音読授業を創る そのA面とB面と 07・4・2記 「星とたんぽぽ」の音読授業をデザインする ●詩「星とたんぽぽ」(金子みすず)の掲載教科書……………学図3上 星とたんぽぽ 金子みすず 青いお空のそこふかく、 海の小石のそのように、 夜がくるまでしずんでる、 昼のお星はめにみえぬ。 見えぬけれどもあるんだよ、 見えぬものでもあるんだよ。 ちってすがれたたんぽぽの、 かわらのすきにだァまって、 春のくるまでかくれてる、 つよいその根はめにみえぬ。 見えぬけれどもあるんだよ、 見えぬものでもあるんだよ。 作者(金子みすず)について 1903(明治36)年、山口県大津郡仙崎村(今の長門市)に生まれる。下 関市の書店で働きながら童謡をつくる。投稿詩人としてすぐれた作品を雑誌 に発表し、西条八十に「若き童謡詩人の巨星」とまで賞賛された。大正15年 発行の童謡詩人会編の童謡集に北原白秋、野口雨情らと並んで作品が一点収 められているが、広く世にひろめられることなく、離婚後の1930(昭和5) 年に26歳の若さで自ら命を絶った。埋もれていた詩は、童謡詩人・矢崎節 夫によって発掘紹介された。 故郷長門市には、金子みすず記念館があり、関連資料が展示されている。 毎年、3月10日に「みすず忌」が開催されている。 教材分析 この詩の導入指導の仕方はいろいろあるでしょうが、ここでは音読から導 入する指導方法と視写から導入する指導方法とについて書きます。 (1)音読からの導入指導 はじめに詩全体の黙読をさせます。事前に「みえぬ」「すがれた」「か わら」「すき」などの古語表現については板書やカードに書いておいて辞書 的意味を初めから提示してしまいます。しょっぱなから黙読をさせます。黙 読をしていく中で何かしら分ってくること、浮かんでくることがあるでしょ う。なにかしらイメージが浮かんでくるでしょう。そのイメージをもとに微 音読で小さく音声表現をさせます。 次に、全員ばらばらに、自分の好きな声の大きさで、自分が好きなよう に声に出させて音声表現させます。 それから、2、3名の児童に指名読みをさせます。ここでは、七五調の リズムの流れで読んでほしいなあ、読ませたいなあ、気づかせたいなあ、と 思います。心地よい響きのリズムの流れがあることをつかんでほしいなあと 思います。そんなリズムで読ませたいなあと思います。 それから話し合いに入ります。意味内容でわかってきたことは何か、場 面の様子や気持ちなどで分ってきたことは何か、意味内容で分らない文章個 所はどこか、などについて話し合っていきます。ここから解釈深めの話し合 いを始めていきます。 (2)視写からの導入指導 はじめに詩全体を視写させます。視写をさせると、詩の言葉の一つ一つ を確かにおさえることができます。書き写すことによって目で読むだけでは 気づかなかった詩の言葉を確実におさえて反応する、読み解くことができる ようになります。 視写するとき、事前に、題名は何か、作者は誰か、なん連の詩か、第一 連は何行か、第二連は何行かぐらいは確認してから書き始めたほうがよいで しょう。三年生ですから、「連」という言葉を指導してよいでしょう。 次に、この詩を視写して気づいたこと、たとえば昔の言葉(文語表現) があること、くりかえし表現があること、リズム表現があることなどを発表 させます。また、意味内容で分ってきたこと、気づいたことなどを発表させ ます。意味内容が分らない個所なども発表させます。こうしてイメージ深め の話し合いをしていきます。 これは本HPの読者からの指摘で気づいたことですが、「見えぬけれど もあるんだよ」と「見えぬものでもあるんだよ」と違っていることに気づく ことはとても重要です。「けれども」と「ものでも」と違っています。うっ かりすると、どちらか一方の繰り返しと間違えて読んだり視写したりしがち です。はじめ、わたしも間違えていました。この違いを話し合うと、意味内 容の読み取りがより容易になりますね。 「昼のお星」を「「夜のお星」と間違えてうっかり視写する児童もいる かもしれません。