父母と教師に役立つ学級懇談会の話材集    2015・3・13記




     
学級懇談会の持ち方(1)




 学級懇談会は、通常、担任教師の挨拶で始まり、担任からの学級経営の方
針や、父母への連絡事項などについての話があります。
 担任教師が話す内容としては、開催時期のよって違ってきますが、予想さ
れる話の内容は下記ようなものがあるでしょう。下記には一般的な原則を列
挙しています。必要に応じて適宜、選択して話していただくことを希望しま
す。


    
年度初めに担任教師が話すべき内容


 年度初めには、学級経営の方針を話さなければなりません。新しく担任し
た学級の目立った特徴や雰囲気、学習面、行動面の実態を話します。今後こ
のように指導していきたい、と抱負を語ります。
 担任教師は小さな声で、ぼそぼそと話してはいけません。はぎれよい、は
きはきした、明るい声で話しましょう。これ、けっこう、重要です。今度の
新しい先生、なんか頼りない、自信なさそう、子どもたちに声が伝わるのか
しら、と受け取られないようにします。
 今年度の学校目標や学年・学級目標が設定されていたら、それについて具
体的な事例をあげて解説します。また、これらの目標を達成するために家庭
ではこんなことを指導してほしいと協力を得るようにします。
 学級経営の重点を、個条的に、こんな目標に指導の重点をおき、こんな学
級に育てていきたいと話します。熱意をこめて、信念のある態度で、堂々と
話すことです。子どもたちへ愛情に満ちた温かみのある話し方をすることで
す。「わたしは、このような方針でやっていきます。せいいっぱい努力しま
す」と約束します。

 年度途中の父母懇談会では、年度当初に計画した学級経営の方針がどのよ
うな経過をたどり、現在はどんな実態の到達しているかの報告をします。
 教師は、下手にでたり、へりくだったり、遠慮した物言いをしないことで
す。父母からよく思われようと、調子のいい、こびた言動もよくありません。
父母からの卑下や反感を抱かせるだけです。堂々と自信たっぷりに話すこと
です。
 教師のあいまいな物言いはよくありません。煮え切らない、決断が中途半
端でモタモタした話し方は、こんな教師の話し方では児童が理解しにくいだ
ろう、テキパキと歯切れよい話し方で教えてほしいものだ、と不安を抱かせ
ます。声が小さい、または低い声の話し方もよくありません。張りのある声
で、歯切れよい話し方にしましょう。こうすれば、父母は教師を信頼し、安
心感を持つことになります。


   
年度の途中で担任教師が話すべき内容


以下、すべてを話すということではありません。必要度や時間の余裕に応じ
て臨機応変に取捨選択して話しましょう。

@各教科の学習内容や進度状況を話す

 いま学習している各教科の学習内容や進度状況を話します。各教科の内容
の要点と指導方法の急所を話します。各教科の進み具合、遅れ具合、理解の
達成の度合いの様子などについても知らせます。学校では、この内容をこん
な方法で指導していると話し、教師が学校で指導している方法と、父母が家
庭で指導している方法と、その教え方に大きな違いがないように情報交換を
します。総合学習では、こんな内容を、こんな方法で指導していると話しま
す。
 また、これから使用する、家庭で準備しておいてほしい用具、コンパスと
か、分度器とか、工作で使用する材料とか、について知らせます。家庭にお
ける自主的な勉強(宿題)、理科の継続観察、国語の漢字練習・表現よみ練
習の音読カードへの記入依頼、などについても知らせます。

A授業参観で帰宅後、親から子供へのコトバのかけ方

 最近の授業参観は、○曜日から○曜日までの3日間、いつでもよい、とい
う学校が増えています。働いている父親、母親には都合がつけやすいですし、
水曜日の体育は跳び箱だからぜひ見に来てと子どもから要求が出ることもあ
るでしょう。
 授業参観のあとに学級懇談会がもたれる場合と、持たれない場合がありま
す。学級懇談会がもたれた場合は、担任教師は、本日の授業ついての解説を
話します。本日の授業のねらい、指導の重点などについて簡単に話します。
 授業参観では、親はとかく自分の子どもだけにしか目がいかない、わが子
だけを観察する傾向にあります。先生と児童とはどんな話しのやりとりをし
ているか、全員の勉強態度や発表態度、取り組みの態度、どういう雰囲気で
話し合っているか、全体の中でわが子がどう動いているか、学級集団の中で
わが子がどんな位置にあるか、などについて雰囲気だけでもつかんでほしい、
見てほしい、と話します。
 父母が家に帰ってから、わが子の授業態度について、私語をした、よそ見
をした、姿勢が悪い、落ち着きがない、間違えた発表をして親が恥ずかしか
った、などというマイナス面をあげつらいことはやめましょう、と話します。
「私語をしてなかったね、大きな声で、発表していたね、よかったぞ。落ち
着いて勉強していたね、えらかったぞ、間違えても堂々と発表していたのは
えらいぞ。まっすぐに手を上げていて、かっこよかったぞ。○○の時、よそ
見してたのは、ちょっと残念だったね」のように褒める点を多くしましょう
と話します。親はダメな点に目がいきがちですが、叱るネタを探すのでなく、
褒めるネタを探して、家に帰ったら、褒めて、励ましてあげる話し方が、子
育て上手な母親の話し方です、と話します。

