音読授業を創る そのA面とB面と 06・6・2記 「動物たちのしぐさ」音読授業をデザインする ●「動物たちにしぐさ」(加藤由子)の掲載教科書………………大書3上 筆者について 加藤由子(かとう よしこ)。1949年大分県生まれ。日本女子大学 卒業。生物学(動物行動学)専攻。卒業後、移動動物園の仕事にたずさわ る。1976年にフリーとなる。現在、動物関係のライター兼エッセイスト として活躍中。ヒトと動物の関係学会理事。 主な著書として『幸せな猫の育て方』『ネコの気持ちを聞いてごら ん』『雨の日のネコはとことん眠い』『あなたの猫の偏差値は』『ゾウの鼻 はなぜ長い』『クジラも海でおぼれるの?』『賢い猫の遊ばせ方』など多 数。 題名よみ 題名は「動物たちのしぐさ」です。この文章は動物たちのしぐさについ て書いてあるということが分かります。 はじめに、「動物たち」について具体化する話し合いをします。子ども 達は、サル、イヌ、ウシ、ウマ、ヤギ、カバなどと答えるでしょう。人間も そうです。魚類もそうです。昆虫もそうです。個別名を挙げていったらきり がありません。 次に「しぐさ」について具体化する話し合いをします。教材文では「し ぐさ」とは、「体で表すことばだ」(61ぺ)と書いてあります。「体で表 す」ですから、身体の外部・内部にあらわれでた動作、表情であり、かつ、 「ことば」ですから、何かの意味内容を相手に伝える道具・手段としての信 号・合図・サインと考えることができます。 まず、人間のしぐさについて語り合ってみましょう。人間が泣いている しぐさ、考えているしぐさ、驚いているしぐさ、笑っているしぐさ、怒って いるしぐさ、怒られているしぐさ、走っているしぐさ、跳びはねているしぐ さ、ピアノを弾いているしぐさ、……など、それらしぐさ挙げさせ、それら しぐさを子ども達にさせてみると、「しぐさ」の概念がよく理解できるよう になるでしょう。 他の動物たちについても、それらのしぐさについて語り合ってみましょ う。なんの動物の、どんなしぐさがあり、何の意味を表しているかについて 語り合ってみましょう。あまり深入りすると本教材文の内容に入ってしまい ます。適当なところで切り上げましょう。「では、教科書の本文に入りま しょう」と誘いかけます。 「問題の文」と「答えの文」 この説明文の指導では「問題の文」と「答えの文」という概念を知らせ ることが重要です。「問題の文」は「問い」とか「問いかけ」とか「問いか け文」とか「問題文」とか「課題提示文」とか言われます。 導入指導として、たとえば分りやすく算数で考えさせます。文章題には 「問題の文」と「答えの文」があることは知っています。「公園で3人遊ん でいました。そこへ六人、来ました。ぜんぶで何人になりましたか」は「問 題の文」です。「3+6=9、9人」は「答え(の文)」です。 次に教科書本文の冒頭の見開き(60ぺと61ぺの全部)の文章を黙読また は音読させます。ここの文章個所で「問題の文」はどこで、「答えの文」は どこかを考えさせます。 はじめの4行分が「問題の文」だ、5行目から61ぺの12行目までが 「答えの文」だと答えるでしょう。 61ぺの最後の2行分は、「問題の文」か「答えの文」か、どっちかに強 引に決めつけて答えさせます。どちらかというと「問題の文」だと答えるで しょう。 「問題の文」をA君に音読させます。「答えの文」をB君に音読させま す。二個所の読み手を変えることで「問題の文」と「答えの文」との相違を はっきりと意識づける指導になります。A君を「問題を出す人、質問する人」、B君を「答える人、解答者」と呼び、二者の分担読みで音読させるのもいい でしょう。 こうすると二者(問題の文、答えの文)の読み方の音調や語り口調が変 わることにも気づくでしょう。冒頭部分だけでなく、この教材文全文を、こ うした読み手を変える方法の音読で読ませていきます。 あるいは、赤色画用紙に「問題の文」を視写させ、黄色画用紙に「答え の文」を視写させます。あるいは、赤鉛筆の枠で「問題の文」個所を囲み、 黄色鉛筆で「答えの文」個所を囲みます。こうして二者の相違を意識づける 指導をするのもよいでしょう。 同じようにして次の見開き(62ぺと63ぺの全部)について、「問題の 文」はどこ、「答えの文」はどこ、と問いかけます。62ぺ1行目から7行目 までが「問題の文」だ、8行目から11行目までが「答えの文」だと答える でしょう。