音読授業を創る  そのA面とB面と   05・12・15記



「かえるのぴょん」の音読授業をデザインする



●詩「かえるのぴょん」(谷川俊太郎)の掲載教科書…教出3上,学図3上



          
この詩の全体構成


  この詩は、題名が「かえるのぴょん」で、全体が4連からなり、各連が
きちんとした5行ずつの構成です。各連の第1行目はすべて「かえるのぴょ
ん」、第2行目はすべて「とぶのがだいすき」の詩句になっています。第3
行目には、かえるはどこを飛び越えるのかが書かれています。
  整理すると、こうなります。
第1連  3行目  「はじめにかあさんとびこえて」
     4行目  「それからとうさんとびこえる」
第2連  3行目  「つぎにはじどうしゃとびこえて」
     4行目  「しんかんせんもとびこえる」
第3連  3行目  「とんでるひこうきとびこえて」
     4行目  「ついでにおひさまとびこえる」
第4連  3行目  「とうとうきょうをとびこえて」
     4行目  「あしたのほうへきえちゃった」

  第5行目には、かえるが飛び越える対象物の性質によって、「ぴょん」
が重層的に重ねられて記述されています。「ぴょうん」が、ひとつ、二つ、
三つ、四つと重ねて記述されていくことによって、かえるの跳躍力の強弱や
高さや距離感の違いがはっきりと表象されるようになっています。
  整理すると、こうなります。

    [飛び越える対象物]    [ことば表現] 
第1連 [かあさん、とうさん]   [ぴょん」
第2連 [じどうしゃ、しんかんせん][ぴょん ぴょん]
第3連 [ひこうき、しんかんせん] [ぴょん ぴょん ぴょん]
第4連 [きょう、あしたへ]    [ぴょん ぴょん ぴょん ぴょ
                   ん]


         
この詩のおもしろさ


  この詩を、子供たちは喜んで読むことでしょう。「ぴょん」という擬態
語のリズム調子のよい響きが何度か繰り返され、声に出して調子付けて読み
たくなります。
  各連が、すべて8音・8音・13音・13音の音のならびになってお
り、それに第5行目が第1連から順繰りに「ぴょん」の数が一個ずつ増えて
いくリズム構成になっていて、とてもリズムがよい調子になっています。第
3行目の語尾がすべて「とびこえて」、第4行目の語尾がすべて「とびこえ
る」の繰り返しになっています。これら同音同語の繰り返しが音声表現の読
み調子に快いリズムを与え、しぜんと口に出して読みたくなります。
  声に出して読む口当たりのリズムや響きのよさだけではありません。か
えるの「ぴょん君」か「ぴょん子」かは不明ですが、そんなことはどうでも
よく、初めに「かあさん」「父さん」を「ぴょん」と飛び越えます。二番目
には「自動車」「新幹線」を「ぴょん ぴょん」と飛び越えます。三番目に
は「飛んでる飛行機」「お日様」を「ぴょん ぴょん ぴょん」と飛び越え
ます。四番目には何と今日を飛び越えて、明日の方へ消えていってしまいま
す。初めは「母さん・父さん」と、まじめに飛んでいたものが、しだいにあ
りえない出来事、奇想天外な出来事、笑止千万な出来事に変わっていき、先
を読み進むにつれてあまりのばかばかしさにあきれかえり、笑ってしまうほ
かありません。子どもたちは、このこっけいさ、おもしろさにたいへんに喜
んで声に出して読むことになります。


           
音声表現のしかた


  音声表現のしかたは、この詩のおもしろさ、こっけいさ、たのしさの思
いのままに、言葉のリズムの合わせて、自由に、のびのびと、好きなように
音声表現していってよいでしょう。こう音声表現しなければならないという
きまりはありません。
  ただし、「こんな音声表現のしかたもあるよ」という例をヒントとして
紹介することはできます。
  この詩には、「ぴょん」が二種類あります。各連の第1行目の「かえる
のぴょん」の「ぴょん」は、固有名詞か愛称かは不明ですが、名付け・名前
であることは確かです。各連の第5行目の「ぴょん」は、かえるが飛び越え
る様子を言葉で表した擬態語です。「名付け」の「ぴょん」と、擬態語の
「ぴょん」とは当然にその音声表現のしかたは違ってきます。擬態語の
「ぴょん」は、いろいろな音声表情がつけられますし、つけたほうがおもし
ろく音声表現できるでしょう。飛ぶ高度につれて、畳み掛け、追いかけるよ
うな、重層的な音声変化を、めりはりづけをしていく工夫が、この詩を音声
表現していく決め手になるように思います。
  擬態語の「ぴょん」は、飛ぶ高度が上昇していくにつれ、軽い・声量小
から、次第に力強い・声量大へと変化していくことになります。「ぴょん」
の音声表情も、「ぴょん」や「ぴょーん」や「ぴょうーん」や「ぴょうー
うーん」や「ぴょーうーーんーー」や「ぴょーーーーん」など、いろいろ考
えられましょう。
  第5連の「ぴょん」の4個は、明日のはるか彼方の方へ消えちゃったの
ですから、これまでとは逆に「ぴょん」は、声量大・最強からしだいに声量
小・弱へとしだいに変化していくことになるのではないでしょうか。



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