音読授業を創る そのA面とB面と      07・6・14記




「なみはてかな」の音読授業をデザインする



              
●詩「なみはてかな」(こわせたまみ)の掲載教科書………………学図1上



              なみは てかな
                  こわせたまみ

            なみは てかな
            うみの てかな
            なみうちぎわで
            ぱっと ひらいた

            なみは てかな
            しろい てかな
            かいがら ひとつ
            ぱっと なげた

            なみは てかな
            つないだ てかな
            なみうちぎわを
            ぱっと かこんだ



        
作者(こわせたまみ)について


  1934年、埼玉県生まれ。本名・小和瀬玉実。早稲田大学商学部卒。
主に童謡、歌曲、合唱曲の作詞や童謡、絵本の創作をする。日本童謡賞、サ
トーハチロー賞、埼玉文化賞、ボローニャ国際児童図書展エルバ賞などを受
賞。
著書に「きつねとつきみそう」「そばのはなさいたひ」「きつねいろのくつ
した」ほかに≪ゆうちゃんシリーズ≫など。 詩集に「風薫る季節の歌」
「季節の詩の絵本」など。  作詞に合唱組曲「城下町の子ども」など。


            
 教材分析


  この詩は、三つの連で構成されています。各連が「3・3」「3・3」
「7」「3・4」のリズムになっています。二連四行目が「3・3」、三連
二行目は「4・3」と例外があります。全員で手を打ち、拍を数えて、各連
がリズム調子がよいことば並べになっていることに気づかせましょう。
  各連の一行目はすべて「なみは てかな」です。各連の三行目は「ぱっ
と(ひらいた。なげた。かこんだ)」の「ぱっと」になっています。このこ
とにも気づかせましょう。各連に同じ語句があると、一層リズム調子がよく
なります。こういう書き方は、通常の文章とは違っていることに気づかせま
しょう。そして、こういう書き方を「詩(し)」というのだ、ということを
知らせましょう。
  話者は海岸で、打ち寄せてくる波や、波打ち際で砕け散っていく波の様
子を観察して、そのことを詩にしています。いや、そんな静態的な観察描写
の詩ではありませんね。話者は小学校低学年ぐらいの子どもでしょうか。海
岸で打ち寄せる波とキャッキャッといいながら戯れて、遊んでいるのでしょ
うか。海岸で波と遊び戯れている子どもの目線(思考)で、その時の子ども
の言葉で描写している詩だ、といえるでしょう。
  この詩は小学校一年生の教科書上巻に掲載されている詩です。この詩を
読んでいく子ども達は、自分が海岸で打ち寄せる波と遊んでいる場面を想像
して、海岸での遊びの場面の中に入り込んで、その時の現実の行動場面に身
を置いて、この詩を読んでいくことでしょう。リズム調子よく、明るく、
楽しい気持ちで音声表現していくことがでしょう。

  各連の冒頭に三つの「なみは てかな」があります。このイメージを
はっきりとつかませましょう。「なみは てかな」ということは「打ち寄せ
る波は、人間で言うと手に当たるのでしょうか」「波はまるで手みたいだ」
「波が作った人間の手の形に見えるよ」という内容を表現しているのでしょ
う。話者(子ども)が不確かな言い方ながら、「なみは てかな」と見た・
考えたのですから、他人がどうこういうものではなく、読者もそう言えばそ
うだ、そのように見える、おもしろい・素敵な言語表現だと納得し確認する
ことが必要でしょう。

  第一連
 「なみうちぎわで  ぱっと  ひらいた」とあります。打ち寄せる波の
うねりが、波打ち際の砂浜の場所に到着すると、無数の小さな白い泡となっ
て一面に平らに広がっていく。そして、消えていく(水が引いていく)。そ
の様子が人間の腕をとおって手首(波打ち際)から五本指が平らに広がって
いる様子によく似ている・そっくり同じだといっている、そうした認識でし
ょうか。

  第二連
 「かいがら ひとつ ぱっと なげた」と書いてあります。波が引いた後
を見たら、波が運んできた貝がらが一つ、海水が引いた砂浜に落ちていた
(置いてあった)、ということでしょう。波が引いたあとの砂浜に、かわい
らしい、きれいな貝がらが一個、目立って転がっていた、ということでしょ
う。