12行目から63ぺの3行目までが「問題の文」だ、4行目から6 行目までが「答えの文」だと答えるでしょう。 63ぺの7行目から9行目までは「これは、なにを表しているでしょう か。」という質問文を最後に付け加えさせて、問題文に書き換えさせます。 (この「動物たちのしぐさ」は、子ども達に親しみのある題材内容であって とてもいいですが、説明文としての教育指導の学習財としての条件具備はか なり悪い、文章記述の仕方がよくありません。)63ぺの10行目から14行 目までは、それの「答えの文」個所となります。 64ぺの1行目から3行目までは「これは、なにを表しているのでしょう か。」の質問文をつけて「問題の文」に書き換えます。その「答えの文」 は、4行目から7行目までとなります。 64ぺの8行目から最終行までは本教材文全体のまとめ・整理となってい ます。 音声表現のしかた 問題の文は、この動物は、「これこれ、こういうしぐさをする。このし ぐさは何を表しているでしょうか。」という形式です。つまり、あるしぐさ 事例・事実を書いて、次に質問文がある、という文章形式になっています。 それぞれのしぐさの事例・事実については、教科書の下段の写真を見れ ば、それら文章記述がどんな様子かが映像としてよく分かります。 しぐさの事例・事実個所を音声表現するときは、読み手は文章を追いな がら、読み手がしぐさの「それらしさ」の動作化・表情化をするのもよい方 法です。 たとえば、「ゾウが大きな耳をぱたぱたふる」を読むときは、読み手が 手のひらを自分の耳にかざしてパタパタさせてみましょう。「イヌが耳をピ ンと立て、鼻にしわをよせ、歯をむきだし、うなるしぐさ」を読むときは、 読み手は片手(両手)を自分の耳にかざしてピンと立ってるしぐさ、歯をむ き出しにしてるしぐさ、ウーと声を出してうなるしぐさをさせましょう。ネ コがえものをねらっているしぐさは、まさにストーカーの動作をします。そ の読み声はしぜんと、そっと、密やかに、小声で、息だけの声で、ゆっくり とした、しのびこむような音調になるでしょう。 読み手がこうしたしぐさのまね、それらしい動作化を実際にやりながら 音読すると、音読の読み声にも、しぜんと音声表情(声の調子、上げ下げ、 大小や強弱や速さの変化、音色の変化、抑揚)が加わってくるようになるで しょう。 答えの文は、「これこれのしぐさは、これこれ、こういうことを表して います。」という文章形式になっています。音読するときは、「これのしぐ さは、これこれだ」というひとつながりで、断定的かつ返答的な音調で音声 表現するようにします。 特にキイ・センテンスは粒立てて、はっきりと、はぎれよく、読みま しょう。 たとえば、「ゾウは耳をふることによって体をひやしたり、体に風をお くったりしているのです。」がそうです。イヌでは、「これらのしぐさは、 おこったり、こわがったりしていることを表しています。」がそうです。ネ コでは、「これは、何かをつかまえようとねらっているのです。」がそうで す。これらは他の文章個所より目立たせて、ひとつながりに、はっきりと、 宣言的に、断言的に、音声表現します。 注意事項 説明文の読解指導では、表を作って書き入れ、それでまとめをするとい う学習活動がよく行われます。「それぞれの動物のしぐさは何を表していま すか。表に書き入れてまとめましょう。≪動物名・しぐさ・表しているこ と≫を縦枠に、それぞれの動物名を横枠に。」というような表にして書き入 れさせます。 この指導はとても重要な学習活動です。しかし、この学習作業にスト レートに向かい、これのみを目標において、これだけで終了してしまうと、 これは国語科授業でなく、社会科や理科や総合学習の読解方法になってしま います。内容さえ読みとれれば、それで十分、という到達目標です。 書いてある内容さえ読みとれれば、それで終わりという学習活動は、国 語科の授業ではありません。国語科の授業は、文章形式をおさえて、文章の 書かれ方や語句の使い方に即応した読み取りの仕方を学習するところに特徴 があります。国語科授業には、文章構成や語句の繋がり方と対応させつつ文 章内容を読み取っていく指導が欠かせません。 トップページへ戻る |
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