「昼のお星」と「夜のお星」との違いについて話し合うこ とは、この詩の意味内容の読み取りにとても重要ですね。 (3)教師の解釈 教師なりの一応の解釈を持って授業に臨みましょう。以下は、荒木の個人 的な解釈です。 何が「見えぬけれどもあるんだよ」と言っているのでしょう。題名「星 とたんぽぽ」に関係しているようです。第一連が「星」の例、第二連が「た んぽぽ」の例を出しています。この詩をよく読んでいくと、「星」は「昼の 星」のことであり、「たんぽぽ」は「たんぽぽの根」のことであると分って きます。この詩では「みえぬけれどもあるんだよ」の例として、この二つを 挙げています。 この詩はリズム調子がよく、調子をつけて気持ちよく音読できることに 気づくでしょう。そのわけは各行が文節ごとに「3・4・5」「3・4・ 5」の「ことばかず」になっていることからきていることに気づかせたいで す。「かわらの すきに だァまって」」だけが「4・3・5」になってい る例外があります。 前二つを足してみよう。「3+4=7」です。この詩は、五七調とか七五 調とかで言えば、七五調の詩ということになります。 (4)語句について この詩には古語表現があります。子ども達はこの詩を素直に読めば大体 の意味内容は推察できるのではないでしょうか。 「みえぬ」は「みえない」であることは推察がつくのではと思います。 「かわらのすきに」は、ここはたんぽぽの根が根付いて、生え出てくる のですから「川原」でなく「瓦」であること、「すき」は「すきま」だろ う、ぐらいは推察がつくのではと思います。「すき」は「家が少しのすきも なくびっしりと建っている。」などの文例で分からせることもできます。 「すがれる」は、子ども達はかなり推察困難でしょう。大辞林(三省 堂)には下記のように書いてありました。学図3上の教科書には、「草木や 花がしおれ、かれる」と、左下個所に小文字で注記が書いてあります。 すが・れる〔尽れる、末枯れる〕 (1)草木などが、冬が近づいて枯れはじめる。 (1)盛りがすぎて衰えはじめる。 「お空のそこふかく」の「そこ」は、普通は「なべの底」「ビンの底」 などと下部のことを指しますが、ここでは「青いお空」の「底」が「深い」 と、上部のことをさしていることに気づかせます。「奥深く」ということで しょうか。 比喩表現では、単純に「海の小石のように」と書けばいいんでしょうが 「3・4・5」の韻律をふむために「海の小石のそのように」という表現に なったのでしょう。「その」は何を指しているのでしょうか。単に韻律の語 呂を揃えるだけなんでしょうが、指示内容を考えるとすれば「海の小石」な んでしょうが「しずんでる」でも間違いとは言えないでしょう。「海の小 石」とは「砂浜の小石」でなく、「海底深く沈んでいる小石」であることに 気づかせたいです。 (5)キーセンテンス(重要な詩文) 第一連では、「昼のお星はめにみえぬ。見えぬけれどもあるんだよ」で す。その「昼のお星はどんな星かというと」「海の小石のように、青いお空 の底深く、夜が来るまで沈んでる。」星なのです。「昼の星は存在するので す。昼なので太陽の光が明るすぎて、昼の星は見えない」というわけです。 太陽に光線の反射がどうこうの科学的な説明は三年生なので必要ないでしょ う。 第二連では、「つよいその根はめにみえぬ。見えぬけれどもあるんだ よ」です。その「つよい根」はどんな根かというと、「散って枯れたたん ぽぽの種子が、地面に敷かれている瓦と瓦との隙間にひっそりと隠れてて (根づいてて)、春がくると力強く地面に生え出てくる」そういう強い根な のです。 (6)主題・思想 教師が「なぞなぞあそびをしましょう」と誘いかけます。「見えないけ れど、あるものなあーんだ」と問いかけます。「これはまじめななぞなぞ問 題です」とヒントを与えます。 教師が「金子みすずさんは、「昼の星」と「たんぽぽの根」の例を挙げ ていました。ほかに、何があるでしょうか。」と問いかけます。 あなたの学級児童は、どんな答えを言うでしょうか。「ばいきん」「ひ かり」「かぜ」「くうき」などと答えるかもしれません。