音読授業を創る そのA面とB面と    06・12・12記



「金のストロー」の音読授業をデザインする



●「金のストロー」(みずかみかずよ)の掲載教科書……………東書2下



           金のストロー
                みずかみ かずよ

        雨に うたれて
        林は
        みどりの しずくに すきとおる

        雨が やむと
        まっていた ように
        お日さまが
        金の ストローで
        みどりの しずくを すいあげた



       
作者(みずかみ かずよ)について


  1935年(昭和10)生まれ。1988年(昭和63)死去。
  詩人、作家。本名・水上多世。福岡県八幡市生まれ。四歳で父、七歳で
母と死別。県立八幡中央高校卒業後、兄が経営する幼稚園に勤務。園児への
読み聞かせを行い、童謡や詩を作り始める。58年「小さい旗」に参加、や
がて同人の水上平吉と結婚。その後休刊した同誌を支えるとともに、幼い子
ども達の躍動に満ちたことばにも通じる詩的完成のあふれる作品を次々に発
表する。愛の詩キャンペーン金賞を受賞。日本児童文学者協会、小さな旗の
会会員。
詩集に「馬でかければ」「金のストロー」「小さな窓から」「みのむしの行
進」など。童話集には「小さなこころのひみつ」「ごめんねキューピー」
「犬となでしこの服と和平どん」など。

みずかみかずよさんの夫・水上平吉さんが、妻・水上多世さんのことについ
て書いているウェブページ。
   http://www.nishinippon.co.jp/news/life/family/040516.html



             
教材分析


  表現のしかたがしゃれた言い方、詩的な言い方になっている個所があり
ます。
  第一連「みどりの しずくに すきとおる」
  第二連「金の ストローで / みどりの しずくを すいあげた」
  これらのしゃれた、詩的な言い方がどんなイメージを表現しているかが
理解できると、この詩が読めた、この詩が理解できた、この詩のよさが分っ
た、ということのなるのではと思います。

●第一連「みどりの しずくが すきとおる」とは。
  1行目に「あめにうたれて」とあります。「うたれて」ですから、かな
り強い、どしゃぶりの雨が降っていたようです。森林に雨が降り、ほこりや
どろにまみれて汚かった木の葉が、どしゃぶりの雨に洗われて、鮮やかな緑
色の葉っぱに変化しました。雨のしずくは、鮮やかな緑色の葉っぱたちを透
明に、くっきりとすきとおしてくれています。葉っぱ達の緑色は鮮やかで、
新鮮な美しい緑色の森林に一変させてくれています。

●第二連「金の ストローで / みどりの しずくを すいあげた」とは。
  どしゃ降り雨の後には、太陽がパッと照りだしました。照りつける太陽
の熱で、全身ずぶ濡れになっていた森林の木々の幹や葉っぱたちは、たちま
ちに、すっかりと乾燥してしまっています。
  木の葉たちの鮮やかな緑色がいちだんと輝いて照り映えて見えます。つ
まり、太陽が照りだし、一気に自然乾燥したこと、雨がたちまち蒸発したこ
と、そして木々の緑色が鮮やかになったことを「金のストローで/緑のしず
くを吸い上げた」というコトバ表現であらわしているのだと思います。


           
音声表現のしかた


  第一連の3行全文を通常な語順にすれば「林は雨にうたれて緑のしずく
がすきとおる」という文になるでしょう。「雨にうたれて」が強調されて文
頭にきています。第一連の3行全文は、語順変形文だと考えられます。

  ですから音声表現するときの大きな区切り方は「あめにうたれて」「林
は緑のしずくをすいあげた。」のような二つに区分けして音声表現するとよ
いでしょう。でも、これでは散文の通常な区切り方、間の開け方の音声表現
となってし
まいます。
  ここは詩文ですから、散文のようにずらずらと通常な区切り方、間の開
け方では芸がなさすぎます。大きく二つに区切りを入れて読みつつも、「林
は」の後でもやや長めの間をあけて音声表現するようにすると、ずらずらし
た散文の読み方にならない詩らしい音声表現になるでしょう。つまり、「雨
にうたれて、林は(どうなったか。どうだというのか。という期待持たせの
間をあける)のです。

  また、「みどりの しずくに すきとおる」は、ずらずらと早口に読む
のでなく、思いをたっぷりと入れて、一つ一つの発音をていねいに、ゆっく
りと、もったいぶって読んで、粒立てて、目立たせて音声表現するとよいで
しょう。さらにまた、明るい声立てで、晴れやかな音調で音声表現すると
いっそうよくなるでしょう。

  第二連は、「あめがやむと」どうなったか。次のようになった。「お日
さまが金のストローで緑のしずくをすいあげた。」という結果になった。こ
うした語り手の思いの論理の屈折・接続の気持ち込めて、そうしたメリハリ
をつけた音声表現をするといっそうよくなるでしょう。

  第二連の2行目の「まっていたように」は、3・4・5行の全体の係る
連用修飾語です。ですから「まっていたように」は「お日さま」から「すい
あげた」までの全体に係るように一気に音声表現していくようにします。
  だけども、これも第一連の「あめにうたれて」と同じにずらずらした散
文読みにしてしまっては、詩文の音声表現にはなりません。
  第二連の全詩文のつらなりの各行末ではきちんと間を開けて音声表現し
ます。なおかつ「まっていたように」が「おひさま」から「すいあげた」ま
で係る(修飾する)ように、そうした心づもりを持って音声表現していくよ
うにします。

  第二連の「みどりにしずくをすいあげた」は、第一連の「みどりのしず
くにすきとおる」で書いた音声表現のしかたと同じことが言えます。繰り返
しては書きません。明るい声立てで、晴れやかな音調で、ゆっくりと、思い
をたっぷりと入れて、思いを引きずるようにして音声表現するとよくなるで
しょう。


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