B学級集団の様子について話す

 担任教師は、学級集団の様子について話します。これまで児童との交流を
通して感じたこと、普段の児童たちの行動の様子を、こんなことがあったと、
具体的事例をあげて話します。最近、学校・学級内で起こった出来事、エピ
ソードについて話します。学級児童の学習面・生活行動面について話します。
学習態度、発表力や表現力、遅進児の指導、などについても報告します。障
害支援児や問題行動児がいれば、担任はその指導や扱い方にこう配慮して指
導していると語り、父母たちの理解と協力をお願いします。
 学級集団の雰囲気・力関係(協力、仲間集団、助け合い、男女仲良し、落
ち着き、けんか、仲間割れ、いじめ、からかい)、給食(手洗い、偏食、食
べ残し、犬食い、三角食べ、食事のマナー)、掃除(協力、分担、仕上がり
具合)、遊び(遊びの種類、友だち同士の力関係、進んで運動場へ出るか)、
忘れ物(教科書、ノート、学習道具)、保健衛生(手洗い、けが、病気欠席、
つめ切り、ハンカチ)、コトバ使い(下品なコトバ、知性言語を育てよう)、
児童活動(学級会、係り活動、当番活動、クラブ、委員会、趣味や遊びのグ
ループ)の様子などについて報告します。
 これらは、具体的な資料を活用して話すとよいでしょう。録音テープ、ビ
デオ、ノート、児童作品などを活用しながら話します。児童の作文を読んで
聞かせたり、描いた絵を提示して、子どもがこんなに成長(活躍)している
と語ります。行動面の報告は、良い面を語り、アラ探しにならないようの配
慮します。マイナス面は、ちょっとこんな行動が見られます、こう指導して
います、と報告します。

C担当学年の精神発達段階(特徴)について話す。

 本章(3)「各学年の発達特徴と対応のしかた」を参照したりして、学級
児童の実態を話します。今、こんな学級集団(集団遊び、仲間グループ、き
まりの順守、力関係、言動の様子など)の実態を話します。学級集団で目立
つ点、どこに生活指導の重点をおいて指導しているかについて話します。
 担任教師が、いつも励ましていること、称賛していること、いつも注意し
ている事項などを、具体的な事例をあげて知らせます。

D特別活動の様子について話す

 学級会、係り活動、当番活動、クラブ活動、委員会活動など、子どもの自
主的な集団活動について、それぞれはこんな活動をしていること、二、三の
具体的な事例をあげて報告します。

E行事計画について話す

 学校行事、学年行事、学級行事の実施計画について話します。遠足、社会
見学、運動会、学習発表会、展覧会、音楽会、スポーツ大会、林間学校、修
学旅行、修了式、卒業式、おたのしみ会、また長期休暇の期間・諸注意事項
など、それらの行事計画のあらましについて話します。各行事で父母が知っ
ておいてほしいこと、協力していただくことについて話します。

F成績物の受け取り方について話す

 家に持ち帰った作品(作文、絵、工作、図表)やテストなど、父母の受け
取り方、コトバのかけ方、あるいは、通知表の見方や受け取り方について話
します。下記を参照しましょう。
 本章(5)「通知表の見方、受け取り方」、
   (7)「家庭勉強のさせ方」
 また、これらを懇談会のテーマにして、それぞれの親にどんな受け取り方
をしているか、実際を語っていただき、どうすれば教育効果が上がる受け取
り方になるか、児童ががんばる受け取り方になるか、について話し合ったり
します。

GPTA役員さんからの連絡事項を話す

 PTAで活動している行事紹介や、PTAの各委員会からの伝達報告事項
を話します。PTA活動への一般会員の協力を求めます。PTA主催の講演
会やPTA行事への積極的な参加などについても話します。

H最後に担任からの挨拶コトバを言う

 最後に、学級担任が「いたらぬところ、気のつかないところ、行きとどか
ないところ、多々あると思いますが、今後も最善をつくして努力していくつ
もりです。いたらぬところ、気づいていないところもありますから、わたし
に何でもおっしゃってください。お子さんについて担任に知らせたいことが
ありましたら、連絡帳でも、電話でも、学校にいらして下さっても、わたし
の方から出かけてもいいですし、連絡を密にしてお互いに頑張っていきまし
ょう。本日はありがとうございました」のように述べます。
 それから、本題のテーマにそった話し合いに入っていきます。



