音読授業を創る そのA面とB面と       08・08・15記




 
「ともだち」の音読授業をデザインする




●「ともだち」(まど・みちお)の掲載教科書……………………光村1上



              ともだち

            ともだち いるよ、
            いっぱい いるよ。
            いちねんせいだよ、
            みんな、みんな。
            あはっはっは、
            いっぱい、いっぱい。



        
作者(まど・みちお)について


  本名・石田道雄。1909年、山口県徳山町に生まれる。台北工業学校卒。
台北工業学校在学中に詩や短文を書き始め、友人と同人誌を作る。
  戦前台湾で総督府に勤めながら「コドモノクニ」「綴方倶楽部」などに
投稿。児童誌「コドモノクニ」に投稿した詩が北原白秋選で特選になり、童
謡を創りはじめる。北原白秋に詩、童謡を学ぶ。戦後帰国して、婦人画報社
に入社、子どもの雑誌「チャイルドブック」の編集に携わる。この頃より幼
児雑誌、ラジオなどで童謡を発表するようになる。
  「一年生になったら」「ぞうさん」「ふしぎなポケット」「やぎさんゆ
うびん」などの童謡がある。野間児童文芸賞、芸術選奨文部大臣賞、路傍の
石文学賞特別賞、日本児童文学者協会賞、巌谷小波文芸賞、国際アンデルセ
ン賞、朝日賞など受賞。
  ペンネームについて、あるところで次のように語っている。
「本名は石田道雄ですが、若いときにペンネームのつもりでつけたんです
ね。つけた途端にいやになりまして……(笑い)。ところが恩師の北原白秋
先生が「いい名前じゃないか」とおっしゃったので、それじゃ、このままで
いいだろうと、それからずっと使っているわけです。「まど」というのは、
家でも何でも、外に通じる窓がなかったらどうにもなりませんね。窓を通じ
て外の景色を見たりします。そんな感じでつけたんです。」と。


            
教材について


  「ともだち」は、5月配当教材です。小学校入学時には不安でいっぱい
だった子ども達も、学校生活に慣れてきている頃です。すでに顔なじみに
なった子供同士で、休み時間になると、話しかけたり、話しかけられたり、
遊びに誘ったり、誘われたりの友達関係ができてきている時期になってきて
いる頃です。
  そんな時期に「学級児童は、みんな友達だよ。みんな、仲良しの友達だ
よ。わたしの学級には友達がいっぱいだよ。うれしいね。楽しいね。みん
な、仲のよい友達でいっぱいだ。学校は楽しね。」という詩を与えることは
とても有意義なことです。この詩は、そうした時期に、一年生になったうれ
しい気持ち、新しい友達がたくさんできた喜びの声や歓声をあげさせる詩を
与えることはとても意義あることです。担任教師にとって新しい受持ちの学
級づくりにたいへん役立つことでしょう。
  この教材を学習することで、子ども達は「クラスのみんなは、全員が友
達なんだよ。仲良しの友達だよ。うれしいなあ、楽しいなあ。もっともっと
親しい、仲良しの友達をたくさん作ろう」という気持ちをもたせることにな
るでしょう。
  この詩をみんなで学習することで、その思いをいっそう増幅させること
になります。小学校へ入学したばかりの子ども達に、この教材を与えて楽し
い友達作りや学級作りの共同意識や学校・学級における集団行動ができるよ
うになり、毎日喜び勇んで学校に通学する心的構えが増幅するようになった
ら、それはそれでたいへんによい教材だと言えます。


           
音声表現のしかた


  まず、題名読みをしっかりやりましょう。題名の「ともだち」について
あれこれと導入の話し合いをしましょう。皆さんの友達はだれですか。だれ
は、だれさんが友達ですか。どんな遊びをしていますか。だれは、だれと、
どこで、どんな遊び? だれは、だれと、どこで、どんな遊び?など、遊び
について、友達について、あれこれと話し合います。
  それから、ざっと本文に目をとおし、数名に確かめ読みの指名音読をさ
せます。
  次に、音声表現指導で留意すべき事項についてランダムに書いていきま
す。これらを参考にして、あなたの学級実態に応じて音声表現のご指導に役
立てていただけたらありがたい。


詩全体の気分・雰囲気をつくって音声表現する

  のどを開いて、りんりんと響く、張った声立てで、元気いっぱいに音声
表現させます。楽しい気持ちを押し出して、書かれている内容をドカーンと
遠慮しないで、声を前へ出して、音声表現させます。
  急がず、あわてず、ゆっくりと、たっぷりと音声表現させます。
  顔の表情をつくると案外、情感が出るようになります。つまり、友達
がいっぱいいて、楽しい遊びがたくさんできて、学校はいいなあ、楽しい
ね、という気持ちを顔の表情にあらわして音声表現させるとよいでしょう。
笑顔を作って、うれしい、楽しい、おもしろい気持ちを押し出して音声表現
させるのです。


