音読授業を創る そのA面とB面と 08・5・15記 「のはらのシーソー」音読授業をデザインする ●「のはらのシーソー」(たけしたふみこ)の掲載教科書………東書2上 作者(たけしたふみこ)について 竹下文子(たけした ふみこ)。児童文学作家。昭和32年、福岡県北 九州市に生まれる。本名:鈴木文子。東京学芸大学教育学部を卒業。21歳 のとき「星とトランペット」でデビュー以来ファンタジーを書き続けてい る。路傍の石文学賞、日本童話会賞など受賞。 「土曜日のシモン」「ぼうしの好きな女の子」「風時間のピエロたち」 「わたしのおてつだいねこ」「黒ねこサンゴロウ」シリーズなど。「のはら のシーソー」は、読み聞かせ用のお話集「ぴいすけとぷうすけのおはなし」 の中の一編である。 教材分析 この物語の登場人物は次のとおりです。 いのしし(とうさん、ぴいすけ、ぷうすけ、かあさん) のねずみ(5ひき)、ちょうちょ、みつばち、てんとう虫、とかげ、しゃく とり虫、かたつむり、あり(たち) 授業への導入として、これら動物の写真や絵を図鑑などで事前に見せておく 方がよいでしょう。そうすると場面の様子が浮かべやすくなるでしょう。 「ぴいすけ」と「ぷうすけ」とは、双子の兄弟であることをはっきりさせて おきましょう。ぴいすけが兄で、ぷうすけが弟なのでしょうか。まあ、どっ ちでもいいでしょう。二人の名前は、音読するときにリズミカルに読めて、 音の響きがいいですね。音読していて楽しく読めるメリットがあります。 「大工しごとも」の「も」に注目させます。大工の仕事だけでなく、多分、 お料理も、お掃除も、畑仕事も、魚釣りも、ほかの仕事も何でも「じょうず です」なのでしょう。何でも得意で、「じょうず」にやってしまうという意 味の「も」なのでしょう。 「シュコシュコ、のこぎりで きって、トントン、くぎを うって、りっぱ な そうこを つくりました」という表現には、わりと簡単に、らくに、す ぐに、そして上手に、立派に、作り上げてしまったという、そんな感じに読 みとれます。 「ぴいすけと ぷうすけは 大よろこびです」と書いてあります。二人は、 どんな顔付きで、どんな言葉をしゃべり合って、どんな喜びの遊び行動をし たのでしょうか。想像させてみましょう。 のねずみたちは「シーソーが うらやましくて ずっと 見て いたので す」と書いてあります。いのししの双子の兄弟がシーソーで遊んでいる様子 を見ながら、のねずみたちはどんな思いで「うらやましく、ずっと見ていた か」を話し合わせてみましょう。ひとり言をさせてもよいですね。 「のねずみたちがいちれつになって」と、あります。シーソーの片側の端が 地面に着地していたのでしょう。それで「いちれつになって ちょろちょろ と かけのぼる」ことができたのでしょう。 のねずみたちが「とんだり はねたり」と書いてあります。「とぶ」も「は ねる」も、動作としてはそんなに大きな違いはないく、「とびはねる」とい う一単語の複合語がありますが、それと同等の資格をもつ「とんだり はね たり」だと思われます。このら言葉使いの違いにあまり深入りして詮索する と迷路にはまってしまいますから注意が必要です。 「みんなの シーソーです」とは、どんな意味でしょうか。所有は、ぴいす け、ぷうすけ、そのお父さんです。ここでは、現在は、だれのものという決 まりに縛られることなく、だれでもがみんなで楽しく遊べるシーソーになっ ています、ということなのでしょう。 この作品のテーマは、のねずみ5匹だけでなく、ちょうちょ、みつばち、て んとう虫、とかげ、ありたちが来たことによりシーソーが動き出し、楽しく 遊ぶことが出来た、ということでしょう。「小さな体重の動物でも数量が増 加すればシーソーを動かすことが出来る」「小さな力でも、みんなが協力す れば、力を合わせれば、何かが出来るのだ、何でも可能になるのだ」という ことでしょう。これは、ロシヤ民話「大きなかぶ」(おじいさん、おばあさ ん、まご、いぬ、ねこ、ねずみ、の小さな力を合わせることで「大きなか ぶ」をぬくことが出来た)、また「スイミー」(小さな魚たちが一匹の大き な魚になって、まぐろを追い出すことができ、助かった)と似ていますね。 音声表現のしかた 冒頭の会話文二つは、役割音読をするとよいでしょう。読む人を決めて、つ まり配役を決めて会話させてみよう。ぼうやの方は、一人ずつでもよいし、 二人同時でもよいでしょう。親子の距離がどれぐらい離れているかによっ て、声の大きさや呼びかけ口調が変わってきます。「とーさーん、なに す るのー」というような尋ねている音調、聞いている音調にすると口調が出や すいと思われます。父親は、返答している音調にします。 「とうさん、なにするの。」 「新しい そうこを つくるんだよ。いろんな ものを しまって おける ようにね。」 「とうさんは、大工しごとも じょうずです。」の「も」をやや強めに読ん で、つまり強調して、そのあとをちょっと間をあけてから、「じょうずで す」と読み進むとよいでしょう。 (シュコシュコ、のこぎりで きって)(トントン、くぎを うって) (りっぱな そうこを つくりました)のように区切りの間をしっかりと区 切って音声表現するようにしましょう。 