    
懇談会参加者の人数を増やすには


 学級懇談会は、父母と教師の情報交換の場であります。父母と教師が協力
して学級児童の教育効果を上げていく方策を語り合う場です。ところが、せ
っかくの学級懇談会に参加する親の数が少ないという残念な現状があるよう
です。次のような実態が見られます。

*授業参観には親の参加は多数であるが、懇談会になると帰宅する親が多く、
 懇談会への出席数が少ない。

*いつもの顔ぶれ、いつも決まった親同士の参加になってしまう。

*教師の一方的な話しで終りがちになる。父母の発言が少ない懇談会となる。

*問題のある児童の親は、ほとんど顔を見せない、参加しない。

*教師と特定父母との個人的な話題に終りがちで、個人面談の延長のように
 なり、全員の共通話題となる話しになりにくい。

*本音をだして語ってくれない。とかく固くなりがちで、外交辞令の建前論
 の意見発表となりがちである。 

 学級懇談会を魅力あるものにするために工夫する必要があります。次のよ
うな工夫を利用されたらどうでしょう。(本章全体が、これに対する筆者の
解答でもある)

(1)事前にテーマを知らせておく

 事前に父母にアンケートでテーマの希望をとり、それを学級役員の父母と
話し合って、どんなテーマを、どんな順序でとりあげていくか、を決定する。
 または、第一回の懇談会の席上で年間の議題について希望をとり、テーマ
の月別配当を組んでおく。次回のテーマを予告し、次回の懇談会で、父母の
中から数名、話題提供の報告者をお願いしておく。

(2)担任と司会者とで事前の打ち合せをしておく

 担任が事前に司会者(父母)と話し合って、内容や進行を打ち合わせして
おく。当日の司会進行の順序、話し合いの柱や深め方、まとめ方について打
ち合わせをしておく。

(3)机の並べ方を変える

 話し合いにふさわしい机の並べ方にする。円形にしたり、コの字型にした
り、2,3人の小グループの机の配置にしたり、その時の話し合いの目的に
よって臨機にグループを変える。全員から意見が出やすい座席配置にする。

(4)父母の机上に名札をおく

 画用紙を三角に折った簡単な名札を机上に置く。名札を置くことにより、
お互いの名前が分かる。わが子と仲よしのA君の母親はあの方だということ
になり、親近感がわいて、ぐっと話しやすくなる。

(5)資料を活用する

 学級児童が活躍している授業の様子、運動している様子のビデオ映像を見
せる。児童が活躍している写真を回覧して、それについて担任が解説する。
児童の作文や絵をとりあげて紹介し、担任の感想・解説を加えた話をする。
 本日のテーマに関わる資料を準備しておく。テレビの見せ方、お小遣いに
与え方など、テーマにそった事前の実態調査、アンケートをとっておき、そ
れを集約した資料を当日に配布する。どんなテレビ番組を見ているか、人気
番組は何か、テレビのチャンネル選択の決定権はだれか、お小遣いはいくら
ぐらいか、どんな与え方になっているか、お小遣いは自分で好き勝手に使っ
ていいのか、などについての資料を配布する。教師が学級児童に手を上げさ
せて集約し、大体の傾向を把握して、懇談会に提示する。また、テーマに関
わる子どもの作文を読んで聞かせる、テーマに対する子どもの思いや意見発
表をテープ録音で聞かせるなど。

(6)PTA役員の選出では年間の仕事内容を知らせる

 4月、最初の学級懇談会はPTA役員の選出があります。役員選出となる
と、出席者がぐっと減少する傾向にあります。
 役員希望者がいません。勤めていますから、家に年寄りの病人がいますか
ら、地域の役員をしていますから、幼稚園の役員をしていますから、赤ちゃ
んがいますから ………。
 このような断りのコトバが続出し、長い沈黙の時間が過ぎてしまいます。
長い沈黙の時間、無駄な時間の経過にいらいらして短気をおこして、わたし
がやります、と言った人が役員になるということになる。候補者が出なけれ
ば、仕方なく、ジャンケン、くじ引きにしましょう、となってしまう。
 PTA役員になることにしりごみしているのは、どんな仕事内容か、月に
どれぐらい学校へ出席するのか、こうしたことが分かってなくて、ただタイ
ヘンダカラという漠然とした理由から前へ踏み出せない父母もいらっしゃる
のではないでしょうか。
 それで、役員名の一覧表、それぞれの役員たちの仕事内容、各月の学校へ
の出席回数などを、昨年度の例をプリントした参考資料として配布するとよ
いでしょう。
 たとえば、各学校によって違ってくるでしょうが、

