父母と教師に役立つ学級懇談会の話材集 2015・2・23記 教師から父母へのお願い 本章に書いてあることは、教師から父母への切なるお願いでり、訴えです。 本章をお読みの父母の皆様には、分かりきったこと、当たり前のこと、普段 の子育てでやっている常識的なことで、皆様には関係ないことだと思います が、ご参考になることがあるかもしれません。お読みいただければ、うれし く思います。 (1)先生のアタリ・ハズレと言うけれど ○「今年の担任はハズレ先生に当たってしまった。赤ちゃんの子育てに忙し い若い先生で、赤ちゃんが病気をしたといっては学校を休んだり、早退し たりで、自習が多い。そのため他学級に較べて勉強の進度が遅れてい る。」 ○「昨年の若い担任もハズレ先生だった。昨年の若い男の先生は大学を卒業 したての新米教師で、教え方が下手で、わが子のテストの成績は下がるば かりで、遊んでくれるので子ども達には大変に人気があったが、一年間、 遊び呆けてしまった。昨年に続いて、ことしも、ハズレ先生に当たってし まった。ことしも、あきらめるよりしかたがない。ほんとうに残念だ。」 ○「厳しく、頑固な先生で、子供の行動の一つ一つに口うるさく指導する」 ○「のんびりした先生で、子どものしたい放題、やりたい放題、のびのびと やらせすぎている。」 母親の中には、このように担任教師について愚痴をこぼす方がおられます。 担任の指導を心配する母親の気持ちがよく分かります。でも、案外、子供に とっては人気のある先生、大好きな先生であり、教え上手な先生であるかも しれません。あるいは、わが子と担任教師との相性がたまたま悪いのかもし れません。事実はどうか、確かめる必要があります。同じクラスの母親にそ れとなく聞いてみたり、同じクラスの児童に聞いてみたりするのもよいでし ょう。わが子と同じことを言うかもしれませんし、全く逆のことを言うかも しれません。授業参観に出席したり、学級懇談会で話題に出して語り合った りしてみましょう。学級懇談会の後で個人的に疑問・質問を述べ、担任教師 の教育方針、その意図や理由を聞いてみるのもよいでしょう。 現在は価値観が多様化し、親の教育要求も多様化しています。教師に疑問 を抱いたら、他人の前で悪口を言う前に、その教師に自分の疑問を率直に気 軽に伺ってみましょう。先生も、そのことに気づいていなことも多いのです。 先生も親に言われて初めて気づくことも多くあります。母親の疑問が案外に 早く解決するようになるはずです。相手を非難するだけからは問題解決の糸 口が生まれるはずがありません。 先生にアタリ、ハズレがあるならば、親にだって、アタリ、ハズレがあり ます。わが子が、親に向かって陰でこう言ってるかもしれません。もっと育 ちのいい、金持ちの家に生まれたかった。もっと子育て上手な、口やかまし くない親の家に生まれたかった。両親が一流大学を卒業した、秀才の親の子 に生まれたならば、ぼくはこんなに勉強に苦労しなかったはずだ。こんな貧 乏な家でなく、大会社の社長の息子や娘に生まれたかった。女の子ならば、 わたしを美人に生んでほしかった。親を怨む。両親があの顔、あのスタイル だからあきらめるよりしかたがない。ぼくをこんな家になぜ生んだ。隣りの A君はアタリの親を持ち、ぼくはハズレの親を持った。 あなたのお子さんも、このように両親を嘆き悲しんでいるかもしれません。 ほんとには、両親を責めたり、呪ったりしている子はいないでしょう。が、 強弱の差はあっても、誰でもがちっとは考えたことはあるはずです。それを 声に出して言う子はいません。言ったところでどうにもならないことですか ら。 わが子にだって、アタリ、ハズレがあるはずです。どうしてこんなにノロ マで、クズで、アタマの悪い子に生まれたのだろう。どうしてこんなに口答 えする親不孝な息子や娘に生まれたのだろう。どうしてずるがしこい性格の 子が生まれたのだろう。どうして身体虚弱で、病院通いばかりする子が生ま れたのだろう。親は、こんな子になることを望んで生んだ覚えはない、育て たつもりはない、なんと不幸なことだ。このように嘆きのコトバを言い、わ が子を責めているいる親もいるかもしれません。まあ、通常の親は、そんな ことを心ではちっとは思うかもしれませんが、口にまで出しては言いません。 ハズレ先生、ハズレ親、ハズレ子ども、このように嘆き、責め、呪ってば かりいても、事態はよい方向にすすまないことは言うまでもありません。子 どもは、親を選ぶことができません。親は、子どもを選ぶことができません。 両親は子どもにとっては交換することができない存在であり、逆に子どもは 両親を交換することができない存在です。全く、選択の余地がない運命的な 出会いの存在です。お互いを選ぶ自由のない、残酷なまでに避けられない運 命的な結びつきの出会いなのです。 教師と子どもとの結びつきは、親と子との不可避な血縁関係ではありませ んが、同じような運命的な出会いの存在と言えましょう。子どもは、担任教 師を選ぶことができません。担任教師も子どもを選ぶことができません。学 校長に担任教師を変えてくれと要求を出す親がいるようですが、学校長は簡 単にハイ、ハイと返事をして変更してくれないでしょう。あっちの親、こっ ちの親からと担任変更の要求を受け入れたら、収拾がつかなくなってしまい ます。 (2)子どもの前で先生の悪口を言う 学校から帰った子どもが母親に言いました。 「今日の算数のテストは、ぼくは55点だったよ。組の平均点が65点で、 100点をとった子が3人だけいたよ」 すると母親が言いました。 「ずいぶん悪い点数ね。やっぱり若い先生はダメね。そんな点数なのは、先 生の教え方が下手だからよ。この前の授業参観の時だって、授業中に後ろを 向く子、隣りの子とおしゃべりしてる子、よそ見ばかりしてる子がいるのに、 先生はちっとも注意しないで、知らんふりして授業をしているんだから。ま た、隣の組の先生もダメなんだってね。オールドミスで、少しでもふざける と、かん高い声で直ぐに怒鳴りちらすんだって。いつも姿勢を正しくしてピ ンとしてないと授業をやめて、説教をだらだらと続けるんだって。体育の授 業をやらなかったりで、子ども達に人気がないんだって。勉強の教え方は上 手だけれど、すぐ怒るんだって。いやあね」 親がこう言うと、子どももまねをして同じことを言いだします。やがて、 親と子が一緒になって教師の悪口を言い出すようになります。一緒になって 教師の非難のコトバを言い出すようになります。 学校教育は子どもと教師との信頼関係で成立しています。教師と子どもと の信頼関係はとても大切です。「信頼関係」とは、信じて頼る関係、お互い に信じ合う、頼りにして任せあう関係のことで、その根底には温かな愛情関 係があります。子どもが先生を信頼し、尊敬し、先生に権威を感じていなけ れば、子どもは先生の言うことに従うはずがありません。親子で先生の悪口 を言いたてると、子どもは先生の教える事柄に耳を貸さなくなり、信じなく なり、いいかげんにしか聞き取らなくなります。 子どもの前で、担任教師の悪口を言うべきではありません。それが信頼や 愛情関係を損ねて、どれほど子どもに大きな影響を及ぼすかを知ってほしい です。 ≪教育指導は、相互信頼の関係で成立している≫ 子どもは先生を信頼し、先生に絶対的な信頼関係を持っているからこそ、 教室で先生の話しを熱心に聞くようになるし、先生の言うことを信じて、従 うようになるし、学校の集団行動の規律を守るようになるのです。小学校低 学年児童は一年生の担任教師を神様のように信頼しているのが普通です。 父母は子どもの前で、子どもと先生との信頼関係をこわすような言動を慎 んで下さい。子どもの前で、先生の悪口を言うことは絶対に止めてください。 先生の悪口は、子どものいないところでは、いくら言ってもいいです。子ど もの前では、ダメな先生であっても、うんと褒めてやってください。「いい 先生ね」と言って、ダメ先生でも、どこかにいい点があるでしょう。とりえ や持ち味があるでしょう。少しでもよい所を探し出して褒めてください。プ ラス思考で、先生のよい点を探し出して、褒めて、一年間、先生と付き合う ほうがきっと良い結果を生むでしょう。 