音読授業を創る そのA面とB面と 07・6・2記 「ちいさい おおきい」音読授業をデザインする ●「ちいさい おおきい」(こうやま よしこ)の掲載教科書……教出2下 ちいさい おおおきい こうやまよしこ ちいさい おおきい ちいさい おおきい おおきくって おおきくって おおきくって ちいさい ぞうさんの なみだ ちいさい おおきい ちいさい おおきい おおきくって おおきくって おおきくって ちいさい かばさんの むしば ちいさい おおきい ちいさい おおきい ちいさくって ちいさくって ちいさくって おおきい かえるの おなか ちいさい おおきい ちいさい おおきい ちいさくって ちいさくって ちいさくって おおきい ありさんの にもつ (以下、省略) 作者(こうやまよしこ)について 香山美子。1928年、東京生まれ。児童文学作家、童謡詩人。金城女子 専門学校国文科卒。在学中に新聞の懸賞童話に当選。日本児童文学者協会の 設立当初から会員。いぬいとみこさんらと同人誌「麦」を創刊。 小説『あり子の記』(理論社)により第一回NHK児童文学奨励賞、第三回 日本児童文学者協会賞受賞。のちに日活にて映画化。 1958年頃から、ラジオ・テレビの「おねえさんといっしょ」・「おかあ さんといっしょ」など、NHKの幼児番組の台本を執筆し、童謡の作詞も手 がける。1975ねんには『げんこつやまのたぬきさん』により、ゴールデン・ ディスク賞受賞。 日本児童文学者協会賞、NHK児童文学奨励賞、高橋五山賞など受賞。 「あり子の記」「ぼくはだいすけだいちゃんだ」「たんじょうびのまほうつ かい」「おはなしゆびさん」 童謡詩集「4月ぼくは4年生になった」 下記のWebアドレスは香山美子さんのホームページです。 http://kouyamayosiko.net/ 教材分析 この詩は全六連で、各連が五行で構成されています。 一連と二連とは、体が大きくって、体のわりに目立って小さいところが あるもの、が書かれています。 三連と四連とは、体が小さくって、体のわりに大きいところがあるもの が書かれています。 五連は体が小さくって、体に似合って目立って小ちゃいところがあるも の、が書かれています。 六連は体が大きくって、体に似合って目立って大っきなところがあるも の、が書かれています。 さらに各連ごとを詳細にみてみましょう。 一連 体が大きいぞうさんの、目立って小さいぞうさんの目。 二連 体が大きいかばさんの、目だって小さいかばさんの虫歯。 三連 体が小さい蛙の、目立って大きい蛙のお腹。 四連 体が小さい蟻さんの、目立って大きい蟻さんの荷物。 五連 体が小さいめだかの、目立って小さいめだかのあくび。 六連 体が大きいくじらの、目立って大きいくじらのくしゃみ。 この詩は、各連が同じ韻律になっています。 各連が「4・4/4・4/6・6・6/4/5・3」の繰り返しリズムで構 成されています。各連が、同じ韻律、しかも同じ繰り返しの語句が多いです から、音声表現すると、しぜんと、調子づいて、心地よく、リズムにのっ て、軽快に音声表現することができます。 音声表現のしかた 小学校1・2年生の音読指導の一般的な指導事項については、本ホーム ページの「表現よみの授業入門」の中の「低中高学年別の音読指導のポイン ト」に書いてあります。そこをお読みください。本稿では本教材にかかわる 音読指導のみについて書くことにします。 同じ語句が繰り返してある場合は、一つ一つの語句の読み音調に変化を つけましょう。 第一連や第二連でいえば、「おおきくって おおきくって おおきくっ て ちいさい 何の何」の個所、三つの「おおきくって」は同じ読み音調を ならべることはしません。一番目の「おおきくって」よりは二番目の「おお きくって」を強く高めに読んで目立たせます。二番目よりは三番目の「おお きくって」を更に強く高めに読んで目立たせ、強調します。次(四行目)の 「ちいさい」を声量を極小にして、ひそやかに「ちーさい」と伸ばして読ん で「小ささ」を強調します。五行目「何の何」の「何」は、はぎれよく、一 つ一つの音を区切るようにしてゆっくりと読んで目立たせ、「何の、何だ」 と宣言・断言しているように堂々と音声表現していきます。 上述したことは、第二連の場合も同じです。 