音読授業を創る  そのA面とB面と       06・9・17記




「あめふりくまのこ」音読授業をデザインする
  




●「あめふりくまのこ」(つるみまさお)の掲載教科書…………光村1下




          あめふり くまの こ

                   つるみ まさお 


       おやまに あめが ふりました
       あとから あとから ふって きて
       ちょろちょろ おがわが できました

       いたずら くまの こ かけて きて
       そうっと のぞいて みてました
       さかなが いるかと みてました

       なんにも いないと くまの こは
       おみずを ひとくち のみました
       おててで すくって のみました

       それでも どこかに いるようで
       もいちど のぞいて みてました
       さかなを まちまち みてました

       なかなか やまない あめでした
       かさでも かぶって いましょうと
       あたまに はっぱを のせました




           
作者について



 鶴見正夫(つるみ まさお)。1926年新潟県生まれ。児童文学作家、詩
人として有名。
 早稲田大学政経学部卒業。在学中から詩や童謡を習作する。1960年から文
筆生活にはいる。1963年から11年間、阪田寛夫らと6の会を結成し、「あ
めふりくまのこ」をはじめとして、童謡を多数創作する。1951年、童謡で文
部大臣奨励賞を受賞する。サトウハチロウ賞受賞。日本児童文学者協会新人
賞受賞。1995年、肺がんのため死亡、69歳。
 『日本海の詩』(理論社)、「鮭のくる川』(国土社)、『しなの川』
(PHP研究所)、『ふるやのもり』(フレーベル館)、『ライト兄弟』
(小学館)など。



            
教材の分析


ストーリー(物語性)がある。


  全五連で構成されています。物語の内容は、単純明快です。一読して、
すぐ理解できます。
  第一連は、山に雨が降りだし、だんだんと本降りになり、地面に川筋が
できた。小川みたいにな川筋になった。あちこちに水たまりもできているこ
とでしょう。そうした雨降りの場面です。
  第二連からは、熊の子が登場してきます。最後の第五連まで登場して、
川遊びごっこをしてあそびます。
  第二連では、熊の子は雨降りでできた川筋の小川の覗き見をします。魚
がいるかなあと覗き見をします。読み手である一年生も同じ目と心にいりこ
むことでしょう。子どもたちの心情ににくらしいほどぴったり合っている
場面です。
  第三連は、できた小川には何もいないことが分り、熊の子は水を手です
くって飲みます。
  第四連は、それでもどこかに魚か小さな生物か何かがいるような気がし
ます。気が落ち着きません。気がかりです。も一度のぞいて見ます。
  第五連は、雨はなかなか止みません。熊の子は葉っぱを自分の頭上に
かぶせて、自分の体が雨にぬれるのを防ぎます。


映像化(表象化)がしやすい。


  第一連の映像化(表象化)では、「あとから あとから ふって き
て」という表現にこだわって詳しく語り合わせるとよいでしょう。どういう
降り方であるか、その様子を詳しく話し合うと、第一連全体の雨降りの場面
の様子がありありと表象できます。次々と留まることのない本降りの雨降り
の様子をありありと思い浮かべることが大切です。
 ちょろちょろ小川ができる事実は、子ども達の体験を掘り起こして語り合
わせるとよいでしょう。雨降りでできた川筋を、実際に見たこと、そこで遊
んだ体験はどんな子にもあるでしょう。その体験を出させて、話し合わせま
す。
  光村教科書の挿絵は、熊の子の視点で書かれています。さすがスケール
の大きさが違う小川です。小学校一年生の考える「ちょろちょろと流れる小
川」という感じ・イメージの挿絵ではありませんね。


子ども達が同化して、楽しんで読める。


  幼稚園児や小学校低学年たちは、雨降りでできた水たまりや川筋で遊ぶ
のが大好きです。雨降りの日、幼稚園や学校からの帰り道、運動場や道路に
できた水溜りを興味津々に探しては、できた水溜りや川筋で遊ぶ姿をよく見
かけます。よく目にする光景です。
  わざと水たまりに雨靴で入り、ピチャピチャとふんづけ、水をはねあげ
たりして遊んでいます。たまり水がとぶのが面白いのです。ちょろちょろと
流れる川筋を、石や棒でわざと川筋を太くして、水がよく流れるようにし
て、遊んだりもします。雨靴のかかとで川筋の幅を広げたりして遊んでいま
す。雨の日、こうした水溜り遊びを好み、楽しむのは、人間の子も、熊の子
も、同じなのでしょう。
  第二連は、子ども達が熊の子になったつもりで、そうっと覗いてみる動
作をさせてみましょう。すると、第二連の表象がありありと思い浮かべるこ
とができ、音声表現のしかたもありあり感がでてくるでしょう。
  第三連は、手で水をすくって飲む動作をさせてみましょう。動作をする
ことで、ありありとした実感を伴った表象を思い浮かべることができ、音声
表現のありあり感もでてくるでしょう。
  第四連は、あきらめきれなくて、再び覗く動作をさせてみましょう。ど
んな場面でその動作をしているのかの場面設定(背景)を知らせることも重
要です。
  第五連は、葉っぱの代わりになるもの、例えばノート、下敷き、教科書
とかを、自分の頭上へのせる(置く、かぶせる)と、音声表情にありあり感
がでてくるでしょう。
  これら全ての動作化は、子ども達一人一人が熊の子になったつもりで、
熊の子に同化しての動作(行為)です。雨降りの状況の中での動作であるこ
と、行動であることを知らせます。どんな場面の中での動作・行動であるか
をイメージさせて音声表現させるとよいでしょう。
  こうした動作化をすることによって、表象がふくらみ、イメージが豊か
になることでしょう。そうすることで、音声表現にありあり感が増してくる
はずです。