わたしの長い教職経験からいうと、どうも先生の悪口を陰に隠れて言い立 て、悪い噂を流す母親は、ごく一部で、クラスにいるかいないか程で、そう めったにはいませんでしたが、先生の悪口を言う母親は、先生だけでなく、 何事にも悪口を言ってるみたいで、ご近所の母親たちから嫌われているみた いでした。何事にも悪口や愚痴を言う性格なんでしょうか。自分の存在自体 に不安を抱えている、不安定な人間関係で生きている母親に多くみられまし た。 母親が子どもの前で担任教師をバカにした悪口を言えば、それを耳にした 子どもも担任教師をバカにするようになります。教師不信が起こります。子 どもが教師に権威を感じなくなり、バカにした状態からは、教師の話しをバ カにして聞かなくなるし、教師の命令に従わなくなります。学習意欲をなく し、学業成績も下がるだけです。はては問題行動を起こすようになり、学校 集団の規律を乱すようになり、非行化の前兆行動をとるようにもなります。 友だちからも嫌われ出します。 このことは、母親が子どもの前で父親の悪口を言う、父親が子どもの前で 母親の悪口を言う、これも同じことが言えます。子どもの前で、夫のことを、 妻のことを、あれこれと悪口を言うのは、夫婦同士でいがみあうのは、厳に 慎みましょう。わが子のいないところで大いに言い合いましょう。いや、そ っと小さな声で、できればナシのほうがいいですね。 これは、先生を、母親・父親に置き換えて考えてみれば、理解できること です。夫婦は信頼関係で成立しており、お互いが相手の悪口を子どもの前で 言えば、子どもは、自分の母親を・父親を・信頼しなくなり、見下げて、家 庭内不和が子どもの非行化になる例もおおくあります。夫婦の悪口の言い合 いが、家庭内の不和となり、わが子に、非行行動にはしらせることの事例は 多いですよ。子どもは自分の家に寄り付かなくなり、友だちの家を渡り歩き はじめるようになります。 夫婦のあいだのゴタゴタを子どもに見聞きさせてはいけません。子どもだ ってアタマがいいですから、夫婦の問題に口をさしはさむことはしません。 どちらかに加勢することもしません。子どもは、夫婦間の問題に「ああだ、 こうだ」と口出しをしたら、どっちかに加勢したら、家庭は崩壊するだけだ と分かっています。じっと耐えて、知らんふりをしています。早く和解して、 楽しい家庭に戻ってほしいと願っています。 夫婦の悪口の言い合いは、これが心の傷となって記憶に残ります。 小さい時のこうした父母関係を見聞きした子どもは、ちょっとした、軽い 悪口でも何度か繰り返されると、これがトラウマとなり、子どもが中学生・ 高校生になって親に反抗する時期を迎えた時に、今度は子どもが母親に・父 親に・悪口を言い出すようになってきます。思春期の反抗期になった時に、 母親または父親の悪口を言って、反抗したり、軽蔑のコトバを投げかけたり、 果ては親と口を利かなくなったり、自分の部屋に閉じこもったりするように なります。母親を・父親を・信頼しなくなり、いらいら、むしゃくしゃ、不 快な気分、あるいははっきりした不信があって、母親・父親を嫌悪の対象と して、悪口をぶつけ、暴力を振るうようになったりもします。 家庭は、愛情たっぷりな世界、のびのびと手足を伸ばしてほっと気休めの できる、外世界の疲れや嫌なことが忘れられる、何でも気兼ねなく話せて、 話し手の気持ちをいやしてくれる、支持や応援をしてくれる、そうした家庭 であるべきです。家庭は、居心地のいい、心が安らぐ、ほっと心が休まる、 心を癒してくれる、のびのびと手足も心も伸ばせる、そうした場所であるべ きです。 参考資料 ベストセラーとなった坂東眞理子『親の品格』(PHP新書、2008)を読ん でいたら、上で書いたわたしの意見と同じ内容の文章個所があることを見い 出しました。わたしは意を強くしましたので、下記にその文章個所を引用し ます。以下の引用に書いてあることは、坂東眞理子(昭和女子大学学長)さ んは、これは『親の品格』だ、と主張しています。 子どもが聞いているときは、人の悪口は言わないと決心しておきましょう。 とりわけ判断力が備わる前、小学生くらいまでの子どもは、親の言葉を単 純にそのまま受け取ってしまいがちです。親戚の悪口、友だちの親の悪口は、 その子の対人関係を誤らせます。大人ならば「この人はこう言うが、別の見 方もある」「この人は誰の悪口でも言う人だから」とバランスを取りますが、 子どもはそのまま受け取りがちです。(中略) 家族、とくに配偶者の悪口は、子どもの前で言わないように努力しましょ う。 言ってる本人は、子どもを味方にしようとか、相手に対する批判に同調し てもらいたいとか思っているわけではないと思います。単純に悪口を言えば すーっとする、「ただ聞いてもらえればいいのよ」「家族にしか言えないの だからいわせてよ」という程度の気持ちかもしれませんが、聞いている子ど もが、小さければ小さいほど混乱し、悩みます。 配偶者同士が同じ意見をもち、同じ行動をする必要はありませんし、とき にはけんかをすることもあります。いっときのけんかであれば問題ないかも しれません。しかし、対立する期間が長いようでは考えなくてはなりません。 子どもは仲のよい両親だとうれしいのです。 祖父母やおじ、おばなどの親類に対する批判も慎みましょう。親の批判を 聞いていたら、子どもは親類によい感情を抱くわけがありません。子どもが 好感を持たないと、相手も好感をもってくれません。(中略) 子どもの友だちの悪口もできるだけやめましょう。子どもの友だちの親の 悪口もやめましょう。 そして、いちばん、害が大きいのは学校の先生や、塾の先生、習い事の先 生など、子どもが尊敬すべき先生に対する批判や悪口です。 「あの先生、出身大学は○○だって、あんまり頭はよくないのね」とか、 「あの先生は教え方が下手だから、子どもの学力が上らないのだわ」「あの 先生は専門分野の評価が低いらしいよ」といった話しを子どもの聞いている 場でするのは、「百害あって一利なし」です。教わる人に対する尊敬の念が なければ、学習効果は上がりません。「すばらしい先生に教われて幸せ」と いう気持ちがあれば学習する熱意も増しますが、さえない先生に教わってる と思ったら意欲がなくなります。(中略) それに振り返ってみてください。人の悪口を言ってるときのあなたの態度 は立派でしょうか。嫉妬心や高慢さ、意地悪さをむきだしにしている親を、 はたして子どもは尊敬するでしょうか。 子どもは親に立派であってほしいのです。それが重荷で、あるがままの親 を受け入れてほしいと臨む親も多いのですが、それは甘過ぎます。親ならば、 自分の悪いところを子どもの前で出さないように気をつけましょう。 もし、子どもが悪いうわさを聞いて話をしてきたら、「そんなふうに言う 人もいるけれど、あの人にはこんないい面もあるんだよ」と別の見方も教え るように努めましょう。 85ぺ〜88ぺ 普通に育っている子どもも、3,4歳ころから保育園や幼稚園、子ども園 での生活が始まります。6歳になれば小学校入学です。子どもの教育は先生 に託されます。 何とか子どもをかわいがってほしい、子どもの長所を発見し、伸ばしてほ しいとすべての親は願っています。先生に対する期待が大きくなればなるほ ど、先生に対する要求も大きくなりがちです。子どもかわいさのあまり、学 校や先生に対する理不尽な要求を突き付ける親も増えています。 「うちの子どもの成績が悪いのは、先生の指導力不足が原因だ」「先生に 叱られたことがトラウマになり、親に反抗するようになった」「うちの子ど もは家では何もさせていないので、学校でも掃除当番は免除してほしい」 「にんじんが食べられないので、給食からにんじんを取り除いてほしい」 「義務教育だから、親が給食費を払う必要はない」など、道理に合わない要 求を突きつける親を「モンスターペアレント」と呼ぶそうです。 モンスターとは極端な表現ですが、そう呼びたくなるほど理不尽な親の要 求が、学校や教師に寄せられているようです。 「子どもかわいさ」ゆえの行動と親は思っているかもしれませんが、子ど もはかえってそれで傷ついています。