 学級委員は、こんな仕事内容である
 広報委員は、こんな仕事内容である
 ベルマーク委員は、こんな仕事内容である
 成人委員は、こんな仕事内容である
 校外委員は、こんな仕事内容である


 学級委員の主な月別会合内容と出席日数はこうである。
 
4月………役員選出
 5月………各委員会別の年度計画と役割分担
 6月………給食試食会の立案計画、運動会の手伝い
 7月………教室カーテンのクリーニング
 8月………市内PTAとの交流集会への参加
 9月………


 昨年度と、今年度とでは、多少は違ってくるでしょうが、参考にはなりま
す。これを参考資料として役員選出の懇談会に配布します。
 今年度の活動計画は、今年度のPTA総会で立案計画・提案されるのでし
ょうが、このように昨年度のPTAの事業計画のおおよそを知らせます。
 また、昨年度に役員をなさった方の経験談を語っていただくとよいでしょ
う。お友達もできて、楽しくすごせた、皆さんと仲良しになれて、生活範囲
が広がった、こんな良い経験ができた、こんなことが大変だった、などと経
験談を語っていただくと、参考になるでしょう。
 こうすることで、○○役員の仕事内容、学校への出席回数などが分かり、
これなら出られそうだわ、役員になってもよいわ、という父母も出てくるで
しょう。

 上記「PTA役員の選出」と関連する本ホームページにある記事
 第19章付録「父母と教師に役立つ学級懇談会の話材集」の中の〔19父母へ
のお願い〕の中に
 (10)学級懇談会へ進んで参加しよう
 (11)学級懇談会の出席率をよくするために
があります。連関する記事ですので、参照しましょう。


(7)同一学年合同の学年懇談会を開催する

 同一学年に数学級がある学校のでは、学級懇談会を、学年懇談会として実
施する。同一学年合同の学年懇談会に切り替えて実施する。修学旅行とか、
林間学校とか、卒業式計画とか、同一学年全体に関わる行事計画に関する時
に多く使われる。 
 同一テーマで学年全体の父母が学級を超えて話し合う機会を持つ懇談会も
よいでしょう。学年全体集会の懇談会です。学年全員の父母が体育館に集合
し、学級担任が分担して、各分科会に参加します。問題別テーマに分かれて、
家庭読書のさせ方、テレビの見せ方、忘れ物のなくさせ方、自立心の育て方、
お小遣いの与え方、などについて分科会を持つとよいでしょう。


        
司会者の仕事


●司会者はクラス役員にお願い

 学級懇談会の司会者は、クラス役員の父母にお願いします。テーマや会の
進行について事前に担任と打ち合わせをしておくとよいでしょう。
 教師が司会進行をしてもよいですが、教師が司会をすると、教師の一方的
な話しと伝達事項、そのあと、質問や意見はありませんか、質問も意見もな
しとなり、簡単に終ってしまうという懇談会になりがちです。
 親が司会者となると、雰囲気が柔らかくなり、親からの発言が出やすくな
ります。それぞれの家庭で子どもの様子を語っていただいたり、他の家庭の
子どもへの取り組みの様子を語っていただくことで、それぞれの家庭で違い
があり、自分の家庭と違うことを知り、自分の対応の仕方や取り組み方を反
省する材料ともなります。自分の考えを深めることになります。

(1)初めに、歌やゲームで緊張をほぐす

 父母の皆さんが学校に来ると、懇談会となると、とかく緊張します。何か
話さなければならないのだろうか、指名を受けたらどうしよう、などと思い
がちです。緊張をほぐし、柔らかい雰囲気を作って、気軽に話しが出しやす
くするために、初めに出席者全員で歌をうたったり、簡単なゲームや手遊び
をしたりしましょう。

(2)親の自己紹介をします

 懇談会は、担任教師と学級父母とが語り合い協力し合って子どもの教育効
果を上げていくためにあります。自己紹介によって、いつもわが子の口から
出ている友達のお母さんは、あの方だ、となり、親同士が知りあうよい機会
です。あの方が、うちの子がよく名前を出す○○ちゃんのお母さんだ、帰り
に「○○の母です。いつも仲よくしていただいてありがとうございます」と
挨拶しよう、などとなります。

(3)親は自己紹介で何を話せばよいか

 懇談会の初めに、一人ずつ簡単に自己紹介をすることになったとします。
何を、どう話せばよいか、土間どっている親もいるでしょう。司会者が、例
えば、こんなことを自己紹介で話していただければ、などの例を、初めに語
っていただくとよいでしょう。
 初めに○○の母・父です、と言います。次に、何か、一つ、二つを付け加
えてお話してください。顔見せの自己紹介ですから、ごく短い話しにしまし
ょう。一通り、出席者全員の自己紹介ですから、長い話しは嫌われます、と
要望を出しておくとよいでしょう。
 初めの「わたしは、○○の母・父です」に付け加える事柄としては、次の
ような一言があるでしょう。