読点と句点

読点(てん)と句点(まる)に注目して音声表現しましょう。この詩は、下
記のようなまとまりの詩文になっています。

     「ともだち いるよ、いっぱい いっぱい。」
     「いちねんせいだよ、みんな、みんな。」
     「あっはっはっは、いっぱい、いっぱい。」

かぎかっこと、かぎかっことの間は、たっぷりと間をあけて読みます。
「まるは、文のおしまいだから、間をたっぷりとあけて読もうね」と指導し
ます。
「てん」個所では、軽く間をあけて読むことにします。

       ともだち いるよ、 (軽い間)
       いっぱい いるよ。 (たっぷりの間)

       いちねんせいだよ、 (軽い間)
       みんな、みんな。  (たっぷりの間)

       あはっはっは、   (軽い間)
       いっぱい、いっぱい。(たっぷりの間)


強調する個所

次の太字の個所は強く高く、また長く伸ばして、目立たせて音読するように
します。ただずらずらと平板に読むのでなく、メリハリをつけて読むように
します。文章の意味内容を押し出して、強調して音声表現するようにしま
す。強調するために自分で一詩句を繰り返すのもよいでしょう。ただし、へ
んちくりんに聞こえる、おかしな繰り返しを入れてはいけません。繰り返し
の挿入は、原則はなしです。繰り返しの取り入れは最小限にします。
  下記は一例ですから、これと違ってもちっともかまいません。

       ともだち いるよー、  
       っぱい いるよー。  
       いちねんせいだよー、  
       みーんな、みーんな。  
       あ・はっ・はっ・はー
       いーっぱい、いーっぱい。
      (いっぱーい、いっぱーい。)でもよい。


「あっはっはっは」について

「あっはっはっは」は、ほんとに笑っている、リアルな「笑い声」で読む必
要はありません。笑い声であることがそれとなく分かる音声表現でよいでょ
う。
ここで必要なことは、一年生入門期の国語授業ですから「あっはっはっは」
「いっぱい、いっぱい」の促音の指導(「小さい「っ」の表記の仕方と、発
音の仕方)が重要です。促音の指導は、「まっち」とか「きって」とか
「ねっこ」など、促音を持つ単語を集め、まとめて、それだけを取り立てて
指導することも必要です。
  ここでは、促音の発音指導として「小さい「っ」のある個所は、つばを
のみこむようにして、一時、息を止めるようにして発音する」ことを指導
します。そのようなことを押さえて、実際に声に出しながら「あっはっはっ
は」「いっぱい、いっぱい」の発音指導をします。
ここは笑い声ですから、笑う表情を作って、笑い声にして、息をのみこみ、
止める、タン・タッカ・タッカ・ターのようなリズムの音声表現にするとよ
いかもね。音声を文章にするのは難しいですね。上記の「強調する個所」で
書いたようにようにスタッカートのようにしてリズムをつけて区切って、笑
い声で強く押し出す方法もよいでしょう。


語順変形文

「いちねんせいだよ、みんな、みんな」は、「みんな、みんな、いちねんせ
いだよ。」という通常文型、これの倒置文(語順変形文型)です。「一年
生」が強調されて前に位置変更している文型です。ですから「いちねんせい
だよ」を、「みんな、みんな。」よりかは、強調して、やや強めに・声高に
音声表現するとよいでしょう。


いろいろな分担読みで音声表現を楽しむ

  種々の音声表現の仕方が考えられます。いろいろな音声表現の仕方をし
て、この詩を学級全員で楽しみましょう。

(A)一人読み(個読)
一人の児童が全文を、ゆっくり、たっぷり、楽しい表情を作って、間をたっ
ぷりと開けて、張りのある声で音声表現します。

(B)斉読(一斉音読)
学級全員で、嬉しい気持ちを押し出して、その気持ちの顔の表情を作って、
張りのある声で、声をそろえて、全文を音声表現します。

(C)リレー音読・その1
読み手3人を選出し、2行ずつのまとまり文の分担を受け持って、3人のリ
レー読みで音声表現していきます。

(D)リレー音読・その2
読み手6人を選出し、各1行ずつを受け持って、リレーして音声表現してい
きます。この場合、2行1組の文のまとまりに配慮して音声表現していくこ
とが大切です。

(E)群読みたいに・その1
教室の並び列を、1グループとします。グループごとの分担読みでリレー読
みをしていきます。

(F)群読みたいに・その2
      男3   ともだち いるよ、
      女5   いっぱい いるよ。
      男女8  いーっぱい いるよ。

      女3   いちねいいせいだよー、
      男5   みんな、みんな。
      男女8  みーんな、みーんな。

      男3   あっはっはっはー、
      女3   あっはっはっはー、
      男女8  あっはっはっはー、
      女全員  いーっぱい、、いーっぱい。
      男全員  ともだち、いーっぱい。
      学級全員 ともだち、いっぱーい。 

その外、学級の実態に応じて、子ども達が楽しめる、おもしろい分担読み
をいろいろと工夫して音声表現を試みてみましょう。こうして、文章を声に
出して読むことが好きになる子どもがたくさん増えたらうれしいですね。ま
た、これを機会に、学級児童に友達がたくさん増えたらいいですね。



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