親が批判する先生に対しては、子ども もきっと批判的になり、人間的交流や相互作用は生れません。 117ぺ ≪教師と気軽に語り合ってみよう。≫ 教師にも、さまざまなタイプがいます。どの先生も一長一短があります。 完全無欠な教師はいません。ダジャレが得意でいつも子どもたちを笑わせて る先生、まじめ一方で厳しく子どもを指導する先生、ほわっとしていておお ざっぱな頼りない感じの先生、経験不足だが子どもに好かれてる先生、生活 行動をこまごまとしつける先生、家で勉強の習慣をつけるために宿題を多く 出す先生、宿題を出さず自分から課題を見つけて進んで勉強して書いたノー ト・問題集の提出を求める先生、いろいろです。 今は亡き島倉千代子さんの歌に「人生いろいろ、男もいろいろ、女だって いろいろ、咲き乱れるの」という歌詞がありました。教師もいろいろ、親も いろいろ、美しく咲き乱れています。教師非難の話しの中にも笑いや希望を いっぱい見出し、胸をときめかし、プラス思考で対応していきましょう。 賢明な親ならば、ハズレ先生に当たったからと、かげで悪口を言って、諦 めてしまうことはしないはずです。ハズレ先生にも短所ばかりでなく長所も あるはずです。悪口で、かっかとしていると、長所が見えなくなって、目に つかなくなっているだけです。ハズレ先生にも持ち味があるはずです。学級 懇談会の席上で気軽に疑問に思っていることを話題に出してみたらどうでし ょう。または、懇談会が終わった後で先生に個人的に質問(相談)してみた らどうでしょう。先生と時間をかけて話し合ってみたらどうでしょう。そう いう母親もたくさんおります。多くの母親はそうしております。随時、学校 を訪問して先生に質問やお願いをするのもよいでしょう。お勤めしている母 親ならば、事前に電話で先生の都合を聞いて、時間を打ち合わせしておき、 時間をかけ話すのもよいでしょう。 まず、教師を信頼してほしいと思います。敬遠しないで、気軽に話し合っ てみましょう。気安く話しかけてみましょう。気安く話しかけることが大切 で、ここのところで厚い壁を作ってしまうから、教師不信がつのることにな ります。気安く話しかけてみると、教師の気心も分かり、母親の気心も分か り、教師と仲よくなれるはずです。うちとけた関係になれば、むりな、言い にくい要求も気安く言えるようになるでしょう。必ずや、思い切って質問や お願いをしてよかったと、あとで喜んでいただけるようになるはずです。 十分に納得できるよい結果が得られない場合もあるかもしれませんが、そ の場で解決ができなくても、事態はよい方向へむかっていくようになるはず です。話し合えば、教師の考え方も理解でき、ぐっと親しくもなり、教師も、 自分の指導の不十分さや気配りのなさを教えられ、反省することもあるでし ょうし、親の方も考えの甘さや考え違い・受け取り違いなどに気づいて反省 することもあるでしょう。いずれにしても、問題は案外に容易に解決するは ずです。 宿題について言えば、下記の投稿記事にあるように宿題を出さない先生も おります。一般的なことを言えば、小学校低学年・中学年は自学独学する力 が身についていないですから、宿題を出す先生が多いでしょう。高学年や中 学生・高校生になれば自学独学の力が身についていますから、宿題を出さな いことが多いのではと思います。が、進度が遅れている個所とか、特別な研 究テーマを与えて宿題にするなど、さまざまですから一概に宿題はこうだと は言えません。 参考資料 下記は、読売新聞(2014・7・30)の投書欄「気流」に掲載されていた記事 です。 自発的な学習促す 教師の手助け大切 元学校長 米田 豊 89 (兵庫県西宮市) 小学校の教師をしていたある時、宿題を出さないことにしました。担任を している子どもたちには「家庭学習を自分で進んで行い、そのノートを翌日 の朝に出しなさい」と話しました。名付けて「がんばりノート」。私はノー トを毎日点検し、赤ペンで励ましの言葉を書き入れ、子どもたちに返しまし た。 夜中の12時頃まで勉強する子や、夏休み中のノートが60冊になった子 もいました。ノートの提出回数・内容と、学力は比例していると、自信を持 って指導していました。自ら進んで学ぶ習慣をつけるため、手助けをしてあ げることが大事だと信じています。 なお、宿題については、本章の【7】「家庭学習のさせ方」にも書いてあ ります。そちらも参照してみましょう。 ≪一期一会の出会いを大切に≫ 先生と子ども(親)との出会い、親と子の出会い、夫と妻との出会い、職 場やグループの仲間との出会い、人間同士の出会い、これらは偶然的で運命 的な出会いですが、大切にしていきたいものです。その出会いを、よい方向 へ努力して育てていくようにしましょう。努力しないで、相手の悪口を陰で 言っても、事態は解決せず、悪い方向へ向かうだけです。 バカな人間がいたならば、その人間を育ててやろう、ハズレ教師がいたな らば、その教師を育ててやろう、という大きな度量を持って、心も軽く、ル ンルン気分で、気楽に、明るく、大らかに対応していくと、事態は案外に容 易に解決に向かうはずです。陰で悪口を言いたてて不満を吐き出しても、少 しは気が休まるでしょうが、事態は解決しません。ハズレ教師は、父母の皆 さんで、指導して、立派な教師に育ててください。わたしもハズレ教師で有 名でしたが、ずいぶん父母の皆さまから指導を受け、支援と応援をしていた だきました。 人生とは、人間と人間との出会いと別離の連続です。一回きりの人生です。 短い人生を、せめて出会いを大切にして、有意義な出会いにして、素敵な人 生を送れるように努力していきましょう。人間社会には、どうしても虫の好 かない、気の合わない、ハダが合わない、相性が悪い人間がいるものです。 嫁にも、姑にも、親戚にも、隣り近所にも、職場にも、学校の先生にも、政 治家にも、スポーツ選手にも、芸能人にも、気の合わない、非難したくなる 人物がいるものです。嫌いになると何から何まで気にいらなくなるから不思 議です。しかし、これ、また、人生というものでしょう。 近年、モンスターペアレントということが社会問題となっています。辞書 には「教師や学校当局に対して、教育方針や教師の生徒への対応などに過激 な反応を示し、強い抗議や自己中心的で理不尽な行動をとる親たち」と出て います。「モンスター」とは、「怪物、化け物、残忍な人、悪漢」と出てい ます。 昔の農業や漁業や林業などの第一次産業の時代は、子どもの将来は親の後 を継ぐというのが大多数で、子育ての方針や方法が決まっていましたから、 そう大きな子育て問題はありませんでした。現今の第三次産業の時代となっ て社会が複雑になり、最近は格差社会といわれ、教育格差もいわれ、子育て の方針・方法が未定・不定となり、わが子の教育方針や方法も不安定になり、 両親の悩みも多くなってきています。 昔は、親の学校への不満や非難は少なく、よほどのことでないかぎり教師 や学校へ意見を申す親はいませんでした。大戦後は、言論で民主社会を構築 する世の中ですから、また、両親も高学歴となり、正当な権利を当然に主張 する世の中です。これは、まっとうな健全な、あるべき世の中です。しかし 「モンスターペアレント」とは、権利の主張が「正当な権利」の主張でない、 「不当な権利」の強要にあります。 親の理不尽な要求にはどんなものがあるか、グーグルやヤフーで「モンス ターペアレント」と記入し、検索してみよう。 先生への話しかけ参考例 教師に、直接に、どうしても言いにくい、話せない、聞きずらい、という 場合はこうしましょう。どうしても直接に話せない原因を考えるに、教師へ の怒りや恨みの感情を、もろに激しい言葉でぶつけようとするからです。あ るいは、教師不信がつのって、ハナから毛嫌いして、話し合い拒否をしてい る、という場合もありましょう。ものは言いようです。上手に言ってみまし ょう。こうしたらどうでしょう。 ○「子どもの話によると、学級内で……ということがあったようですが、子 どもの話しだから自分に都合にいいことを言ってるのかもしれませんで すが、事実はどうなんでしょうか」 ○「この学級は……のことはどうなっているのでしょうか」 ○「……について、先生はどのようなお考えをお持ちになっているのでしょ うか」 ○「子ども達を……のようにさせているのは先生の理由があってのことだと 考えます。