第三連や第四連の「ちいさくって ちいさくって ちいさくって おお きい 何の何」の場合も考え方は同じです。「ちいさくって」ですから、逆 に「小ささ」を強調するために一番目の「ちいさくって」よりは二番目を声 量を小さく、二番目より三番目の「ちいさくって」を更に声量を小さくして 音声表現していきます。つづく「おおきい」(四行目)は声量大にして「お ーきーいー」と伸ばして目立たせ、「大きさ」を強調します。五行目の「何 の何」は、先の第一連で書いたことと同じです。 各連の四行目の「おおきい」・「ちいさい」は、前段の「ちいさくっ て」の「小ささ」、「おおきくって」の「大きさ」を強調した読み音調と対 比させてわざと声量大または小にして大げさに音声表現するとよいでしょ う。 つまり、四行目の「ちいさい」は、前段の「おおきくって」の「大き さ」を強調した読み音調と対比させてわざと声量小、ひそやかに、息だけみ たいにして音声表現するとよいでしょう。四行目の「おおきい」は、前段の 「ちいさくって」の「小ささ」を強調した読み音調と対比させてわざと声量 大にして大げさに音声表現するとよいでしょう。 各連冒頭の二行は、すべて「ちいさい おおきい / ちいさい おお きい」です。その後は各連の意味内容というか、各連ごとに本文内容の詩句 がつづいています。これら冒頭の二行言葉は、各連の本文内容へ導入する呼 びかけ言葉、導入のためのサイン言葉と考えられなくもありません。 これら導入の二行を、児童全員で「ワッショイワッショイ」の掛け声の リズムにして、そのリズム音調・節(ふし)にして「ちいさい おおきい ちいさい おおきい」と音声表現します。そしてつづく本文内容(三行目、 四行目、五行目)は、上述したような読み調子にして、つまり節(ふし)の ついてない普通の読み音調にしていきます。こんなことば遊びみたいな音声 表現をするのもおもしろいでしょう。 その他の指導方法 指導方法(1) この詩の第一時、はじめての導入指導で、「ぞうさん」「かばさん」 「かえる」「ありさん」「めだか」「くじら」の動物名を隠した教材文 (詩)を児童に配布します。「隠してある個所に何の動物名が入りますか」 と問いかけます。 こんな導入指導も考えられるということです。わたしだったら、こんな 指導はしませんが、あってもよいでしょう。 わたしだったら、穴あき詩は与えません。全文記入の詩を与え、はじめ に黙読をさせ、次に微音読をさせます。そして「内容でおもしろいところ、 たのしいところ、書き方でわかったところ、おもしろかったところ、たのし かったところ、わかりにくいところ」などを発表しましょうと問いかけま す。こうして解釈の話し合いに入っていきます。 指導方法(2) この詩の授業過程の終末時、発展指導として「動物名を変えてみよう。 他の動物を当てはめてみよう」と問いかけます。「動物名だけの変更をしよ う。ほかの動物では何の動物は入るでしょう」と問いかけます。 大きな動物では「きりん、ばく、ひぐま、パイソン、かば、ゴリラ、さ い」などが発表されることでしょう。小さな動物では「めだか、グッピー、 だんごむし、かめむし、てんとうむし」などが発表されることでしょう。こ れらの動物名を当てはめて音声表現する遊び学習をするのもおもしろいでし ょう。 また、「ぞうさんのなみだ」を「ぞうさんのめくそ」、「かばさんのむ しば」を「かばさんのしっぽ」、「かえるのおなか」を「あめんぼのあ し」、「ありさんのにもつ」を「くもさんのにもつ」、「めだかのあくび」 を「てんとうむしのあし」、「くじらのくしゃみ」を「わにさんのあくび」 などに変えて遊ぶのもおもしろいでしょう。 指導方法(3) 大きい体の動物にある、極小部分。小さい体の動物にある、特大部分。 小さい体の動物にある、大きな荷物。他にもありますが、子ども達に画用紙 を配布して、これらの一つ一つを一つの場面の絵に描かせてみたらどうでし ょう。 絵にすると、よりイメージが明確になり、文章をイメージする力が身に つくことでしょう。絵の描写力を伸ばすだけでなく、文章の描写力を伸ばす 学習にもなります。 トップページへ戻る |
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