           
音声表現のしかた



リズムがあって気持ちよく音読できる


  語呂がいい詩です。言葉を口で転がしたときの続きぐあいのリズム調子
や響き具合がいい詩です。
  1年下巻に掲載されている教材です。1年生後期ですから「山」「小
川」「子」「雨」「水」などの漢字はすでに学習していることも予想できま
す。しかし、「あめふり くまのこ」の詩には、漢字が一字も使られていま
せん。わざと、ひらがなだけの、分かち書きにしているのかもしれません。
  なぜ言葉調子がいいのか、子ども達に問いかけてみましょう。分かち書
きの区分けごとに言葉の数を数えさせてみましょう。
  「おやまに」は4音、「あめが」は3音、「ふりました」は5音になっ
ていること、全児童が指を折りつつ読みながら数えさせます。同じ音数律の
繰り返しが、音声表現に心地よいリズムを与えています。
  第一連は「4・3・5/4・4・5/4・4・5」であること、第二連か
ら第五連までは「4・4・5/4・4・5/4・4・5」の繰り返しリズムで
あることに気づくでしょう。
  子ども達は一般に動物に親しみを感じています。熊の子も大好きです。
子ども達は、自分が熊の子になったつもりで、リズム調子よく、リズムを唇
と心で転がして、楽しんで声に出して読んでいくことでしょう。
  同じリズムの繰り返しを利用して、好きなように節・リズムをつけて読
んだり、歌うようにて音読したり、いろいろなリズムにして読ませましょ
う。。
  次に、節や歌のリズムをつけないで、抑えて、消して、ごく普通の文
章を音読するときのように淡々と読ませてみましょう。逆にいろいろと変化
をつけて音読させてみましょう。いろいろな音声表情の読み方であっていい
わけです。こぢんまりと、小さくまとまらないことが重要です。
  児童達から多様な音声表情が発表されないときは、大げさに、どーんと
大胆に、太っ腹ではみだすぐらいにオーバーに表情をつけて読んでみようと
誘いかけましょう。太っ腹で、大胆に、音声表現させてみましょう。
  クラスの中で、誰か一人か二人は、この詩を上手な読み方で音読する子
がいるはずです。学級全員が、彼・彼女の読み声のあとをつけながら一行ず
つなぞって・まねして読むとかさせるのもよいでしょう。
  こうした指導で、一つの作品は、いろいろな表情で音声表現できるのだ
ということを知らせます。


動作をしながら楽しく音読させる


  前述したように、この詩は動作化をしながら楽しんで読むことができま
す。それぞれの連は、一つ一つの場面を構成しています。一連ごとで、紙芝
居作りもできます。場面ごとで動作化をしながら音読すると、子ども達は喜
びます。
  第一連では、雨があとからあとから降ってくる動作、ちょろちょろ小川
ができて流れる動作をしがらら(してから)音声表現するとよいでしょう。
  第二連では、熊の子になったつもりで駆ける動作、そうっと覗いてみる
動作をしながら(してから)音声表現するとよいでしょう。
  第三連では、お水を飲む動作、手で掬う動作をしながら(してから)音
声表現するとよいでしょう。
  第四連では、真下を覗く動作、小川の前方を覗く動作をしながら(して
から)音声表現するとよいでしょう。
  第五連では、頭上に葉っぱを載せる動作をしながら(してから)音声表
現するとよいでしょう。
  これら動作をしながら楽しく音読させてみましょう。くまのお面を作ら
せて、それを身につけて動作化しながら、音読させるのもよいでしょう。



             
参考資料


 「あめふりくまのこ」は、鶴見正夫作詞、湯山昭作曲の童謡としても有名
です。昭和36年に作詞され(詩が作られ)、翌37年にNHK「うたのえ
ほん」で放送されました。  


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