音読授業を創る そのA面とB面と    06・12・12記




「くもはがようし」の音読授業をデザインする




●「くもはがようし」(みやなかくもこ)の掲載教科書…………東書1下



             くもはがようし
                 みやなか くもこ


           しろい くもは
           ゆめを かく がようし
           どんなに たくさん
           かいても
           いいですよって
           やさしく そらに
           うかんでる

           しろい くもに
           なにを かこうか
           かんがえる
           おおきく なったら
           したい ことや
           いつか きっと
           なりたい もの



            
作者について


  宮中雲子(みやなか くもこ)。本名、宮中ちどり。1935年(昭和
10)年、愛媛県三瓶町安土に生まれる。詩人。東京学芸大学国語科卒業。
大学在学中からサトーハチローに師事。「木曜手帖」の同人になり、同誌を
中心に詩作を続ける。
  童謡集「七枚のトランプ」により第一回日本童謡賞を受賞。サトーハチ
ロー記念館の運営にも携わる。1986年第一回カネボウ・FM童謡大賞の
選考委員をつとめる。童話、詩集、詩文集を多数出版する。宮中雲子のペン
ネームは、縁起のよい左右対称文字を好む師・サトーハチローが命名した。
日本童謡協会副会長。
  ハチローの生涯を書いた「うたうヒポポタマス」。
  童謡集「七枚のトランプ」「お月さまがほしい」。
  詩集「母だけを想う」「黒い蝶」「愛の不思議」「わたしの心に残る
  母」など。

宮中雲子さん紹介のWebページ
http://www.tcn-catv.ne.jp/~acc/hito/hito/116miyanakakumoko.html



            
 教材分析


  
  この詩には、発想のユニークさがみられます。ふつうは地面や海岸の砂
地だったら「絵や文字を書き(描き)たいなあ」、空に浮かぶ雲だったら
「あの雲に乗ってみたいなあ」という考えになります。白い雲に絵や文字を
書き(描き)たいなあという考え・思いには発想の転換のおもしろさ、ユニ
ークさがみられます。

  第一連は、「白い雲は夢を書く(描く)画用紙だ」と、語り手(宮中雲
子)の観点からの考え(思い)を宣言的、断定的な言いぶりで語っていま
す。
  第二連は、どちらかというと子ども側の観点から「白い雲の何を書こう
(描こう)かと語っています。第一連は「将来の夢を書く(描く)」でした
が、第二連になると「大きくなったら」という限定語句がありますが「した
いこと、なりたいもの」と具体例が挙げられています。子供達に将来、何に
なりたいか、何をしたいか、問いかけ、話し合わせてみましょう。
  この詩のイメージをふくらます話し合い学習をした後、子ども達に画用
紙を与え、青空に浮かぶ大きな雲に「子ども達の将来の夢」を絵や文にして
書く(描く)学習活動が考えらるでしょう。文章で書かせたり、絵で描かせ
たりする作業があるでしょう。小さい画用紙にちまちまと書かせる(描かせ
る)のでなく、模造紙のような大判用紙に書かせ(描かせ)たいものです。
場所は体育館で、2・3人が1組のグループをつくり、一枚の模造紙に共同
して書く(描く)という方法も考えられます。
  この詩は、1年生配当教材です。1年生には確たる将来の夢をもってい
る子どもはごく少ないでしょう。「将来」とか「大きくなったら」という限
定でなく、「いま」したいこと、遊びたいこと、行って見たい所、着てみた
いもの、食べてみたいもの、住んでみたい家など自由に書かせて(描かせ
て)みるのもよいでしょう。


          
 音声表現のしかた


  語り手は、大空に浮かぶ白い雲を見ながら、何となく夢見心地で楽しそ
うに子供達に将来に大きな夢を描かせたいと語っています。
  第一連で「白い雲は夢をかく画用紙」と語り、第二連で「大きくなった
ら、したいこと、なりたいもの」をかいてほしいと語っています。宮中雲子
さんは大人ですし、子ども達にどうしても夢を持ってほしいし、夢を語って
ほしいのでしょう。読み手は、そうした宮中雲子さんの考えになって、気持
ちになって、その考え・思いを音声で表現していくようにします。
  第一連の「しろい くもは ・ ゆめを かく ・ がようし」は、自
信たっぷりに断定的な言いぶりで、きっぱりと決めつけた言いぶりにして音
声表現します。
  「いいですよって」は、会話音調を入れて明るく爽やかに「(いいです
よー)って」のように音声表現します。雲が喜んで許可・承諾を与えている
雲の気持ちにいり込んで音声表現します。
  第二連の「しろい くもに なにを かこうか、かんがえる」は、
「(しろい くもに・なにを ・かこうかあー)かんがえる」のような語勢
と区切りで音声表現するとよいでしょう。
  「(おおきくなったら・したいこと・や)(いつか・きっと・なりたい
もの)」のような語勢と区切りで音声表現するのもよいでしょう。

 全体を、うれしい気持ち、楽しい気持ち、あの大きな雲に、将来に夢を、
書きたい(描きたい)、という憧れの気持ちをもって、そうした語り手の気
持ちになって音声表現することが重要です。


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