音読授業を創る  そのA面とB面と    07・4・15記




     詩「せみ」の音読授業をデザインする




●詩「せみ」(ありま たかし)の掲載教科書………………………学図3上



             せみ 
                  ありま たかし

        じぶん じぶん じぶん
         じぶん じぶん じぶん
        じぶん じぶん じぶん
           じぶん じぶん じぶん

        じかーん じかーん じかーん
         じかーん じかーん じかーん
        じかーん じかーん じかーん
           じかーん じかーん じかーん

        じゆう じゆう じゆう
          じゆう じゆう じゆう
        じゆう じゆう じゆう
           じゆう じゆう じゆう



       
作者(ありま たかし)について


  1931年、京都生まれ。詩人、エッセイスト、現代京都詩話会代表。
  同志社大学経済学部卒業。大学在学中に「同志社文学」を発行。実存主
義の影響を受ける。卒業後、京都銀行に勤めながら詩作を続ける。
  昭和40年代に盛んになったフォークソング運動では、高石友也、岡林
信康らと交流、創作わらべうたなどがフォークシンガー達によってうたわ
れ、「オーラル派」と呼ばれた。思想の科学研究会、日本現代詩人会会員。
  詩集「終わりのはじまり」「迷路から」「白い闇」「よそ者の唄」
  合唱曲集「ちいさなちきゅう」評論集「定住と移動」「京の夢、異郷の
夢」


           
音声表現のしかた


  「自分。時間。自由」は、何か意味があるのだろうか。あるのかもしれ
ないが、ないものとしてこの詩を鑑賞してよいと考えます。
  せみのいろいろな種類が一斉に鳴きだしています。あちらからも、こち
らからも、うるさいほどに鳴きだしています。せみの鳴き声は、聞く人に
よってさまざまな鳴き声に聞こえてきます。お経の「なんまいだ、なんまい
だ」と聞こえる人もいるでしょう。「そうぞうしい、そうぞうしい」と聞こ
える人もいるでしょう。「うるさくない、うるさくない」と聞こえる人もい
るでしょう。食いしん坊な子には「もうすぐおやつだ、もうすぐおやつだ」
と聞こえることだってあるでしょう。
  この詩の作者・ありまたかしさんには「じぶん、じぶん。じかん、じか
ん、じゆう、じゆう」と聞こえたのでしょう。そう表現されれば、なるほ
ど、「じぶーん、じぶーん」「じかーん、じかーん」「じゆー、じゆー」と
鳴いているようにも感じ取られます。なにか、ぴったりのようにも思われて
きます。

  たとえば、あぶらぜみが鳴いているとします。A君は「じりじりじり」
と鳴いていると言うかもしれません。B君は「ジー、ジー、ジリジリジリ」
と鳴いていると言うかもしれません。みんみんぜみの鳴き声には、A君は
「ミーーン、ミーーン」と鳴いているというかもしれません。B君は
「ミーーン、ミンミンミンミンミーーーー」と鳴いていると言うかもしれま
せん。人それぞれに聞こえ方は違ってくるでしょう。聞いたその時々の瞬間
にも鳴き方が違っていることもあります。

   これはよく言われることです。にわとりの鳴き声は、日本では標準的
には「コケコッコー」でしょう。アメリカでは「クックドゥードゥル
ドゥー」だそうです。ドイツでは「キッキリキー」だそうです。フランスで
は「コクリコー」だそうです。ロシヤでは「クカレキー」だそうです。韓国
では「コッキョ クゥークゥー コーコー」だそうです。レバノンでは
「キッキ キー キー」だそうです。

次に、この詩の音声表現にしかたについて書きます。自分の好きなように楽
しんで自由に音声表現すればよいのです。このように音声表現しかければな
らないというものはありません。
  音声表現のしかたでは、はっきりと「じ・ぶ・ん」「じ・か・ん」「じ
・ゆ・う」が分るようにせみの鳴き声にして楽しむこともできます。また、
ややあいまいな発音・鳴き声にして、せみの鳴き声をまねて楽しむこともで
きます。何のせみということはできません。「じぶんせみ。じかんせみ。じ
ゆうせみ」という勝手な名前をつけて音声表現を楽しむこともできます。
  できるだけ、せみの鳴き声に近づけて音声表現するとよいでしょう。学
級全員が一斉に鳴き声をまねて楽しむこともできます。グループごとに工夫
させて発表させるのもよいでしょう。この詩は、各連が4行で、全三連でで
きています。書き出し文字が上がり下がりになっています。上がり下がり
は、わけがあるのでしょう。せみの鳴き声にメロデー(上がり下がり)をつ
けて、種々の色付け・色合いをつけて音声表現して楽しむとよいでしょう。

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