音読授業を創る そのA面とB面と      07・5・5記




 
 「あめのうた」の音読授業をデザインする



                              
●詩「あめのうた」(鶴見正夫)の掲載教科書………………………大書2上



           あめのうた
                   鶴見正夫

       あめは ひとりじゃ うたえない、
       きっと だれかと いっしょだよ。
          やねと いっしょに やねのうた
          つちと いっしょに つちのうた        
          かわと いっしょに かわのうた
          はなと いっしょに はなのうた。

       あめは だれとも なかよしで、
       どんな うたでも しってるよ。
          やねで とんとん やねのうた
          つちで ぴちぴち つちのうた
          かわで つんつん かわのうた
          はなで しとしと はなのうた。



             
作者について


 鶴見正夫(つるみ まさお)。1926年新潟県生まれ。児童文学作家、詩
人として有名。
 早稲田大学政経学部卒業。在学中から詩や童謡を習作する。小学館、国会
図書館勤務をへて、1960年から文筆生活にはいる。1963年から11年間、阪
田寛夫らと「6の会」を結成し、新しい童謡の創作運動を行う。「あめふり
くまのこ」をはじめとして、童謡を多数創作する。1951年、童謡で文部大臣
奨励賞を受賞する。サトウハチロウ賞受賞。日本児童文学者協会新人賞受
賞。1995年、肺がんのため死亡、69歳。
 『日本海の詩』(理論社)、「鮭のくる川』(国土社)、『しなの川』
(PHP研究所)、『ふるやのもり』(フレーベル館)、『ライト兄弟』
(小学館)など。


              
教材分析


  この詩は、すべての行が「3・4・5」の韻律詩で、調子よく音読でき
ます。
  まず、子ども達に音読させてみましょう。心地よいリズムで、楽しく音
読できるでしょう。音読することの快感を覚えることでしょう。音読するこ
とが楽しくなり、音読が好きになることでしょう。
  題名は「あめのうた」です。「雨はどんな歌をうたっているでしょう
か。」と発問してみましょう。雨はひとりで歌っているのでしょうか。だれ
と歌っているのでしょうか。雨はどこの場所で歌っているのでしょうか。
  「あめのうた」とは、空から降ってきた雨つぶが、屋根に、土に、川面
に、お花に落ちて、当たって、そのときに出す音のことだと分ります。「雨
はひとりじゃ歌えない、だれかと一緒に歌う」とあります。雨と屋根・土・
川・お花とのコラボレーションだということが分ります。雨が地上の物体に
当たったときに出す音が、まるで歌を歌っているみたいだと語っているので
しょう。

  第一連と第二連とを関連づけて分りやすく書けば、次のようになりま
す。
        やねと いっしょに やねのうた
        やねで とんとん やねのうた