*わが子の家でどんな遊びをしているか、遊びの様子、家での勉強の様子、
 お手伝いの様子、自分が子育てをしている悩み事や困り事、わが子の家で
 の笑い話・失敗談、わが子が最近はまっていることなど、わが子のありの
 ままの姿を、どれか一つを選んで話します。

*わが子は、前学年と比較して、……がとてもよくなってきました。しかし、
 ……がだんだん悪くなってきました。皆さんのお子さんは、いかがですか。

*最近、わが子は……に挑戦しています。……はまっています。

*親として、わが子が……ができなくて困っています。ほとほと困っていま
 す。みなさんは、こういうとき、どうコトバをかけていますか。

*うちの子は、鉄道ファンで、大人の読む鉄道の本を、たくさん集めて読ん
 でいます。読んでいるのでなく、ただ眺めているだけなのでしょうけれど
 も、そういう本を自分のお小遣いでどしどし買ってきて困っています。

*うちの子は、マンガが大好きで、マンガを読むのにはまっています。

*うちの子は、……することが多くて、困っています。他の家のお子さんは、
 どうなんでしょうか。どう指導していらっしゃるんでしょうか。

*最近、うちの子はコトバづかいが悪くなってきています。親に対して……
 というコトバを言います。わが子だけなんでしょうか。皆さんのお子さん
 は、いかがでしょうか。

*わが子は、学校から帰ると、そのあとの大体の生活スケジュールはこうな
 っています。帰宅後の生活スケジュールを話す。

*わが子の放課後の過ごし方や活動範囲は、こうなっています、を話す。

*わが子は、忘れ物が多くて困っています。皆さんのお子さんは、明日のラ
 ンドセルを揃えるのは、いつやっているのでしょうか。


 その他、学校とは関係がないことが話題として出されることもあります。
以下のような例です。これらは、母親として興味関心があることでしょうか
ら、司会者は「みなさん、どうですか」と話題を広げてもよいでしょうが、
ごく簡単に済ます。

*この近辺で、ラーメンのおいしい店は、どこですか。

*通販は、みなさん利用していますか。わたしは利用してないですが、不安
 なことはありませんか。

*お子さんが学校に行っている時間、みなさん、何をしていらしゃいますか。

*母親向けの習い事、サークルなど、お勧めはありませんか。どんな趣味を
 お持ちですか。

*母親だけの出席の場合は、父親が子どもの教育にかまってくれない、とい
 う、父親への愚痴の披露が語られることもあります。

 これらの中から学級懇談会の議題として次回からのテーマとして取り上げ
るものも出てくるでしょう。次回は、これをテーマにして話し合いましょう、
と予告しておくと、話し合いが弾み、参加者が多数になるでしょう。



    
司会者(クラス役員)の留意事項


(1)一通り語っていただき、そこから話題を取り出す


 はじめに全員から一通りテーマに関わる事柄、各家庭の実態を順繰りに報
告していただく。その中から共通の問題(話題)になりそうな事柄を拾い出
す。
 話し合いが途切れた時、司会者が名札を見て、「○○さん、いかがでしょ
うか。話のきっかけにお話しください」とか「○○さん、今の問題について
どうお考えですか。あなたの家庭の場合の実情を話していただけませんか」
などと発言を促していく。

(2)話し合いの進め方は

 一般的な進行は、次の三段階があるでしょう。

  @テーマについての各家庭の子どもの現状報告(実態報告)を語ってい
   ただく。

  A父母たちお互いの感想や意見を交換する(現状報告の分析・原因探 
   り)

  B対策(どう指導していくか、その手立て)を考える

というプロセスで通常は話し合いが進められるでしょう。次第に解決策にせ
まる話し合いへと導いていくようにします。

 例えば、「テレビの見せ方」というテーマで話し合うとします。
 初めに、司会者が「みなさんの家庭では
・「テレビの見せ方」はこうなっているという、ありのままの実情を語って
 下さい。」
・「皆さんの家庭では、お子さんは、どんな番組を多くみていますか。お子
 さんが喜ぶ番組は何ですか。お子さんは、何時間ぐらい見ていますか。」
・「テレビ視聴選択の決定権は誰が持っていますか。」
・「おうちにテレビは何台、あるのでしょうか。」
というような誘いかけで 導入していくとよいでしょう。
 わが家の実情を報告するのですから、誰でもが容易に話しに参加すること
ができます。結論は必ずしも一つに絞る必要はなく、さまざまな意見や考え
方や対策があることを知り、それを各人が自分の家庭に持ち帰って、それぞ
れの子ども・家庭の実態に応じて適切に指導していただくようにすればよい
わけです。

