い出します。近くの山の中に粗末な
お宮があって、そこを通ると両手を合わせて頭を下げたことを思い出しま
す。また、山の中に大きな岩石があって、その大きな岩石がその山一帯の神
様だといわれていたことを思い出します。その山には樹齢何百年というひと
きわ目立つ大木があって、その大木もその山を守っている山の神であると言
われていたことを思い出します。
  わたしの小さい頃は、それら山の神の御神体に対面すると両手を合わせ
て拝んだものでした。年に一、二回、村人達がそれらの山の神に御神酒や野
菜や昆布などを供えて祭ったものでした。山の神は近隣の村落を守ってくれ
る神様であり、村落の人々の健康や家内安全や五穀豊穣をもたらしてくれる
神様でもあると言われていました。山には、山の神様が住んでいる霊峰とい
う考えもあったように思います。山は、神聖な場所で、おそれ多い存在でも
ありました。


           
音声表現のしかた



 この詩は、二連の定型詩です。リズムよく、口の中でことばを転がして心
地よく読むことができます。

  第一行目は、「うれしいときは」(第一連)、「かなしいときは」(第
二連)と、対比表現になっています。
  第二行目は、両連とも「山をみる」です。第一行と第二行とは、第一行
の行末で区切りつつも、ひとつながりの意識で音声表現するとよいでしょ
う。そして第二行の行末でたっぷりと間をあけます。

  第三行目と第四行目は両連とも「どっしりとすわった」「山をみる」で
す。同じ詩句です。これも第三行末で区切りつつも、ひとつながりの意識で
音声表現するとよいでしょう。第四行末でたっぷりと間をあけます。

  第5、6、7、8行目は、詩句の違う個所は第五行目だけです。第五行
目は、第一連は「しっかりやれよ」です。第二連は「だいじょうぶだよ」で
す。ほかはみな同じ詩句です。
  第二連は、「かなしいときは」は、山は「だいじょうぶだよ」と応答し
ています。励ましの言葉かけをしてくれています。激励して、応援して、温
かく見守ってくれています。
  第一連は、「うれしいとき」は、山は「しっかりやれよ」と応答してい
ます。ちょっとへんですね。「うれしいとき」は、「よくがんばったね」と
か「よくやったね」と拍手しつつ賞賛してくれるのが普通でしょう。「うれ
しいとき」に「しっかりやれよ。」とは、少しへんですね。でも、よく考え
てみると「これで満足しないで、さらなるハイレベルを求めて、しっかりや
れよ。がんばれよ。」と更なる叱咤激励しているのでしょう。
 
  第5、6行目は、ひとつながりにして、起こして読み出します。元気の
よい声で、激励している音調にして読み出しましょう。
  第7、8行目は、「分かった、分かった。承知した」という心づもり
で、心が落ち着いた気分で、声を低く、ゆっくりした音調で、言い納める読
み方にします。

  語り手は、雄大かつ壮大な山に向かって、いつも山と対話しているので
しょうか。容易に山と対話していますね。えらいですね。いつもそうやっ
て山と対話しているのでしょう。
  ある教師が、ある時、学級児童にこう言ったそうです。「つらい時、悲
しい時、苦しい時、家の壁に向かって、語りかけなさい。壁に向かって、語
りかけましょう。語りかけるものは何でもいい。大事にしている人形でもい
いです。語りかければ、心が軽くなります。心が癒されます。」と。いい指
導ですね。「山」の詩とどこか通ずるところがあるようですね。


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