音読授業を創る そのA面とB面と    06・12・12記



  詩「気もち」の音読授業をデザインする



●詩「気もち」(さくらももこ)の掲載教科書………………………大書1下



               気もち
                   さくらももこ

            やさしい 気もちは
            ふわふわ してる。
            こわい 気もちは
            ぶるぶる してる。

            さみしい 気もちは
            ほそぼそ してる。
            うれしい 気持ちは
            ぴょんぴょん はねる。



         
作者(さくらももこ)について


  著名なる漫画家、エッセイスト、詩人。詳細は、下記のウェブページを
クリックのこと。

  ももこのコラム、スタッフ通信など。
       http://www.sakuraproduction.jp/

  ちびまるこちゃんのオフィシャルホームページ
     http://www.nippon-animation.co.jp/chibimaruko.htm

そのほか、ウイキペデア「さくらももこ」の項目検索など。



             
教材分析


  いろいろな人間の気持ち(感情の色模様)とオノマトペ(擬音語、擬態
語)との連関を書いています。やさしい気持ちは、擬態語「ふわふわ」表現
がぴったりな感じだね、こわい気持ちは擬態語「ぶるぶる」表現がぴったり
な感じだね、と書いています。

  「ふわふわ」や「ぶるぶる」などは様子や感じをまねた言葉で「擬態
語」と言われ、「トントン」や「ギーギー」などは物音をまねた言葉で「擬
音語」と言われています。「メーメー」や「コケコッコー」などは声をまね
た言葉で「擬声語」と言われています。「擬声語」を「擬音語」に含めるこ
ともあります。これらはひとまとめにして「オノマトペ」と言われていま
す。オノマトペは、文法範疇では情態副詞と言われ、述語にかかる連用修飾
語として働く機能があります。

  この詩には、四つの気持ちとそれにふさわしい四つのオノマトペ(「ふ
わふわ」「ぶるぶる」「ほそぼそ」「ぴょうんぴょうん」)が対応している
表現であると書かれています。

「こわい気もちは、ぶるぶるしてる。」
「うれしい気もちは、ぴょんぴょんはねる。」
  上の二つは、これら気持ちと情態副詞との関連があることは日常表現で
も使われることがあるので、よく理解できます。日常生活では「こわい気持
ち」と「ぶるぶる」、「うれしい気持ち」と「ぴょんぴょん」とは結びつけ
て表現されることがよくあります。日常生活では、ごくありふれた慣用句的
な表現として使用されている言語表現と言えましょう。

「やさしい気もちは、ふわふわしてる。」
「さみしい気もちは、ほそぼそしてる。」
  上の二つは、日常生活の言葉表現では全くと言ってよいほど結びつけて
使用されてはいないのではないでしょうか。この詩の作者(さくらももこ)
の独自の感性による言語表現(認識様態)だと思います。
  日常生活ではあまりなじみのない言葉表現で、理解するには分りにくい
二つの言葉の結びつきだと言えましょう。二つの言葉の結びつきは分りにく
いですが、分りにくいなりに改めて考えを重ねてみると「これはおもしろい
言葉の結合の表現だ。」と考えつくようにもなるから不思議です。

  「ふわふわ」とは、真綿のような感じです。「ふわふわ」している品物
の代表はやはり真綿でしょう。真綿は、温かく、すっぽりと、やさしく、愛
情たっぷりに包みこみ、たっぷりとした包容力を感じさせます。硬くでな
く、柔らかく、です。ですから、優しい気持ちは「ふわふわ」の表現がぴっ
たりなのです。

  「ほそぼそ」(細々、細細)を国語辞書(「大辞林」三省堂)で引いて
みました。次のように書いてありました。
(1)非常に細いさま。ほっそりとして頼りないさま。「……とした腕」
(2)かろうじて続いているさま。「……(と)続く小道」
(3)非常に貧しくやっとのことで暮らすさま。「……(と)暮らす」

  「ほそぼそ」の反対語は「太い、極太」でしょう。「太い、極太」は
「頑丈、屈強、立派、力がみなぎって、たくましい、精力的」という語感を
持つ言葉でしょう。
  それに対して「ほそぼそ」(細々、細細)は、「頑丈でない、屈強でな
い、立派でない、力がみなぎってない、精力的でない」、つまり、「頼りな
い、か弱い、虚弱、心細い、わびしい、ひっそり、さみしい、気案じ、心
痛」という語感を持つ言葉でしょう。さみしい気持ちは、やっぱり「細細。
細々」がぴったりなのです。
  これはその人個人の感性・感受性の違いの問題ですから、ここから先は
なんとも言うことができませんね。よく言われます。「小川は、さらさら流
れる」と限らないと。これと同じなのです。


           
音声表現のしかた


  各2行がひとつながりです。各2行は主部と述部に分かれています。
主述のあいだを軽く切りつつも、ひとつながりになるようにして音声表現し
ましょう。
  1文と1文とのあいだは、つまり四つの文のあいだはたっぷりと間をあ
けて読みます。

  1文内部の文構造は、
  「どんな気もちは、どのようである。」
  という文型です。1文のまとまり「どんな気もちは、どのようであ
る。」はひとつながりにして読みます。語り手(さくらももこ)になったつ
もりで、1文内容を、断定的に、宣言的に、自信たっぷりな気もちで音声表
現していくようにします。

  主部の「どんな」部分は、強めに音声表現にします。粒立て、目立つよ
うに音声表現します。

  述部の「どのように」部分は、「ふわふわ」「ぶるぶる」「ほそぼそ」
「ぴょんぴょん」という擬態語ですから、「様子・感じのまね言葉」ですか
ら、その様子・感じが音声にありありと出るように音声表現します。これら
の擬態語はなかなかメリハリがつけにくい言葉ですから、オーバー気味かな
あと思われるほどにドーンと、大胆に、図太く、豪放に、思い切り外に出し
て音声表現するぐらいでよいかもしれません。

  この詩を群読や分担読みの音声表現にするのもおもしろいでしょう。た
とえば、学級全員を四つのグループに分けます。四つのグループで、この詩
の4文の一つずつを分担して音声表現します。
  これでは余りにも芸がなさすぎると思われたら、各グループごとにどう
音声表現すると詩内容が音声に出るようになるかを話し合わせます。たとえ
ば、初めの1文でいえば、「やさしい気持ちは?」と質問音調で、おしまい
をはねあげ、問いかけの音調で読みます。その答え部分は「ふわふわして
る」です。つまり、なぞなぞ遊びのようにしているように「問題を出す人」
と「答える人」とに分かれて、「問いかける」そして「答える」の音調にし
て音声表現するのです。そのほかいろいろな分担読みのしかたが考えられる
ので、こうしたコトバ遊びにして音声表現すると、子ども達は喜ぶことで
しょう。

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