どんな意図でそうなさっているのでしょうか」 ○「わが子は学校生活の中で……が困っています。悩んでいるみたいです。 例えば……ということがあります。親はどう指導したらよいか困ってい ます。先生のお考えを聞かせてください」 ○「きのう、学校で……のようなことがあったと泣きながら家に帰ってきま した。うちの子の意見を一方的に聞いているだけなので、ほんとうのこ とが分かりません。事実は違っているのかもしれません。先生から、… …について調べてみてください」 このように教師への悪口をもろ感情的で言うのでなく、疑問や不安に思っ ている事柄を、疑問の文型で問いかけて、話し合いのきっかけを作り、そこ から親の言いたいことをしだいに語っていくようにするとよいでしょう。親 の考えも言いながら、教師の意図や考えも聞いてみたらどうでしょう。こう して双方が十分に意見交換をしていくようにします。どうしたら子どもの教 育効果が上るかに焦点を絞り、わが子の具体的事例を話し合いの柱にしてい くことを忘れないようにすれば必ず成功するでしょう。質問や問いかけで話 しのきっかけを作り、こうして教師の考えを聞き、親の考えも語り、自分の 疑問や不安を解決していく、以上述べたやり方はよい方法ですから、ぜひ試 みてください。 それでも、わたしはどうしても先生に直接には話し出せないという場合は、 どうしたらよいでしょう。その時は、4月の懇談会で選出された学級役員さ んがいらしゃるでしょう。学級役員さんに頼んで、役員さんの方から担任教 師に話していただくのもよいでしょう。あるいは、同じ考えの学級内の父母 が二三人つれだって、教師のところへたずねていくのもよいでしょう。こう して親の疑問や不安を語り出し、担任の考えも聞き、お互いに意見交換をし てみましょう。 (3)「自分の子は悪くない」とかばう 学校から帰った弘君が母親にこう言いました。 「きょう、ぼくが校庭で遊んでいると、正夫君がぼくをいじめたの。ぼくが 何もしてないのに、ぼくが太っているからデブデブと言うの。そして、ぼく の服をぐんぐん引っぱったりするの。ほら、洋服のボタンが三つもとれちゃ たでしょ。ぼくの服をぐいぐいと引っぱったんだよ」 すると、弘君の母親が言いました。 「正夫君は、なんて悪い子なんでしょう。今度、デブデブと言われたら、あ なたはチビチビと言い返してやりなさい。あなたは男の子だから負けないで 言い返さないとだめよ。正夫君とは遊ばないようにしなさい」 ほんとは、弘君は、母親にウソの報告をしているのです。子どもは、自分 に都合のいいように事実をねじまげて親に報告することがあるので注意を要 します。子どもの報告を真に受けて信じてはいけない場合もあります。この ようなトラブルの場合は特に気をつけましょう。一方だけの報告を信じ込ま ないようにしましょう。 この事例では、当人たちから事実を聴取したところ、鬼ごっこをしていて、 正夫君が弘君の洋服をつかまえた。弘君がむりにぐいぐいと引っぱられなが ら、逃げた。だから、弘君の洋服のボタンがとれた、という事実が判明しま した。このように子どもは母親に自分が不利になることを隠して、自分の都 合のよいように事実をねじまげて報告することがあります。 子どもは母親にトラブルの報告をする時は、自分に不利になる事柄につい ては隠したがるものです。一方的にわが子の言い分を信じ込んでしまって相 手側をなじったり、電話で早合点して抗議したり、直接に出向いて非難した り、近所の人々に言いふらしたりなど、しないようにしましょう。 先ず、当人たちから、それを目撃していた子どもたちからも、真実の情報 を集めることです。この例では、特に弘君と正夫君の二人からと、目撃者が いたら、その子たちがいるところで事実の確かめを聴取することです。今後 の二人の生活(人間関係)がうまくいくように配慮しながら解決を図ってい くようにします。 よく調べもしないで、一時的な感情でカッとなって相手をなじると、相手 の親は自分の子に落ち度があった場合でも、あれこれと自分の子をかばう発 言をするようになります。この例の場合、鬼ごっこで洋服の引っぱり合いは、 どっちがどうと、悪い・良い、の判定はつけられないでしょう。子ども同士 の遊びの中では、こうした判定しにくい場合がけっこう多くあるのです。 教師をやっていると、子ども達から次々と告げ口がやってきます。特に 低・中学年では多く言いに来ます。先生と会話したいばかりの告げ口もあり ます。誰ちゃんがこうした、誰ちゃんがこうしたの、こうしていたよ、と 次々に話しかけてきます。告げ口というよりも、単なる行動の報告もありま す。子どものトラブルの中にも、軽いもの、見捨ててよいもの、見捨ててお おけないものもあります。子どもの遊びの中のトラブルの判定は子どもが大 勢であっちから、こっちから口出しをしてきて、けっこう時間がかかり、判 定もけっこう困難を極めるものも多くあります。ひとり一人の見方が違って いたり、中には誰かに味方した発言をする子も出てきます。 いずれにせよ、判定が困難になると、子ども同士のトラブルが親同士のケ ンカになってしまわないように配慮する必要があります。双方が意地を張り 合って、事態はますますこじれてくることもあります。そうならないように 気をつけましょう。 参考資料 https://www.youtube.com/watch?v=xyuikRFC-Gk&list=RDxyuikRFC-Gk#t=20 (4)学校内のトラブルを母親同士で解決する 前記したボタンのトラブルの話を続けよう。ボタンをもぎ取られた弘君の 母親が、わが子の一方的な話を信じこみ、正夫君の話しも聞かずに、正夫君 の母親に、激した口調で電話をしました。抗議の電話です。この事実を知ら ない正夫君の母親は電話で平身低頭しばがら 「すみません。すみません。子どもが帰宅したら、厳しく注意しておきま す」 と謝りました。 帰宅した正夫君から事実を聞き出した母親は、逆に感情的にカッカッとな り、弘君ぽ母親に、こう電話しました。 「鬼ごっこ遊びをしていて、お宅のお子さんが強く逃げたからボタンがとれ たということですよ。こんなことは子どもの遊びによくあることでしょ。鬼 ごっこ遊びでは、これぐらいはしょうがないと思うわ。うちの子は悪ガキで あることは親として承知しており、皆さんのお子さんたちにいつもご迷惑ば かりおかけしていてすみません。今日のは、お宅のお子さんも悪いですよ。 鬼ごっこで、つかまえられて、むりに強く逃げなければボタンがとれること はなかったはずよ」 ガチャリと電話を切ってしまいました。 母親同士の口ケンカになってしまいました。これは、学校の管理下で起こ ったことです。学校の管理下で起こったトラブルは学校の教師に責任があり ます。学校内で起こったトラブルは教師がその処理に当たります。 学校内での子ども同士のトラブルは、教師の耳に入らない場合もあります。 教師に知らせないで家に帰ってしまい場合もあります。もし、学校内や登下 校中のトラブルは、母親の耳に入った時は、母親同士で解決しないで、まず 担任教師に知らせてくださるように願います。担任教師がトラブルの当人か ら事実を聴取し、教師が処理に当たります。その事実と処理の結果を、教師 から当人の親に報告します。教師が報告をして、親の協力をいただく場合が あれば、そのことをお知らせして、お願いを申し上げます。 教師抜きで、母親同士で解決しようとすると、自分の立場を有利にしよう とするものですから、どうしても感情的な対立になりがちです。あとあとま で尾をひいていやな思いをする結果になります。 参考資料(1) ここでちょっと話題を変えて、幼稚園でのケンカにあったウソの、ほほえ ましい事例を紹介しましょう。 下記は、東京新聞(2015・2・2)の投書欄「発言」にあった記事です。 ケンカしても思い合う兄妹 会社員 小野塚征志 38(東京都狛江市) 家に帰ると六歳の息子の目の下にすり傷がある。「どうしたの?」