「木が 一本だけ あまりました」の「だけ」をやや強めに読むといいで しょう。 思い出したように、はっと気づいたように、相手に語りかけている音調で 「そうだ、いい ものを つくって やろう」を読むようにさせましょう。 (とうさんは、あまった 木で )(いえの うらの のはらに、シーソー を つくって くれました)のような区切りにして音声表現するのも一つの 方法です。あちこちで、ぶつ切りにしないほうが、意味内容のひとまとまり が分かる、読み方になります。 (ぴいすけが、こっちがわに のって)(ぷうすけが、あっちがわに のっ て)(キッコン パッタン)(キッコン パッタン)(シーソーは かわり ばんこに)(上がったり 下がったり)(上がったり さがったり)のよう な区切りにして音声表現するとよいでしょう。(キッコン パッタン) (キッコン パッタン)の「擬音語」は「音マネ言葉」ですから、リズミカ ルに、軽快に、調子をつけて読むようにします。 「ごはんですよー。かえってらっしゃーいー」のように伸ばして、距離はか なり離れているでしょうから、遠くへ届けるような大きな音量にして、呼び かけ音調にして音声表現するとよいでしょう。母親の呼びかけ音調です。母 親の口真似音調がないよりはあったほうがいいですね。無理な作り声は必要 がありません。母親らしく聞こえればよいのです。 「ぴいすけと ぷうすけが かえった いった あと。のはらの たんぽぽ の はっぱの かげから、ちいさな かおが 五つ、そうっと のぞきまし た」のように、「あと」の次に句点(マル)がついてはいるが、意味内容は 次へとつづいています。文の思いは述文素として次の文へと接続していま す。このへん、児童に理屈で説明するのは困難ですので、下記の二つの読み 方を教師がやってみせます。教師が声に出して(1)と(2)とを読み聞か せて比較させます。どちらがよい読み方かを、感じで選択させ、(1)がよ いことを分からせます。それを児童に模倣して音声表現する練習をさせま す。 (1)「あと」のあとの句点を終止にした音調にしてしまわないで、そこで やや長めの間をあけつつも、思いは次へつながる音調にして、先へ先へと意 味内容をつなげて読み進めていく読み方 (2)「あと」のあとの句点で終止にして、そこで意味内容を閉じて、息を 切ってしまう。次を新たに切り開いて「のはらの たんぽぽの はっぱの かげから……」と読み下していく読み方 ぴいすけとぷうすけとが大喜びしてシーソー遊びをしている場面全体は、場 面の雰囲気として、明るい声立てで、騒がしい様子を出して音声表現すると よいでしょう。反対に、のネズミたちがそうっとのぞいている、そして、一 列になってシーソーに駆け上る文章個所は、静かに、小さな声で、囁くよう に音声表現するとよいでしょう。 「いくよう。せえの」は、小さな声ながらも、元気よく、力強く、掛け声を かけているように、声をそろえて音声表現するとよいでしょう。五匹全員が 声をそろえて、一斉に読むと場面の雰囲気が出るでしょう。 次の「キッコンと うごくと おもったのに、」からあとは、声を落とし て、がっかりした気持ちを込めて、ゆっくりと読み進めるとよいでしょう。 動物たちは、シーソーをゆらしてみたり、力強く踏んづけてみたり、顔を 真っ赤にしてありったけの力を出してシーソーを動かそうとしたけれども、 びくともしなかったのでしょう。 「そのときです」からあとは、明るく、元気よく、読み進めていきます。 「のせて、のせて」「わたしも」「ぼくも」は、ちょうちょ、みつばち、て んとう虫に会話文の配役を割り当てて役割音読するのもよいでしょう。「の りたい、のりたい」という気持ちを込めた音声表現にさせましょう。 二番目の「のせて、のせて」は、とかげ、しゃくとり虫、かたつむり、あり たち、それぞれに同じ「のせて、のせて」をばらばらに言わせてもよいし、 一斉に言わせてもよいし、自分が考えたオリジナルの言葉を言わせてもよい でしょう。 「ようし、もう 一回。いくよう、せえの」は、誰がしゃべった言葉でしょ うか。話し手をはっきりさせることが大切です。そうして、それぞれに役割 音読をさせましょう。ここは、ばらばらではいけません。みんなの気持ちを 一つにして、一斉に声をそろえて、力強く、掛け声をかけてるように力強く 言うようにします。 ここの「キッコン」「パッタン」は、「ゆっくりだけど うごきました」と 書いてあります。「ゆっくり」動いているのです。「キーーコン」「パーー タン」のように伸ばして音声表現すると「ゆっくり」さが出てくるでしょ う。。「キーーコン」の「コン」、「パーータン」の「タン」は、シーソー の片端が地面に接地して出した音とも考えられます。それならば、「コン」 「タン」はそんな気持ちをこめて、それらしく音声表現することもできま す。 「うわあい、おもしろい。もう、一回」は、学級全員で、大喜びしている表 情をしながら読み、学級全員が動物たちになったつもりで音声表現すると、 学級全員で楽しめます。もちろん、台詞の役割を決めて、文章場面にあわせ て一斉に音声表現することも大切です。 トップページへ戻る |
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