音読授業を創る そのA面とB面と   06・12・12記




「はるですよ」の音読授業をデザインする




●詩「はるですよ」(与田準一)の掲載教科書…………………学図2上



             はるですよ
               よだ じゅんいち

            わらびの 太郎が
            目を さます。
          わらびの次郎が
            目を さます。

               はるですよ。
               はるですよ。

            かえるの 太郎が
            かお あらう。
            かえるの 次郎が
          かお あらう。

              はるですよ。
              はるですよ。



                 
作者(与田準一)について


  1905年〜1997年。詩人、作家、評論家。福岡県生まれ。尋常高等小学校を
卒業後、検定をパスして小学校の代用教員となる。当時の自由教育思潮の影
響を受けて児童の綴り方や自由画を「赤い鳥」に投稿。童謡・童話も書いて
投稿し、北原白秋に認められる。28年、小学校を退職し、北原白秋を慕っ
て童謡詩人を志し、上京して北原白秋家に寄宿し、その子息の家庭教師とな
り、以後文筆や編集を業としつつ、白秋を師父と仰ぐ。50年から10年間
日本女子大学の講師を務め、62年から日本児童文学者協会会長を二期勤め
る。
  モービル児童文学賞、サンケイ児童出版文化賞大賞を受賞する。「アン
デルセンどうわ」「石になった牛かい」「イソップ童話集」「海さち山さ
ち」「えばなしのほん」「和尚さんときつね」「およげないかえる」など多
数。

             
教材分析


  まず題名「はるですよ」についての話し合いをします。
  「はる」は、季節の「春」と考えるのがふつうでしょう。「はるです
よ」は、誰かが誰かに知らせている、呼びかけて伝達している言い方です。
「春が来ましたよ」「春になりましたよ」「春のまっさかりですよ。春が
いっぱいですよ。」などいろいろ考えられます。
  どんなことから「春」だと言っているのでしょう。春の風景は、どんな
ところに特徴(様子)があるのでしょう。はるになって、どんな何が出現し
てきて、どんなものが見えてきたのでしょう。春を示す、どんな事実(風
景)から「はるですよ」と語っているのでしょう。「はるですよ」と語って
いる根拠はなんでしょうか。題名読みでは、春であることを示す徴表につい
て語り合い、季節「春」のイメージをふくらます話し合いをしておきます。
  次に、詩の本文を音読させます。まず黙読か微音読をさせ、どんな場面
・情景かのイメージを話し合わせます。
  「わらび」が出てきます。山育ちの子どもはよく知っている山菜です
が、都会育ちの子どもは「わらび」と「ぜんまい」の区別がつかないのでは
ないでしょうか。図鑑や絵や写真を見せたり、スーパーで売っている現物を
見せたり、「わらびとり」体験をした児童がいれば、それを語って聞かせて
もらったりすることが必要でしょう。「わらび」が分らないことには、この
詩の授業の話し合いの仲間に入ることはできません。
  また、「かえるの冬眠」という事実も知っておく必要があります。「春
になり、かえるが冬眠から覚めて土の中から出てきた。だから、長期間、ど
ろで汚れていた顔を洗うのだ。」ということも前知識として知っておく必要
がありましょう。

  与田準一さんは1905年生まれ、今からおよそ百年ほど前に生まれた
詩人です。現在の子どもにとって、この詩に使われている言葉の一部分に古
さを感じるかもしれません。与田準一さんの時代には「わらび。ぜんまい」
が春を代表する野草だったかもしれませんが、現在の子どもにとっては、春
を代表する野草は「わらび」でなく「つくし」ではないでしょうか。
  「わらび」の単語を、「つくし」「ぜんまい」「のびる」「ふきのと
う」「たんぽぽ」などの単語と入れ替えて詩全体を音読してみるのもおもし
ろいと思います。太郎、次郎という名前にも古さを感じます。「翔太」
「陸」など現在の子どもの名前に入れ替えて音読してみるのもおもしろいと
思います。
  この詩は、春が訪れて、春の喜び、春の賛歌を歌っている詩だとも考え
られます。この詩には、春の到来を、わらびの目覚め、かえるの洗顔に結び
つけて表現する発想におもしろさがあります。


           
音声表現のしかた


  この詩は「4・4・2・3・5・5」が繰り返す音律詩です。リズムが
あって調子よく、心地よい言葉の響きで音読することができます。春になっ
た喜びの気持ち、晴れやかな気持ち、うきうきした気持ちで楽しく音読する
ことができます。
  題名「はるですよ」は、「よー」と伸ばして、誰かに知らせている、呼
びかけている音調で音声表現するとよいでしょう。
  「わらびの 太郎が 目を さます」と「わらびの 次郎が 目を さ
ます」とは、二つを明確に区切って、しっかりと間を開けて音読します。
「太郎が目をさます」と次郎が目をさます」とは、同じ言葉がつづきます
が、二つで違う言葉は「太郎「と「次郎」だけです。
  「太郎「と「次郎」とを、ゆっくりと歯切れよく、目立たせて、強調し
て音声表現するとよいでしょう。二つは並記でありながら、二つは対等価値
をもっており、二つを対比し比較している感じの音声表現にして音読しま
す。

  「かえる」の個所も、同じことが言えます。「太郎」と「次郎」が違う
だけで、ほかは同じ言葉が並んでいます。「太郎」と「次郎」を目立たせ
て、強調して音声表現します。そうしないと、全体が同じ調子になって、平
板な、メリハリのない音声表現になってしまいます。
  「はるですよ。はるですよ」と二つが並記されている個所が二個所あり
ます。同じ言葉が二つ、三つと繰り返して並記されている場合は、二つ、三
つの同じ言葉を同じ音調で音声表現しないようにしましょう。同じ音調で音
声表現すると、目立たなくなり、平板になってしまい、聞き手に訴える力が
弱くなり、全体の文意・詩内容が沈んでしまいます。
  この詩文の場合は、前の「はるですよ」よりも、後ろの「はるですよ」
を高く強めて・目立たせ・強調して音声表現するとよいでしょう。ここも、
誰かに伝えている、知らせている気持ちをこめて音声表現します。

  この詩は、群読や分担読みにして音声表現するのもおもしろいでしょ
う。一例を挙げましょう。
  学級全員を四つのグループに分けた群読例です。人数をいろいろ変えて
音声表現させてみましょう。コーラスを入れることもできます。


   1グループ全     わらびの 太郎が
              目を さます

   2グループ全     わらびの 次郎が
              目を さます

   3・4グループ全   はるですよ
              はるですよ

   3グループ全     かえるの 太郎が
              かお あらう

   4グループ全     かえるの 次郎が
              かお あらう

   1・2グループ全   はるですよ
              はるですよ


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