と聞く と、「何でもない」とぶっきらぼうに言う。すると四歳の妹が言った。「お にいちゃんが助けてくれたの!」と。 妻いわく、幼稚園で娘が息子の友達とケンカをして押し倒された時、息子 が飛んできて、つかみかかったらしい。家ではケンカばかりの二人だが、い ざという時にはちゃんと助けるんだなと思うと、ちょっと胸が熱くなった。 一人っ子の自分にはない、かけがえのない思い出になるだろう。 感慨にふけっていると、息子が言った。「助けてない!」。負けずに娘が 「助けてくれた!」。早速兄妹ゲンカに。でも、お兄ちゃんは四月から小学 生。違うところに通うことになるけど、頑張るんだよ! 参考資料(2) 下記は、岩下宣子監修『小学生のお母さんのマナーあいさつ手紙』(成美 堂出版、2004)という著書からの引用です。 つきあいじょうずになろう 幼稚園時代と違って、小学生の親同士が顔を合わせる機会は激減します。 子どもが親しくしているからといって、お茶したりなどと親しくする必要は ありません。 しかし、なにかトラブルが起こったときには親の出番。とくに、ものを壊 したとかケガをさせたという場合は、電話でもいいので、なるべく早くお詫 びをするのが大原則。どんなトラブルでも、実質的な被害を受けたほうが、 怒りは大きいものです。 事実関係の把握は後からゆっくりすればいいのです。先に手を出したのは 向こうだとか、一緒にやってしまったことだというのは、謝罪後、子どもに じっくり話を聞きましょう。 仲がよければ一緒にいる時間も多くなり、結果的にその相手とのトラブル も多くなります。仲がよい友だちのお母さんとは、普段からごあいさつなど して、良い関係を作っておくに越したことはありません。 ついうっかり夫婦間のグチなど、家庭の秘密を話したら、あっという間に 広がっていたなんてこともあります。お母さんたちの間には、目に見えない 光通信なみに早くて広い情報網があるのです。 あまり公にしたくない事情などは、安易にしゃべらないことです。また、 子ども同士のなにげない会話にも、本当は隠しておきたい家庭内の問題も出 てくることもあるので、注意したいものです。もちろん、子どもを通して耳 にしたことを吹聴するのもよくありません。 小学校のお母さんたちは、年齢も20代から50代くらいまでいますし、家庭 環境や考え方も多種多様です。それに、PTAや地域活動などで、クラスや 学年を超えたネットワークがあちらこちらに存在します。いくら親しくても、 ある程度慎重におつきあいしたほうが良いことも多いのです。 56ぺ (5)すぐ校長や教育委員会へ電話する 担任教師の悪口を、担任教師の頭越しに、直接に学校長に電話・面接する 父母がいます。 「わたしは、子どもがお世話になっている○○小学校○年○組の母親です。 校長先生、○年○組の○○さんのことです。○○さんの授業態度がなってい ません。授業中にあちこちと走り回ったり、大声を出したり、まじめに勉強 している子のノートを覗き込んだり、話しかけたり、あれじゃ、他の子たち の勉強のじゃまになり、勉強できる雰囲気になれません。もっと厳しく○○ さん指導をするように担任の先生に言ってください。」 「校長先生。○○先生は子どもをえこひいきして困ります。運動場で5,6 人でふざけっこしていたそうです。D君がわたしの子の足につまずいて転ん で、D君の右腕にかすり傷ができました。担任の先生は理由も聞かずにわた しの子だけを叱ったんだそうです。わたしの子は○○先生に嫌われていて、 時々、そういうことがあるので困っています。わたしの子は乱暴者で、学級 の子たちにも嫌われているのは知っています。でも、理由も聞かずに、どう して私の子だけを叱るのでしょうか。」 また、学校の悪口を、学校長の頭越しに、直接に教育委員会へ電話する母 親がいます。 「○○小学校の母親です。○○小学校の五年生に、林間学校を夏休み中に実 施するように指導してください。二学期の10月は、いちばん勉強に身が入 る時期です。その時期に林間学校があるのは止めるようにしてください」 「○○中学校の父親です。最近の中学校は、先生たちも、生徒たちも、学業 にばかり力を入れて、学業の成績のよい子が優秀な子となっています。これ は困ったことです。集団行動で規律を厳しく守り、運動でからだを鍛え、根 性を植えつける教育をしていません。放課後のスポーツ活動を盛んにして根 性を植えつける教育を要望します。道徳教育をもっとやってください。今の 中学生は道路を横に並んで歩いたり、赤信号を集団で走って渡ったり、道徳 がなっていません。各中学校へ強く要望を出してください」 校長や教育委員会だけでなく、文部科学省や新聞社に電話したり投書した りする父母もいます。担任教師や学校長の考えも聞かずに、頭越しに、一方 的に文部科学省や新聞社に電話(投書)するとは困ったものです。こうした 電話は、文部科学省の仕事内容や新聞社の方針を語り、一度、当該学校長や 当該教育委員会へ戻されるでしょう。もちろん、文部科学省や新聞社として 取り組むべき問題もたくさんあります。父母が問題にしている事案について は、文部科学省や新聞社が直接に取り組むべき時間ではなく、まず当事者で ある担任教師や学校長と話し合って下さい、と言われるでしょう。 父母の多くが抱いている教育問題は、わが子・わが地域の身近な教育問題 ですから、「それについて、当該の学校長に話されましたか。当該の地方教 育委員会に話されましたか。まず、そちらと十分に話し合って下さい」とう 回答になるでしょう。 新聞社への投書では、個人攻撃の私憤は採用不可・ ボツになるでしょう。社会問題として取り上げるべき価値ある公憤について は採用のリスト対象として選考されるでしょう。 このような電話(投書)をする父母は、よい教育をしてほしいという願い からそうしているのでしょう。その気持ち(意図、願い)は、十分に分かり ます。しかし、こうした父母の意見・主張と、教師・校長・地方教育委員会 の意見とは、考え方がそんなに違っているとは考えられません。双方が話し 合ってみれば、全く同意見という場合のほうが多いでしょう。 もし、意見を異にするところがあるとすれば、当面の具体的な運用のとこ ろでしょう。さしあたって教育施策や具体的な教育方針・計画・指導内容の 重点をどこにおいて実施していくか、教育予算をどこに重点をおいて使って いくか、などで違ってくるでしょう。基本的な方向性(考え方)に大きな開 きはないはずです。双方が心を開いて話し合えば、現状はこうなっているが、 直ぐには全面解決はできないが、改善すべき方向性の多くは一致するはずで す。 いずれにせよ、直接に担当している教師(校長、教育委員会)の頭越しに、 知らないことを、知らないところで、あれこれと通知されるのは、教師(校 長、教育委員会)としていい気持ちがしません、不愉快です。双方の関係が こじれて悪化することにもなります。 お母さんも、立場が逆になったら、同じでしょう。ある母親が、自分の子 どもの悪口を、自分が知らないことを、一方的なキメツケ話を、一方的に他 の母親たちに言いふらされたら、学級内や隣近所の母親同士の噂さとなって 流されては、いい気持ちがしないのと同じです。 頭越しに告知された事柄を、学校長や担任教師や教育委員会が聞いたとし ます。学校長や担任教師が知らなかったことを、あとで学校長や担任教師が それの事実を調査してみると、こんなに簡単な解決ですむ事柄がと、不思議 に思うことも多くあります。わたしの知っている限り、勘違い、誤った受け 取り、という事例が多くありました。直接に担当者に話してくれれば解決す るものなのに、と思うことが多くありました。 学校のことについて、へんだなと思ったら、まず担当教師や学校長や教頭 に気軽に声をかけてください。 まず担任教師と話し合ってみましょう。担任教師と話し合って解決しない 場合は、学校長に話しましょう。例えば、こんな例があるでしょう。父母と 担任教師と見解が違っていて、対立のままである。担任教師の対応に不満だ ったり、担任教師が真剣に取り組んでくれない、指導してくれない、という 場合もあります。問題が一学級だけでは解決できない事例だったりする場合 もあります。 