 まず、話のきっかけとして司会者がはじめに「わたしの家庭では、こうな
っています」を語り、次に「「皆さんの家庭ではどうなっていますか」「教
えてください」「○○さんに家ではどうですか」と誘いかけて進めていきま
す。

(3)司会者は話の引き出し役、引き立て役となる

 司会者が一方的に話したり、教師が父母に教えてやろうという不遜な態度
で、高飛車に、押しつけがましく話してはいけません。けっこうなお話をい
ただきました、と同感します。父母が話している最中は、司会者はうなずき
ながら聞きとる、メモをしながら聞きとる、などをすると、話し手は気持ち
よく話しだすことができます。共感的なうなず、首を上下にふる、「ンン
ン」「なるほど」「ほおお」「そうなの」という相槌や表情を浮かべて聞き
入るようにします。そうすると、話し手は気持ちよく話しを続けてくれるで
しょう。

(4)結論をむりに出さない

 少数意見を大切にします。結論は必ずしも一つにしぼる必要はありません。
わが家の具体的な事例を各人が語り合い、家庭によってさまざまなやり方が
あること、さまざまな意見があることを知ることがいちばんの収穫です。各
人がそれを家庭に持ち帰り、わが子の実態に当てはめて、それぞれの親の判
断で指導していくようにすればよいわけです。

(5)話しを途中で折らない

 司会者は、親が話している途中で、親の話しを止めてしまわないようにし
ます。なるほど、んんん、と共感する相槌を入れながら、最後まで聞きます。
終ったら、「大変に詳しくお話ししていただきました。ありがとうございま
した」とお礼を言いましょう。「時間も限られていますから、次の方は短
く」と言いたいのを我慢します。周りの様子から、次に話す人は、「まあ、
長々と話して。わたしは簡単明瞭に話しますわ」と周囲の空気を読んでくれ
るのを期待します。

(6)「自分の子ども」から「みんなの子ども」へ話題を
   広げる


 親の関心は、自分の子どものことだけ、です。自分の子どもの勉強のやり
方、自分の子どもの友人関係、自分の子どもの成績伸ばしなどに片寄りがち
です。これは、親に気持ちとして当然なことです。たとえば、親から、次の
ような話題が提供されることがあります。

*わたしの娘のことですが、親や友だちにちょっと強く言われると、すぐ泣
 き出します。どうしたら、もっと強い子になるでしょうか。

*ものを大切にしなくて困っています。ノートはとばし書き、とじ糸をほど
 いてバラバラにしてしまう。どのようにしつけたらよいでしょうか。

*最近、悪い友だちと仲よくなったようです。悪い友だちからの電話の呼び
 出しが多くなり、喜んで出かけていきます。その子と遊ぶのを禁止すると
 反抗します。このままでよいのでしょうか。

*うちの子は遊んでばかりいて、ちっとも勉強しません。どう指導したら勉
 強するようになるのでしょうか。

*この頃、テストの成績が下がってきていますが、どうしたのでしょうか。
 宿題をたくさん出してください。遅れている子は放課後に残して個別指導
 をしてください。

*うちの子は学習塾に行ってるし、スイミングスクールやソロバンの習い事
 にも行っています。宿題を出されてもやる時間がありません。宿題はどう
 してもやらねばならないものでしょうか。やりたい子だけ、提出すること
 にしてはだめでしょうか。

 これらの話題は、一人の親と教師だけの話し合いにするのでなく、全員の
共通の話題になるように広げていきましょう。

 司会者は「この問題は○○さんだけのことではなく、どこのお子さんにも
大なり小なりに見られることだと思います。皆さんはどう指導されています
か。どんなコトバをかけて指導していけばよいと思いますか。みなさんのお
子さんの実態を語っていただけませんか。皆さんだったらどうしますか」

「Bさん、Cさんは、どうお考えですか。あなたのお子さんの場合で考える
と、どんなことが言えますか。あなたの家では、どんな指導をしています
か」などと広げていきます。

 このように共通の話題となるように広げていき、全員で考え合い、話題に
していくようにします。個別的な話題を、一般的な話題にしていき、みんな
で話し合っていくようにします。教師が直ぐに返答するのでなく、出席して
いる親たち全員に問題を返していくようにします。