  第三連
 「なみうちぎわを ぱっと かこんだ」と書いてあります。二行目に「つ
ないだてかな」とありますから、手つなぎをしたみたいな長い波のうねりが
手つなぎ鬼の遊びみたいに打ち寄せてきて、「波打ち際を。海岸の砂浜を」
長い線を引いてぱっと囲んだ、ということでしょうか。
  以上は、荒木の解釈です。これと違った解釈(イメージ化)があっても
全然かまいません。いろいろなイメージ化(解釈)があってよいでしょう。


            
音声表現のしかた


    小学校1・2年生の音読指導の一般的な事項については、本ホームペ
ージの「表現よみの授業入門」の中の「低中高学年別の音読指導のポイン
ト」に書いてあります。そこをお読みください。ここでは本教材にかかわる
音読指導についてのみ書くことにします。

  この詩は前述したように小学校一年生教材ですから、一年生は一年生な
りの目線(思考、見かた・考え方)でイメージ化(解釈)して音声表現して
いくことでしょう。教師の解釈を強引に押し付けることはやめましょう。
  子ども達は、自分が話者と一緒になって海岸でキャッキャッと言いなが
ら波遊びをしている、それをイメージしながら、その楽しい気持ちになっ
て、この詩を解釈し、そして音声表現していくことでしょう。
  子ども達の日常会話の生き生きした話しぶり・音調にして、子どもの素
直なかわいらしい言いぶりにして音声表現させたいものです。弾んだ、うき
うきした気持ちで音声表現させたいですね。こうした気持ちを先に立てて音
声表現していくとメリハリのついた読み方になるでしょう。
  「なみは てかなあー」「うみは てかなあー」「しろい てかな
あー」のように文末を長く伸ばして、尻上がりの上げるのもよいでしょう。
または、文末「かな」の「な」を短く切って、強く短くはねあげて切った音
声表現するのもおもしろいでしょう。
  三つの「ぱっと」は、三つとも、強く高く音声表現して目立たせた、強
調した音声表現がよいでしょう。

  次のようなコトバ遊びの音声表現をするのもおもしろいです。子ども達
は喜ぶでしょう。
  各連の一行目と二行目とは同じような性格をもつ詩句です。つまり、各
連導入への掛け声のような性格を持つ詩句とも考えられます。一行目と二行
目とを「ワッショイ、ワッショイ」の掛け声、そのようなリズム調子をつけ
て音声表現(斉読)してみましょう。全員で、ワッショイのリズムをつけて
各連の一行目と二行目を音声表現してみましょう。二回、繰り返して言いま
す。一回目は声を大きくして音声表現(斉読)します。二回目は声をほんと
に小さくして音声表現(斉読)します。
  各連の三行目と四行目とは、ごく普通の読本音読と同じ読み調子で、普
通のリズムで、メリハリをつけて、通常に音声表現していきます。

  第一連で言えば、次のようにです。声量大で音声表現するグループ、声
量小で音声表現するグループに組み分けして読んでもよいですし、一人で下
記範囲を全部音声表現するのもよいでしょう。下記では、一応「全員」で音
声表現するようにしています。
全員声量大 「なみは / てかな」(ワッショイ/ワッショイのリズムで)
全員声量小 「なみは / てかな」(ワッショイ/ワッショイのリズムで)
全員声量大 「うみの / てかな」(ワッショイ/ワッショイのリズムで)
全員声量小 「うみの / てかな」(ワッショイ/ワッショイのリズムで)
全員声量大 「なみうちぎわで / ぱっと / ひらいたあー」

  上記のバリエーションは、いろいろと考えられます。例えば次のような
音声表現もその一つです。子ども達に考えさせて、いろいろな音声表現のこ
とば遊びをして楽しんでみましょう。

全員声量大 「なみは / てかな」(ワッショイ/ワッショイのリズムで)
全員声量小 「なみは / てかな」(ワッショイ/ワッショイのリズムで)
全員声量大 「うみの / てかな」(ワッショイ/ワッショイのリズムで)
全員声量小 「うみの / てかな」(ワッショイ/ワッショイのリズムで)
全員声量大 「なみうち /ぎわで」(ワッショイ/ワッショイのリズムで)
全員声量小 「なみうち /ぎわで」(ワッショイ/ワッショイのリズムで)
全員声量大 「ぱっと 」(ワッショイのリズムで)
全員声量小 「ぱっと 」(ワッショイのリズムで)
全員声量大 「ぱっと 」(ワッショイのリズムで)
全員声量小 「ぱっと 」(ワッショイのリズムで)
全員声量大 「ひらいたあー / ひらいたー /  ひらいたあー」


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