問題が一学級だけでは解決できない事例として、たとえば、次のような例 があるでしょう。 ○特別な問題行動をする児童がいて、他学級児童や他学年児童に悪さ、ふざ け、からかい、いたずらをする。 ○誰がやったかわからないが、靴箱から靴を校舎の裏手に隠したりが多い。 ○誰がやったかわからないが、学習道具を他学級のゴミ箱に捨ててある。 ○高学年生が低・中学年生の遊び場を横入りで占領する。 ○不登校児度がいて、いつも遅刻して保健室や特別教室で学習しているのを 多くの児童が見ており、変に・不審に思っている。 ○特定児童からの悪さ、からかい、イジメが他学級や他学年児童へも及んで いる。 ○誰がやったかわからないが、体操着が他教室から見つかった。 ○問題行動児童・不登校児童・いじめられ児童がいた場合、各担当教師によ る全職員への現状報告と対応協力指導の要請を求める。教師全体(他児童 たち)が、彼らへ、どうコトバをかけて、見守り、育て、対応していくか。 こうした問題は全校教師が意見を交換し、協力し、その都度、話し合いなが ら、状況に応じて解決策を見い出し、指導していかなければなりません。学 校長や教頭が率先してリーダーシップを発揮して解決に向けて取り組んでい かなければなりません。 私憤と公憤と 学校は、父母のために存在しているのです。教師は父母に代わって、代用 して教育指導をしているのです。教師は父母(国民)の下僕なのです。 教師は父母に代わって、あなた達のお子さんの知育、体育、徳育を指導して いるわけですから、まず直接に指導している担当教師や校長に疑問や要望や 不満などを伝えてください。学級内または学校内だけで処理できない問題も 多くあります。それらは、学校長から教育委員会へ、そして文部科学省へ伝 えます。 事柄によっては、警察へ知らせて協力を求める場合もあります。例えば、 学区内の地域に不良の青少年グループがあり、小中高生に悪影響を与えてい る、など。 父母の教育への疑問、憤り、憤慨、要望には「私憤」と「公憤」とがあり ます。「私憤」とは「個人的な、私事についての恨み、憤り、憤慨」のこと です。「公憤」とは「正義感から発する、社会悪に対して私的な利害をこえ て感じる憤り、憤慨、怒り」のことです。 一概には言えませんが、父母からの担任教師・学校長・教育委員会への疑 問、憤り、憤慨、要望の多くは、私憤から発するものが多くあると思われま す。しかし、それらには、すぐに解決できない問題もあります。それは私憤 の中に公憤の要素が含まれていて、私憤レベルから公憤レベルへと変更して 考え、処理しなけらばならない問題もあるからです。 「公憤」に関する教育問題は、社会的、政治的な問題に多くあります。教 師ひとり、学校長ひとり、教育委員会独自では解決できない問題です。マス メデアで教育問題として取り上げている事柄の多くがそうです。新聞の投書 欄に掲載されている記事もそうです。公憤については、おおいに新聞社に投 書して世論に訴え、世論を喚起し、世論を盛り上げて、社会悪を退治してい かなければなりません。 公憤の中には、公衆道徳・マナーの悪さ、青少年の非行化、イジメ問題、 危険ドラッグ、一票の格差、政治とカネ、税金のムダ使い、原発汚染、少子 高齢化、老老介護、宗教戦争、……、挙げればきりがありません。多くが新 聞紙上や週刊誌などで話題になっています。新聞の投書欄には、唾棄すべき ネガティブな公憤の事例が多く取り上げられています。たまに投稿者が実 際に見聞し、感動した美しい心温まる話、、興奮した公憤の事例の投稿内容 も掲載されることがあります。 国家レベルの教育問題については、内閣が種々の教育審議会に意見を諮り、 国会が法律を作り、文部科学省が法律にそって教育行政を熱心に取り組んで おられます。文部科学省は、国の教育施策に公憤がなきように真剣に取り組 んで執行してくれています。 だが、文部科学省も含めて、一般に官僚制度というものは大胆な変革を求 めない、小心なところがあります。こうしたらという意見や提言を出しても、 前例がないからダメ、従来通りで何とかうまくいってるのだから、特別に改 める必要はない、という気質を持っています。お役所仕事は、いつも通りに みんなで渡って問題なく経過しているから、大ナタを振るって大胆に変化・ 変革を求めることには、とても臆病です。 このことは、文部科学省だけでなく、教育委員会も、学校も、行政機構の 一つですから、多少の相違はあっても、同じように臆病なところがあると言 えます。 公憤についてのいろいろな提言は、マスメディア(新聞、雑誌、週刊誌、 テレビ、ラジオなど)で積極的に取り上げて問題提起をしております。マス メディアは、健全な世論形成に重要な役割を果たしており、その社会的教育 的な意義はとても大きいと言えます。そういう意味から本章「父母と教師に 役立つ学級懇談会の話材集」では、新聞の投稿記事を多く利用して記述して います。 最近は、インターネットの映像つきの投稿動画サイトは驚異的な影響を与 えており、世論形成に即効的な大きな効果を与えています。 参考資料 下記は、東京新聞(2015・2・16)の一面に掲載されていた記事です。 所沢・住民投票 エアコン設置賛成多数 有資格者 三分の一規定に届かず 航空自衛隊入間基地(埼玉県狭山市など)の航空機騒音が問題になって いる同県所沢市で、十五日、教室に二重窓を取り付けて「防音校舎」にした 市立小中学校二十八校へのエアコン設置の賛否を問う住民投票が行われ、賛 成票が有効票の過半数に達した。投票率は31・54%で有効投票数は八万七千 七百六十三人。投票資格者の三分の一(九万二千七百五十人)には達しなか った。 住民投票の結果に法的拘束力はないが、今回の住民投票条例では「市長お よび市議会は結果を尊重しなければならない」と規定している。さらに条例 では、賛否の票の多い方が有資格者の三分の一以上となった場合、「結果の 重みを斟酌しなければならない」との規定が盛り込まれている。(中略) 住民投票を受け、藤本市長は「これから結果を分析する。これまでの国内 の自治体で実施された住民投票と比べると、決して高くない投票率だったの は残念だ」とのコメントを出した。 所沢市住民投票の開票結果 エアコン設置に 賛成<56.921票> 反対<30.047票> (6)ほかの先生と比較する ある母親が、担任教師にこう言いました。 「先生、うちの子は家に帰って少しも勉強しないので困っています。前の学 年の○○先生は毎日のように宿題を出してくれていました。そのため家でよ く勉強をしました。隣りの組の○○先生は、毎日、宿題を出して、翌日の朝 の会には五分間の漢字テストや計算テストをやるんですって。こうすれば漢 字や計算の力がつくはずですね」 それとなく担任教師を非難しているトゲのある言い方ですね。宿題を出し てほしかったら、直接に「うちの子は家でちっとも勉強しないので、宿題を 出して下さい」と言ってほしいものです。 担任教師は、彼なりの教育方針をもって指導しています。何か、彼なりの 考え方があるのでしょう。担任教師も、学級懇談会などで「わたしは宿題に ついてこういう方針でいます」と語り、宿題を話題にして父母の皆さんと十 分に話し合って、共通理解を持つことことが大切です。 学級には、それぞれの実態があります。成績優良児が多くいる学級、乱暴 な子や落ち着きのない子が多くいて騒がしい学級、学級にボスが二人いて、 いつも対立している学級、算数の文章題に弱い子が多くいる学級、日記や作 文を好んで書く子が多くいる学級、などいろいろです。 担任教師は、学級の実態に応じて、この学級は初めはどこに指導の重点を 置くか、次に指導の重点をこう移していこう、このように指導の段階の計画 を立て、それに従って指導しているはずです。各学級の実態に応じて指導の 重点や、指導の方法が違ってくるわけです。一人ひとりの父母の担任教師へ の重点は多種多様でしょうでしょうし、何もかもを取り入れたいのはやまや まですが、そうすることは残念ながらむりです。あっちの学級、こっちの学 級で行われていることをすべて取り入れることはむりです。 