 教師に宿題を出してほしい、という問題は学級懇談会でよく話題になりま
すが、宿題を全く出していない先生はいないと思います。回数や量が多いか
少ないかのことでしょう。親はわが子が家庭勉強しないのは宿題がないから、
と早合点している例もあります。その日に宿題があるのを知らない、子ども
が親に知らせていない、子どもがすでに済ましてしまっている、などもあり
ます。進度が遅れている場合は、ここは家庭てやって提出しなさい、自由研
究みたいな宿題もあります。担任教師の考えを語って、両者で共通理解がで
きるように努めます。

(7)特定児童のアラ探し・非難・攻撃を避ける

 次のような発言が出されることがあります。

*このクラスに落ち着きのない子がいて、勉強に集中ができなく、いつもそ
 の子を先生が注意していて、その子のために授業が中断してしまうことが
 あると子どもから聞きます。なんとかならないですか。

*同じクラスの、うちに遊びに来るお子さんで、行儀が悪い、挨拶ができな
 いお子さんがおります。学校でも他の家に行った時のマナーについて指導
 して下さい。

 こうした特定児童のアラ探し、非難の意見が出た場合は、司会者は
「この話題は、一人の子どもさんの悪口を言いたてることにもなりかねませ
ん。個人攻撃になってしまうことにもなりかねません。それを言われた親御
さんの気持ちになってみることも大切です。
 子育てをどうするかという、共通の話題としてふさわしくないと思います。
みなさん、どうでしょうか。この話題は、先生と親御さんでこれまでも話し
合っていろいろな方法や対策を探って指導しているのでしょうから、一層の
指導をお願いして、ここで止めたらと思います」と告げます。

 担任教師は、父母の前で話してもよい事柄と、話してはいけない事柄があ
ります。話せる部分は「その親御さんと、これまでによく話し合っています。
親御さんも心配なさっており、皆様にご迷惑をかけてすみませんといつも言
っております。家庭でも懸命にご指導いただいております。そのお子さんは、
これこれの性格(障害)の子で、少しずつですがよくなってきてます。その
お子さんがより一層よくなるように、学級児童も気を使い応援して行動して
います。父母の皆さんにもこの事情をご理解いただき、応援、支援、協力を
いただきたくお願いします」と話します。
 個人のプライバシーに関わることもありますから、他人に知られたくない
部分、干渉を受けたくない部分、秘密にしておきたい部分もあります。懇談
会など、全員の前で話す時は、教師は十分にコトバに気をつける必要があり
ます。

*わが子が、4,5日前から学校へ行くのを嫌がっているのですが、何かあ 
 ったのでしょうか。ときどき、泣いて帰ってくることがあります。
のような話題が懇談会で突然、出されることもあります。その事実を担任は
まだ知らないのです。この事例では、その児童(母親)と担任がまず話し合
うことです。事情を知ることが先決です。そして、解決策を立てていくよう
にします。担任が「そのこと、わたしはまだ知りませんので、懇談会が終わ
りましたら、すみませんが、お残りいただいて聞かせてください。もし親御
さんの協力を必要とする時は個別的にご協力をいただきます」と言います。
こういう事例は、懇談会の共通テーマとしてふさわしくないと思われます。



       
担任教師の留意事項


 
@メモをとりながら聞く

 学級懇談会や個人面談ではメモをとりながら聞くようにします。教師がメ
モを取りながら親の話しを聞けば、親はわたしの話を真剣に聞いてくれてい
ると好感を持って受け入れ、気持ちよく話し出してくれるでしょう。先生は
きちんと処理してくれるだろうと安心感を持って話し出してくれるでしょう。
 教師とは意見が対立する親の考え方であっても、肯定的にうけとめます。
違う考えだからといって、せっかちに相手の話の途中をさえぎって、短絡的
に否定しないようにします。相手の話している内容に最後まで耳を傾け、時
に、「んんん」「なるほと」とあいづちを打ちながら、相手が話し終わるま
で「なるほど」という態度を示しながら聞き入るようにします。

 
A親と違う意見を述べるとき

 教師が親の考えと違う意見を述べる場合は、はじめに父母の考えはその通
りです、わたしもそう思います、と肯定的に受けとめた返答をします。認め
る発言をしたあとで、教師がこんな別の考え方もできるのではないでしょう
か、と違う意見を述べていくようにします。相手の話を受容的にうけとめ、
謙虚に聞き入れながら、こんな別意見もあるでしょう、こっちの考えも、よ
い考えだと思われます、参考になさってください、と語っていくようにしま
す。
 あたまごなしに「それは間違っています」「それは認識不足です」などと
言ってはいけません。相手の反感や反発をまねくだけです。次のように言う
とよいでしょう。

*大変に結構なお話しでした。○○というお話し、わたしも、そう思います。
 しかし、こんな別の考え方もあると思います。……

*おっしゃたこと、わたしも賛成です。しかし、こんな考え方もできると思
 います。……。どちらがよい・わるい、ということでなく、あなたのお子
 さんの場合はどちらがよいか、ということになります。お子さんの場合は
 お母さんの方で選択して、指導なさってください。わたしとしては、後者
 の方がよろしいように思いますが、どうでしょうか。