        つちと いっしょに つちのうた
        つちで ぴちぴち つちのうた

        かわと いっしょに かわのうた
        かわで つんつん かわのうた

        はなと いっしょに はなのうた
        はなで しとしと はなのうた

  ここにある擬音語、擬態語はどんな音か様子かを子ども達と話し合うこ
とが必要でしょう。「とんとん」「ぴちぴち」は、どちらかというと擬音語
に近く、「つんつん」と「しとしと」は、どちらかというと擬態語に近いと
いえます。どんな様子かを話し合うときの参考になります。音をまねた言葉
を「擬音語」と呼び、声をまねた言葉を「擬声語」と呼び、様子・感じをま
ねた言葉を「擬態語」と呼びますが、「擬声語」を「擬音語」に含めて呼ぶ
こともあります。また、「ころころ転がる」の「ころころ」は音なのか、
様子なのか、判然としません。どっちなのか判然としない、こうした言葉も
たくさんあります。ですから、こうした三種類の言葉を全てひっくるめて
「オノマトペ」と呼ぶこともあります。
  擬音語「とんとん」「ぴちぴち」は、それぞれ屋根に当たって出る音、
土に当たって出る音のように思えます。連続音なので「あめのうた」だから
「とんとんとんとんとん……」と連続する音なのでしょう。
  擬態語「つんつん」「しとしと」は、どんな様子なのでしょうか。どん
な様子かのイメージをふくらます話し合いが必要でしょう。荒木には、「つ
んつん」は川面に雨が鋭くつきささる感じがします。「しとしと」は雨がや
さしく、ソフトに花に愛おしそうに柔らかに触れて、包んでしまうような感
じがします。屋根も、土も、川も、お花も、嬉しそうです。楽しく一緒に
歌っているような感じがします。
  これらオノマトペは鶴見正夫さんの感性でとらえた表現言葉です。「川
はさらさら」「雨はザーザー」「にわとりはコケコッコー」とは限りませ
ん。それぞれの表現者の感性でとらえたオノマトペでよいわけです。子ども
達の一人ひとりはどう表現するでしょうか。鶴見正夫さんとは違うコトバ表
現をすることでしょう。
  「あなたならどう?」と問いかけ、各児童に作らせてみるのもよいで
しょう。ここではすべて4音のオノマトペです。4音のオノマトペにして作
らせることが必要でしょう。
  韻律詩ですから、5音でも、6音でも、すべてがそろっているならいい
わけです。ですから、すべてオノマトペの音数がそろっていることです。
  「あめは だれとも なかよしで」と書いてあります。屋根、土、川、
お花以外のもの(物体)に雨が当たったら、どんな音(様子・歌)になるの
でしょう。子ども達に作らせるのもおもしろいでしょう。
  

           
音声表現のしかた


  すべて「3・4・5」の音数律の繰り返しです。心地よいリズムの繰り返
しです。子ども達は、詩の言葉を舌で転がして、調子よく、楽しく音読する
ことでしょう。
  各連の1・2行は、相手への語りかけであり、解説や説明のコトバで
す。やや理屈っぽい調子で、聞き手へ解説している感じで音声表現すること
となるでしょう。
  各連の3・4・5・6行は、調子をつけて、歌うように、音声表現する
とよいでしょう。
  第二連の四つのオノマトペは、強く、高く、はぎれよく、目立たせて、
強調して音声表現するとよいでしょう。
  逆に、第一連にある四つの「いっしょに」は、声を低めて、小さく、弱
めて音声表現するぐらいでよいでしょう。四つの「いっしょに」がはさみこ
まれる前後の言葉は強く、高く、はぎれよく、強調して音声表現するとよい
でしょう。

  つまり、第一連の第一行目で言えば、こうです。
    「やねと」(目立たせて、強調して)
    「いっしょに」(低く、小さく、弱く)
    「やねのうた」(目立たせて、強調して)

  第二連の第一行目で言えば、こうです。
    「やねで」(低く、小さく、弱く)
    「とんとん」(目立たせて、強調して)
    「やねのうた」(低く、小さく、弱く)

  上記がすべての音声表現だというわけではありません。これらも音声表
現の一つの方法だということです。何もこうでなくちゃなければならないと
ことではありません。他にもいろいろな音声表現のしかたがあるでしょう。
いろいろと音声表現のしかたを変化させて音読することを学級全員で楽しん
でみましょう。

  群読分担読みにして音声表現するのもおもしろいでしょう。
  たとえばの例で書きます。ナレーター3名、ほか全員を等分の人数で
4グループに分けます。次のような群読にして音声表現することもできま
す。

  ナレーター1名   あめは ひとりじゃ うたえない、
  ナレーター3名   きっと だれかと いっしょだよ、
  グループ1組全    やねと いっしょに やねのうた
  グループ2組全    つちと いっしょに つちのうた
  グループ3組全    かわと いっしょに かわのうた
  グループ4組全    はなと いっしょに はなのうた

  ナレーター1名   あめは だれとも なかよしで、
  ナレーター3名   どんな うたでも しってるよ、
  グループ1組全    やねで とんとん やねのうた
  グループ2組全    つちで ぴちぴち つちのうた
  グループ3組全    かわで つんつん かわのうた
  グループ4組全    はなで しとしと はなのうた


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