また、担任教師には、各人に個性や持ち味があります。得意なところ、得 意でないところ、理科の得意な先生、音楽の得意な先生、絵を描くのが得意 な先生、体育の得意な先生など、いろいろです。こうした先生に受け持たれ ると、これら得意な教科はお子さんも興味関心を持ち、これらの勉強に励む ことになるでしょう。 担任教師には、それぞれに個性や持ち味があります。A組の担任教師、B 組の担任教師、それぞれに個性があり持ち味があります。そうした独自の個 性や持ち味を発揮した指導ができるように父母の皆さんも応援してやってく ださい。ほかの教科をおろそかにする、ということではありませんが……。 子どもの教育のため、という点では、父母の皆さんと教師との願いに大き な差はないはずです。全く同じです。子どものために教師も、父母も、一生 懸命に頑張っているのです。 宿題の要望も、むげに拒絶する教師はいないはずです。話し合ってみると、 容易に一致点に達するはずです。理解していただけるはずです。担任教師は、 父母の要望はできるだけ取り入れるように努力するでしょう。取り入れられ ない場合は、その理由を説明してくれるでしょうし、それをどうカバーして いくかについても語ってくれるでしょう。 参考資料 下記は、岩下宣子監修『小学生のお母さんのマナーあいさつ手紙』(成美 堂出版、2004)からの引用の文章です。母親の賢い応対・付き合い方の心得 について書いてあります。 同じクラスのお母さんから 先生の悪口を聞かされたら 担任の先生がどんなにいい先生でも、悪口を言うお母さんはいるものです。 こんな場面に出くわしたら、同意も反対もしないことが大事です。うっかり 同調しようものなら、次の人のところで「○○さんも同じ意見だったわ」と、 すっかり仲間扱いされてしまいます。 逆に、「そうは思わないけど……」などと反対意見を言うと、「○○さん のところは先生のごひいきだから」などと陰口をたたかれかねません。そう いう話題になったら長居は禁物。用事を見つけて早々に切り上げることです。 59ぺより引用 (7)学校からの通知や連絡を読まない 学校から家庭にいろいろなプリントが配布されます。これらプリントには、 学校(担任)からの連絡やお知らせが書いてあります。各家庭でぜひ協力し ていただきたい内容が書いてあります。学校だより、PTAだより、保健だ より、講演会の通知、学級懇談会や個人面談会の通知、健康診断の結果の通 知、各種アンケートの調査用紙、遠足の通知、運動会の通知などいろいろあ ります。遠足や社会見学の通知には、持ち物、服装、履物、帽子、費用、諸 注意事項などが書いてあります。 これらプリントは必ず読んで下さい。担任は、子ども達にプリント(お知 らせ)を忘れないで父母に見せるように指導しています。家庭では、学校か らのプリントを必ず父母に見せる習慣をしつけてください。ランドセルの奥 に何枚もごちゃごちゃと押し込められていることのないよう、時々は点検を してみましょう。 読んでいただかないと、お子さんが困ります。担任教師も困ります。学習 用具の準備、今週は算数ではコンパスと使うから持参するように。音楽では リコーダー練習をするから持参するように、図工で紙細工の工作をするので これこれの材料を準備しておくように、などが書いてあります。 父母からの予防接種許可証の提出がないと、医師は予防接種を受けさせま せん。水泳許可証にハンコがないと、学校ではプールに入らせてくれません。 もし、不運にも事故がおきた場合、その責任問題でトラブルが起こったりす るからです。 これら学校からのプリント(お知らせ)には、赤鉛筆を持って、重要事項 には赤線を引きながらしっかりと目を通してください。学校への提出物は、 忘れないで締切日までに持参させてください。 (8)学習塾や習い事のために学校を早退させる 最近、小学校で担任教師に次のようなことを言う子が増えています。 「先生、きょうは三時半からピアノのおけいこがあります。ピアノの先生の 都合で、きょうだけ一時間早く始めるの。だから、掃除当番をしないで帰 っていいですか。」 「先生、きょう学習塾で模擬テストがあるの。そのための勉強があるので給 食を食べたら早退させてください。」 「先生、きょうの居残り勉強はできません。三時から水泳教室があります。 居残り勉強をしないで帰っていいですか。」 わたしは、このようなことを言ったときは、きょうはしかたがいが、今度 からは許可しません、と言います。学校の勉強が第一です。学習塾やおけい こ事のために学校教育が荒らされるようでは困ります。 学校を早退する場合は、病気の治療、冠婚葬祭、特別な事情(事故)など の場合だけにして下さい。 (9)家庭でやるしつけを教師の頼む 母親が担任教師に次のように言うことがあります。 「うちの子は、家ではちっともべ勉強をしないので困っています。先生から も、家で勉強をするように言ってください。お願いします」 「うちの子は、家で兄弟ゲンカをして困ります。妹をいじめるのです。先生 から、妹をいじめないように、兄弟仲よくするように教えてやってくださ い」 「うちの子は、やりっぱなし、おきっぱなし、ぬぎっぱなし、……ぱなしが 多くて困っています。先生からも厳しく指導してください」 このようなお願いには、わたしは「ハイ」と返事をして、子どもに「君の お母さんが、……ということを言ってたよ。これはいけませんね。……を守 りましょう」と指導することにしています。子どもを立派に成長させるため には、家庭で指導するべき内容でも、学校教師が協力できるところは指導し て効果を上げるようにしていくのがよいと考えるからです。 しかし、これらは家庭教育の内容です。家庭で父母が腕をふるって指導す べき内容です。父母が子どもの性格、家庭の事情に応じて、それぞれの方法 を工夫して、ワイシャツやブラウスの袖口をたくし上げて指導すべきことで しょう。父母の子育ての醍醐味はこれらの指導にあるはずです。 父母が家庭で指導すべき内容を、父母が楽しみつつ、工夫しながら指導す ることなしに、教師にお願いし、教師にまかせてしまっているようでは困り ます。これでは、無能な父母とか、父母失格とか言われても仕方ありません ね。 学校教育と家庭教育とは内容が違います。家庭教育とは、学校の勉強の復 習をさせたり、予習をさせたり、学習塾に行かせたりすることではありませ ん。家庭教育とは、一般に「しつけの教育」と言われてるものです。洗顔、 手洗い、歯みがき、着衣、脱衣、排便、整理整頓、清潔、食事のしかた、箸 づかい、手伝い、節約、協力、やさしさ、おもいやりなどがそうです。対人 関係のしつけもあります。あいさつ、コトバづかい、親切、公衆道徳、無償 の愛などもそうです。その他、金銭や労働や性や人権などのしつけもありま す。本章「身につけたい子どもの行儀作法・マナー」に、詳細に書いてあり ます。 しつけ方法は、こうしましょう。口数多くガミガミと言うやり方はよしま しょう。親が模範を示し、それをまねさせて、子どもに覚え込ませるしつけ 方がよいのです。例えば、子どもと一緒に風呂に入ったとします。かわいい、 かわいいで、親がからだを洗ってあげ、頭を洗ってあげ、タオルをしぼって あげ、からだをふいてあげ、パジャマを着せてあげ、親がすべてやってあげ てしまうようではいけません。なんか着せ替え人形みたいでっすね。それら 一つ一つを、親が見本を示して、子どもにじっと見させます。そして、親が した通りにことを、子どもにまねさせるのです。今度は親が子どものするこ とをじっと見るのです。ダメなところは「こうすると、もっと上手になる よ」と言って、やり直しさせます。親のやり方を見させる時は、ここはこう やるのがコツだ、ここはこれに注意してやるといい、などと語って聞かせな がら見させるとよいでしょう。 「子どもは親の背中を見て育つ」と言われています。親が何事にも手本を 示してやることです。模範となる行動を見せて、まねさせることです。子ど もは知らず知らずのうちに、親のやり方を模倣している、いつのまにか親の 通りにやってしまっている、というしつけ方にしましょう。 (10)学級懇談会に進んで参加しよう 授業参観には出席するが、学級懇談会には参加しない親がいます。