*お母さんの考え方も一つの方法としてあります。ほかに、……という考え
 方もあると思います。お母さんの考え方で実行してみて、だめだったら、
 ……の考え方で実行してみたらどうでしょう。

*あなたのお子さんは、今、あなたがおっしゃったような悪い面ばかりでは
 ないですよ。……という良い面、……という良い面もたくさんあります。

*そうです。お子さんは、あなたが言うように大変によい子です。○○とい
 うよいこともたくさんしています。家に帰ったら、褒めてください。よい
 ことだらけです。とくに悪いところはありません。しいて、むりに、アラ
 を探し出して言えば、……ということに弱い点が見られます。ここがよく
 なれば、更によい子になるんですがね。完璧な人間なんていません。……
 をがんばるように励ましてください。

 このように「イエス→バット」の方式で教師の考え方を開陳していくよう
にします。初めに教師は親に共感を示せば、親との共感も得られるようにな
り、親と教師との協力関係が築かれ、指導の効果も上がるようになります。

 B親からの学校批判・教師批判への答え方

 父母が学校(学級)の教育方針について、次のような疑問、要望、不満を
述べることがあります。

*運動会を日曜日に実施してほしい。運動会種目にPTA競技をいれてほし
 い。敬老種目、就学前幼児種目を入れてほしい。
*六年生には修学旅行があるが、そのほかに林間学校か臨海学校を夏休みに
 実施してほしい。
*秋の遠足が中止になったそうだが、親としてはぜひ実施してほしい。
*学校のトイレの使い方が下手である。現在、学校では子どもにトイレ掃除
 をさせていないようだが、子どもにトイレ掃除をさせると、トイレをきれ
 いに使うようになると思う。
*前担任は宿題を毎日、出してくれた。それで、家で勉強する癖がついた。
 宿題が出ないと、家で自分から進んで勉強しない。ぜひ、宿題を出してほ
 しい。
*前担任は、学級通信を週に1,2回、発行してくれた。学校の子どもの様
 子、学習内容、教え方、子どもの取り組みの様子、担任の教育方針などが
 よく分かった。ぜひ、先生もそれをまねて実行してほしい。
*前担任は、忘れ物のグラフを作って教室に張り出したので、忘れ物が少な
 くなった。ぜひ、先生もそれをまねて実行してほしい。

 父母も教師も、子どもの知育、徳育、体育の向上を願っていることは同じ
です。子どもが立派に成長していくことを願って指導に取り組んでいる点で
は同じです。両者の考えはそう相違するはずがありません。方法に若干の違
いがあります。相互の立場を語り合い、共に悩んだり、協力し合って、子ど
ものために努力していく共通意志を話し合い、確認していくことが大切です。
 父母の要望の中には、すぐに取り入れて実行できるものもあります。その
場合は、「早速、実行します」と約束します。直ぐには受け入れられない要
望事項は、その理由をはっきりと言います。
 なぜ、現状がこうなっているか、そうなっている理由があるわけです。そ
の事情を個々の事例に即して説明します。

「おっしゃる通りです。そうなるのが望ましいです。が、これこれの事情で
こうなっています。教育予算とか文科省の教育方針とか、大枠はここから規
制がかかっています。この事情をご理解願いたい。」

「いろいろな方法があろうが、今の受け持ち児童の実態からして、さしあた
って、わたしはこんな方針で実践していっています。指導の効果を見ながら、
いろいろと方法を考えていくようにします。今のところこれでいきますが、
お母さんの考えも考慮に入れつつ進めていきます。ご理解を願います。」

「おっしゃってることはよく分かります。でも、そうしたからといって、こ
れこれの理由で教育効果はそう変化しないと思われます。逆に、現状のほう
が、ここがこう伸びていく」

 学級担任だけでは処理しきれない問題は、即答を避けます。軽率な判断で
「それはこうです」と速答することは避けます。知ったかぶりで返答し、あ
とで訂正の通知を出すようでは、その教師の思慮のなさを笑われるでしょう。
信頼を落とす結果になります。わたしが担当ではありませんので、担当教
師・事務職員に確認してから返答します。あるいは、担当教師・事務職員に
父母を直接に出向かせてもよいでしょう。問題によっては、学校長から直接
に返答していただく内容もあるでしょう。他教育機関や各種団体に問い合わ
せてから返答しなければならない内容もあるでしょう。これらについては、
よく調べてから、あとで手紙(電話、メール)で返答しますと約束します。


以下、次ページの「学級懇談会の持ち方(2)」へと続く。


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