音読授業を創る そのA面とB面と   06・12・12記



   「木」の音読授業をデザインする



●詩「木」(しみずたみこ)の掲載教科書…………………………教出1下



           木 
                しみず たみこ

       木は いいな、
       ことりが とまりに くるから。
       ぼく、
       木に なりたい。
       ぼくの 木に、
       すずめが たくさん とまりに きたら、
       うれしくて、
       くすぐったくて、
       からだじゅうの はっぱを ちらちらさせて、
       わらっちゃう。



         
作者(清水たみ子)について

  
  1915年、埼玉県生まれ。児童文学作家、童謡詩人。本名・民。東京
府立第五高女卒業。小学二年ごろから「赤い鳥」を愛読し、14歳ごろから
は同誌に投稿を始める。「夕方」をはじめ18編の作品が掲載されている。
北原白秋の指導を受け、同誌廃刊後は巽聖歌、新美南吉、与田準一らと同人
誌「チチノキ」に加わる。戦後は幼年雑誌「子どもの村」編集部に勤務。か
たわら、童謡や絵本創作をつづけ、53年より文筆に専念。戦前戦後を通じ
てラジオ番組にも童謡・童話をよせた。芸術祭文部大臣賞、日本童謡賞など
を受賞。日本童謡協会、日本児童文学者協会、詩人と音楽の会に所属。
  「あまのじゃく」「うぐいす姫」「かたつむりの詩」「東京のうた」
「黒馬物語」「詩のランドセル」「ハイドン」「しらゆきひめ」「チュウ
ちゃんが動物園に行ったお話」「雀の卵」「雨ふりアパート」など。


             
教材分析


  この詩の主人公は「ぼく」です。「ぼく」は、小鳥がとっても好きみた
いです。「木はいいな」と言っています。その理由は「木に、ことりがとま
りにくるから」なのです。
  第一行で「木はいいな」と言っていますが、「木そのもの」が好きなの
ではありません。小鳥が好きだから、小鳥が木にたくさん止まりに来るか
ら、「木はいいな」なのです。
  しぜんと「ぼくは木になりたい」という気持ちになるのも当然でしょ
う。
  「ぼくは木になりたい」の気持ちが、その願いがつよくなり、「ぼく
が」「木になったとしたら」の想像はふくらんでいきます。「木になった
ら」の仮定の想像はしだいにふくらみ、「すずめが、ぼくの木に、たくさ
ん留まりに来る(だろう。はずだ。)」となります。こうなると「ぼくは」
「うれしくて、くすぐったくて、わらっちゃう。」となります。
  このあたりから、ぼくの気持ちは、木の気持ちと同化していきます。木
の気持ちの中にめり込んでいき、木と一体化していきます。すずめが「ぼく
の木に」止まりに来るだろう。そうした場面が到来したらと想像するだけ
で、ぼくは嬉しい気持ちがいっぱいになります。ぼくと木との気持ちは重な
り、ぼくと木との身体は合体化して、ぼくは完全に木になってしまって、ひ
とりご満悦いっぱいにあふれ、喜色が満面の表情で、欣快の夢の中にひたり
きり、その中でひたすら思いがただよう状況になります。
  すずめはぼくの木に舞い降りてきて、その振る舞いは、口ばしでチョン
チョンとつつく動作がよくみられるだろう。すずめの口ばしは鋭角だから、
つつかれる木(ぼくの身体・木)のくすぐったさの刺激はかなりのものだ
ろう。ぼく(木)は全身を震わせて身体を揺らすことになるだろう。木
(ぼく)は葉っぱ達を大きく揺らし、くすぐったさを全身の表情であらわす
ことになるだろう。ぼくの想像力はふくらみ、期待に胸をおどらせます。


           
音声表現のしかた


  この詩は、ぼくの視点で描写されています。読み手は、ぼくの考えに
なって、ぼくの気持ちにはいり込んで音声表現いくようになります。
  全10行の詩です。10行を対等間隔の間であけるのでなく、文意や意
味上の区切りで、そこでやや長めの間をあけるようにして音声表現していき
ます。
  「木はイイナアー。ことりがとまりにくるからー」(「イイナー」は、
ほんとにうらやましくて、あこがれた気持ちをいっぱいにして音声表現しま
す。)
  「ぼく、木に、ナリターイ」(「ナリターイ」は、ぼくのしんからの願
望の気持ちをいっぱいにして音声表現します。)
  「ボクのキに、ことりが、タークサン とまりに来たら」(タークサン
と伸ばす)
  「ウレシクッテー、クスグッタクッテー」(「うれしくて」と「くす
ぐったくて」との二つは、対等のフレーズとして二つを並べて音声表現しま
す。二つの喜びの気持ちを思い切り外に突出させて、かつ、うれしい顔の表
情、くすぐったい全身の身体表情を作りつつ音声表現するのもよいでしょ
う。)
  「からだじゅうの はっぱを チ、ラ、チ、ラ、させてー」(チ、ラ、
チ、ラ、)を区切って強調します)
  「ワラッチャウー」(「ワラッチャウー」は、笑いの身体表情を全身で
作って音声表現するとよいでしょう。)
  以上の「  」と「  」とのあいだの意味上の区切りでは、やや長め
の間をあけて音声表現します。カタカナは、強調して・目立たせて音声表現
するというここでのやくそくにします。

  この詩は、感情を込めやすい文体になっています。顔面表情や身体表情
を入れつつ音声表現してみましょう。その身体表情がきっと音声表情に影響
を与え、よい結果を生むことでしょう。


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