商売を やっていて、むりに時間の都合をつけて出席なさっていて、授業だけは参観 して帰る、という母親もおられます。職業を持っていて毎度はできないが、 何度かは参観するという母親もおります。母親の中には、自分のカラに閉じ こもり、他人とつき合うのを嫌い、近所づき合いを嫌い、他人とかかわりあ うのを嫌っているように見える親もいらっしゃいます。親が参観に見えると、 子どもは歓びますよ。自分の親は来てるかなあ、と授業中、そわそわして後 ろを何度も振り向く子もおります。見つけると、にっこりして安心します。 できるだけ都合をつけて、授業参観だけでなく、懇談会にも出席しましょう。 学級役員に選出時になると、そそくさと、我先に、教室から隠れるように 出ていかれる親もいます。毎日の仕事が忙しい、パートで働いている、介護 の老親がいる、などでPTAの仕事ができません、ということでしょう。学 校・学級の世話やきはまっぴらごめん、自分の利益にならないことは一切し たくない、だけど恩恵だけは受けたい、ということではないと思います。も し、そうでしたら、いちど、試しに経験してみたらどうでしょう。経験なさ った人の全員が「たくさんお友達ができて、勉強になることがいっぱいあっ た、よい経験をした」とおっしゃいます。 学級懇談会に積極的に参加する親もたくさんいらっしゃいます。他人との かかわりに積極的に参加し、他人の意見を参考にし、子育てに励んでいる親 です。このような親は集団の中で育つのは子どもだけでなく、親も集団の中 で育つことを知っています。 子どもの教育は学校教育だけではむりで、子どもの生活の大部分をしめて いるのは家庭や地域社会です。教師と父母がヒザを交えて教育の多様な問題 について語り合うことはとても大切です。子どもだけでなく、親も他人と交 わって成長していくのです。親の成長をうながすものは、親同士が意見を交 換し、経験を交換し、子育ての悩みや喜びを語り合い、知らせ合い、励まし 合って、磨き合っていくことです。 このような親は、気軽に子ども友だちを家に呼んで遊ばせたり、近所の子 どもを誘って親子同士で外出したりもしているようです。こうした親たちは、 他人を尊重し、交流していくことの大切さを知っています。教育は目先の成 績がどうこうでなく、ひとり一人に与えられた生命・能力を一生かかって開 花させていく長い営みであることを知っており、親同士で子育ての交流しな がら、おおらかにゆとりをもって育てていくことを知っています。 (11)学級懇談会の出席率をよくするために 学級懇談会の出席率をよくために、次のことを知っておくとよいでしょう。 @話しやすい、楽しい雰囲気を作る。開会前に、簡単なレクや歌やゲームな どで気持ちをやわらげる。 A親の関心は「うちの子」のことである。「うちの子」という見方を捨てろ というのは過酷な注文で、むりである。話し合いの出発点は「うちの子」 であり、「うちの子」の話しを通路として、話材・材料・きっかけとして、 そこから「みんなの子」に話題を広げていくようにする。「うちの子」の 事例を排除すると、話し合いは頓挫する。 B「うちの子」の例を出していく中で、みんなが同じことで悩んでいたり、 違う対応のしかたがあったりしていることに気づく。それによって、各自 の近視眼的な見方から離れることができる。そして、「うちの子」を客観 的に大らかに見られるようになる。一般的な問題として話し合いが進ん でいくようになる。 C先生がお膳立てをして、先生の司会で、先生の意図どおりに進めるのでな く、事前に先生と学級役員とでテーマや進行の相談をしておき、学級役員 の司会で進行してもらうと、みんなの意見が出やすい。ただし、懇談会の 司会を学級役員がする、となると、「わたしには司会はできません、むり です」といって、しりごみする役員さんもおられる。強要すると、学級役 員になる方がいなくなる、役員選出が困難になる、ということもある。そ こは臨機応変に扱う必要がある。 D全員が聞き上手になることです。すべての意見にうなずきを入れながら受 けとめるようにします。「そうです。同じ考えです」とあいづちや同意見 を述べ続けていく。次に、「ちょとちがうわ」「こんなふうな考え方は どうかしら」「うちでは、こうしている」などと話し内容を広げていく。 始めは「イエス」で続け、次に「バット」の意見へと広げていく。「バッ ト」がなければそれはそれでよい。 E意見が述べやすい雰囲気を作るには、全体を小グループに分け、人数を少 なくして話し合うバズ方式もよい。小グループに分けなくても、近くに座 っている親同士で、2,3人組で話し合って、それを全体に報告する方法 もある。 F意見の違いは、むりに対立させたり、一致や合意の方向でまとめる必要は ない。意見の違いは当然にあるわけだから、両方の意見を容認していくよ うにする。よい意見、悪い意見という評価をくださないようにする。 G担任教師や学校への要望については、教師はメモをとりながら聞きとる。 好意的に受けとめ、取り組めるところは「すぐに実行します」「すぐに学 校長に報告します」と答える。すぐには取り組めないことも当然にあるわ けで、それについては、その理由をていねいに説明する。担任教師の誠実 な実行の積み重ねが父母の信頼感を深め、連帯感を強める。 (12)母親がいじめの原因を作る例 母親が、いじめの原因を作っている事例があります。次のような母親の心 ないコトバがそうです。 「○○ちゃんは、不潔で、からだがくさい。スーパーで消しゴムや折り紙を 万引きしたところを見た人があるそうよ。それを自分の友だちにくれてい るんだって。あの子と遊んではダメよ。あの子から遊びの誘いの電話がき たら、「これからお母さんと買い物に行くから遊べない」と断りなさい」 「○○君は、乱暴で、ウソつきで、叱られることばっかりしている。○○君 と一緒に遊ぶと悪いことばかり覚える。あの子と遊んではダメよ。仲間に 入らないようにしなさい」 「チエおくれの子の学級(学校)があること、あなた、知ってるね。あなた は、こんな悪いテストの点数をとると、勉強しないで遊んでばかりいると、 チエおくれの教室で、あの子たちと机をならべて勉強しなければならなく なるのよ。それで、いいの。いやだったら、どうしたらいいの」 このような母親のコトバが、そのまま、わが子から、友人に語られます。 「誰ちゃんが、こう言ってたよ」と、地域(学級、学校)に広まります。 こうした母親の心ないコトバが、差別と人権無視の思想を子どもの心に 植えつけてしまいます。後者は母親のチエおくれの子に対する人権蔑視も甚 だしく、母親の見方・考え方に大きな問題があります。 これらの事例においては、それぞれに、親は、わが子に、どのように語っ て聞かせるのが最良であるか、学級懇談会で話題にしてみたらどうでしょう。 参考資料 下記は、毎日新聞(2015・1・23)の投書欄「オピニオン」に掲載されてい た記事です。 親へのしつけもなっていない 自営業 丸尾理絵 41 (長崎市) 18日、本欄の「家庭でのしつけが大切」の小野寺さんの意見に大賛成で す。しかし、私が感じるのは「子供にしつけをすべき親のしつけがなってな い」ということです。 子供が通う小学校での出来事です。授業参観の時、「車での来校はしない でください」とお知らせしているにもかかわらず、車で来て近くのお店や月 決め駐車場に無断駐車したり、校庭に平気で駐車したりする保護者が何人も いるのです。 天候が悪くたまたま車で来られた方も多かったのかもしらませんが、ぬか るんだ校庭に乗り入れたらタイヤ痕でガタガタになり、子供たちが安全に体 育の授業を受けたり、休み時間に遊んだりできなくなると考えもしないので しょうね。 他にも、スーパーやファミレスを走り回る我が子をしかるどころか、代わ りに注意した人をにらみつける保護者もよく見かけます。このような親が増 えている今、しつけてもらえない子供もどんどん増えていくんでしょうね。 このページのトップへ戻る |
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