できたら、「お母 さんの愛」とか「友情」とか「やさしい気持ち、心遣い」とか「そっといい ことをしてあげる」とか「誰かさんのにくしみの心」とか「他人の胸の中」 とかまで出たらすばらしいですね。 音声表現のしかた ≪全体的には≫ この詩は、全体をゆっくりと、はぎれよく音声表現するとよいでしょ う。意味内容をかみしめて、ゆっくりと押し出す出すようにして、意味内容 のつながりや切れを意識してたっぷりと音声表現するとよいでしょう。 また、音数律のリズムにのって音声表現します。「3・4・5」のリズ ムにのって、リズムの気持ちよさや響きを楽しんで音声表現します。 各連の最後にある繰り返しの二行「見えぬけれどもあるんだよ」の詩文 は、二つとも同じ音調にしないで、二つに変化をつけて音声表現するとよい でしょう。たとえば、一行目のそれは、軽く、ゆっくりとたっぷりと読み、 二行目のそれは思いをたっぷりとこめて、力強く目立たせて読んで、「見え ぬ」「けれども」「あるんだ」「よ」のように区切って、間をあけて、これ も目立たせて音声表現するのもよいでしょう。 ≪第一連では≫ 比喩表現があります。昼の星を、海の小石に喩えています。昼の星は、 まるで海の小石が海底深くに沈んでいるように、青い空の奥深くに沈んでい て、目に見えないが(存在して)あるんだよ、と表現しています。 ほんとは「海の小石のそのように」は、第一行目に位置している語順な はずです。「まるで海の小石のそのように」+「青いお空のそこふかく夜が くるまで沈んでる昼のお星は」+「目に見えないがあるんだよ。」、という 通常の全体的な語順になっているはずの文です。「昼のお星の」の上部に長 たらしい体言修飾語はついている文だと言えます。 ですから、「青いお空のそこふかく、海の小石のそのように、夜がくる まで沈んでる」+「昼のお星」とつながるようになります。「夜がくるまで しずんでる」の「る」で文終止した、言い納める音調にしないようにしま す。「る」で下がって、切れてしまうと、「昼のお星は」につながってい く、係る音調のつながり方が分らない読み方になってしまいます。 「る」は「昼のお星」につながる音調、つまり平調にして、言い納めな い音調、次へとつながる音調にして音声表現するようにします。「かくれて る、つよいその根はめにみえぬ。」の「ぬ」まで来て、ここで下がる文終止 の音調にして言い納めます。 第一連で強調する個所は、「昼のお星はめにみえぬ。」を強めに目立た せて音声表現し、一番目の「見えぬけれどもあるんだよ」を軽く、ゆっくり と読み、二番目の「見えぬものでもあるんだよ」を思いをたっぷりこめて力 強く読んで、「見えぬ」・「ものでも」・「あるんだ」・「よ」・のように 区切って、間をあけて、目立たせて音声表現するのも一つの方法でしょう。 上述とはちょっと違って、「昼のお星はめにみえぬ」「見えぬけれども」 「見えぬものでも」を強調して音声表現する方法もあります。 ≪第二連では≫ 第二連も、第一連と同じことが言えます。 「ちってすがれたたんぽぽの、かわらのすきにだァまって、春のくるま でかくれてる、つよい」+「その(たんぽぽの)根は」+「めにみえぬ」、 という修飾関係と主述関係になっています。 ですから、各行ごとの行末で軽く区切って音声表現しつつも、そうした 修飾関係や主述関係になっていることを頭に入れて音声表現しなければなり ません。 第二連も「昼のお星は、目に見えぬ」を強めに目立たせて音声表現し、 一番目の「見えぬけれどもあるんだよ」を軽く、ゆっくりとたっぷりと読 み、二番目の「見えぬものでもあるんだよ」を思いをたっぷりこめて、力強 く目立たせて読んで、「見えぬ」・「ものでも」・「あるんだ」・「よ」・ のように区切って、間をあけて、ここを目立たせて音声表現するのも一つの 方法でしょう。 上述とはちょっと違って「つよいその根はめにみえぬ」「見えぬけれども」 「見えぬものでも」を強調して音声表現する方法もあります。 トップページへ戻る |
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