音読授業を創る そのA面とB面と    05・12・23記




「たけのこ ぐん」の音読授業をデザインする




●「たけのこぐん」(ぶしかえつこ)の掲載教科書……東書2上、大書2上




            たけのこ ぐん
                 ぶしか えつこ


           たけのこが
             ぐん
           せのびして
           つちを わったよ

           あたまに きらり
           つゆを のせてる
           あさの おほしさんに
           もらったのかな

           たけのこ のびろ
             ぐん




           
作者について



  本名、荒谷悦子。1928年、東京生まれ。都立第8高女卒業後、佐賀高女
専攻科卒。筆名・武鹿悦子。
  1952年ごろから西条八十に師事し、詩作を始める。NHKの幼児番組
「歌のおばさん」に童謡を発表したことを契機に、放送やレコード界で活躍
する。童謡、童話などで活躍。その作品は子どもを的確にとらえて感性に富
む。日本童話協会理事。詩と童謡協会会員。日本児童文学者協会会員。



       
たけのこの生命力の強さに乾杯



  題名は、「たけのこ ぐん」です。「たけのこ ぐん ぐん」ではあり
ません。なぜ「ぐん ぐん」や「ぐん ぐん ぐん」でなくて、「ぐん」一
個なのでしょうか。通常は「ぐん ぐん ぐんと伸長していくことに感動し
た」ではないでしょうか。「ぐん」一個には、なにか理由がありそうです。
  「ぐん ぐん 」や「ぐん ぐん ぐん」になると、「たけのこが上空
へ上空へと、高く高く、力強く力強く、上へ上へと伸び上がる時間経過」と
いう感じになります。「たけのこの丈の長さがどんどん上へと伸長していっ
ている」という感じになります。
  「ぐん」になると、「瞬間的な伸長の様子、ちょっとした短時間のうち
の伸長の速さ」という感じになります。「たけのこがほんの短い時間のあい
だに伸びる上がる速度の速いことよ」という感じになります。

  たけのこは、西日本では3月ごろから収穫、出荷がはじまります。4〜
5月が最盛期になります。
  たけのこは、地表に出る直前に掘り取ったものが味がよく、地表で伸び
すぎると繊維が発達して堅くなり、食べられなくなります。今とったばかり
のたけのこは、生食(さしみ)として好まれてもいます。

  この詩に描かれているたけのこは、地表に出て伸び上がったたけのこで
はありません。地表に出ている、ある程度の丈の長く伸びたたけのこではあ
りません。地中にあって、今、瞬間的に・短時間に、まさに「ぐん」と地表
に伸び出てきて、ほんのちょっぴり顔(頭)を出したばかりのたけのこで
す。
  第一連は「たけのこが/ぐん/せのびして/つちをわったよ」です。
「今、土を割って、頭を出したよ。」です。「土から出たよ」ではありませ
ん。「土を割ったよ」です。土に裂け目を作って、伸び上がってちょっぴり
頭を出したよ、です。「割る」という語句には、エネルギーの力強さがあり
ます。「少しずつ土に丸い穴を掘りつつ伸び出てきたよ」ではありません。
「一瞬の間に力強く土に裂け目をつくって、恥ずかしそうに背伸びして頭を
出したよ。」「ほんのちょっと、力強く顔を出したよ。」という感じです。
語り手は、たけのこの伸びのスピードの速さ、力強さ、生命力の強さに驚嘆
しています、感動しています。
  第二連は、第一連の事柄が早朝に観察したことであると書いていま
す。。「あたまにきらり/つゆをのせてる/あさのおほしさんに/もらったの
かな」とあります。今、頭を出したたけのこの地表部分が朝露の帽子をか
ぶっている、日の出直前に輝いていたお星様に露をいただいたのかと、童話
風な記述で表現しています。
  第三連で、語り手は、たけのこの生命力や生長エネルギーの力強さに更
なる期待を込めて、「たけのこ、伸びろ。もっと、伸びろ。ぐん と 伸び
ろ」と呼びかけ、強い願望で語りかけています。



          
音声表現のしかた


第一連
  語り手は、誰かに語って聞かせています。(たけのこが)(ぐん)(せ
のびして)(つちを わったよ)のように各行ごとの区切りで音声表現しま
す。
  「わったよ」は、語り手が、誰かに語っている・聞かせている語り口の
書かれ方です。第一連の終末の語り口を、第一連の冒頭から、語り口音調を
意識しつつ読み始め、読み進めていきましょう。
  「ぐん」は、「ぐーん」とか「ぐーーん」とかとは書いていません。土
を割ったのは、瞬間的で、短時間という意味も「ぐん」にはあります。やっ
ぱり、力強く、短く「ぐん」と音声表現すべきでしょう。
「ぐーん」や「ぐ−−ん」と音声表現すべきではないように思います。わた
しの考え(イメージ)は力強く、短く「ぐん」です。

第二連
  語り手は、たけのこが土を割ったその頭に朝露を載せているのを見て、
「あさの おほしさんに もらったのかな」と言っています。これは、語り
手の独り言です。独り言の音調で音声表現します。
  第二連は、朝のたけのこの観察描写とその事実への語り手の思考(独り
言)が書いてあります。前半は、事実の報告音調にします。後半は、語り手
の独り言音調にして読みます。
  「きらり」(副詞)は、「のせている」(述語)に係って、つながって
いきます。「きらり」で言い納める読み方にしてはいけません。ここで下げ
た読み方にすると、「きらり」で切れてしまいます。「のせている」までつ
ながる音調にして読み進めます。「きらり」は、歯切れよく、目立つ音調に
して読むと情景にめりはりがついてよい読み方になるでしょう。
  「つゆをのせている」は、語り手がその事実を見て・気づいて・発見し
て・驚いています、びっくりしています。感嘆や感じ入った気持ちの音調を
込めて音声表現するとよいでしょう。

第三連
  「たけのこ のびろ」は、もっと伸びろと命令しています。命令音調ま
たは願望音調で音声表現するとよいでしょう。
  「ぐん」は、第一連で書きました。わたしの考えは、力強く、短く「ぐ
ん」の音声表現です。「ぐーん」や「ぐーーん」ではありません。


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