音読授業を創る  そのA面とB面と    05・4・15記




 
「あるけ あるけ」の音読授業をデザインする




●「あるけ あるけ」(つるみまさお)の掲載教科書……光村1下(04版)



            あるけ あるけ


                 つるみ まさお


           どこどん どこどん
           あるけ あるけ
           ちきゅうの たいこ
           みんなの あしで
           そら
           どこどん どこどん
           あるけ


           どこどん どこどん
           あるけ あるけ
           ちきゅうの うらで
           だれかの あしも
           たたいて いるよ
           ほら
           どこどん どこどん
           あるけ



            
作者について


 鶴見正夫(つるみ まさお)。1926年新潟県生まれ。児童文学作家、詩
人として有名。
 早稲田大学政経学部卒業。在学中から詩や童謡を習作する。1960年から文
筆生活にはいる。1963年から11年間、阪田寛夫らと6の会を結成し、「あ
めふりくまのこ」をはじめとして、童謡を多数創作する。1951年、童謡で文
部大臣奨励賞を受賞。サトウハチロウ賞も受賞。日本児童文学者協会新人賞
受賞。1995年、肺がんのため死亡、69歳。
 『日本海の詩』(理論社)、「鮭のくる川』(国土社)、『しなの川』
(PHP研究所)、『ふるやのもり』(フレーベル館)、『ライト兄弟』
(小学館)など。


           
ことばで遊ぼう


  作者は、第一連では「歩け、歩け、地球のタイコ、みんなの足で、どこ
どん 、どこどん、歩け」と語っています。第二連では「歩け、歩け、地球
の裏で、誰かの足も、叩いているよ、どこどん、どこどん、歩け」と語って
います。地球がタイコとなって、地球の表(?)でも、地球の裏(?)で
も、地球の上(?)でも、地球の下(?)でも、地球の横(?)でも、地球
の全面で、地球に住むあらゆる国々の人々が大地を踏んで歩いている様子を
想像させてくれます。地球に住む人々が元気に、快活に、大地を踏んで行動
(生活)している様子を想像させてくれます。地球はまるで足のばちで叩か
れているタイコのようだと語っています。
  低学年の子どもたちにこの詩を音読させると、「どこどん、どこどん」
の個所ではしぜんと声が大きくなります。楽しそうに音声表現し始めます。
リズミカルな響きの言葉のつらなり「どこどん、どこどん」に敏感に反応
し、軽快なリズムにうれしくなり、楽しくなり、声がしぜんとリズミカルに
大きくなります。
  このリズミカルな響きの音調を「あるけ、あるけ」にも広げていきま
しょう。「ある・け・ある・け」の二拍子で軽快に音読させましょう。さら
に、リズミカルで楽しい音調を、この詩全体に広げてやりましょう。全詩文
を、みんなで、リズミカルに、楽しく、イチ・ニ・イチ・ニの二拍子で音声
表現させましょう。子どもたちは楽しんで二拍子のリズムで音声表現するこ
とでしょう。
  第一連の「そら」の掛け声と、第二連の「ほら」の掛け声は、「そら、
そら、そら、そら」「ほら、ほら、ほら、ほら」のように4回ほど繰り返し
ましょう。これらの繰り返しによって、掛け声ですので、音読のリズム調子
に強さと楽しさが一層、加わります。
  第1・2連の最後部「あるけ」も4回ほど繰り返しましょう。1回で
は、物足りません。繰り返すことで、音声表現のリズム調子と楽しさが増幅
してきます。繰り返しの量が多すぎると、一斉音読のときにとまどいやばら
つきが出ますので、気をつけましょう。
  さらに、全員が椅子から立ち上がります。全員が一斉に足踏みしながら
2拍子のリズムで全詩文を楽しく音声表現させましょう。


           
校庭で音声表現を


  NHK教育番組に「にほんごであそぼ」という幼児番組があります。幼
児にたいへん人気のある番組です。このテレビ番組をまねて、ことば遊びを
します。「あるけ、あるけ」の詩で「ことばあそび」をして楽しむのです。
  教室から出て、校庭に出ましょう。グランドは地球の大地です。大地で
楽しく足踏みします。「どこどん、どこどん、あるけ、あるけ、そら、そ
ら、そら、そら、どこどん、どこどん、あるけ、あるけ、あるけ、あるけ」
と大声でリズミカルに言いながら、地面をタイコだと思って踏みつけさせま
しょう。一箇所に留まって足踏みするだけでなく、移動もしましょう。歩き
回りましょう。
  タイコの音は、どんな音でしょうか。地球の地面を踏みつける音とは、
どんな音でしょうか。それは、子どもたちの元気な詩文の読み声です。子ど
もたちの元気な、軽快な、リズミカルな、楽しそうな、二拍子の読み声、一・
ニ・一・ニ……のリズム、それがタイコの音です。子どもたちは、足裏で
大地を、地球を、宇宙世界を感知し、一つの新しい意味づけを身体に獲得し
ていきます。メルロ=ポンティ流に言えば、「身体図式の組み換えと更新、
経験の一つの構造化の新たな発足、膨らみとしての身体性の獲得」というこ
とになりましょう。


            
地球の裏で


  第二連に「地球の裏で、誰かの足も叩いているよ。」という詩文があり
ます。小学校一年生には地球の表と裏の科学的理解は、ちょっと難しいかも
しれません。地球は平面で、その果ては滝のような崖になっていないのです
から。
  この詩は、地球をタイコに喩えています。地球は球で、地球上の人間た
ちが歩くと、まるでタイコみたいだ、という比喩表現です。地球上の人間た
ちは足踏みして地球を叩いている、というわけです。地球上の人々の生き生
きした、旺盛な、生活力(躍動力)が感じとれます。
  子どもたちに地球儀を見せます。これが地球で、地球は丸い。日本はこ
こで、その裏側は南米だ。どうして裏側の人間は逆さまになっていないか。
これの理解は難しく、だが、理屈っぽくはやりたくありません。子どもたち
の知識をいろいろ出させ、語り合ってみましょう。中には、上手に説明する
子どもも出てくるでしょう。それを取り上げ、教師の補説で理解させてたり
もします。海も湖も川もさかさまにならない、それだけの土地(地球)は広
がりをもっていること、砂遊びで海や湖や川を作るがその広がりで肉眼では
把持できない平面と曲面であることを想像させればよいのではないでしょう
か。どなたか、よい指導事例やアイデアがあったら教えてください。
  この詩の指導には、そんな科学的理解は必要ないのかもしれません。地
球儀を見せて地球は丸い、自分たちが立っている地面が地球だ、それぐらい
の理解で、この詩を指導してよいのかもしれません。


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